風祭文庫・アスリート変身の館






「白アシの香織」
(第7話:香織の贄)



作・風祭玲


Vol.745





「おーぃっ、

 青葉ぁ」

梅雨明けしたばかりのある日の午後、

その日を締めくくるホームルームが終わり、

帰宅する者、部活に向かう者でごった返す廊下で、

青葉俊輔を呼ぶ声が響き渡った。

ビクッ!

響き渡ったその声に

廊下を歩いていた俊輔は一瞬、身を縮ませると、

「これから部活かぁ?

 大会近いんだっけな」

と気安そうに話しかけながら

俊輔の幼馴染である有馬潤が剣道着姿で駆け寄ってきた。

「あっ有馬…か

 なっ何か用?」

潤に向かってそう呟く俊輔の姿はなぜか冬の制服姿のままで、

半袖・白シャツが埋め尽くす廊下の風景の中では浮いた存在であり、

まるで隠すかのように胸を両手で覆い、

声をかけてきた理由を尋ねると、

「はぁ?

 何か用って…

 にしてもさぁ、

 お前、なんで制服なんか着ているんだよ、

 暑いだろうが…」

俊輔の姿を見ながら潤は呆れながら尋ねる。

すると、

「え?

 まぁ、

 ちょっと体を壊して…」

と何かに怯えるようにして俊輔は返事をするが、

以前なら、水泳部のジャージをパタパタと仰ぎながら、

『暑いなぁ…さぁてひと泳ぎしてくるか…』

と威勢良く返事をしたのであった。

とても同一人物とは思えないこの変わりように、

潤は困惑をしながらも

「そっそうか、

 まぁ、

 体が資本だからな大事にしろよ」

そう言って、

ポン

と潤の胸を叩くと、

プルンッ!

男の体ではありえない弾力で潤の手を弾いた。



「ひっ!」

その途端、俊輔は甲高くなった声で小さな悲鳴をあげると、

ギュッ

きつく胸を隠し、

慌てて走り去っていった。

一方、

「え?」

そんな俊輔の態度に潤は、

「…なにやってんだ?

 あいつ…

 でも、

 なんだ、あの感触は…」

と首をひねりながらも、

自分の手を弾いた感触を不思議がり、

「(まるで…

  女の胸のような…

  それに、奴の尻ってあんなに大きかったっけ?)」

と形を変えている俊輔の姿に疑問を持った。

すると、

「有馬ぁ〜っ」

と潤を呼ぶ声が響いた。

「え?」

声に呼ばれて潤が振り返ると、

「なぁ、

 おかしいだろう?

 青葉の様子…」

俊輔と同じクラスで剣道部員の

高田充と柴田健二が声をかけてきた。

「あぁ…

 話には聞いていたけど

 一体どうしちゃったんだ?

 俊輔は?」

二人に向かって潤は理由を尋ねるが、

「さぁ?

 俺達にも何がなんだか…」

「でもさ、

 確かに女っぽくなっているだろう、

 あいつ…」

と二人も首をひねるばかりだった。



剣道部の稽古が終わった後、

潤は思い切って水泳部の部室へと向かってみたが、

だが、そこには俊輔の姿は無く、

また、残っていた部員に聞いても

最近、俊輔は部活には出ていないとの返事だった。

「部活…

 休んでいるのか?

 そんなに悪い病気なのか?」

長い付き合いもあり、

俊輔の体調を心配した潤は、

その帰り道、

彼の自宅に寄ってみたが、

家の人の話では

最近、午後9時以降にならないと帰ってこない。

と言う返事が返ってきた。

「一体、

 どこで、

 何をしているんだ?」

不可解な俊輔の行動に

翌日、潤は改めて水泳部を訪れると、

「なぁ…

 俊輔…じゃ無かった、

 最近の青葉のことで話を聞かせてくれないか?」

と尋ねたが、

「さっさぁ?」

「僕達には何も…」

「なぁ…」

誰かに口止めされているのか

部員達の口はなぜか重く、

ただ、最近俊輔は部活を休んでいる。

という言葉を繰り返すだけであった。

「なにか…

 あるのかな?」

持ち前の勘の鋭さから、

俊輔の身に人には言えない異変が起きているのでは

と思いながら潤が水泳部の部室から出てくると、

「えっと、

 有馬君だっけ…

 剣道部の…」

と言う声が響いた。

「はい?」

その声に有馬は振り向くと、

「こんにちわ」

そう挨拶をしながら紺色の競泳水着を身に着けた少女が一人立っていた。
 
「えっと誰でしたっけ?」

少女を見ながら潤は名前を尋ねると、

「あら…

 私の名前知らないですか?

 水泳部の女子キャプテンを務めます、

 水上香織ですよ」

と少女・香織は小さく笑いながら自己紹介をする。

そして、

「水泳部に何かご用ですか?

 あっもしかして入部希望?」

口に軽く手を当てながら香織はそういうと、

「ちっ違います、

 僕はただ俊輔の様子が最近気になって…」

潤は慌てて入部の意思が無いこと、

とここを訪れた理由を説明をした。

「なぁんだそうなの、

 残念ねぇ…

 青葉君なら体調が悪いので当分練習は休みます。

 って届出が出ているわ、

 彼の帰りは遅いのは

 どこかの病院に通っているためなんじゃないの?」

香織はそう告げると、

潤に向かって歩き始めた。

そして、すれ違いざまにポンと肩を叩くと、

「水泳部に入部する気があるのなら、

 いつでも歓迎ですわ、

 あなたなら白アシがお似合いでしょうね」

と小声で囁いた。

「え?」

香織のその言葉に潤が振り返ると、

「さぁーて、

 練習

 練習」

別れの挨拶か、

上に掲げた右腕を左右に振りながら

香織はプールへと向かっていく。

「白アシが似合うって…

 何だそれは…

 って、それよりも

 何であいつが俊輔の帰りが遅いことを知っているんだ?

 部活を休んでいるんじゃないのかよ…」

香織と別れた潤は彼女が告げた言葉の中に矛盾を感じていた。

そして、

「この水泳部…

 なにかあるな…」

と、外から水泳部の部室をにらみ付けていた。



その翌日から潤の監視が始ったが

だが、ほぼ同時に期末テストが始まり、

の監視も残念ながら一時中断の憂き目になってしまった。

そして、期末テストが終わった放課後、

「ちっ、

 あれこれしていたら

 すっかり遅くなってしまった」

剣道部での雑用に追われて帰宅時間が遅くなってしまった潤が

文句を言いながら校庭を歩いていると、

バシャッ

バシャバシャバシャ

と何者かがプールで泳でいるのか、

水の音が響いてきた。

「あん?

 こんなに遅くまで練習か?

 ご苦労だなぁ、

 テストの後ぐらい休めばいいのに」

プールの方を見ながら潤はそう思うが、

「!!っ

 こんな遅くって

 灯りもつけずに練習かよ、

 これはちょっとおかしいな」

ワンクッション置いて、

その異常さに気づくと、

潤はプールへと駆け寄っていった。

「はいっ

 あと一本!よ、

 そらそら、

 青葉っ

 頑張れぇ!

 その勢いなら女子の大会記録よぉ」

とプールの中から香織の声が響く。

「青葉?

 俊輔が泳いでいるのか?

 でも、女子の大会記録って…

 あいつ、

 男だろう?」

香織のその声に潤は首をひねり、

鍵が開いている柵からプールの中へと入って行く。

そして、

プールサイドに立ったとき、

「!!っ」

潤はその目に飛び込んできた異様な光景に思わず目を見張った。



「青葉…
 
 お前、青葉なのか?」

信じられないものを見るような目つきで潤は俊輔を指差し、

そして声を上げると、

「あっ…

 有馬…」

咄嗟に俊輔は自分の膨らんだ胸を隠してみせるが、

だが、すらりと伸びた脚。

魅惑的に膨らんだヒップ。

括れたウェスト。

そして、美しいラインを描くバストと、

それらを美しく表現してみせる

女子用競泳水着・白アシ…

「青葉…

 お前の体…

 まるで女じゃないか、

 それに、その水着って女用のだろう?

 なんでお前が女の格好を…

 なんで女になっているんだよ」

言葉に詰まりながら潤はゆっくりと近づきはじめる。

そして、近づくにつれ、

俊輔が身に着けている白アシは水に濡れ、

中ばスケスケの状態であること、

さらに、透けているために、

彼の股間には男性のシンボルが無く、

代わりに女性の縦溝が刻まれていることを、

潤に告げ始めていた。

「そんな…

 そんな…

 俊輔が…

 女にだなんて…」

恥ずかしいのか、

両手で胸を隠し顔を伏せる俊輔に向かって、

潤は幾度もそう言い続ける。

そして、俊輔の傍に立ったとき、

「なぁ、

 嘘だと言ってくれよ、

 お前が女だったなんて…

 なぁ…」

と迫りながら、

露になっている俊輔の両肩に手を置こうとしたとき、

ガッ!

いきなり潤の後頭部に強烈な衝撃が走ると、

「うぐっ」

まるで崩れるようにして潤はその場に倒れてしまった。

そして、

「まったく、

 勝手にプールに入ってくるなんて…」

と倒れてしまった潤の後ろより

棒のようなものを持つ香織が姿を見せると、

「さぁて、

 青葉さん。

 特訓の続きよ」

プルン!

露になっている乳房を揺らせながら、

香織はそう告げた。




「うっ」

どれくらい気を失っていただろうか、

潤が気が付くと、

一人、プールサイドに寝かされていた。

「ここは…

 プール…

 おっ俺、何をしていたんだっけ?」

痛む頭を手で庇いながら潤は周囲を見ると、

ゾクッ

言いようも無い寒さを感じた。

「うっ

 寒い…

 って、あっあれ?

 俺なんて格好を…」

思わず身をすくめるのと同時に

潤はあるものを着せられていることに気が付くと、

慌てて立ち上がった。

「こっこれは…」

外灯の明かりを受けて仄かに輝くのは、

紛れも無い、女子用の競泳水着・白アシであった。

「なんで…

 女の水着を…」

剣道で鍛え上げた男の体に張りつく、

女性用競泳水着の存在に潤は驚いていると、

「こんばんわ、

 有馬潤さん」

と香織の声が響き渡った。

「!!っ」

その声に潤が振り向くと、

「うふっ」

プールを挟んだ反対側にあの水泳部キャプテン・香織が立っていたのだが、

だが、香織は上半身裸のトップレスの姿で立っていて、

その股間には男性用と思われる競泳パンツが穿かれていたのであった。

「みっ

 水上…

 お前、何て格好で…」

男性用競泳パンツを穿く香織に向かって、

潤は声を上げると、

「ようこそ、

 新水泳部へ…

 ふふっ、

 あたし達、新水泳部の秘密の特訓を見てしまった以上、

 あなたは新水泳部の部員よ」

と香織は告げる。

「はぁ?

 なに、イカレたことを言っているんだよ。

 第一、俺は水泳部に入る気なんて…」

そんな香織に向かって潤が怒鳴り返そうとしたとき、

スッ

潤の両脇の下から手が飛び出してくるなり、

サワッ

白アシが覆う胸板に触れると、

キュッ!

っと乳首を抓った。

「うわっ!」

突然の出来事に潤は思わず脇を締め、

乳首を抓る手を払おうとすると、

「うふっ、

 感じた?

 潤も女の子になれる素質があるよ」

と声が囁く。

「!!っ

 その声は…俊輔か?」

肩越しに潤が尋ねると、

フニッ

今度は左右に膨らむ膨らみが潤の背中に押し付けられ、

さらに柔らかい肌の脚が潤の脚に絡みついてきた。

「しっ

 俊輔…

 お前、本当に女になったのか?」

男のモノとは思えないその感触に潤は尋ねると、

「そうなの…

 女の子のされちゃったの…

 キャプテンの手でね」

と俊輔は答え、

さらに、

「あたしたちの秘密を知ってしまった以上、

 潤も女の子になるの…

 大丈夫、

 これまで剣道で鍛えてきたんだから、

 速いスイマーになれるよ、

 無論、女の子のね」

と付け加えた。

「俊輔っ

 お前、女にされておかしくなったか?

 冗談はやめろ!」

背後から抱きつく俊輔を振り解こうとして、

潤は激しく体を左右に振るが、

まるでコバンザメのごとく俊輔は潤からは離れず、

さらに手を這わすと、

「潤のココ…

 もぅいらないよね」

と股間を盛り上げる膨らみをさすり始めた。

「うわっ

 そこに触るなっ

 手を離せ!」

白アシ越しに感じる刺激に潤の股間は見る見る膨らみ、

見事なテントを作り出した。

すると、

「さぁ、

 その邪魔なものを取ってしまいましょう」

プールサイドの向こう側にいたはずの香織が

いつの間にか潤と俊輔の傍にくると

「あなたも親友として、

 俊輔クンを手伝ってあげてね」

と告げながら香織は小さな注射を見せると

潤の腕につきたてた。

「うわぁぁぁ!!」

その直後、

潤の悲鳴が夜空にこだまするが、

それを聞きつけて誰も駆けつけてくるわけも無く、

「あっあっあぁぁぁ…

 女に…

 女になっていく…」

俊輔の手が解かれた潤はその場に崩れるようにして座り込んでしまうと、

シュゥゥゥゥゥ…

頭を抱え、

女性へと変身してゆく自分の身体を見ているだけだった。



こうして全てが終わり、

自分の股間には女性の溝をくっきりと浮き出す潤を

俊輔はそっと抱きしめると、

「落ち込まないで潤。

 女の子として生きるのも悪くは無いわ」

と囁き、

そして、

「だって、

 可愛くなれるじゃない」

と続けると、

まだ汚れを知らない潤の股間に手をすべられていく、

「俊輔…」

「うふっ、

 プールに入ろう…

 水の中ってとっても感じるのよ」

俊輔の行為に戸惑い気味の潤にそういうと、

チャポン

チャポン

二人はプールの中へと飛び込み、

その中で互いに唇を重ね合わせると、

股間と股間を重ね、

競うようにして艶かしい声を上げはじめる。



「ふふっ、

 また一人、新水泳部に部員が増えたわ…

 男の子が水着が似合う女の子に、

 女の子は競パン姿の男の子になって

 互いに感じ合い競い合う新水泳部。

 あぁ、なんて素晴らしいのかしら、

 あたし…とっても感じちゃう」

そんな二人を見ながら香織は自分の股間を覆う競泳パンツに指を這わせると、

一人絶頂への階段を駆け上っていったのであった。



つづく