風祭文庫・アスリートの館






「繭子の帯」
(後編)


作・風祭玲

Vol.568





「うん、

 ただの打撲ね、

 少し寝ていればすぐに気が付くわよ」

乱取りの際に頭を打ってしまった武の診察をした

校医の吉沢先生は俺にそう言うと、

「初心者相手にムキになってんですって?

 少しは手加減というものをしなさいよ」

と俺に向かってそう注意をしながら、

ピンッ!

指で軽く額を撥ねた。

「そんな事言ったって…

 こいつ、絶対に黒帯だって、

 俺の動きにここまでついて来るほうがおかしいよ」

先生のデコピンに俺は抗議すると、

「うっ」

武は小さく声を上げ、

うっすらと目を開けた。

「さて、気が付いたようね、

 じゃぁ、あたしはちょっと用事があるから席をはずすね、

 誰も居ないからって保健室の中で変なことしちゃだめよ」

白衣を羽織った吉沢先生は俺に向かってそう忠告をすると

「男同士で何をする、っていうんですか?」

俺は怒鳴り返した。

すると、

「何って、決まっているでしょう、

 お尻の貸し借りよっ」

吉沢先生はそう言い残して保健室のドアを閉めた。



「ったく…

 ぬわにがお尻の貸し借りだ!

 で、小森っ

 なにいつまでも寝ているんだよ、

 ほらっ稽古だ稽古」

目を覚ました小森に向かって俺はそういうと、

「あれ?

 あたし…

 そうだ、大輔っ

 試合どうなったの?

 なに負けたの?」

っとまるで女のような口ぶりで俺に尋ねる。

「はぁ?

 おいっ

 小森っ

 おまえ、頭を打っておかしくなったか?」

武の突然の言動に俺は驚くと、

じっと俺を見る奴の目の前で手のひらを左右に振った。

その途端、

「何を言っているのよっ

 あたしは正常よっ

 もぅ、そんなことよりも

 試合どうだったのよ

 どうせ、武井君に負けたんでしょう。

 まったく、押さえ込まれると

 左に行く癖を直しなさいといったのに…」

俺を見上げながら武はそう怒鳴ると、

「………

 お前…

 誰だ?」

俺はそんな武を見据えながら尋ねる。

「誰って…

 またあたしをからかっているの

 いい加減にしてよ」

俺の質問に武は起き上がりながら怒鳴ると、

パンッ!!

武は俺の顔を叩き、

そして立ち上がった。

その瞬間、

「え?

 武は自分が柔道着を着ていることに気づくと、

 あっあれ…

 あれ?

 あれ?

 あれ…

 え?

 えぇ?

 えぇっ!!」

その表情が急に青ざめ、

そして俺の方を見ると、

「いま、あたし…

 僕…何か言った?」

と恐る恐る聞き返す。

「………

 俺は…

 お前は何者だと聞いた」

そんな武に俺は感情を殺した声で再度尋ねると、

「………」

その質問に武は無口になる。

「…何で答えない。

 小森武…

 いや、お前は武という人間ではないよな、

 何者だ?

 なんで、繭子のような口を利き、

 そして、繭子が指摘してきたことを俺に言う、

 お前…繭子とどういうつながりがあるんだ?

 それよりも、繭子が死んだというのは本当なのか?

 本当に繭子は死んでしまったのか?

 なぁ、答えろっ

 お前、繭子のこと知っているんだろう、

 なぁ教えてくれよっ

 繭子は…どうなったんだよ」

そう尋ねながら気が付くと俺は武の前で土下座をしていた。

すると、

スッ…

武は膝を曲げ、

そして、

「小森繭子は死んだのよ」

と俺に告げる。

「うそだ、

 じゃぁなんで、お前は繭子のような口を利くんだ。

 お前を見ていると、

 俺は…

 お前が繭子に見えて仕方がないんだよ、

 お前は何者なんだ?」

じっと俺を見ている武を見つめながら俺は叫ぶと、

ジワッ

武の目に涙が浮かび上がり、

「……あたしだって…ずっと女の子でいたかったよ」

と涙声で話し始めた。

「え?」

その言葉に俺は驚くと、

「でも、

 でも、

 でもでもでも

 あたし…本当は男の子だったの…

 大輔と同じ男の子だったのよ、

 それを知ったら一緒に居られないじゃない。

 それであたし…

 これまでのことを全部捨てて男の子になることにしたの

 繭子と言う女の子は死んだのよ、

 そして、いまここに居るのは武という男の子…」

泣きながら武はそういうと、

バッ!!

柔道着の上着を一気に剥ぎ取り、

そして、筋肉が盛り上がる肉体を晒す。

「見て、この体…

 お医者様からのホルモン注射でこんなになっちゃったの…

 もぅどこから見ても男の子でしょう?

 あたし男の子になっちゃったのよ」

と武は俺に言う。

「まっまさか…

 お前…繭子だったのか」

武の言葉に俺は愕然とすると、

コクリ…

武、いや、繭子は小さくうなづいた。

「なっどうして?

 お前、死んだんじゃないのか?

 幽霊がその武とか言う奴の肉体に入って…

 とか言うんじゃないのか?」

「違うよ、

 あたしは…

 小森繭子は死んではいないよ、

 でも、死んだのも同然」

困惑する俺の質問に繭子はそう返事をすると、

「あたしが交通事故にあったというのはウソ…

 実はあの日、あたしは病院に検査に行ったのよ」

とポツリと呟いた。

「検査?」

その言葉に俺は思わず聞き返すと、

「あたし…全然生理が来なかったの…

 みんなが生理が来ているのに

 あたしだけ生理がこなくて、

 でも、個人差があるからという話を聞いていたので

 ただ遅れているだけ…と思っていたの、

 でも、17歳を過ぎても来ないなんておかしくない?

 だから、病院で検査をしてもらったのよ、

 そうしたら…

 あたしの体には女の子としてあるはずの器官が無くて、

 変わりに男の子器官が体の中に潜り込んでいたの…」

「そんなことって…」

「うん、何万人かに一人居るそうよ、

 そういう、人が…

 それを知ったときあたし…

 死んじゃおうかとも思ったわ…

 でも、それはしてはいけないこと。

 けど、もぅ女の子として生きていくことはできない。

 判る?

 生まれてからずっと女の子と思って生きてきたのよ、

 それがもぅ出来ないだなんて…」

「でっでも、

 世の中には男なのに女として生きている人が居るじゃないか、

 ほらっ

 ミスターレディとかニューハーフとか…」

「大輔ぇ…

 いくら外科処置でいくら女の子とそっくりの体になっても

 それはあくまで似せているだけで本当の女の子ではないわ、

 そんな偽りの肉体であたしは生きていきたくない」

「でも、それじゃぁ」

「仕方がなかったのよ

 これも神様があたしに下した運命なのかも知れないわ」

「いっいぃのかよっ

 繭子はそれで本当にいいのかよっ」

「いいわけ無いでしょうっ

 でも、受け入れなければいけないのよ

 受け入れなければあたし…」

繭子はそういうと目を腕で隠すと泣き出してしまった。

そして

「繭子…」

そんな彼女の姿を眺めながら

何も出来ない俺はただ見ているだけだった。



それから数日後の休日、

俺は武、いや繭子から指定された時刻に駅前に立っていた。

「なんだよぉ…

 人を呼び出しておいて…」

駅構内の時計を気にしながら俺は文句を言っていると

”いいか、何があっても明日10時、駅前で待っていろ!”

昨日の稽古後、繭子は俺に向かってそう言い残して

道場から逃げるようにして消えていった。

「まったく、

 人の予定も聞かないで呼びつけておいて、

 これが大したことじゃなければ

 稽古でたっぷりとヤキ入れてやる!」

消えていく繭子の白い道着姿を思い出しながら

俺はそう呟いていると、

スッ!!

俺の背後に人影が立ち、

「まっ待たせたな」

と繭子の声が響いた。

「待たせたじゃねーだろ!」

その声に俺は怒鳴りながら振り返った途端。

「あっ」

俺の背後に立つ繭子の姿を見て唖然とし、

そして、

「…繭子…」

という言葉が俺の口から漏れた。

そう、俺の後ろに立っていたのは髪こそ短く刈っているものの

明るい配色の女物のワンピースに

かすかに漂うコロンの香り…

そして、軽めのメイクで纏めた。

紛れもない繭子の姿だった。

「え?

 なっ…どういう…」

俺は呆気に取られながらそう呟きかけるが、

しかし、

パン!!

パン!!

2回自分の頬を叩いて気持ちを落ち着かせると、

「やっぱり変?」

と言いながら繭子は上目遣いで俺を見る。

「いやっ

 いったいどーゆー風の吹き回しだよ…

 いきなり女物なんか着て

 確か、全部処分したんじゃ…」

女装姿の繭子を指差し俺はそう尋ねると、

「おっ女物は武として生きていくことを決めたときにみんな捨てたけど、

 でも、これだけはどうしても残しておきたかったんだ」

顔を赤らめながら繭子は俺に向かって言うと、

「お願い、

 今日、一日、

 あたしを繭子として過ごさせて、

 お願い」

と繭子は真剣な表情で俺に向かって言うと、

「ふっ

 まっいいか…

 細かいところはどうでも…

 で、どうする?

 その格好じゃぁ

 ただ女の格好をして街中を歩きたい。

 って感じじゃないよな」

俺はそう指摘する。

すると、

「……大輔のバカ…」

と繭子は小声で呟くと、

キッ!

目に涙を浮かべながら俺を見上げる。

「あっ…」

繭子のその目を見た途端、

俺は繭子が何を言おうとしていたのかやっとわかり、

「なにも泣くことはないだろう

 わかったよっ

 お前が納得するまでお前は小森繭子だよ」

そう言いながらその肩に手を置いた。

そして

「そーだなぁ…

 いい映画でもやってればいいけどなぁ」

と言いながら俺はその背中を軽く押すと、

街中へと歩き始めた。

考えてみたら繭子はいつも俺のそばに居て、

あまり女の子として意識したことが無く

そんなことを考えながら俺は歩いていくと、

いつしか繭子と手をつないで歩き始めていた。

そして、一日はあっという間にすぎ、

俺と繭子は公園のベンチで次第に暗さを増していく空を眺めていた。

「なぁ、繭子…」

「なっなに?」

「料理の腕は落ちていないか?」

「突然、なにを言い出すんだよ」

「んー?

 いや、

 お前の葬式の後、

 俺、コンビニ弁当ばっかりでさっ

 最近胃がもたれて仕方が無いんだよな」

夜空となっていく空を見上げながら俺はそういうと、

居の周りを撫でるしぐさをする。

「はぁ?

 あのねっ

 あたしは大輔の家政婦じゃないんだから、

 それくらい自分でしなさいよ、

 それに…

 あたしは…もぅ繭子じゃぁ…」

俺の言葉を受けて繭子はそう言いかけると、

「女が作っても男が作っても料理は同じじゃないのか?

 まっあまり男だ女だと分けて考えないほうがいいよ、

 それに、俺はお前の手料理が食べたいんだよ」

横目で繭子を見ながら俺はそう告げると、

「いっいいの?」

繭子は恐る恐る俺を見た。

「まーな…」

繭子のその言葉に俺はそう返事をしたとき、

ヌッ…

「ん?」

中学生ぐらいだろうか、

数人の少年が俺たちの周りを取り囲むと、

「なぁ兄ちゃんよ、

 ちょっとだけお金寄付してくれないか?」

と一人が俺に言う。

「金だぁ?」

少年のその言葉に俺はにらみつけながら言い返すと、

「いーじゃねぇかよ、

 世の中困っている人が大勢居るんだからさっ

 その手助けとして、

 まず俺たちに寄付をしてくれよな」

腕に覚えがあるのか少年は俺に向かってすごむ、

「おいおいっ

 その態度じゃぁとても寄付をする気にはなれないな」

少年達の態度にムッとしながら俺は立ち上がると、

「なんだよっ

 女連れているからっていきがるんじゃねーよ」

途端に少年達は敵意を俺に向けて見せると、

「じゃぁどうする?」

負けじと俺も挑発した。

すると、

「やだっ

 何をするのっ」

いきなり繭子の叫び声が響き渡ると、

「いただきっ!!」

少年たちのうち二人が繭子の腕を引っ張り、

そして、

「おいっ、

 こいつを助けたければ有り金を全部渡せ」

と怒鳴りながら

繭子のワンピースに持っていたナイフを当てると、

一気に引きおろした。

すると、

ビリビリビリ!!

公園の中にワンピースが引き避けていく音が響き渡り、

「あっ」

瞬く間に繭子の上半身が露出する。

しかし、

「なっなっ

 あたしの一番のお気に入りを…」

繭子はその肉体を晒しながら怒鳴ると、

「このぉ!!」

臆するどころか逆に少年へと飛び掛ってしまった。

そして、

「うわっ何だこいつ!!

 女だと思ったら、

 男じゃねーか!!」

繭子の肉体を見た少年達が悲鳴を上げると、

「男、男、言うなっ!!」

繭子は怒鳴り声を上げ、

自分を襲った少年二人を次々と締め落としていく、

「そーいや…

 繭子って寝技が得意だったんだよなぁ…

 それがあんなにパワーを得れば…

 はは…

 どーりで、俺が勝てなかったわけだ」

そんな繭子の姿を見ながら俺は武に負けたことを思い出すと、

ソーっと逃げ出していく少年2人の肩を左右の手でつかみ、

「で、君達はどこに行くんだい?

 まさか、仲間を見捨てて

 逃げる気なのか?」

と尋ねる。

すると、

「うるせー!!」

俺に肩をつかまれた少年はそう怒鳴りながら飛び掛ってくるが、

しかし、所詮は少年の浅知恵、

瞬く間に俺に振り回されると、

ドッ

「うげぇ!」

「痛いっ」

柔道技で路面に叩きつけられると、

「おっ覚えていろ」

と叫びながら逃げ出してしまった。

「おいっ

 こっちも忘れているぞ!」

そんな連中に繭子が落とした仲間を指さして俺は声を上げると、

「繭子っ

 逃げるぞ」

と言いながら俺は繭子の手を取り、

公園から飛び出していった。



はぁはぁ

はぁはぁ

「はー

 ここまでくれば大丈夫かな?」

なんとか逃げおおせたことを俺が確認していると、

「あぁー

 すっきりした」

破れたワンピースのまま繭子は大きく背伸びをする。

「おっおいっ

 少しは格好に気をつけろよ

 いまは女の子なんだろう?」

そんな繭子に向かって俺はさりげなく注意をすると、

「うふふっ

 決めたっ」

繭子は俺を見ながら何かを決断する。

「決めたって何を…」

「ふふっ

 あたし…

 本当の男の子になる」

「は?」

「実はねぇ、

 お医者さんから整形手術するようにって言われていたのよ」

「整形?」

「そうよ、ホルモン治療のお陰で

 あたしの中の睾丸が目を覚ましたみたいなの

 だから、

 オチンチンとキンタマを作ってもらうの」

「え?」

「なによっ

 その顔は…

 あたしずっと悩んでいたんだ、

 本当にこれから男の子として生きていくのか、

 それとも、整形で女の子の姿を模してもらって

 女の子として生きていくかってね。

 でも、こうして大輔と会って、

 そして、色々話をして、

 やっと迷いは消えたわ、

 あたし、武として生きていくわ、

 だから、女の子ごっこはこれにて終わり!」

そう俺に向かって繭子は言うと、

ビリビリビリ!!

身に着けていたワンピースを自分の手で引き裂いていった。



それからひと月後、武に戻った繭子は再び入院すると、

体の中に引っ込んだままの睾丸の摘出手術と、

それを保護するインノウの再建手術、

女性器と紛らわしい姿になっているペニスの再建手術を受け、

名実共に男子となって俺の前に帰ってきた。

「よう、どうなんだよ、

 チンポの具合は…」

退院してきた武に俺はそう言いながら

道着の上より奴の股間を握り締めると、

グニャッ

その股間に下がる2つの器官の存在を確かめる。

「なにやっているんだよ、

 いくら元女でもそんな気はないからな」

そんな俺に向かって武はそういうと、

「あはは…

 俺だってモーホーの気は無いよ、

 あっそうだ、

 もぅオナニーは出来るのか?

 へへっ

 なんなら俺がレクチャーしてやろうか?」

「いらねーよっ

 そこまでお世話にならねーよ」

「嘘付け」

「あっそれよりも、

 ほらっ

 試合始まるよ」

「あっ」

武の指摘に俺は慌てて試合会場へと向かっていく、

そう、俺達はこの大会の個人戦ににエントリーしていたのであった。



「はじめ!!」

主審の手が上がり試合開始の声が響き渡ると、

「おぁしっ」

「うしっ」

開始線を挟んで俺と武は気合を入れる声を上げる。

そして、お互いに出方を探った後、

「悪いな、繭子…」

俺はそう呟きながら、

武の袖を取ると一気に懐に潜り込んだ、

「いける!!」

そう感じながら俺は背負い投げの体勢に入るが、

しかし、

ガシッ!!

武は俺の脚に自分の足を絡めると、

スルリ

と体落としの姿勢に入った。

「しまった」

乱取りで何度もやられた展開だった。

「くそぉ、

 繭子の奴、

 こしゃくな手を」

そう思いながら俺は技から逃れようとするが、

しかし、そのまま倒されてしまうと、

「技あり!」

の声が響く、

「ちっ、

 先にポイント挙げられたか、

 ならこっちも」

技ありを先に取られたので落ち着いていたはずの俺もさすがにあせり始める。

そして、それを見透かされてか、

瞬く間に武の得意技である寝技に持ち込まれてしまうと、

「ちっ、

 こっちの手の内を知っているだけにイヤな相手だよ」

籤運が悪いのか、

1回戦目で武と当たってしまった俺は自分の運の無さを呪いながらも、

俺は必死に防戦をする。

そして、無意識に武の股間を思わず掴んでしまったとき、

「きゃっ!」

武が小さく声を上げた。

その瞬間。

「あっ」

俺の体の動きが止まってしまうと、

ギュッ!!

あっという間に締め技を掛けられ、

そしてそのまま試合は終わってしまった。

「ずりーぞ!」

「ごめんっ

 声を出す気は無かったんだけど、

 つい…」

試合後、俺は猛然と抗議すると、

武は俺に向かって手を合わせる。

「まったく…」

そんな姿に俺はソッポを向くと、

「でも、

 やっと、大輔と同じ舞台で勝負できたな…」

武は背伸びをしながら呟き、

「今度の試合までに癖、直しなよ」

と俺に向かって注意をする。

「余計なお世話だ!」

「ふふっ

 でも、ボクの新しい目標が出来たよ」

「目標?」

「そーっ

 大輔君っ
 
 君を倒してオリンピックで金メダルを取ること!
 
 これがボクの新しい目標!」

「ちょっと待って!

 俺の目標を横取りするなっ」

「いーじゃないかよっ

 もぅ同じ男同士だろう?」

「くっそぉ

 はぁ…

 それにしても本当にこれでよかったのかな…」

笑みを浮かべる武を横目に見ながら

俺はただ独り言を呟いていた。



おわり