風祭文庫・アスリートの館






「チアガール」
(第5話:快感)


作・風祭玲

Vol.448





シャァァァァァァ!!

シャワーノズルから噴出す熱いお湯が丈二の体を満遍なく洗い流していた。

「ふぅ」

大きく息を吐きながらシャワーを頭から被る丈二のシルエットが

シャワー室と脱衣所とを隔てるカーテンに

胸から突き出したふくらみと、

形良く盛り上がったヒップを映し出している。

「シャワーを浴びて来て」

翌朝、病室に入ってきた麗子は起きたばかりの丈二にそう告げるとシャワー室の場所を教えた。

「えぇ!!」

麗子の指示に丈二は文句を言うが、

「文句を言わない。

 熱いシャワーを浴びることは体調を整えるのに窮めて有効なのよ、

 さぁ、さっさと行ってくる」

まるで母親のように麗子は丈二を叩き出すと、

「あっゆっくり入ってくるのよ、

 朝食の用意をしていくからね」

診療ミスという引け目があるのか、

出て行く丈二に麗子は朝食の支度をしておくことを告げた。

「一応、悪いと思っているのかな?」

シャワーを浴びながら丈二はそう思うと、

「これくらいでいいか」

時間の頃合を計りシャワーを止めると、脱衣所へと戻っていった。

パサッ!!

用意してあったタオルに体をくるみながら

ふと横を見ると一枚の鏡が洗面台の正面に掛り、

そこには胸が膨らんだ丈二の姿を映し出していた。

「……」

自分の姿を映し出す鏡を見ながら丈二は鏡に寄っていくと、

ス…

無意識に自分の顎に手を当てるが、

しかし、

以前はそこにびっしりと生えていた髭はいまは一本もなく、

つるんとした感触のみが返ってくる。

「毎朝の髭剃りが鬱陶しかったけど、

 でも、いざ何もしなくてもいい…

 ていうのもなんか寂しいものだよなぁ…

 禿てきたおっさんの心境ってこんなものかな?」

髭の生えてこなくなった顎の感触を頭髪が薄くなった中年男性に例えながら丈二はそう思うと、

「クスッ」

っと小さく笑った。



「さてと…着替えは…」

シャワーを浴び終わった丈二が着替えを探し始めたとき、

カチャッ!

一人の女性が代えのタオルの山を抱えて脱衣所に入ってきた。

「え?」

「あら?」

22〜3歳前後だろうか、

白いチュニックとパンツ姿の彼女は丈二より年上の雰囲気を漂わせながら、

しかし丈二には構わずに作業を始めだした。

そんな彼女の姿に丈二は一瞬呆気にとられると、

「あっいやっ

 そのっ」

あわてて手にしていた濡れたタオルで自分の股間を隠すと場を取り繕うが、

「あっ

 おはようございまーす!」

その時になってようやく丈二の存在に気づいた彼女は彼の裸体には興味を示さずに元気良く挨拶をした。

「あっあのぅ…」

自分を無視して作業を続ける彼女に丈二は返事をすると、

「はい?」

明るい表情を見せながら彼女は振り向いた。

「いやっ

 そのぅ

 すみませんが1分ほど外に出てもらえませんか?

 それだけあれば着替えが終わりますので」

目の前に立つ彼女に丈二は申し訳なさそうに申し出ると、

「あぁ

 あたしは一向に構いませんが?」

彼女は丈二のことを気にしないと言う返事をする。

けど、

「はぁ…でも…」

なおも丈二が困惑した表情をすると、

「へぇぇ、

 最近の女の子にしては人の目に慣れないなんて珍しいわね」

彼女はそう言うと、

しげしげと丈二を眺めた。

「え?

 いやっ、

 あのぅ俺は”男”ですよ!

 藤堂丈二っ

 これでもP大でアメフトをしているんですよ」

と丈二は”男”を強調してそう言ってみるものの、

「はいはい」

女性は丈二のクレームを適当に流すような返事をし、

「バスローブはそこに入っていますよ」

とシャワー室の横にある棚を指差した。

「あっどっどうも」

彼女に指摘され、

丈二はあわててバスローブに腕を通すと、

「うふっ

 さっきのは冗談よ、

 あたしは、後藤紀和、

 ここでトレーナーをしているわ

 あなたのことは羽村先生から聞いています。

 恐らくこれから顔を会わせる機会が多くなると思うけどよろしくね」

と女性は自分の名前を名乗ると、

丈二に手を差し出した。

「はっはぁ

 よろしく」

紀和の勢いに押されるようにして丈二は彼女の手を握ると、

ギュッ!!

その顔とは裏腹に強い握力で丈二の手を握り締めた。

「イタッ」

予想以上に強い握力に思わず丈二が悲鳴を上げると、

「あっごめんなさい、

 ちょっと強く握ってしまったわね」

紀和はすかさず謝ると手を離そうとするが、

しかし、紀和のその態度が丈二のプライドに傷をつけた。

「なろっ!」

丈二は引き離そうとする彼女の手をお返しにと強く握り締める。

すると、

「あら?」

それに気づいた紀和も一瞬ニコリと笑うと、

返礼にと丈二の手を握り締めた。

ムギュッ!!

丈二と紀和の握力合戦が繰り広げられる。

けど、

以前なら確実に紀和の手を握りつぶしてしまうはずであった丈二の握力は普通の女の子程度に落ちていて、

「痛い!!」

ついに力負けをした丈二は甲高い叫び声を上げてしまった。

「ふふ…

 お転婆も程ほどにね」

丈二を負かした紀和は笑みを浮かべながらそう警告をすると、

「朝食準備はできてますよ」

と言い残して脱衣所から出て行った。

「なによっ

 この意地悪!」

閉じられたドアに向かって丈二はそう文句を言うと舌を出した。



「へ?

 これだけ?」

丈二が病室に戻ると、

ベッドから引き出されたテーブルが引き出され、

そしてその上に置かれた皿に盛り付けられた朝食に丈二は思わず釘付けになった。

そう、丈二の前に置かれた皿には浅い皿に盛り付けられたオートミールと

半分に割ったグレープフルーツ、

そして、一杯のお茶が置かれていた。

「そうよ、

 これがあなたのこれからの朝食よ」

呆気にとられている丈二に麗子はそう告げると、

「せっ先生、

 これでは体が持ちません!」

抗議するように丈二が声を上げる。

しかし、

「何を言っているの、

 これはちゃんと計算によって導き出された朝食なのよ、

 これからあなたに使う薬は食事に気をつけないと簡単に太ってしまうものなの。

 あなたもわかると思うけど、

 一度付いてしまった脂肪は簡単には消えてくれないわ、

 そして、ついた脂肪は体を重くし、運動の邪魔をする」

「はぁ…」

「あたしはあなたが薬によって醜く太ってしまうのを見たくないの、

 このこと判ってくれるよね」

「はぁ」

麗子の説得に丈二はため息混じりにうなづくと、

グゥ!!

鳴り出したお腹を恥ずかしそうに隠しながら丈二は朝食を食べ始めた。

しかし、丼飯一杯を平らげていた丈二の胃にはこの食事はあまりにも少なく、

汁一つ残さずにすべてを平らげてしまってもその空腹感を癒すことは出来なかった。



「いまはキツイけど

 そのうち、慣れるわ

 さて、着替えね…」

食事後、麗子は丈二にそう言いながら

「そこのドレッサーに着替えが入っているわ」

と指示をすると、

「この中ですか?」

丈二はドレッサーの引き出しを開けた。

ドレッサーには3つの引き出しがあり、

丈二が開けた引き出しには1ダースほどもある女性の下着のセットが備えられていた。

「え?

 女物?」

そのうちの一つを取り出して丈二が驚くと、

「あぁ、ごめんね…

 うち、婦人科専門なので女物しか用意してないのよ、

 でも、藤堂君はバストが膨らんでいるし、

 それに体の線も女性のラインになっているから、

 問題はないと思うわ、

 大丈夫よ、

 藤堂君が下着女装をしているだなんて、

 大学のみんなには言わないから」

「先生!!」

いらずらっぽく麗子がそういうと、

丈二は抗議の声を張り上げた。

「とりあえず着てみて、

 サイズは問題ないと思うから…」

「はぁ」

麗子に催促されるように丈二はバスローブを右捨てると淡い紫のパンティに足を通した。

スルッ

すっかり体毛が薄くなってしまった、丈二の両足をパンティはすべるように駆け上がり、

そして、ピタッと股間にフィットする。

「あっ」

初めて感じる無駄なく股間を覆い尽された感覚に丈二は思わず声を上げると、

「あら、感じちゃった?

 肌も敏感になっているのねぇ」

麗子は感心しながらそうつぶやくと、

「じゃぁブラもつけてみて、

 いまバストを垂らしてしまうと体が元に戻ったとき悲惨よぉ

 伸びてしまった肌は元に戻らないからね」

と丈二を脅す。

「えぇ!!」

麗子の脅しに丈二は驚くと、

ぎこちない仕草をしながらパンティを同じ色のブラを胸につけた。

「あら

 いい感じじゃない」

ブラに抱きかかえられるように形良く持ち上げられた丈二のバストを見ながら麗子は感想を言うと、

「先生、

 感心してないで、

 俺のこれ、

 ちゃんと元に戻してくださいよ」

と丈二は自分のバストを指差し麗子に文句を言う、

「はいはい

 判っていますよ」

願を掛けるような丈二のその表情に麗子は笑みを浮かべ返事をする。

やがて、丈二が女性物の下着をつけ終えると

「上はこれを着てね」

と言いながら一着のトレーナーを渡した。

「で、ほかに何が入ってるんだ」

着替え終わった丈二が再びドレッサーを漁り始めると、

「ん?なにこれ?」

引き出しを漁る丈二の指に円筒形をしたプラスチック製の物体がぶつかり

そして、それを鷲づかみにして取り出してみると、

「うわぁぁ!!

 なんだこれは!!」

それを手にした丈二は悲鳴を上げた。

「あぁそれ?」

悲鳴を上げる丈二の姿に麗子はたじろぎもせず余裕の素振りを見せると、

「はっ羽村先生!!

 これはいったいなんですか!!」

血相を変えて丈二は麗子に迫った。

「あはは、ちょっと刺激が強かったかなぁ」

悪びれずに麗子がそう言ってのける物とは

長さが20cm程、直径が4cm以上もある男性器を模造した大人のおもちゃ

そうバイブレータだった。

「いっいったい、

 なんでこれがこんなところに入っているのですか?」

バイブレーターを指差して丈二が抗議すると、

「使うから入れたのよ」

そっけなく麗子は訳を説明する。

「使うからって…

 先生、俺はオカマじゃありませんよ」

「そうねぇ」

「そうねぇって

 あのぅ!!」

「まぁいいじゃないの、

 女の子の部屋には一つや二つ転がっているものよ」

「先生、茶化さないでください」

「ふっ、

 まったく世話が焼けるわねぇ」

なおも抗議してくる丈二を麗子はやれやれという表情でそういうと、

「あのね、

 藤堂君、

 女の子の下着ってまれに被れる人がいるのよ、

 もし、いま見につけている下着で被れたらあなたはどうする?」

「そりゃぁ掻きますよ

 ガシガシって」

「それをしちゃ駄目よ」

「はぁ?」

「忘れたの?

 いまの藤堂君の肌は女の子と同じなのよ、

 以前と同じ感覚で無理をして掻くと、

 肌が簡単に崩れてしまうわ、

 それで、その痒みを紛らわせてもらおうと思って用意したのよ」

「でも、それならもっと別のがあったでしょう」

麗子の説明に半分納得をしながら、

嫌そうにバイブレーターを眺めると、

「まぁ、

 その辺はご愛嬌ってことよ、

 こんなでっかいバイブレーターに触れるなんて機会、

 そう滅多にないわよぉ、

 結婚しても彼女に自慢できるわ」

「そんなこと自慢にはなりません!!」

「まぁいずれ使う日が来ると思うから、

 そのときまで引き出しにしまってきなさい」

「誰が!!」

麗子の指示を受けるまでもなく、

丈二は手にしていた特大のバイブレータをドレッサーの空いている引き出しに放り込むと、

まるで封印するかのごとく閉めてしまった。



「さて、じゃぁ

 とりあえず、

 このクリニックを案内しましょうか?」

丈二の着替えが終わり、一息ついたころ、

麗子はそう丈二に話しかけた。

「あたしにとっては藤堂君がここに入院してから4日が経っているけど、

 でも、藤堂君にはまだ1日も経ってないんだよねぇ」

腰を上げ、白衣のポケットに手を入れながら麗子は丈二にそう言うと、

「えっえぇ…」

麗子の後に続く丈二はそう返事をする。

「この向こうよ」

病室を出た麗子と丈二が歩く廊下の壁はクリーム色のクロスが張られ、

そのクロスには上品で優雅なデザインが施されていた。

また、等間隔にフランス印象派の絵が飾られ、

磨かれた堅木が敷き詰められた床とあいまって、

クリニックというよりどこかのオフィスの廊下を歩いているような錯覚に丈二は陥っていた。

やがて、

「うちって女性のスポーツ選手も来るからこういう部屋も用意してあるのよ」

と麗子は紹介をしながらドアを開けると、

そこにジム&運動スタジオとして整備された天井の高い部屋に案内された。

「はぁぁぁ

 うちの合宿所とはえらい違いだ…」

様々なトレーニング機器や運動マットを眺めながら

整然と整えられた部屋に丈二が感心していると

壁のすそを這うようにバレエで使うバーが取り付けられているのに気がついた。

「へぇぇぇ…

 あんなものまで…

(でもこれだけ揃っていれば、

 俺の筋肉が元に戻るのも早いだろうなぁ)」

丈二はこれから使うであろうトレーニング機器を一つ一つ確かめるように手を置きながらそう考えた。



「で、ここが、あたしの部屋よ」

そう言って案内されたのは麗子の部屋に二人が入ると、

「あらっ」

すでに部屋にはあの後藤紀和が来客用の椅子に座り、

麗子の帰りを待っていた。

「あぁ後藤さん。

 ちょうどいいわ、

 紹介するね、

 この人が後藤…」

と麗子が紀和の照会をしようとすると、

「あぁ先ほどはどうも…」

丈二は紀和を睨み付ける様にしながら挨拶をする。

そして、

「どうも、こちらこそ…」

丈二の挑発を受け流すように紀和が頭を下げると、

「あら?

 すでに会っていたの?」

と麗子は驚き、相対する二人を見た。



「えぇ!!

 そんなことをしたの?」

麗子の部屋に事情を知った彼女の声が響き渡ると、

「まぁ」

「そうね」

丈二と紀和は睨み合いながら返事をした。

すると、

「さて、困ったわねぇ…」

睨み合い二人の様子に麗子は困惑した顔になると、

「あたしは構いませんけど…」

と紀和は返事をする。

しかし、

「俺は嫌ですよ

 この人と一緒にトレーニングをするのは…」

麗子に先手を打たれる前に丈二はそう言い切った。

「あら、まだ何も言っていないのに」

先手を打たれた麗子は残念そうにそう言うと、

「彼女は信頼を置けるトレーナーなのよ、

 彼女の手によってこれまで何人もの運動選手が立ち直ったわ、

 そりゃぁ、

 藤堂君が受けた屈辱が許せないのもわかるけど、

 でも…

 いまの藤堂君って本来の力の数分の一しか出せないんでしょう?

 その辺、ちょっと考えて欲しいのよ」

と丈二の耳元で囁く。

「そりゃぁそうですが」

なおも丈二が不満そうにすると、

「じゃぁ、こうしましょう、

 藤堂君が本来の力を取り戻したとき、

 もう一度勝負する。と言うのはどぅ?」

「え?」

麗子の提案に丈二の表情が動くと、

「いいわっ

 そのときにもぅ一度勝負しましょう

 今度はマジの勝負でね」

麗子の言葉に合わせるように紀和はそう返事をした。

「ふっ

 いいだろう、

 その小生意気な手を握りつぶしてやるからな」

「あらっ

 それを言うなら、

 そのかわいらしい声を何とかすることね」

「言ったな」

「言ったわよ」

声だけでは女同士の言い合いかと思える挑発を繰り返した後、

「(パンパン)

 はいはい、

 続きは藤堂君の体が元に戻ったところでということで、

 クリニックの紹介は終わり、

 藤堂君、

 病室に戻っていいわよ」

手を叩きながら麗子は場をお開きにすると、

「首根っこ洗って待ってろよ」

丈二はそういい残して部屋を後にした。



こうして1日が過ぎ、

「で、これを飲めってか?」

物足りない夕食を済ませた丈二は麗子から渡された新しい薬を手に取ると、

「男に戻るための、その1!」

と自分に言い聞かせるように気合を入れると薬を飲み込んだ。

「うげぇ、

 相変わらず変な味だなぁ」

薬を飲み終わったあと、

丈二は思わず薬の感想を言うと、

「さて、シャワーでも浴びますか、

 浴びないと羽村先生がうるさいしなぁ」

そう文句を言いながら、

ドレッサーから新しい下着を取り出すとシャワー室へと向かっていった。

「えーと…

 ボディソープに

 シャンプーに

 リンス?

 めんどくせーな」

朝、行った時には気がつかなかったが、

シャワー室にはそう書かれた3つの容器が壁にマウントされていて、

それぞれに赤・黄色・青のラベルが張ってあった。

「えっと、どれを使えはいいんだ?

 まったく、普通に石鹸を置いておけばいいのに…

 ったくぅ

 シャンプーは頭を洗うやつだから、

 ボディと書いてあるこれが石鹸のことだな…」

丈二はそう当たりをつけると

ボディソープと書かれた容器を手に取り、そして搾り出した。

フワッ

容器から液体が出たとたん、

シャワー室に花の香りが満ち溢れ、

丈二はその香りに包まれながらあわ立てた。

「おっと、

 優しくって言ったっけな」

ボディソープを泡立て体を洗い始めた丈二は麗子の言いつけを守りながら、

つめを立てずに指の肌で体を洗う。

そして、やや温めのシャワーで泡を流し終わると、

泡の中から、やわらかい艶を放つ肌が姿を現した。

「へぇぇぇ…」

もしも、このような肌を持つ女性がそこに立っていたら、

間違いなく押し倒してしまうな…と思いながら丈二は自分の肌をそっとなでてみると、

ゾクッ!!

いい様もない快感が丈二の肌の上を走っていった。

「あんっ」

思いもよらない快感に丈二は声を上げ、

そして、その場に腰を落とすと、

「すっすげぇ

 気持ちいい…」

っと自分の体を抱きしめながら喘いだ。

そして、しばらくの間その感覚に弄ばれたのち、

「そうだ、髪を洗わないと…」

丈二はそうつぶやくと、

今度はシャンプーを搾り出すと、

細くなった髪を丁寧に洗い、

そして、それをシャワーで流した後、

麗子に言いつけどおりこれまで使ったことがなかったリンスを使ってみた。

「ふぅ…」

1時間近くかかってバスローブ姿の丈二がシャワー室から出てくると、

さわやかなラベンダーの香りを放つ洗い髪を拭きながら自分の病室へと向かい、

そのまま椅子に座った。

「へぇぇ…」

椅子に座った丈二はまるで絹を思わせる柔軟性を見せる自分の肌の感触を楽しむと、

そっと、やわらかい表情を見せる腹の上に手を這わせた。

そのとたん。

ジーン…

丈二のペニスからオルガに似た感覚が走ると、

「くはぁ」

丈二の口から喘ぐ声が漏れ始めた。

そして、そっと萎縮してしまったペニスを摘み上げると、

優しくそれをしごき始める。

「あっ
 
 あはっ

 うっ」

胸に手を入れ、膨らみを増した乳房を揉みながら丈二は喘ぎ声をかみ殺し肩で息をする。

そして、ペニスと乳首より漣のような快感が全身に広がるを感じながら、

丈二はペニスをしごき続け、体を盛んに揺らす。

「あっいぃ…

 くぅ…

 ほっ欲しい…

 男のオチンチンがほ・し・い」

快感に翻弄される丈二の頭の中にはいつの間にか、

勃起しそそりたつペニスの姿が浮かび上がり、

丈二はペニスの幻を追いかけていた。

「あぁ、

 入れて…

 あたしの中に…」

すっかり上気してしまった丈二はそのベッドの上に倒れれると、

激しくペニスを攻めた。

しかし、

「痛い!!」

あまりにも激しくペニスを扱いてしまったために、

敏感になっていたペニスが激痛を発すると、

丈二は思わず飛び上がってしまった。

「そんな…

 あぁ…

 だめっ

 体が

 体が燃えるよぉ」

激痛でペニスが扱けなくなった丈二だが、

しかし、男を求め始めた彼女の欲望は尽きることがなかった。

そして、それは彼の頭にある考えが沸き起こった。

「そうだ、

 あの中に…」

ヨロヨロと起き上がった丈二はドレッサーにしがみつくと、

昼間封印したあの引き出しを力いっぱい開いて見せた。

すると、

ゴロン!!

あの巨大なバイブレータが目の前に躍り出てくると、

「あぁ

 こっこれよ」

丈二はむさぼるようにバイブレータを取り出しスイッチを入れた。

ブィィィン…

スイッチが入ったとたん、

バイブレーターは鈍い低い音を奏でながら小刻みに振動を始める。

すると丈二は

「あっあぁ…」

喜びに満ち溢れるようにバイブレーターを頬張りながら、

ベッドの上に倒れこむと、

プルンと飛び出した乳房を揉みはじめた。

「あぁ、

 いぃ

 いいよぉ」

丈二は快感におぼれながら、バイブレーターを吐き出すと、

今度は唾液で濡れたそれをペニスに押し当てた。

その途端、

「あひっ!!!」

丈二の悲鳴が部屋中に響き渡ると、

「うごわぁぁぁぁ!!」

続いて絶叫に違い喘ぎ声が響き渡った。

「(すげぇぇぇ…

  何て気持ちがいいんだぁ

  あぁ、なんか

  あぁ

  いっいぃ

  飛んじゃう

  飛んじゃうぅぅぅ)」

硬くなった乳首を思いっきり抓りながら、

まるで津波のように押し寄せてきた快感に

ついに丈二は女の絶頂を味わってしまった。

そして、

「あぅぅぅぅ!!」

丈二が絶頂を味わうのと同時に、

ピッ!!

彼のペニスの下に小さな穴が開き、

ピュッ!!

っと透明な液体を吹き上げた。

丈二がこの穴の存在に気づくのはまだ先のことだが、

しかし、これは丈二の体の中で成長してきた膣がついに外に向かって口を開いた瞬間でもあった。




「ふふ…

 どう、女の絶頂は?

 男の射精感よりも破滅的でしょう?

 これを味わってしまった以上、

 あなたは男には戻れないわ、

 そう、このクリニックであなたは女の子になっていくのよ、

 そして…

 恵美…

 もうすぐよ、あなたが復習する日は…」

ビデオカメラが映し出す丈二の痴態を眺めながら麗子はそうつぶやくと、

冷たい視線で丈二を見つめた。



つづく