風祭文庫・アスリートの館






「チアガール」
(第3話:治療)


作・風祭玲

Vol.438





朝、来月に控えた交流試合のメンバーが発表されると、

合宿所の食堂にそのメンバー表が張り出された。

そして、そのメンバー表を悠然とした態度で丈二が眺めた途端、

見る見るその顔色が変わって行くと、

「なんだってぇ?

 おいっそれはどういうことだ?」

と叫びながら傍に居た2年の胸倉を掴み上げる。

「いっいや、あのう…

 僕に言われても」

突然のことに彼は怯えながらシドロモドロの返事をすると、

「えぇいっ

 お前じゃ話にならない」

丈二はその2年を放り出し、

ドスドスドス!!

と足を響かせながら監督である新島の部屋へと向かっていくと、

「監督!!

 これはどういうことですか!!」

部屋のドアを開けると同時に丈二は怒鳴り込でいった。



「なんだ!?

 騒々しい!」

机に向かい書類に目を通していたP大アメフト部の監督である新島は

その体には似合わない大声で返事をすると、

「監督っ

 納得がいきません!!」

丈二は新島の傍に駆け寄り、

その机を両手で思いっきり叩いた。

「納得がいかない?

 なにが?」

丈二の剣幕に動ぜずに新島が言葉を返すと、

「来月の試合です!。

 何で私がクォータバックを外されたのですかっ」

と丈二は今度の試合でクォータバックから外された事を抗議をした。

「あぁその事か」

それを聞いた新島は切り捨てるように返事をすると丈二に背を向ける。

「なっ」

彼の対応に丈二はショックを受けると、

「監督!!」

と言い寄るが、

「やかましい!!

 耳元で大声を上げるなっ

 お前の声は聞こえているぞ」

耳を塞ぎながら新島が文句を言うと、

「なんでわたしをクォータバックから外したのか、

 納得のいく説明をしてください」

額に血管を浮かべながら丈二は自分をクォータバックから外した訳を新島に正した。

すると、

「ったくぅ…」

新島は丈二に文句があるように舌打ちをすると、

スッ

手に持っていたボールペンで丈二を指差しながら、

「藤堂っ、

 お前…羽村先生の検診を受けていないだろう」

と丈二が麗子の検診を最近受けていない事を指摘した。

「え?」

新島の指摘に丈二は言葉に一瞬つまり、

そしてスグに、

「ちょちょっと待ってください、監督

 確かに羽村…先生の検診は受けていませんが、
 
 これには訳があるのです」

と身を乗り出して弁明を始めた。

「ほぅ…訳とは…」

丈二の訴えに眼光鋭く新島は聞き返すと、

「あの羽村…先生は確かに色々調べてくれますが、

 でも、
 
 調べ方が変なのですよ」

「変?」

「えぇ!!

 寝台に私を縛り付けたり、
 
 それに…
 
 その…お尻の穴の中に指を入れたり
 
 ナニを無理やり扱いたりと

 もぅ無茶苦茶なんですよ」

事務机に両手を乗せて丈二はそう抗議する。

すると、

「ほぅ…」

新島は驚いた顔をしたのち、

「で、それの何が問題なんだ?」

と聞き返してきた。

「もっ問題って

 十分に問題でしょう!!
 
 こんな変な事をされれば誰でも嫌がります」

「そうか?」

「え?」

「羽村先生の恩師には私も現役時代色々と世話になってな、

 私も最初の頃はその診察方法に首を傾げたものだが、

 しかし、その一つ一つにはちゃんとした理由があり、
 
 そのお陰で私は現役生活を全うし、
 
 こうして、お前達の指導をする事ができた。

 まぁ、彼の教え子がすることだ、
 
 それなりの訳があるだろうし、
 
 そ・れ・に、
 
 チームの要であるクォーターバックを任されている男が
 
 医者の診察方法にいちいち文句を言うなっ」

「でっでも」

「判ったら羽村先生のところに行って来い。

 これは監督命令だ。

 従わなければ、その次の試合もお前を外すぞ!!」

なおも食い下がろうとする丈二に新島はそう怒鳴ると、

「はいっ」

丈二は渋々返事をして監督室を去っていった。



「あら、お久しぶりね」

診察室のドアを開けた丈二に麗子はそう挨拶をすると、

「………」

丈二は何も返事をせずにそのまままっすぐ玲子の前に向かい、

空いている丸椅子にドカッと腰を下ろした。

そして、

「先生、監督にどんな告げ口をしたのかは聞かないが、

 先生の検診は絶対に受けないからな」

と膨れっ面をしながらそう決意を告げると、

「あら、

 あの程度のことで音を上げたの、
 
 大したこと無いのね」
 
と麗子は笑みを浮かべながら返事をした。

「なにっ」

それを聞いた丈二は思わず麗子を掴み上げ

「言っておくが、

 俺はお前なんかに見てもらうほど、
 
 身体を壊してないぞ!!」

と怒鳴った。

しかし、

「本当に?」

麗子は丈二の声に怯えることなく余裕でそう聞き返してくると、

「あぁ、どこも悪くないし、

 絶好調だ!!」

と丈二はそう言い切った。

「あら、そうかしら?」

丈二の台詞に麗子はそう返すと、

徐に立ち上がり、

そして、丈二の背後に回ると、

その背中を見ながら

「確かに怖いくらいに鍛え上げているけど、

 でもね、
 
 それが慢心の元、
 
 ほらっ」

と言いながら後ろから丈二の腕を持ち上げると

グィ

っと体全体を捻って見せた。

その途端、

「痛てててて!!」

丈二は大声で悲鳴を上げると、

「ほら見なさい、

 この程度で悲鳴を上げるなんて、
 
 体の筋肉が酷使されて至る所で悲鳴を上げているわよ、
 
 貴方がいまだした声は筋肉の悲鳴よ」

「なんで、それが判る?」

「えぇ…

 あたしこれでも整体の免許も持っているのよ、
 
 だから、初めて貴方を一目見たとき
 
 その体が極めて歪な姿になっていることがわかったわ。

 この間の検診は貴方の筋肉の動きが見たかったらなんだけどね…
 
 でも、貴方が迷惑なら私のお節介はここでおしまい、
 
 いいわ、帰っても」

突き放したように麗子はそう言うと、

「ちょっと待ってくれ」

丈二は麗子を引き止めた。

「なに?」

「羽村先生…

 俺が腰を痛めていること、知っていたのか?」

真顔で丈二はそう尋ねると、

「えぇ…

 周囲には騙し通しているみたいだけどね、
 
 でも、いまのままではあと3年で貴方はアメフトをプレーできる身体でなくなるわね」

腕を組みながら麗子はそう答えた。

「そうか、

 あと3年か…」
 
麗子の言葉に丈二はそう呟きながら神妙な表情になると、

「最も、あたしが診てあげれば、

 あなたの腰が壊れる時間を10年
 
 いや、15年程度まで引き伸ばす事は出来るわ」
 
「え?

 それは本当か?」

麗子の言葉に丈二は闇に差し込んだ光を感じた。

「あら、なにその顔は?

 あたしの診察はいやじゃないの?」

「そっそれは…」

「ふふっ

 まぁいいわ、
 
 これからはあたしの言う事を絶対に聞く。
 
 そう誓ってくれれば、
 
 さっきまでのことは水に流してあげるわ」

「本当か先生?」

「えぇあたしは誰かさんと違って心が広いのよ」

「判った

 判ったよ、
 
 さっきの事はわびる。
 
 だから、
 
 俺の腰の事は監督には黙って直してくれ」

「はいはい」

そう懇願する丈二を見下ろしながら麗子の口が小さく笑った。
 


「じゃぁ、

 これを毎日、朝食と夕食の後に飲んで」

そう言いながら麗子は丈二の手に錠剤が入った瓶を手渡した。

「これは?」

瓶を眺めながら丈二が尋ねると、

「筋肉をそぎ落とす薬よ」

「え?」

それに答えた麗子の言葉を聞いた途端、丈二の顔がこわばっていく。

「あぁ、そんなに硬くならないで、

 藤堂君はこれまで体のバランスを考えて筋肉を鍛えてないでしょう、
 
 だから大して使わない筋肉も太らせちゃって、

 その為に上半身が必要以上に重くなってしまって腰を痛めているのよ。

 だから、必要な筋肉以外はその薬で捨ててもらう事にするわ、
 
 少しはスリムにならなくっちゃ
 
 居るでしょう?
 
 スリムだけど力がある奴も」

麗子は丈二にそう言い聞かせながら肩を叩くと、

「はぁ」

丈二は戸惑いを隠せない返事をした。



そして、その日からひと月が過ぎた…

丈二は麗子の言いつけ通り、手渡された薬を飲み続け、

また毎週月曜日と木曜日に麗子から特別の診察を受けていた。

「うっ」

シュッ!!

いつものように直腸検診を受けていた丈二だったが、

しかし、その日はいつもと勝手が違い

麗子の指が肛門に侵入をした途端、

体の中を炎が燃え上がるるような錯覚に囚われ、

その結果、ペニスを扱くことなく射精をしてしまったのだった。

「あらっ

 どうしたの」

前触れもなく射精をしてしまった丈二に麗子はやさしく声と掛けると、

「………」

丈二は顔を真っ赤にして横を向く、

そして、

「せっせんせいよ、

 実は最近、
 
 ちょっと体の様子が変なんだよ」

と呟いた。

「変?

 変って?」

丈二の言葉に麗子が聞き返すと、

「あっあのさ、

 なんか、こう
 
 ちょっと触られただけで
 
 なんて言ったらいいのかなぇ
 
 簡単に言えば感じてしまうんだよ、
 
 この薬を飲みだしてからなんだけど…」

丈二は最近出てきた症状を麗子に訴える。

「あぁ

 それは、ただの副作用よ」
 
「副作用?

 でっでも」
 
「気にする事ないわ

 男でしょう、
 
 少しすれば慣れてくるから大丈夫よ
 
 うん、
 
 最近だいぶ筋肉が落ちてきたわね」

麗子は丈二の体調不調の原因をそう告げると、

以前より細くなった丈二の身体を見つめた。

「えぇ…」

起き上がった丈二は精液をふき取りながらそう返事をすると、

「でも、先生、

 筋力もちょっと落ちてきているみたいですが、
 
 大丈夫ですか?」

と聞き返した。

「あぁ、

 大したことは無いわ、
 
 腰の痛みはどう?」

「はぁ、それは

 少し和らいだような感じがします」

「そう、それは良かったわ

 この調子で直していこうね」

麗子はそう言うと丈二の肩に手を置いた。



「ねぇ…」

「なに?」

その数日後…

丈二は一人の女性を抱いていた。

彼女の名前は三嶋理沙、

丈二にとって20人目となる女性だった。

長いキスをした後、

ふと尋ねた理沙に丈二は返事をすると、

「ねぇ丈二っ

 丈二の肌ってこんなに柔らかったっけ?」

理沙はそういながら丈二の胸の上を指を走らせていく、

「(あっ)」

ゾクっ

言いようもない快感に丈二は思わず身体をよじると、

「え?

 なに?
 
 感じちゃったの?
 
 変なのぉ
 
 これくらいで感じるだなんて」

理沙は軽く笑いながら丈二の肌の上を乱暴に指を走らせた。

「おっ

 おいっ
 
 やめろよっ」

丈二はそう言いながら理沙の腕を押させると、

「あはは

 ごめんね。

 ねぇ、

 ひと月以上もご無沙汰だったんだもん。
 
 これくらいの意地悪してもいいじゃない」

いたずらっ子のように理沙はそう言うと再びキスをした。

キスをしながら丈二は理沙の乳房を揉み始め、

そしてその真ん中で硬く締まっている乳首を抓り上げる。

「んっ」

それに理沙は敏感に反応すると、

お返しにと丈二の胸に手を這わせると、

彼の乳首を抓り始めた。

その瞬間、

ビクッ

丈二の体の中を電撃が走り抜けていった。

「あっ」

その感覚に丈二は思わず声を漏らすと、

理沙を抱きしめ、

そのままベッドの上に倒れこんだ。

「ちゅっ」

理沙は丈二の乳首を口に含み、

そして、舌で彼の乳首を転がし始める。

「あっあぁ…」

味わった事のない快感に丈二は身体をよじり、

そしてあえぎ声を上げ始めた。

「くすっ」

それを見た理沙は小さく笑うと、

丈二の体の上を舌を這わせながらゆっくりと下に向かって移動し、

股間で硬く勃起している彼のペニスを口に含んだ。

そして、

「あぁ!!」

丈二のうめき声が一際高く響くと同時に

シュッ

硬く勃起していた丈二のペニスは理沙の口の中に白濁した精液を吹き上げてしまった。

「もごっ」

いきなりの射精に理沙は驚き、

そして

ゴクリ…

と精液を飲み干した後、

「ぷぅ…

 ねぇ、もぅ出しちゃったの」

と不満そうに呟いた。

「あっ

 あぁすまん、
 
 久々だったのでつい…」

丈二は申し訳なさそうに理沙に謝ると、

「うふっ

 そんなにあたしのフェラ感じたの?
 
 嬉しいっ」

理沙は喜びながら、

「じゃぁ今度はあたしにして…」

と言いながら丈二の前で股を開いた。

「いいのか?

 よがり死んでも知らないぞ」

そんな理沙に丈二は脅しをかけるようにそう言うと、

復活したペニスを勃たせながら理沙を抱きしめ、

その首筋に舌を這わせた。



「2年!

 29!」

フィールドに丈二の声が響き渡ると、

ザザザザザ!!!

ショルダーを着込み完全武装状態のアメフト選手達が

決められたフォーメーションに従ってフィールド内を一斉に移動していく、

そしてその中から丈二が飛び出すと先頭を切って駆け出す。

丈二のランニングバック・プレーは綺麗なリズムを刻み、

またパス捌きのタイミングは常に安定をしていた。

「おいっ、

 1年っ
 
 いまのプレーを頭に叩き込んでおけよっ
 
 レギュラーに入りたければあれくらいの事をやってのけろ、
 
 それと、高村っ
 
 クォーターバックを狙うのなら藤堂を越えるプレーをして見せるんだな」

監督の新島は横一列になって丈二たちのプレーを見ている1年にそう言うと、

「はいっ」

まだ傷や汚れの少ないショルダーに身を固めた1年から威勢のいい返事が響いた。

ザザザザザ…

「よっしゃっ」

矢のように飛び出していった丈二が3つ目のタッチダウンを決めると、

「おぉ…」

見学の1年からどよめきが上がる。

ところが、

「よーし、次ぃぃ…ぃ」

タッチダウンを決めて立ち上がった丈二が次の指示を出そうと声を張り上げたとき

突然その声はうわずり、

かん高いソプラノのような声が響き渡った。

「え?」

響き渡ったその声にフィールド内の選手達は驚き、

そして、その場に次々と立ち止まっていった。

しかしその様子を見た丈二は飛び上がりながら、

「なにをしている、

 立ち止まるなっ
 
 動け!
 
 走れ!
 
 走るんだ!!」

と叫び続けるが、

けど、丈二の声はまるで少女が叫んでいるような声となって響き渡っていた。

「くっそうどうなっているんだ…」

上ずってしまった声を元に戻そうと、

丈二は幾度も咳払いをしながらフィールドから離れ、

フィールドの隅で用意してあった飲料に手を伸ばすと、

それを一気に飲み干し、つばを吐いた。

「あっあぁ〜

 くっそう、どうなってんだ」

何度も発声練習をする丈二に

「よう、藤堂っ

 どうしたんだ?

 急に女みたいな声を出して」

同じ3年の西島が声をかけると、

「さぁな、

 俺にも何かなんだか…

 風邪でもひいたのかなぁ」

丈二は肩をすくめながらそう返事をし、

「うんっ

 あっあぁぁぁぁぁ
 
 ゴホゴホ」

可能な限り男の声を出そうと声を絞ってみるが、

しかし、その声は男の声を模倣しようとしている少女のような声色となって響き渡っていた。



それから数日後…

合宿所を抜け出した丈二は都心にあるホテルの一室に居た。

彼がいまここに居るのは無論、監督や仲間達には秘密であり、

また、彼の女友達も丈二がここに居ることを知るものは居なかった。

「さてと…」

部屋に通された丈二はベッドに腰を下ろすと、

駅からここに来る途中で手に入れたピンクチラシを片手に電話をかける。

「あっもしもし…」

部屋の中に女性を思わせる丈二の声が響き渡ると、

「はいっ、ありがとうございます!!」

受話器の向こうから軽快な音楽と共に元気のいい受付の男性の声が響き渡った。

「あっ

 あのぅ…実は…」

デリヘル嬢など呼んだことが無かった丈二にとって

久しぶりに味わう緊張した気持ちでデリヘル嬢の指名と派遣を依頼すると、

『あっあのぅ…

 失礼ですが、
 
 女の子同士のプレイを希望なさるのなら

 ご氏名の由起子ちゃんはなくて…』

と受付の男性は丈二が指名した女性に難色を示した。

すると、

「おいっ(ムカッ)

 俺は男だ!!
 
 つべこべ言わずに由起子をこっちによこせ、
 
 金はちゃんと払う!!
 
 場所は××ホテル303号室!」

乱暴に丈二はそう叫ぶと電話を切ってしまった。

「ったくぅ…

 どいつもこいつも俺を女扱いしやがって」

苛立ちをぶつけるようにして丈二は冷蔵庫からビールを取り出すと、

それをコップには注がず、

そのまま瓶に口をつけ一気に飲み始めた。

しかし、ものの2・3回飲んだだけで

「ぷはぁ」

丈二は瓶から口は離すと、

「うっ」

思わず口を押さえた。

「なんだ?

 ビールごときで…」

こみ上げてくる吐き気に丈二は以前よりアルコールに弱くなっている自分に気づくと、

「えぇいっ

 とにかくシャワーだ」

と言いながら服を脱ぎ捨てシャワーを浴び始めた。



「ふぅ…」

ノズルから湯気を上げて噴出すお湯に体を洗っていると、

ゾクゥ…

指が自分の肌に触れるたびに言いようも無い快感が肌の上を走り、

またお湯に濡れる肌も以前と比べてキメが細かくなったような気もした。

「………」

そんな自分の体の変化に丈二は無口で黙々と体を洗い続け、

そして、何かの拍子で胸の乳首に指が当たった瞬間、

「あっ!」

乳首から湧き出すように出てきた痛痒い感覚に丈二は思わず喘ぎ声を上げてしまった。

「なんだ…

 胸に何かかくっついているような…」

プックリと膨れ薄いピンク色に染まる自分の乳首に丈二は戸惑っていた。

程なくして体を拭きながら丈二がシャワー室から出てくると、

コンコン!!

部屋のドアがノックされた。

「んっ

 来たか」

そのノックがデリヘル嬢のモノであることに丈二は確信をもってドアを開けると、

「あっおっおはようございます」

という声とともに白のワンピース姿の女性が一人立っていた。

「えっと…由起子ちゃん?」

バスローブを身に着けた丈二が彼女を指差してそう尋ねると、

「はっはいっ

 よろしくお願いします」

彼女・由起子はそう返事をして頭を下げる。



「さて、じゃぁやろうか」

携帯電話で店に報告し終えた由起子に向かって丈二はそう言うと、

バスローブを取ってベッドの上に横になる。

「はいっ

 では」

由起子はイソイソと服を脱ぎ、

そして、丈二の待つベッドに向かうと、

「ねぇ、君…

 まだこの商売を始めてあんまり経ってないね」

と言いながら由起子の肩甲骨の後ろまで伸びた髪に触れながら尋ねた。

「あっ判りますか?」

「あははは…

 判るとも」
 
上機嫌で丈二はそう返事をしたのち長いキスをすると、

そのままベッドの上で激しく愛撫を始めた。

「うっうんっ」

「うぅ…」

二人の愛撫は長く続く、

その間に丈二は自分の肌が由起子が持つ女の肌にきわめて近くなっていることに気付かされた。

すると、由起子の手が伸び、

片方の手は丈二の胸を、

そしてもう片方の手は丈二の股間へと向かっていき、

プルンッ

股間で揺れる丈二のペニスを弄び始めた。

「あっ

 うっ」

以前よりも敏感になったペニスから来る強い刺激に丈二は思わず体を硬くすると、

「リラックスして…」

そんな丈二に由起子は優しく話しかける。

「あっあぁ」

夢心地の中で由起子の言葉に丈二はそう返事をすると、

由起子は丈二のペニスを優しく撫でたり、

こすったり、

さらには、それを吸ったりもしたが

しかし、どんな方法を使っても、

丈二のペニスは硬くなることは無かった。

「(あら)大丈夫、

 心配しないで、

 どの男性にもこんな日がありますから。
 
 焦りは禁物」

奉仕させるはずがいつの間にか主導権を由起子に握られ、

本来、丈二のペースだったのが完全に彼女のペースと化していた。

「無理をしないで、

 あたしのことは別にいいからね、
 
 ゆっくりと、
 
 ゆっくりと行こうね」

由起子はそういいながら丈二に向かって微笑むと、

掌をカップのような形にして丈二のペニスを包み込み、

指先を陰のうに軽く触れながら優しく扱き始める。

そして、丈二の耳を軽く噛みながら

子供に自信を持たせようとする母親のような静かな小声で

「大丈夫よ、

 恥ずかしくなんかないわ、

 大きさはなんて気にしないで…

 私はあなたのようなキュートで小さいオチンチンが好き」

と囁いた。

「大きさ…」

彼女のその言葉が丈二の心にナイフのように突き刺ささる。

そう由起子の手で扱かれている丈二のペニスは小さく、

女性を悦ばせるには程遠い代物だった。

しかし、つい先日まで丈二のペニスは勃起したときの長さが20cmをゆうに超え、

太さもあいまって女性達から凶器と揶揄される逸物だったし、

また丈二にとって誇りでもあった。

ところが、丈二の声がおかしくなった頃…

「ねぇ…

 丈二…
 
 もっと気持ちよくしてよ」

自分の逸物で貫いていた女性は突然不満を言いだすと、

「なに言っているんだよ

 この間はヒィヒィあがいていたじゃないかよ」

丈二は自信たっぷりにそう言い腰を振るが

しかし、彼女はプッと膨れると、

「こんなんじゃぁその辺の男と一緒じゃないっ

 もぅ…あたし帰る!!」

と言うなりさっさと起き上がると服を身につけ去っていってしまった。

「なんだ?」

一人取り残され呆然とする丈二、

そのときになって、ふと自分のペニスを見ると、

股間で勃起していたペニスが妙に頼りなく見えた。

「小さく?なった?」

以前と比べて一回り小さくなっているペニスを見ながら丈二はそう呟くが、

けど、それは何かの錯覚だろうと思うと、

それ以上、深刻に悩まなかったが、

ところが、丈二のペニスは日を追うごとに確実に小さくなり、

また、ペニスが小さくになっていくにつれ敏感に反応するようになってきた。

そしてその頃から丈二のオナニーも変わり始め、

「あぁぁ…

 うっ…」

以前は射精の瞬間に最高の快感が一気に噴出していたのが、

その一点を貫くような快感を次第に感じなくなり、

代わりに、怒涛のように繰り返し押し寄せる波のように

燃え上がるような絶頂感を味わうようになってきた。

「あぁ…

 いっイクぅぅぅ!!」

小さくなっていくペニスを扱き、

まるで女性の絶頂感に似たその快感に丈二は酔いしれていた。

その一方で丈二の男性機能は急速に失われ、

あれだけ硬く勃起していたペニスも勃起する時間が短くなっていっていた。



いまこうして、デリヘル嬢を呼びつけたのも、

次第に失われていく男性の本能を呼び戻すには

手馴れた女性のほうが確実だろうと判断したものだった。

シュッシュッ

シュッシュッ

由起子は根気よく丈二の萎えたペニスを扱き続ける、

そして丈二は彼女の手の中をチラッと見ると、

白くて細い由起子の手のひらの中で弄ばれれて居る自分のペニスは

彼女の親指の大きさと大して変わらないほどに小さくなっていた。

そのとき、

チリッ

チリチリチリ…

自分のペニスから感電したような弱い刺激を感じ始めた。

「あぁ…」

思わず丈二の口から喘ぐような声が漏れ始める。

絶頂への第一歩…

由起子の刺激は丈二のペニスを勃起させることではなく、

彼を女性の絶頂へ誘い始めていたのだった。

しかし、由起子は丈二が見せた反応を誤解すると、

シュッシュッ

シュッシュッ

と激しく扱き始めた。

「あっ

 あっ
 
 いっいぃ!!」

まるで陸に揚げられた魚のように丈二は体を揺らし飛び跳ねる。

「へぇぇ…

 まるで女の子ね
 
 そっか、ホルモンやっているんだ」

丈二の見せる反応に由起子は興味深そうにそう言うと、

「仕方が無いなぁ…

 どう言うつもりであたしを呼んだのか判らないけど、

 お金をもらった以上、

 仕事はしなくっちゃね」

諦めにもにた台詞を由起子は言うと、

「じゃぁ、行くわよ子猫ちゃん」

と囁きながら由起子は丈二を後ろから抱きしめると、

そっと股間に手を忍ばせた。

そして、首筋に舌を這わせる一方で、

ペニスと同じように敏感になっている乳首を摘みながら、

萎えたままのペニスを弄り始めた。

「あっあっあっ

 あっあぁぁ!!!
 
 いっいく
 
 いっちゃう!!」

由起子の手でゆっくりと押し寄せてきた快感に丈二は喘ぎ、

絶頂への階段を上っていく、

そして、

「あっあぁぁ!!!

 飛んじゃうっ」

と声を上げると、

ピュッ!!!

絶頂に上り詰めた丈二のペニスは粘性を失い透明になった精液を高く吹き上げた。



つづく