風祭文庫・アスリートの館






「チアガール」
(第6話:調教)


作・風祭玲

Vol.456





「紹介するわ、

 この方、宮元静香さんと言って、

 かつてオリンピックで新体操の日本代表に選ばれた経験があるのよ」

翌朝、

丈二の病室に麗子が一人の女性を連れてきていた。

「はぁ」

まだ寝ぼけ眼の丈二は自分の前に立つ快活そうな女性を見上げてそう返事をすると、

「宮元静香と言います。

 よろしくね」

静香は元気良く挨拶をしペコリと頭を下げた。

すると、

彼女が頭を下げるのと同時にポニーテールに結われた髪がチョコンと動き、

その様子が彼女の実際年齢を丈二に意識させなかった。

「宮元さんはオリンピックの後、

 エアロビクスのインストラクターに転身してね、

 で、藤堂君、

 あなたには今日から彼女からエアロビクスの手ほどきを受けてもらいます。

 本当は後藤さんにお願いしようと思ったんだけど、
 
 あいにく彼女、別の患者さんに付きっ切りになってしまってね、
 
 とても、藤堂君まで手が回らなくなってしまったので、
 
 後藤さんの後輩である宮本さんにお願いしようと思うのよ、
 
 さて、なんでエアロビクスかというと
 
 これはエアロビクスをすることによって体の代謝を活発にし、

 いま藤堂君に処方している薬の効果を高めるためと、

 それと…

 ずっとこの中で何もしないというのも退屈でしょう?

 特にあなたみたいな運動選手だった人が何日もゴロゴロしていると精神的に参ってしまうからね」

麗子は彼女を連れてきた理由をそう告げ、軽くウィンクをして見せた。

「はぁ」

説明を受けている間に眠気が覚めた丈二は改めて静香を見直てみると、

「?」

丈二の視線に軽く首を傾ける仕草をする静香は、

身長は麗子よりもオデコ一つ分高いながらも。

身に着けているTシャツと半ズボンから覗く手足には筋肉の陰影がくっきりと浮かびあげ、

うかつに接すると大怪我をしてしまいそうな肉体を持っていた。

「へぇぇ…アメフトでもやっていけそうだなぁ

 でも、あの後藤も筋肉モリモリだったけど、
 
 こいつはそれにも増してすごいや、
 
 ホント、こんな琢磨しい女性を見たのは初めてだ…」

そう思いながら丈二は静香を見ていた。

無論、P大にも体操や水泳など運動をしている女子学生はいるが、

しかし、その練習が行われているところは男子禁制のところが多く

その練習風景を見ることなど叶わぬ夢であった。



一通り静香を見た丈二は、

「あのぅ…」

と声を上げると、

「ん?

 何か質問?」

丈二の声に麗子が聞き返して来た。

すると、

「いや、そーじゃなくて…

 朝食…食べていいですか?」

丈二は自分の目の前に用意されていた朝食を指差した。

「あっあぁ…

 ごめんなさい、

 まだ、朝御飯食べてなかったわね、

 じゃぁ食べ終わったらトレーニングルームに来て、

 早速はじめるからね」

静香をドアのほうに促しながら麗子はそう言うと、

「はーぃ」

丈二は間延びをした返事をし、

いつもと同じ朝食に箸をつけた。



「いよいよ、体を動かせるな…」

食事後、トレーナ姿の丈二は腕を回しながらあのジムへと向かっていく、

そして、

カチャッ!

「失礼しまーす」

と言う声とともにジムのドアを開けると、

陽気な音楽とともに、

激しく体を動かす静香の姿があった。

「あぁ、待っていたわよ」

ジムに入ってきた丈二に静香が気がつくと、

すかさず音楽止め、丈二のそばに走りよってくるが、

しかし、彼女が着ているオレンジ色をしたセパレートのレオタードを濡らす汗がその運動量を物語っていた。

「はっよろしくお願いします」

静香が放つエネルギーに圧倒されながら丈二は頭を下げると、

「はいはい、

 挨拶はそこまで、

 ほっとくと永遠に終わらないからね、

 さて、まさかその格好であたしのレッスンを受けるつもり?」

「え?」

静香の指摘に丈二は驚き、

「え?これで十分では?」

そう丈二が返事をすると、

「変ねぇ

 あたしは体の線が見える服装で…
 
 って羽村先生に言ったんだけど」

丈二の言葉に静香はそう言いながら首を傾げ、

「ちょっと待ってて」

丈二に待つように告げると、内線電話に飛びついた。

そして、程なくして戻ってくると、

「なんか、手違いがあったみたいね、

 まぁ仕方がないから、

 あたしのを貸してあげるわ」

あまり深く考え込む性格ではないのか、

静香は丈二にそう軽く言うと、

「はいっ

 これに着替えて」

と言って丈二に代えのレオタードを手渡した。

「えぇ?

 これに着替えるんですか?」

手渡されたピンク色のレオタードを見て丈二が悲鳴を上げると、

「そうよ」

あっさりと静香は答えた。

「でっでも…レオタードなんて、

 そんな」

予想を超えた事態に丈二は顔を真っ赤にして抗議するが、

「別にいいじゃないの?

 ほかに人がいるわけでもないし、

 何そんなに恥ずかしがることもないんじゃないの?

 ほらっ、時間が過ぎてしまうでしょう、

 あたしに恥をかかせる気?」

グズる丈二に静香はそう言って迫ると、

「はっはぁ…」

丈二は俯きながら返事をした。

「わかったわ」

なおも渋る丈二に静香はそう言うと、

「じゃぁこうしましょう!!」

といいながら窓という窓に厚手のカーテンを閉めてしまうと、

「ハイこれなら、あなたの姿を覗き見る人は居なくなったわ、

 これならいいでしょう?」

と腰に手を当てながら丈二に言う、

「……わかりました」

完全にカーテンによって締め切られたトレーニングスタジオの様子に丈二は渋々そう返事をすると、

レオタードを手に更衣室へと入っていった。

そして、それから数分後…

「あっあのぅ…

 着替えてきました…」

蚊の鳴くような声を上げながら静香の前に立った丈二は、

ピンクのレオタードを身につけ、頭には同じピンクのヘアバンドをつけた姿になっていた。

「うん、

 似合っているじゃない。

 それに体の線もすっきりと見えて、

 おっけーよ」

レオタード姿の丈二を静香は満足そうに見ながらうなづくと、

「じゃぁ始めましょうか!!」

と声を上げた。



こうして、クリニックでの丈二の入院生活が始まり、

午前は静香の運動療法、

それが終わると軽い昼食と麗子による投薬、

そして午後はたっぷりの睡眠という日が続いたが、

しかし、静香による運動療法が次第に激しさを増したころから、

なぜか丈二の行動範囲内にあった新聞、雑誌、TV、ラジオと言った物が姿を消し、

さらに時計すらも丈二が気づいたときにはその姿を消していた。

また、外界の様子を知る術である窓も、

もともと、丈二の行動範囲にはほとんど無かったうえに、

ジムの大窓もカーテンで仕切られてしまったために、

完全に丈二は外界とは孤立した存在となってしまい、

そのため、丈二の時間感覚が狂い始めると、

今日がいったい何日なのか、

入院してから何日が過ぎたのか分からない状態になってしまった。

しかし、丈二はパニックに陥ることは無かった。

それは、定期的に用意される食事と、

麗子の回診、

そして、静香の運動療法、

これらが一回も欠かすことなく順序良く行われ、

また、廊下などで出会う看護婦達も気さくに、

そしてやさしく丈二に接してくれたために、

丈二はいま自分が置かれている自分の状態に不安を持つことは無かった。

けど、その看護婦達の態度もいつも同じように丈二に接するわけでもなく、

丈二が従順なときにはサービス精神たっぷりに接するものの、

しかし、疑問をぶつけたり、少しでも反抗的な態度を見せたとたん、

彼女達は丈二に冷たく当たるようになって行った。

そして、このことが丈二の性格を従順なものへと作り変え、

彼自身が気がつかないうちに丈二の心は常に誰かがそばに居ないと不安がってしまうそんな心へと変化していた。

どこに行くにも看護婦と一緒、

そんな丈二の姿に看護婦達は丈二のことを”丈ちゃん”と呼ぶようになり、

さらに時の経過とともに”お嬢ちゃん”と呼ばれはじめた。

こうして丈二はまさに少女のごとく扱われるようになったが、

しかし、最初の頃はそういわれることに丈二は不満を持っていたが、

丈二の性格が従順になっていく連れ、それを受け入れるようになっていった。



定期的に繰り返される運動と診察、そして睡眠…

時間がわからなくても必ず繰り返されるメニューを丈二は黙々とこなしていく中、

あるときから運動をした後に丈二は体重を調べられるようになった。

また、トレーニング機器による運動も始まり、

増加していく運動量に対して、

食事の量はさらに減らされると、

丈二の体は次第に細くなり、

それに比例してバストとヒップが強調されるようになっていった。

そして、シャワーを浴びる丈二のシルエットには、

これまで無かった”括れ”がくっきりと浮かびあがっていた。



「あっはぁ…

 あんっ

 いっ
 
 いぃ…

 いっちゃう…

 あぁ…

 あぁん!」

夜…

ブィィン…

明かりが消された病室に響き渡るバイブレーターの音ともに丈二の喘ぎ声が響き渡る。

明かりが消されても消えることの無い非常灯によって微かに浮かび上がる丈二の胸はさらに膨らみを増し、

また、その頂上で円を描く乳輪は大きく発達していた。

そして、乳輪の中央部で小指大に膨らんだ乳首をもてあそびながら、

丈二はバイブレーターを股間に当て悶え苦しんでいた。

「いぃ…

 いやぁ…」

入院してから一度も鋏を入れない髪はすでに肩近くまで伸び、

艶かしいうなじを作りながら丈二の汗ばんだほほに張り付く、

そして、その髪に構うことなく丈二は乳房を変形するほど握りしめ頭を振り続けた。

絶頂まであと少し、

「あぁぁん!!」

すでに全身に広がった性感帯に翻弄させながら、

丈二はうつ伏せになると

グィッ

っとお尻を突き上げ、男性の性器を受け入れるポーズをとった。

そして、振動するバイブレーターを股間に当てながら、

「うごわぁぁぁぁ!!

 いっいくぅぅぅぅぅ!!」

汗だくの体を痙攣させ丈二は大声を上げ絶頂へと登りつめると

ピュッ!!

萎縮したペニスの付け根に開いた穴より、透明な液体を吹きあげる。

「はぁ

 はぁ…

 はぁ」

絶頂後のまどろみの中、

自分の手を濡らす液体に気づくと、

「はぁ、

 おっ俺…

 ションベンを漏らしたのか…」

丈二はこの異変に気づかずにそう呟くと、

ベッドのシーツに濡れた手を擦り付け、

そしてそのまま寝てしまった。



それからしばらくして運動療法の後、

定期的に診察室へと連れて行かれるようになった。

「あぁ、ただの健康診断よ、

 藤堂さんの体を把握したいからね」

「はい」

検査の理由を話す麗子に丈二は小さく返事をすると、

「じゃぁシャツを脱いでそこに座って」

麗子は自分の前に置かれている丸椅子を指差し指示をすると、

丈二は着ていたTシャツを脱ぎ、

胸を隠しながらやや伏せ気味に椅子に横から座った。

「ん?どうしたの?」

ぎこちない仕草をする丈二の様子に麗子は話しかけると、

「いっいえ…」

丈二は顔を赤くして答える。

「そう…

 じゃぁこの間みたいに胸を出して…」

そんな丈二に麗子が指示をすると、

「はっはい…」

丈二はそっと胸から手を下ろした。

すると、

プルン

形のいい乳房が軽く揺れながら、麗子の前に姿を見せる。

「(まぁ

  少し見ないうちにすっかり大きくなっちゃって、

  それに乳輪も…ほとんど女の子のバストね)」

以前より一回り大きくなった乳房に麗子はそっと手を差し出し軽く揉んでみると、

「あっ」

丈二は声を漏らすと体をよじった。

「ん?

 感じちゃう?」

丈二の反応に麗子は質問をすると、

「…はい」

少し間をおいて丈二は答えた。

「そうねぇ

 肌がさらに敏感になるのも予想のうちなんだけど、

 ちょっと強く出ているみたいね、

 辛くない?

 一応、和らげる薬があるけど

 どうする?」

麗子はそう丈二に提案をすると、

「いえ、

 いいです。

 大丈夫です。

 もぅ慣れましたから」

と丈二は返事をする。

「あら、そう?

 じゃぁ体の寸法を測らせてもらうわね

 ちょっと手を上げて…」

丈二の返事を聞いた麗子はそう指示をすると、

「はい…」

丈二は彼女の指示に素直に従った。

「(大分、調教が利いているみたいね、

  その仕草は女の子そのものよ)」

丈二の変化を喜ぶように麗子はそう思いながら、

メジャーで丈二の体のそれぞれの寸法を測っていく、

左右それぞれの二頭筋の幅から始まり

前腕と手首の周囲の長さ、

腕の長さ、

身長と首、肩、胸までの長さに、

オーバーバストにアンダーバストと、

麗子は綿密に調べていく、

そして麗子の測定は左右の腿周りに、

ウエスト、ヒップとふくらはぎから足首の周囲まで調べ、

さらには、血液検査から尿検査まで行うという

文字通り丈二を徹底的に調べまくった。

そして、

「なるほどねぇ…」

と頷きながらパソコンに測定で得られたデータを入力していくが、

しかし、そのデータは決して丈二に知らされることは無く、

丈二から得られたデータは検査の回数を重ねるごとに確実に女性が持つ数字へと近づいていった。

そして、

「うぐぅ、

 うごわぁぁぁ!!」

丈二のオナニーも激しさと回数を増し、

最初の頃は1回で眠りについたものが、

いまでは5回、いや6回は絶頂に達しないと体が眠りにつくことがなかった。

「くはぁ

 はぁ

 はぁ

 チンポ…

 あぁ、チンポがほしい…」

小指ほどに萎縮したペニスとその下に開いた穴の周りを指で諌めながら丈二はうわごと言い続けていると、

ヌポッ

ふと拍子に一本の指が粘液を流すその穴の中にすべり込んでしまった。

「うがぁぁぁぁぁ!!」

まさに始めての経験だった。

丈二の未完成の膣は進入してきた物体に激しく反応をする。

そしてそれは、数倍にもなって丈二の脳を襲うと、

「うぉぉぉ

 うぉぉぉ!」

クチュクチュクチュ!!

丈二は何かに取り依かれたかのように小指を前後に動かし、

そして、その日最後の絶頂へと駆け上っていった。

「はぁ…

 はぁ…」

すべてが終わった後、

ベッドの上で丈二が呆然としていると、

クチュッ…

彼の指を受け入れた口はその周囲を充血させながら

その周囲にヒダを作っていく、

そして、萎縮しながらもけなげに存在を示していた丈二のペニスに絡みつくと、

ペニスをヒダの中へと引き込んで行った。



「違う!」

「違う!」

「違う!」

「はいっ、そこで打って!

 それからステップ!

 ステップ!

 ほら、遅いよ!

 はいステップ!

 次!

 蹴って

 踏み出して

 踏み出して

 はいっ持ちこたえて、

 そして、上!」

テンポの激しい曲が流れるスタジオに静香の声が響くと、

セパレートのレオタードを身に着けた丈二は汗だくになりながらその声に合わせて体を動かす。

そして、

パンパン!!

静香が手を叩き、

「はいヤメー!!」

と声を上げると、

「くはぁはぁはぁ」

丈二は肩で息をしながらガックリとひざをついた。

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

丈二の荒い息は5分以上続き、

なんとか息を整えて立ち上がったときは

足元がふらふらになっていた。

「ふーん…

 なんかテンポに遅れているのねー」

首をかしげながら静香はそう言うと、

「あのね、

 さっきも言ったけど、

 曲に合わせて体を動かそうとしてはダメよ、

 体で曲を引っ張っていくようにしないとね」

そう静香は丈二にアドバイスをすると、

「はっはい」

丈二は素直に返事をする。

「じゃぁ、今日はここまでにしましょう、

 はい、柔軟を3本したら、

 バーレッスン、

 急いで」

テキパキと静香はこれからメニューを指示すると、

その開始を告げるように手を叩いた。

すると、

「どう?

 調子は?」

スタジオに白衣姿の麗子が顔を出すと状況を尋ねた。

「えぇそうですねぇ

 物覚えはいいのですが、

 ダンスは少々苦手のようですね」

静香はグィ、グィっと左右の足を180度に広げ

柔軟運動をする丈二を横目で見ながらそう告げると、

「まぁ、慌てずに行きましょう、

(だって

 元々アメフトの選手だったんだもん彼)」

麗子はそう言うと、

「どぅ?

 きつい?」

と丈二に声をかけた。

「あっはいっ

 この運動って簡単そうで結構難しいです」

柔軟運動を終えた丈二はそう返事をすると、

壁へと向かい、

壁に取り付けられたバーに手を乗せバレエの基礎レッスンを始めだした。

「へぇ…

 決まっているじゃない?」

黙々とバーレッスンをする丈二の姿に麗子は感心すると、

「基礎は見てのとおり大丈夫ですので、

 あとは曲のノリさえ何とかなれば大丈夫ですよ」

と静香は付け加えた。

そして、しばらくして丈二はより複雑な動きの宙返りや、

また、表現力として、

男性の気をそそらせる艶かしい腰の動きや

胸の振り方なども教え込まれた。

「はいっ

 そう、

 そこで、腰を振る!

 ほらっ!

 誰に向かって腰を振っているの?
 
 そんなものじゃ萎えちゃよ!
 
 胸を使って!

 そう、

 自分をもっとアピールする!

 あたしはここよ!!

 そう言う思いをぶつけなさい!!」

静香の声が響く中、

伸びた髪を振り乱しながらも丈二は胸を大きく開き、

そして肩をゆすりCカップの胸を震わせて見せる。
 


練習後、

「あぁ藤堂君!」

着替えを終えた丈二に静香が声をかけると、

「ねぇちょっとこれを聞いてみて」

と言いながら丈二にMDプレーヤーを手渡した。

「?」

意味がわからずに丈二は自分の耳にイヤホーンを差し込むと、

徐にスイッチを入れた。

すると、

イヤホーンから流れてきたのは丈二の大学、

そうP大でチァリーディング部の部員達が歌う応援歌だった。

「これは…」

かつてフィールドでここ一番というときに流れてきたその歌に助けられてきた

丈二は思わず口ずさんでしまうと

「ん?

 歌ってみる?

 それ?」

と静香は丈二に告げた。

「え?」

「藤堂さんの声、

 透き通っている声だから、

 良く聞こえると思うんだけど」

驚く丈二に静香はそう提案をすると

「あっあのぅ…」

丈二は静香に話しかけると、

「いま、あたしがしている運動って

 あたしの病気とどう言う関係がるのですか?」

オズオズとしながらも丈二は疑問点を静香にぶつけてみた。

しかし、

「さぁ?

 あたしはただ羽村先生から依頼されているだけだら、

 そう言った事は羽村先生にたずねるといいわ」

静香はそう言うと、

「じゃぁ、明日からは新メニュー、

 行くわよ」

と言い残して去っていった。



夕食の時間…

丈二は目の前に配膳さられた夕食にはあまり手をつけていなかった。

小食を強いられているうちに丈二の胃は小さくなり、

食欲は以前の数分の一に落ち込んでいた。

しかし、順の運動量は以前とさほど変わらないために、

丈二の体は薬の効果以上に小さくなり、

そのウェストラインはさらに括れを強調したものになっていた。

スル…

箸を置いた丈二は徐に自分の腹に手を当てると、

丈二の腹を覆う柔肌がかもし出すその感触にしばし浸り、

そして、シャワーを浴びた後、

丈二はいつもどおりオナニーを始めていた。
 
「うぅ…」

振動するバイブレーターを股間に当て丈二はうめき声上げる。

ジン…

バイブレーターの刺激を受けている丈二ペニスはさらに萎縮し、

ヒダヒダに飲み込まれてからはその全体が粘膜に覆われていた。

「あぅぅぅ!!」

ほとんどクリトリスとしての機能しかなくなったペニスを丈二は刺激続け、

そして、ゆっくりとバイブレーターを後ろ、

そう、肛門の方へを移動させていった。

クニュクニュクニュ!!

バイブレーターの振動が成長していくヒダヒダを刺激し、

プッ!!

その中央で開いている穴からおびただしい粘液を吐き出し始めた。

初潮こそまだ来ていないが、しかし丈二の女性器は確実にその形を整え、

先日まであった彼の睾丸はいまは体の中へともぐり、

新たに卵巣としての機能へ切り替わりつつあった。

すでに丈二の肉体は男性ではなく女性になっていた。

けど、いまだ彼はそれには気づいていなかった。

無理は無い。

いま、丈二の環境の中には自分の容姿を客観的に見る事が出来る鏡というのが存在していなかった。

脱衣所にあった鏡は気づいたときには割れてしまったことを理由に取り外され、

また、それ以外に姿を映し出すようなものはことごとく取り払われてしまっていた。

一ヶ月、

二ヶ月、

いや、丈二が自分の姿を見なくなってそれ以上の月日が流れていた。

いったいいま自分がどんな姿をしているのか、

丈二はそのことを気にしながらもオナニーに明け暮れていた。

「うごわぁぁぁ!!」

プシュッ!!

10回近い潮を吹き上げて丈二のオナニーはようやくとまった。

「はぁはぁはぁ」

オナニー後のまどろみの中、

丈二はある幻を見ていた。

それはアメフトのユニフォームに身を包みプレーをしている自分に、

後ろからチァガールの衣装を身にまとった女性が襲い掛かると、

丈二の体を守るアメフトのユニフォームが見る見る萎んでいき、

瞬く間にプリーツのスカートがまぶしいチァガールのユニフォームに変わってしまった。

そして、ユニフォームが変わると丈二の体もそれに合わせるように変化していくと、

いつの間にかポニーテールの女性になってしまい、

ボンボンを振り、

声を張り上げて、

フィールドで闘う選手達を応援鼓舞するチァガールとなってしまった。

「違う!

 おっ俺は

 女じゃない!

 そんなことをする者じゃない。

 やめろ

 やめろ!

 俺は選手だ!!」

丈二は魘されるようにしてそう叫ぶが、

しかし、その体は男性と呼ぶには程遠いものになっていた。



「はいっ、

 行くわよ、

 準備はいい?」

スタジオに静香の声が響き渡ると、

「はいっ」

レオタード姿の丈二はステージの真ん中に立ち短く返事をした。

すると、音楽がスタジオ一杯に流れ

そのタイミングを取りながら、

「はいっ

 ナンバー7!」

静香が声を張り上げる。

すると、

タンッ!!

タイミングをつかみ丈二は元気良くジャンプをした。

ビュッ!

ロケットのように飛び上がると同時に丈二の視界は一気に上へと上っていき、

それを感じながら即座に左手を自分の腰に当てると

お腹を引き胸を突き出しながら

右の腿をグィッと引き上げると、

丈二は笑顔を見せながら右手を天井に向けて高く伸ばした。

「そう、いいわっ

 空に向かって突きあがっていく感じが出ているわよ」

足音を響かせて着地した丈二に静香はそう言って褒めると

「(はぁはぁ)ありがとうございます」

肩で息をしながら嬉しそうに返事をする。

「うんっ

 特にいまの笑顔、忘れないでね

 たまに表情が硬くなるときがあるから、
 
 笑顔を絶対に絶やさないこと、いいわね」

静香はそう注意をすると丈二の肩を叩いた。

「はいっ」

静香の言葉に丈二は返事をすると、

「じゃぁ続いてナンバー8、

 行くわよ!」

静香は声を張り上げた。

そして、音楽のタイミングに合わせて丈二は次々とそれらをこなしていくが、

しかし、大きく股を開いたその丈二の股間には盛り上がるようなペニスの影はなく、

変わりに一直線に伸びた縦溝の影がくっきりと浮かび上がっていた。



「はーぃ。

 藤堂さん、筋肉がどれだけついたか調べさせて」

静香のレッスンが終わった頃を見計らうように

ジムに入ってきた麗子は丈二に話しかけてくると、

「え?」

丈二は驚きながら振り返った。

「どうしたの?」

「いえ」

激しいレッスンのたためか、括っていた丈二の髪は胸一面に広がり

まるでペンキで塗ったかのように乳房を覆い隠し、

肌は浮かび上がった汗できらきらと輝いていた。

「ふふ、

 特訓だったようねぇ」

そんな丈二の姿を見ながら麗子はそう言うと、

「はぁ」

滴る汗を拭きながら丈二は頷く。

「じゃぁここに来て」

一台のベンチプレスの傍に立った麗子は

現在のセット状況を確認した後

ベンチプレスのフレームを軽く叩くと、

「はぃっ」

丈二は彼女の言われたとおり

ベンチプレスに腰掛けると横になり、

そして、それにセットされているバーベルに手を伸ばした。

「はーぃ、

 じゃぁこれを持ち上げてみて」

丈二の準備が終わったことを確認して麗子が声をあげると、

「くっ」

丈二は力を込めてバーベルを持ち上げてみたが、

しかし、丈二の目の前にあるバーベルはピクリとも動かなかった。

「そんな…(くぅぅ)」

丈二は驚くと再度力を込めるが、

しかし、幾度チャレンジしても結果は同じだった。

「駄目?

 じゃぁ、仕方がないわねぇ」

動かないバーベルに麗子はそう言うと、

「あぁ、宮本さん、

 これを調整してくれる?」

と様子を見ていた静香に再セットを依頼した。



「これでどうですか?」

静香の再セット後、

丈二はチャレンジするが、

しかし、それも持ち上げることが出来ず。

更なる再セット、

さらに次の再セットとセットを繰り返した後、

「くっ」

ガチャン!!

ようやく丈二はバーベルを持ち上げることが出来た。

「はぁ、やっとあがった…」

息を切らせながら安堵した表情で丈二はそう呟くが、

しかし、そのとき丈二が上げたウェイトはたったの30kgという重さであり、

かつては100kgの重さを軽々と持ち上げていた彼にとっては屈辱的な数字であった。

しかし、その数値は伏せられ丈二が知ることはなかった。



「え?これを?」

「そうよっ」

身体測定のあと、

麗子は丈二の前に一足の靴を差し出した。

「でっでも、これって…」

「えぇ、見ての通りハイヒールよ」

「それは判っています、

 何であたしがそれを履かなくては行けないんですか」

透き通るような声で踵の高さが5cmのハイヒールを履く意味を尋ねると、

「あらっ

 口ごたえするの?」

「いえっ

 そんな
 
 でも…」

麗子のキツメの言葉に丈二はシドロモドロになってしまった。

すると、

「いいでしょう、

 藤堂さん、あなたがハイヒールを履く意味を教えてあげます。
 
 ハイヒールを履くにはバランス感覚…
 
 特に細かい重心の移動が要求されます。
 
 このことの意味、わかる?」

「いえ?」

「そう、

 これは、あなたにエアロビクスを教えてくれている宮元さんの提案だったのですが、
 
 あなたは細かいバランス感覚がまだ研ぎ澄まされてないそうです。
 
 つまり、
 
 動きの大きい大技はこなせるけど、
 
 小技となると粗が見えてしまうってことです。

 それでは駄目…」

「はぁ…

 でっでも…」
 
「なんですか?」

「それが、アメフトとどういう関係があるのですか?」

麗子の話を聞いていた丈二はそのときいま自分に課せられているメニューについての疑問を始めて質問した。

「はじめはあたしの体調を整えるためと聞きましたし、

 その後、腰の調子を取り戻すためとも聞きました。
 
 でも…
 
 でも、あのように飛んだり跳ねたりすることがアメフトに必要なのでしょうか?
 
 あたしにはどうしてもそう思えません」

胸に手を当て丈二は降り積もった疑問を吹き飛ばすように麗子に気持ちをぶつけると、

「ふっ

 愚問ね」

麗子は丈二の質問をバッサリと切って捨ててしまった。

「愚問だなんて…」

麗子の言葉に丈二はショックを受けると、

「悪いけどあたしは忙しいの、

 それとも、あたしの言うことが聞けないの?」

冷たい視線を放ちながら麗子は丈二を見つめた。

すると、

「はっはい、

 判りました」

丈二は俯きながらそう返事をすると、

ハイヒールに足を通し静かに立ち上がった。

グィーン

立ち上がったとたん、

丈二の視界は一気に高くなる。

「あっ」

いきなり高くなった視線に丈二は驚くと、

「ふふ…

 いきなり5cmのヒールだものねぇ
 
 驚くのも無理はないか
 
 まぁそれを履いてバランスの特訓をするのね
 
 はい、行っていいわ」

不慣れなハイヒールを履きふらふらしている丈二を麗子は笑みを浮かべながらそう言うと、

「はっはい」

カツッ!

カツッ!

丈二はハイヒールを鳴らしながらジムを出て行った。

「うぅ…歩きにくい…」

ハイヒールを履いたために丈二の重心は前のめりになってしまい、

それを是正しようとして丈二の歩き方は自然とお尻を振るような歩き方になっていった。



つづく