風祭文庫・アスリート変身の館






「キャプテン美咲」
(第1話:狩人)


作・風祭玲

Vol.502





それはとある春の夕刻のことだった。

コンコン!!

突然科学部のドアがノックされると、

「開いているよぉ」

半田ごてを片手に科学部部長・雪村春子が声を上げる。

すると、

カチャッ!

一呼吸置いてドアが開くと、

ヌッ!!

1人の人影が入って来た。

「ん?

 あぁ美咲か、

 何の用?」

春子は振り返ることなく気配で部室に入ってきた人物を

新体操部キャプテン・松ヶ瀬美咲であると特定し、

気さくに返事をするが、

だが、

「………」

春子に応える返事は返ってこなかった。

「?

 なんなのよっ」

なかなか返ってこない返事に半ば苛立ちながら春子が振り返ると、

彼女の後ろには何か思いつめたようなジャージ姿の美咲が立ち、

プルプル

と肩を小刻みに震えさせていたのであった。

「美咲?

 なによ、その顔は…」

普段気丈な素振りをしている美咲の思いがけない姿に春子は驚くと、

みるみる美咲の目から涙があふれ出し、

ついに、

「うわぁぁぁ!!

 春子ぉ〜っ」

と泣き声を上げながら

「なっなに?」

美咲は驚く春子の懐に飛び込んだのであった。



それから約10数分後…

「はぁ?

 新体操部から追い出されたぁ?」

春子の呆れたような声が科学部の部室に響き渡ると

コクリ…

いすに腰掛けている美咲は素直に頷いて見せる。

「なぁんでまたぁ?」

突然の事態に春子は驚きながらその理由を尋ねるが、

「………」

しかし、美咲はなかなかその質問に答えず、

黙ったまま下を向いていた。

「もぅ、言ってくれなければ判らないじゃないのよ」

そんな美咲の姿を見て春子は痺れを切らしながら怒鳴ると、

「じっ実は…」

と美咲は理由を話し始める、

そして、

「なるほど…

 要するに、

 部員にエッチなことばかりしているから追い出されたというわけか」

美咲からの途切れ途切れの説明を要約した春子がそう断じると、

コクリ…

美咲は戸惑いながら再度首を縦に振って見せる。

「まったくぅ

 あれほど注意しなさいって言ったでしょう、

 程々にしないからこんな目に会うのよ」

シュンとしている美咲を見下ろしながら春子はそう言うと、

「だって…

 アレをしないとあたし…力が出ないんだもん」

と弱弱しく言い返す。

「あのねぇ…

 そりゃぁ、

 されて喜ぶ子も居れば、

 嫌がる子も居るの。

 もぅ、手当たり次第に手を出すからよ、

 で、これからどうするの?」

春子は一通りの注意のあとこれからのことを尋ねると、

「うっうん」

美咲は短く返事をした後、再び黙ってしまった。

「はぁ…

 まったく、なんでこんなヤツと友達なんだろうねぇ」

文字通り身を滅ぼしてしまった美咲の姿を見ながら春子はため息をついて見せると、

「…一つだけ…」

と美咲は呟く。

「一つ?」

コクリ…

「なによそれって?」

美咲のその言葉の意味を春子が尋ねると、

「今度の新体操の大会の団体演技で優勝すれば、

 あたしがしてきたことは部員達とのスキンシップとして認められるかも…」

と美咲は自分が新体操部に居られる唯一の方策を言う。

「はぁ?

 なにそれ?」

「あっあたし…

 顧問にスキンシップの一つって言い訳をしたんだけど、

 それが聞き入れてもらえなかったのよ、

 でも、成果を示せばナントカなるかも…

 ねぇ、春子ぉ、

 ナントカならない?」

唯一の希望に縋りながら美咲が春子に迫ってくると、

「えぇ!?

 ナントカって、

 そんなこといわれても…」

春子は困惑をするが、

「お願い、

 あたし達、親友でしょう?

 あたし…もぅ春子しか頼れる人が居ないのよ」

と美咲は真剣な表情で春子に縋って見せる。

すると、

「まったく…

 仕方がないわねぇ…」

そんな美咲の肩を春子がポンと叩きながらそう言うと、

「鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス…」

と言いながら春子はニヤリと笑みを浮かべ、

「え?」

春子の意味深なその笑みに美咲はキョトンとしてみせると、

「要するに美咲の新体操部を作ればいいのよ

 そして、試合に乗り込んであなたを追い出した連中を見返してあげればいいじゃない」

と春子は美咲に言ったのであった。



「みっ見返すって…

 どうやって、

 大会までそんなに時間は無いのよ、

 大体選手を1から育てるのにどれくらい掛かるって思ってるのよ」

春子の話を聞いた美咲は怒鳴るようにして反論すると、

ピッ

怒鳴る美咲の目の前に春子は人差し指を立て、

「ふふっ

 このあたしを誰だと思っているのよっ

 月華高のドラえもんこと、科学部の部長よっ!

 あたしの辞書に不可能と言う言葉はないわ」

と自信満々に返事をして見せる。

「でっでも…」

春子の言葉に美咲はまだ動揺をしていると、

「腕に覚えのある連中をスカウトしちゃいましょう」

と美咲に向かって春子は結論を言う。

「え?」

春子の提案に美咲が首を傾げると、

「ふふっ

 忘れたの?

 美咲の話だと

 新体操部を追い出されたあなたについてくる部員ってたった一人なんでしょう?」

と春子は美咲と一緒に新体操部を辞めた女子生徒のことを指摘した。

「えっ

 えぇまぁ」

「鈴鹿卓郎…

 いまはなんていうかはわからないけど、

 かつてはそう名乗っていたわよねぇ…彼女…」

「あっ!!

 まっまさか」

「ふふっ

 そのまさかよ…

 彼女を新体操部員にしたときに使ったゼンタイはあれ一つで予備はなし…

 しかも、彼女は美咲の調教のせいで身も心もすっかり女の子になっちゃって

 あれを脱ぐ気持ちはとっくに消えうせている…

 ということで、あのゼンタイとは違う性転換マシーンを用意していたのよ、

 今度の新作は名づけて「ザ・更衣室!」」

驚く美咲に遠慮することなく春子はそう言いながら

ドンッ!!

と美咲の前にある机の上にスプレー缶を置いて見せる。

「スプレー?」

スプレー缶を見ながら美咲は首を傾げると、

「無論、ただのスプレーじゃないわ、

 この中には無数のナノマシーンが入っていて、

 スプレーの噴射と同時に相手に取り付き、

 そして身体を改造していくのよ、

 男を女にすることも

 また女を男にすること、

 さらには獣や想像上の怪物にもすることが出来るわ」

とアッケラカンとした表情で春子はスプレー缶を説明をする。

「うっ」

その話を聞いた途端、

美咲は慌てて手を引っ込めてしまうと、

「あはは!!

 大丈夫よ、

 まだ何もインプットしていないから」

ホラッ!!

と言いながら春子は美咲に向かって

シュッ!

とひと吹きスプレーをかけたのだが、

その直後、

「ぎゃぁぁぁ!!」

科学部室に美咲の絶叫が響き渡ったのである。



「もー…

 大丈夫だって!」

飛び上がってスプレーを吹きかけられたところを拭きまくる美咲に春子は呆れながらそう言うと、

「でっでも…」

慌てる美咲は手を止めようとしなかった。

「まったく…

 まぁいいわ…」

そんな美咲の姿を見ながら春子はため息をつくと、

チャッ!

小さなマイクを取り出し、

『彼女が着ているジャージをレオタードにして…』

とマイクに向かって声をかけた。

その途端、

ゾワァァァァ!!

美咲の肌に言いようもない感覚が走り抜け、

それと同時に、

シュルルルン!!

まるで染み出してくるかのごとく、

美咲が着ていたジャージが変質・変形をすると、

瞬く間に赤に黒のストライプが入った新体操用にレオタードへと変化していくではないか、

「うそっ」

ピッチリと自分の体を覆い、

体の線を見事に描き出して見せるレオタードに美咲が驚くと、

「ふふっ

 判った?

 そう、更衣室で着替えるかのように簡単に変身できるところからそう名づけたのよ

 今回は量が少なかったので衣装のみで終わったけど、

 でも、さっき言ったとおり、肉体も変えることが出来るわ

 ただし、命令は1回のみ、

 2回目はできないわ」

と春子は発明品の命名理由と制限を説明する。

「すっすごい…」

春子の発明品の威力にやっと認めた美咲は目を丸くすると、

「ふふ…

(とはいっても、この発明品って

 学校内をうろついていた変なウサギが落としたチョーカーを

 分析した成果がベースなんだけどね)」

それを横目で見ながら春子は心の中でそう呟いていた。



「というわけで、

 この「ザ・更衣室」を使って、

 運動部の目ぼしい奴を性転換・変身させることにします。

 で、まずは標的だけど、

 野球部のエース・久我道行。

 サッカー部のストライカー・水島孝雄。

 空手部・キャプテンの五十嵐隼人。

 陸上部の名取大輔。

 剣道部の大日信吾。

 以上の5名を女にして美咲の新体操部に入れることにしましょう」

タンタンタン

科学部室壁にかけてある黒板に計画を書き込みながら春子はそう告げると、

「でっでもどうやって…

 みんなの見ている前でスプレーなんて…」

と美咲は質問をした。

すると、

「ふむっ

 もっともな質問ね、

 確かに”ザ・更衣室”は至近距離で吹きかけないと散ってしまって威力を発揮できないし、

 だからといって人前で吹きかけるというわけにはいかないよね」

春子は美咲の質問に頷きながら同意し、

「ふふっ

 でも、欠点を認めてそれに合わせて対処すれば、

 それは欠点ではなくて仕様になるわ…」

と笑みを浮かべる。

「え?」

春子が浮かべた笑みにある意味を感じ取ったに美咲が声を上ると、

「大丈夫、私に任せて」

そんな美咲に念を押すように春子は胸を叩いたのであった。



ところが、

「もぅ!!

 なによ、早退って…

 それでも空手部の主将なの?」

トレードマークの白衣を靡かせながら

空手部の部室から出てきた春子は文句を言いながら廊下を歩いていくと、

「まーまー、

 そんなに文句を言わなくても…」

そんな春子を宥めるようにして美咲は声をかけるが、

「主将よ、

 主将といえば部の要よ、

 それなのに早退だなんて…腐りきっているわ、

 折角、このあたしが直々に女の子にしてあげようっていうのに

 早退だなんて、まったくぅ…」

「あのぅ、春子…

 そんなこと大声で言わないほうが」

さらにボルテージを上げる春子に美咲は

周囲を気にしながらなだめ役に回っているちょうどその頃

学校からほど近いとある某所では…



『ほーほほほほほ!!

 このタマムシ女に勝とうなんて100万年早いわ』

虹色の羽を広げながら怪人が空に舞い上がり、

「もぅ!

 玉虫色の攻撃ばかりしてイヤな奴!」

「でも、玉虫色だからどれも決め手にはかけるわね」

「ねぇ、ゴーズトバグの怪人もなんか質が落ちてきていない?」

「でも気を抜かないで、

 この間のクモ女と同じで何をするか判らないわ」

怪人を見上げながらバニースーツに身を包んだ少女達がそう注意しあうと、

「あれ?

 どーしたの、レッドちゃん?」

と青いバニースーツ姿の少女が赤いバニースーツ姿の少女に声をかけた。

すると、

「いっいやっ

 なんか急に悪寒が…」

赤いバニースーツ姿の少女はそう返事をすると

まるで酷寒の地に放り出されたかの如く振るえ続けていたのであった。



「はぁ、

 もぅいいわ、

 じゃぁ空手部の五十嵐はリストから外して…

 んじゃ、サッカー部のストライカー・水島孝雄を新体操部員にしちゃいましょう」

気を取り直した春子は

校庭に設けられたゴール目掛けてサッカーボールを蹴りこむ水島孝雄の姿を見ながらそう言うと、

「行くわよ」

と美咲に一言告げ、

サッカー部の部室へと向かって行く。

「お疲れ様です」

「おうっ」

それから2時間後

ようやく練習を切り上げた孝雄が一人でサッカー部の部室へと戻ってくると、

「あっやっと来たわね」

 美咲、あなたは引っ込んでいて」

「うっうん」

孝雄の姿を見つけた春子は美咲に隠れるように言い残し、

「こんにちわぁ」

話しかけたのであった。

「え?

 うわっ」

いきなり目の前に飛び出してきた女子生徒から話しかけられてきたことに孝雄は驚くと、

「あら、

 グラウンドでは女の子に声を掛けられているのに、

 そんなに驚かなくても…」

と春子は普通の女子高校生のような素振りをしながら孝雄を見る。

すると、

「ちょっちょっと

 なんで…」

普段女子生徒の姿など見ることがない場所からの春子の登場に孝雄は驚き、

「あっあのぅ…ここって女子が入るには顧問の許可がいるのですが…

 それって貰っています?」

とサッカー部顧問・水島の許可を得ているのか尋ねた。

しかし、

「え?

 そんなものは貰っていませんよ」

孝雄の質問に春子はあっさりと返事をすると、

その返事に孝雄は頭を抱え、

「あのぅ…

 そういうのって、

 よくないと思うのですが」

と春子のさりげなく注意をする。

すると、

「なぁに固いこと言っているのよっ

 野球部なんかには女子マネがいるでしょう、

 それともなに?

 女の子には見せられないモノでもあるって言うの?」

強気の姿勢で春子は孝雄にそう言うと、

「そっそんなモノは無いですよ」

と孝雄は言い返した。

「あっそっ

 それは悪かったわ」

孝雄の言葉にに春子はそう返事をすると、

「じゃぁ、

 新体操部の部室に行きましょうか、

 あそこなら問題はないから」

と言いながら孝雄の手を引こうとするが、

「ちょっと待て、

 新体操部って、余計まずいよ」

春子の言動に孝雄はそう叫ぶと、

「もぅゴチャゴチャ煩いわねぇ!!

 じゃぁこの場でしちゃうわよ」

なかなか誘いに応じようとしない孝雄に向かって春子はそう怒鳴るや否や、

ドンッ!!

っと孝雄の身体を突き押すと、

サッカー部室へと彼を押し込んで見せる。

そして、持って来ていたスプレー缶を孝雄に向けると、

「えいっ!!」

至近距離で吹きかけてしまったのであった。

「うわっぷっ」

春子からスプレーを浴びた孝雄は手を大きく振り

霧状になって自分を覆ってくるガスを払おうと藻掻いていると、

「さぁ、水島孝雄、

 あなたは新体操部員になるのよ」

その様子を見ながら春子はマイクに向かって声を上げる。

その途端、

シュンッ!!

孝雄の回りを霧状になって漂っていたガスが一気に孝雄の身体に取り付き、

そしてその彼の変身が始まったのであった。



「え?

 え?

 うわっ

 なっなんだようこれぇぇ」

身の回りを覆っていた霧が消えて数分後、

自分の体で始まった異変に気づいたのか突然孝雄が悲鳴をあげると、

自分の両手を目の高さに持ち上げて見せる、

すると、

ジワジワジワ…

サッカーの練習で日に焼けた孝雄の肌が見る見る白くなり、

きめの細かい女性の肌となって彼の身体を覆い尽くしてしまうと

ガッチリとした体格も次第に細くなっていく、

「どっどっ

 どうなっているんよっ

 おいっ」

白い肌を晒し、

さらに髪を伸ばしながら孝雄は春子に縋ると、

「ふふ、

 教えてあげるわ、

 水島孝雄、

 君はいまから女の子になって新体操をしてもらうわ、

 ふふ…

 サッカーで鍛えたその身体ならきっと躍動力溢れる演技ができるでしょうねぇ」

と縋る孝雄を見下ろしながら言う。

「そんな…

 おっ俺を女の子にって、

 そんなことできるのかよぉ」

次第にハスキー声になりながら孝雄は怒鳴ると、

「ふふっ

 できるわ、

 だってほらっ

 いまの君って、

 女の子になりかけているでしょう?」

と春子は余裕の表情で指摘する。

「え?

 うっうわぁぁぁ!!

 むっ胸がぁぁぁぁ!!」

春子に指摘された孝雄が下を向くと、

彼の視界にはムリムリと膨らみを増す2つの膨らみを増していく胸の姿があり、

それを見た途端悲鳴をあげたのであった。

「どうなのかなぁ?

 女の子になっていく感覚って…

 あたしって最初から女の子だから判らないんだけどぉ」

と春子は興味津々そうに悲鳴をあげる孝雄に尋ねると、

「そんなぁ

 そんなぁ」

股間を押さえ、絶望感に似た表情をしながら孝雄はペッタリと座り込んでしまい、

そして、

「おっ俺のオチンチンが…

 そんな…

 オチンチンがなくなっちゃったぁ!!」

とサッカーパンツの中に姿を見せた縦溝を幾度も確認しながら泣き叫ぶ。

「もぅ、

 そんなに泣かなくてもいいじゃないのよぉ」

女の子へ変身したためか、

いつも見せている姿とは違う孝雄の姿に困惑をしながら春子はそう言うと、

「あっあぁぁぁ!!」

孝雄が着ていたサッカーユニフォームが変化し始め、

体にピッチリと張り付いていくと

赤地に黒のストライプが入った新体操のレオタードへと形を変えていく。

「そんなぁ…」

伸びた髪がシニョンへと結い上げられ、

細い腕を上げて変身してしまった自分の身体を確認する孝雄の姿は

まさしく新体操部員の姿であった。

「ふむ、

 変身完了ね」

カチッ

ストップウォッチを押しながら春子が変身完了を確認すると、

「なんで、

 なんで、あたしを女の子にしたんですか」

と鈴の音のような声を上げて春子に迫る。

ところが、

「なぜって?」

迫る孝雄に相変わらず余裕の表情を崩さない春子はそう言うと、

「そうねぇ、

 そのことは元・新体操部のキャプテンに聞いてみて」

と話を逸らし、

そして、隠れている美咲に向かって合図をして見せる。

「え?

 他に誰かいるんですか?」

春子の合図に孝雄は驚くと、

スッ

部室の入り口で仁王立ちをする春子の後ろよりレオタード姿の美咲が姿を見せ、

そして、部室に入ってくると孝雄に手を差し伸べながら

「新体操部にようこそ」

と告げたのであった。

「え?

 え?

 一体、どういうこと?」

美咲の登場に孝雄は困惑をすると、

スス…

滑るように美咲は孝雄の後ろ側に回り込み、

そっと、孝雄の膨らんだ胸に自分の手を当てて見せると、

「ひゃうん!!」

ビリッと胸から走ったその感覚に孝雄は飛び上がって見せる。

すると、

「ふふ…

 あなたも感度が良いみたいね」

いつもの調子を取り戻した美咲は孝雄の耳元で囁いた。

「感度?」

美咲の言葉に孝雄は振り返ると、

「そうよ、

 新体操は感度が大事…

 鈍感な子はどんなに腕を磨いても良い演技派でいないわ、

 でも、あなたなら大丈夫。

 すばらしい新体操選手になれる…

 あたしが保障するわ」

と告げると、

クニ

クニ

っとレオタードを押し上げる胸の膨らみを軽く揉んで見せた。

「ちっちがうっ

 あたしは男…」

身体をよじらせならが孝雄は美咲の言葉に抵抗をしようとすると

「ふふ…

 君のどこが男なの?

 ほらっ

 君のオッパイ…

 こんなに膨らんでいるじゃないの」

孝雄の背後から身を摺り寄せている美咲はそう囁き、

キュッ!!

っと膨らみの真ん中で尖っている乳首をレオタードの上から抓り上げる。

「あっあぁん!!」

その途端、電撃を打たれたような刺激に孝雄は喘ぎ声を上げると、

「あら、感じているの?

 ふふ、

 お股がもぅビショビショよ

 いいのよ、

 そのレオタードを汚しても、

 だって、そのレオタードはあなたのモノなんだから…ね」

美咲は孝雄の股に潜り込ませた指を巧みに動かしながら

クニクニ

と彼の股間に作られた縦に開く唇とその中にある触覚を刺激して見せる。

ビクッ!

「あっあぁぁぁ

 いやっ

 いやっ

 止めて」

股間から脳天へと突き抜けるような刺激と、

それに誘発されてジワジワと沸き起こってくる快感に孝雄はそう訴えると、

「いいわよ、

 止めても…」

孝雄の首筋に鼻息を当てなが美咲はそう呟き、

ピタッ

と指の動きを止めたのであった。

すると、

「え?

 あっいやっ

 やっ止めないで…」

美咲に向かって孝雄は懇願すると、

「ふふっ

 なぁに?

 どうして欲しいの?」

と意地悪そうに美咲は聞き返した。

「うっ…

 んっ

 くっ

 …しっしてください」

「なに?

 何をして欲しいの?」

「もっもっと…

 もっとして…ください」

「ふふ…

 いいわよぉ

 でも、

 あたしだけしてあげるのはイヤ…、

 ねぇ、あたしのもして…」

孝雄の訴えを聞く素振りを見せながら美咲は孝雄の肩を押し、

そして自分の足元に跪かせると、

彼…いや、彼女の顔に自分の股間を押し当てる。

「あんっ

 うぷっ」

「ふふ

 さぁ、あたしを気持ちよくするのよ、

 そうすればもっと気持ちよくしてあげる。

 さぁ…して…」

片手で孝雄の頭を抑え、

そして、残る片手で自分の胸を揉みながら美咲はそう命令をしたのであった。



「んふっ」

「あっあぁぁん」

「いいわっ

 そう、そこよ」

「ふふ、すごい…

 すごいわぁ」

「そっそこ…

 もっと、

 もっと…して、

 いっいくぅぅぅ」

サッカー部員達が残した汗のにおいに包まれながら、

レオタード姿の新体操部員は股間を濡らせながら絡まり愛撫を続ける。

そして、

「あっいっいぃ…

 あぁ、なにか、

 なにか…く…る」

次第に絶頂へと上り始めた孝雄が身体をヒクヒクさせながらそう訴えると、

「うふっ

 それが女の絶頂よ、

 さぁ、あたしと一緒に行きましょう」

その訴えを聞いた美咲は

キュッ!

と女の汗の臭いを撒き散らす孝雄の体を抱きしめると

レオタードの中に自分の手を潜り込ませ激しく孝雄を攻め始める。

「あっあぁ

 いやっ

 いやっ

 飛んじゃう

 飛んじゃう

 飛んじゃうよぉ」

己の秘所の上で舞うように動く美咲の指技に翻弄された孝雄は

ジワジワと迫りくる絶頂を体全体で感じながら声を上げると、

「ふふ…」

その声を聞いた美咲は

クチュッ!!

レオタードの下に潜り込んできた自分の指を孝雄の膣深く差し込んだ。

その瞬間。

「あっあぁぁぁぁ!!」

孝雄は絶頂へと達してしまい、

ビシャッ!!

孝雄の秘所がまるでテッポウ魚の如く潮を吹き上げてしまうと、

レオタードに大きなシミを作り上げてしまったのであった。



「あっあっあぁぁ…」

絶頂の快感もそこそこに股間に黒い影を作りながら広がっていくシミを見ながら

孝雄は愕然としていると、

その孝雄の首に纏わりつくように美咲の腕が伸び、

「あらら、ついに汚しちゃったのね」

っと囁いて見せる。

「ちっ違う…これは…」

美咲の言葉に孝雄は反論をしようとすると、

「いいのよ、

 女の子は気持ち良くなると汚しちゃうのだから」

と告げるが、

「違う、

 あたしは男だ」

「男?」

「そっそうだよ」

「君のどこが男だっていうの?」

「あっあたしを女の子にしたのはあなた達でしょう、

 戻してくださいよ」

不覚にも美咲の指技でレオタードを汚してしまった孝雄だったが

しかし、あくまで男のとしてアイデンティティーを主張すると、

「ふふ…

 何を言っているの?

 気持ちよくてお股を汚したのは誰?

 このシミを作ったのは誰?」

美咲は勝ち誇ったようにシミを作る孝雄のレオタードを指差して見せる。

「そっそれは…」

「いいこと、

 君はもぅ女の子よ、

 気持ちよくなるとお股を汚してしまう女の子なのよ、

 ふふ、素直に認めたら?」

「ちっ違うっ

 あたしは…」

「女の子よ」

「男だ」

「女の子よ」

「あたしは男よ」

「ふ〜ん、

 じゃぁ、その顔が赤いのはなぜ?」

「え?」

美咲の思いがけない指摘で孝雄はハッとすると、

あわてて自分の顔を手を置いた。

すると、

ジワッ

口論で興奮していたことを差し引いても、

孝雄の顔は火照っていたのである。

「これは…」

言いようもない興奮が湧き上がってくきていることを感じながら孝雄は戸惑うと、

「教えてあげようか」

と春子が孝雄に話しかける。

「え?」

春子のその言葉に孝雄が振り返ると、

「ほらっ」

という春子の言葉と共に

バサッ

孝雄の顔にロッカーに置かれたままのサッカーユニフォームが投げつけられ、

「うわっぷっ」

汗臭いユニフォームを頭から被り孝雄がもがいて見せると、

「あっ

 なっなに?

 この感覚…」

普段なら吐き気をもよおすその臭いがまるで香水の様に感じられ、

そして、

トクン

トクン

っと孝雄の胸が激しく鼓動をし始めたのであった。

「ふふ…

 どうかしら、天然の媚薬は?

 男の汗の臭いって女にとっては極上の媚薬なのよ、

 その臭いに反応するのは女のみ、

 ねぇ、

 男が欲しくなっているじゃない?」

春子は冷静に孝雄の胸の内を指摘して見せる。

「ちっ違う」

ユニフォームを左手で握り締めながら孝雄はそう言い返すが、

しかし、孝雄の意思とは裏腹に右手は自分の股間へと潜り込み、

シュッシュッ

っと愛液で濡れているレオタードをこすり始めていた。

「うっ

 くはぁ…

 いやっ

 右手を止めて、

 あっだめ、

 止まらない…

 うっくっ」

そう言いながらもユニフォームの臭いを嗅ぎながら

孝雄は股間の手を激しく動かし続け、

そして、

「うっあっ

 あぁぁぁん!!

 だっだめぇぇぇ!!

 止まらないよぉ!!」

と喘ぎ声を上げながら再び愛液を流し始めた自分の股間を攻め始める。

「さぁ、自分の手でイっちゃいなさい。

 もぅあなたは女の子よ、

 女の子の証をこの場で立てるのよ、

 そう、男だったあなたの汗が篭ったこの部屋でね…」

立ち上がった美咲と春子は

転げまわりながらオナニーを続ける孝雄の姿を見下ろしながらそう言うと、

「あぁぁん」

「はぁぁん」

「あぁぁぁぁん!!」

孝雄は二人に見届けられながら2回目となる絶頂へと上っていったのであった。



「さぁて、

 まずは一人目か」

2回もイカされ、

気を失っているレオタード姿の少女を見下ろしながら春子はそう呟くと、

「あと3人は欲しいわね」

股間で手をモゾモゾと動かしながら美咲はそう返事をする。

「3人か…(ちょっとあたしに絡まないでよ)」

「うん…(いいじゃない、ちょっとだけよ)」

絡み付こうとする美咲に肘鉄を食らわる春子と、

なおも負けずに絡む美咲の姿を窓に映し出しながら夜は更けていったのであった。



つづく