風祭文庫・アスリート変身の館






「春子の発明」
(後編)


作・風祭玲

Vol.499





「はぁ…」

退屈な英語の授業中、

鈴鹿卓郎は視線を正面の黒板より外し幾度もため息をついていた。

あの新体操部・キャプテンの松ヶ瀬美咲との

衝撃的な体験からすでに1週間が過ぎようとしていた。

そんなある日の出来事である。



「はぁ…」

あのときの美咲の体温と体臭、

そして、レオタードに覆われた体の柔らかさを思い出すと

ビンッ!!

卓郎の逸物は反射的に固くなっていく。

「うっ」

それを感じた卓郎は思わず股間へと手を差し伸べ、

そして、いきり立つ男の象徴をいさめるように摩り始めたとき、

「鈴鹿卓郎!!」

いきなり卓郎の耳元で自分の名前が大きく呼ばれると、

ガタガタガタ!!

「はっはいっ!」

卓郎は反射的に立ち上がってしまった。

「え?

 あっ」

教室中の視線を一身に浴びながら卓郎が呆気にとられると、

「さっきから名前を呼んでいるのに

 聞こえないのですか」

と傍に立つ英語教師がメガネを光らせながらにらみつけた。

「え?

 いやっ

 あっあのうそのう…」

蛇に睨まれた蛙の様に卓郎は冷や汗を流しながらシドロモドロになると、

「君には言いたいことがあります。

 休み時間、

 職員室へくるように…」

英語教師はそう言い残して去っていった。

そして、その直後、

「クスクスクス…」

クラス中よりそんな卓郎を笑う、笑い声が響き渡った。



その一方で、また美咲も同じような状況になっていた。

「松ヶ瀬さん、

 大丈夫ですか?」

3年女子の体育の授業中、

新体操部・キャプテンを務める美咲は

クラスの女子生徒達を前にしに新体操の模範演技を見せていたのだが、

しかし、高く放り上げた棍棒のキャッチにミスを犯し

その顔面に棍棒の直撃を受けたのであった。

「いっいえ…

 大丈夫です…

 よくあることですから…」

棍棒が鼻に当たったのか鼻と口を押さえる手より血を滴らせながら

美咲はそう返事をすると、

「保健室に行ってきます」

と言い残し

付き添おうと慌てて駆け寄ってきた険委員を下がらせ、

そのまま体育館から去ってしまった。

そして、洗い場で顔を洗うと、

「はぁ…」

鼻を押さえながら、ため息をつく、

「はぁ…

 あの娘が男の子だったなんて…

 あんなに感度のいい子だったのに…」

無念さを漂わせながら美咲はそう呟くと、

あの時抱いたときの感触を思い出しながら

自分の股間を諌めはじめていた。

そして、

「うっ

 くっ!!」

腰をかがめ、声をかみ殺しながら美咲が絶頂への階段を上り始めたとき、

「あれ?

 松ヶ瀬じゃない。

 どうしたの?

 そんなところで…」

と美咲を呼ぶ声が響いた。

ドキッ!!

自分の名前を呼ぶその声に美咲は飛び上がるくらいビックリして振り返ると、

「?」

彼女の後ろに科学部部長・雪村春子が立っていた。

「はっ春子ぉ…」

いまの淫らな行為が見られたのでは、

と思いながら美咲は春子の名前を呼ぶと、

「こんなところでなにしているの?」

と春子は美咲に尋ねる。

すると、

「え?

 あっいや…

 別に…

 はっ春子こそ、授業中なのに何をしているの?」

誤魔化しながら美咲が聞き返すと、

「はぁ?

 何寝ぼけたことを言っているのよ、

 授業なんてとっくに終わっているのよ」

と春子はすでに授業時間が終わっていることを美咲に告げた。

「え?

 そっそうなの?」

春子の言葉に美咲は飛び上がり、

慌てて体育館へと向かおうとしたとき、

「美咲っ」

春子は美咲を呼びとめ、

「幼馴染として忠告をするけど

 今度オナニーをするときは、

 人の目のないところでやりなさいよ」

と忠告をした。

「いっ」

春子の忠告に美咲の顔から一気に血の気が引いていくと、

「まったく…

 アンタが救い様のないドスケベだということは

 この小学校からつきあっているこのあたしが良く知っているけど、

 でも、あんまり部員達を毒牙にかけないことね、

 噂になってるわよ」

と青い顔をする美咲に春子は警告をした。

「………」

春子のその言葉に美咲が答えられないでいると、

ポンッ

いきなり春子の手が伸びて美咲の肩を叩くの同時に

「で、先週、アンタが襲った女の子の味はどうだったの?」

と声を潜めながら尋ねた。

「え?」

春子の言葉に美咲は驚きながら彼女の顔を見ると、

スッ!!

春子はポケットより小型のプレーヤーらしきモノを取り出すなり

ピッ!!

っと小型プレーヤーのスイッチを押した。

すると、

『…あっ

 んくっぅ…

 あぁ、あなた良いわよぉ…

 んふっ

 こんなに敏感で…

 やっいやっ

 そんなこと…

 言わないで…』

先週、新体操部の部室で繰り広げられた痴態の音声が流れた。

「はっ春子!!!」

攻める自分と餌食になっている少女の声に美咲は顔を赤くしながら声を上げると、

「改良した集音器の性能テスト中に飛び込んできた音だけど、

 良く録れているでしょう…

 で、この後、
 
 二人であっちの世界へ行こうとしたときに、

 残念ながら相方は男の子に戻ってしまい、

 でも、そのときの感覚が忘れられなくて、

 こうしてオナニーをしていたわけか」

と美咲の触れて欲しくない記憶を春子は突っついた。

「やっヤメぇぇぇぇ!!!」

春子のセリフをかき消すかのように美咲は声を上げるが、

しかし、

「男の子だったあの子のことが随分と忘れられないみたいだったけど、

 そんなによかったの?」
 
と春子は美咲に尋ねた。

「え?

 そっそりゃぁまぁ…

 新体操部のどの子よりも敏感だったし、

 それに女のあたしから見ても可愛かったし、
 
 できればずっとあたしのネコにしようかって思っていたけど…

 でも、まさか…

 男だっただなんてぇ!!」

すっかり暴露モードに入っていた美咲はそう訴えながらその場に座り込んでしまった。

すると、

「あぁ

 彼女ねぇ

 あれ、実はあたしが作ったのよ」

と春子は屈託のない笑顔で事情を話し始めた。



「うっそぉ

 あの子、そう言う理由であたしに近づいてきたの?」

春子からあの日の事情を聞いた美咲は驚きながらそう叫ぶと、

「まぁね…

 最初は驚いたわよぉ

 いきなり女の子にしてください。

 なぁんて言って来たんだから、

 で、ワケを聞いてみたら、

 アンタに近づきたくて…なぁんて言うからね、

 それであたしが出来立ての性転換マシーンで女の子にしてみたわけ…

 いやぁ、本当は1週間ぐらい女の子でいるはずだったんだけど、

 まさか、あそこで男に戻って仕舞うだなんてね、

 うん、とんだ誤算だったわ」

と春子は悪びれずに説明をした。

「そっそうなの…」

春子の説明に美咲はやや力を落として返事をすると、

ニヤッ

それを見た春子の顔に笑みが浮かび上がり、

「ねぇ

 また、その女の子に会ってみたい?」

と悪魔の囁きを掛ける。

「え?」

春子のその囁きに美咲は顔を上げると、

「ふふっ

 新しいのをちょっと作ってみたの…

 うふっ

 ちょっと視点を変えてみたんだけど

 でも今度のはなかなかいけそうよぉ」

と春子は言うと、

「でっでも…」

彼女の提案に美咲は今ひとつ乗り気じゃなかった。

すると、

「女の子とじゃれ合うのも良いけど、

 でも、男の子を女の子として仕込むのも、

 アンタの趣味に合っていると思うんだ。

 ふふ、やってみる?」

と再び囁く。

「うっ」

春子のその言葉に美咲は返事が出来ないでいると、

「下ごしらえはあたしがするわ、

 後はアンタ次第だよ」

悩む美咲の背中をポンと押して春子は去っていった。



放課後…

「そういえばこの間入部してきた女の子…

 姿が見えなくないけど、辞めちゃったの?」

体育館で練習を始め出した新体操部の少女の一人が

女子生徒に化けた卓郎のことを尋ねると、

「みたいよ

 ほらっ

 あの日、

 彼女、最後まで居残っていたでしょう?」

とその問いに答えるようにして別の部員から返事が返ってきた。

「え?

 じゃぁなに?

 キャプテンに食べられちゃったの?」

「うん、間違いなくね…」

その返事に少女はあの日、

新体操部の部室で行われた淫行のことを妄想すると、

彼女の妄想がほぼ正確であることをその部員は告げる。

すると、

「でもさっ

 それなら、なんでキャプテンここのところ練習を休んでいるの?

 いつもならキラキラを目を輝かせながら練習をしているはずよ」

「そうよっ

 それよそれ

 なぜかあの日以来キャプテン、休んでいるのよねぇ」

「何かショックなことでもあったのかな?」

「さぁ?

 あのキャプテンがショックを受けるだなんてね、

 ちょっと考えられないなぁ」

あの日以降、美咲が新体操部の練習を休んでいることを言及し、

そして、

「ねぇ、また来ているわよ、あの男子…」

と体育館の入り口付近にいる卓郎を見つけると指を指した。

「まったく、

 堂々としたものね」

「ちょっと注意してこようか」

卓郎の姿に新体操部員達はそう囁き合うと、

「ちょっと、

 そこの男子、

 出て行ってよね」

と卓郎目掛けて怒鳴り声を上げた。

「うっ

 あっ」

響き渡ったその怒鳴り声に卓郎は臆し、

そのまま回れ右をして駆け出していくと、

「キャハハハハ…」

そんな卓郎を笑う新体操部員たちの声が響き渡った。

「くそうっ」

笑い声を背中で聞きながら卓郎は歯をかみ締める中、

体育館から飛び出していったとき、

「おーぃ

 そこの男子ぃ!!」

と卓郎を呼び止める声が響いた。

「え?」

その声に立ち止まった卓郎が振り向くと、

「やっ」

ゆっくりと彼の視界に春子が姿を見せてきた。

「あっ雪村先輩…」

春子の姿を見た卓郎は驚きながらそう呟くと、

「いやぁ、この間はすまなかったな…

 まさか、あの程度の時間でしか持たないだなんて思いもよらなかったから、

 で、今日はその罪滅ぼし。

 コレを身に着ければ一発で女の子になれるわよ」

と言いながら春子は卓郎に肌色をしたある物を手渡した。

「こっこれは?」

手渡されたものを広げながら卓郎は驚くと、

「ん?

 あぁ、ゼンタイって言う、

 まぁ言ってしまえばレオタードの一種ね、

 でも、そのゼンタイはちょっと特殊でね、

 ふふ…

 男が着ると、女の子になり、

 女が着ると、男の子になる。

 という魔法のゼンタイってワケよ」

と春子は卓郎の耳元に囁いた。

「うそっ」

春子のその言葉に卓郎は反射的にそう返事をすると、

「嘘かどうかは着てみればわかるわ、

 君、あの日着ていた新体操部のレオタード持ったままでしょう?

 いま新体操部の部室は誰もいないわ…

 じゃぁ頑張ってね」

困惑する卓郎にそう言い残して春子は去って行く。




「こっコレを着ると女の子に…」

春子から手渡されたゼンタイを眺めながら卓郎は呟くが、

ゴクリ…

あの日の美咲の感触が忘れられない彼は生唾を飲み込むと、

急いで教室へと戻り、

そして教室に誰もいないのを確認した後、

スポーツバッグより美咲から着せられたレオタードを取り出すと、

いそいそと出て行った。

そして、体育館で練習をしている新体操部員の姿が横目で見えながら

人目につかない生垣の陰で卓郎は制服を脱ぎ全裸になると、

春子から手渡されたゼンタイに足を通した。

すると、

サワァァァァ…

瞬く間にゼンタイの表面に肌としての感覚が走り、

キュッ!

ムリムリムリ!!

ゼンタイに包まれた部分が急速に女性化し始めた。

「あっあっあっ

 あぁぁぁぁ!!」

その感覚に卓郎が声を上げながらゼンタイを身につける。

その途端、彼のウェストは括れ、

ヒップが張り出し、

そして、

プルンッ!!

乳房が膨らみ、揺れ始めてくると

瞬く間に卓郎は女性の身体になってしまった。

「すっすごい…」

鈴のような声を上げながら卓郎は女性化してしまった自分の体に驚くと、

「あっそうだ」

と急いであの日着ていたレオタードに足を通した。

ピチッ!!

女性化してしまった自分の身体をレオタードが締め付けるように覆い

「あっ」

その締め付ける感触に思わず口から声が漏れる。

すると、

「ふふっ

 どう?

 一週間ぶりのレオタードの感触は?」

という美咲の声が後ろから響いた。

「え?」

その声に卓郎は驚きながら振り返ると、

「また会えたわね、

 あなた…」

と口元に笑みを浮かべながら美咲は話しかける。

「まっ松ヶ瀬先輩!!」

予想外の美咲の登場に卓郎は慌ててレオタードに覆われた胸を隠すと、

「ふふっ

 すっかり女の子になっちゃって」

美咲はそう呟きながら傍に寄るなり卓郎の両肩に手を乗せる。

「せっせっ先輩、

 どうして…」

クニッ!!

背中からレオタード越しに押してくる乳房の感覚に卓郎は顔を真っ赤にして尋ねると、

「会いたかったわ、
 
 あなた…

 新体操部のどの女の子よりも感度が良かったわぁ

 でも、男の子だったなんてちょっと驚いちゃったけど、

 ねぇ、

 本当の名前はなんていうの?」

「え?

 あったっ卓郎

 すっ鈴鹿卓郎です」

やさしく身体を撫で回しながらの美咲の質問に卓郎はそう返事をする。

すると、

「ふぅぅん、

 じゃぁ、女の子になっている間はスズって名乗りなさい。

 ふふっ

 すっかり身体を固くしてぇ

 大丈夫よ、

 そのレオタードを着ているときはあなたは立派な女の子。

 新体操部の部員よ…

 さぁ、練習に行きましょう、

 そして、練習のあと…

 ふふ、君には特訓をしてあげるわ、

 そのお股にイヤらしい染みをいっぱい作りましょうねぇ」

と囁きながら美咲は卓郎の手を引っ張ると、

新体操部員達が練習をする体育館へと連れて行った。



やがて練習時間が終わり、

体育館より部員達が去っていくと、

「あぁ、せっ先輩…」

「ふふ…

 リボンが絡み合ってイヤらしい格好…

 ほらぁ

 良く見なさい。

 あなたのお股はもぅビショビショ…

 レオタードがお股だけ水着になっているわよ」

「いやぁぁ、

 そんなこと言わないで…」

「ふふっ

 たっぷりと調教してあげるわ、

 良いこと、

 毎日ちゃんと来るのよ、

 あなたは新体操部員なんだからね」

「あっあぁぁ…」

淫らな宴はまだ始まったばかりだっが、

しかし、その一方で、

「さて、

 今度の発明品は何時まで持つかなぁ…」

と体育館で繰り広げられる宴を

科学部の部室に据え置かれたモニターより監視する春子の姿があった。



おわり