風祭文庫・アスリート変身の館






「感換丹」
(望美の場合)



原作・風祭玲

Vol.789





チャプン…

チャプン…

日が暮れ、

夕闇が迫ってくると、

プールサイドを叩く波の音が低くこだましてきた。

そして、その音を打ち消すように、

「はぁはぁはぁ」

激しい息遣いの声と、

「あっあっあっあっ」

弄ばれる少年の声が響き渡ってくる。

「なんだかんだ言っても、

 結構敏感じゃないかよ」

丸刈りの頭に競泳パンツ姿の少年が囁きながら、

光沢を放つ競泳パンツの膨らみ同士を重ね合わせ、

少年は喘ぎ声をあげる相手の上に体重をかけるようにして圧し掛かり、

さらに背中へと手をまわすと、

ゆっくり手を降ろして尻の中へと手を這わせようとした。

だが、

「やっ止めてください、

 先輩!」

身体を激しくこすり付けて、

蠢く手の動きを封じながら少年・純が訴えると、

「何が止めてなんだ?

 誘ってきたのは純、

 君だろう?」

と上に圧し掛かる少年・博はそう囁くと、

「誘ってだなんて…

 僕は先輩に…」

そう言いかけたところで、

博の手がスルリと動くと、

キュッ!

純の競泳パンツを思いっきり引き上げた。

「あっ!」

きつく食い込んできた競泳パンツの感触に純は思わず声を上げてしまうと、

「嘘をついてもダメだよ、

 お前の身体はとっても正直じゃないかよ。

 思いっきり食い込んだ競泳パンツってたまらないだろう?

 今度は六尺でやろうぜ」

と囁く。

「そんな…

 僕は…」

その囁きに純は何か言い返そうとするが、

「神聖なプールサイドでこんな破廉恥な行為はするものじゃないか?

 だからこそ、いいじゃないかよ。

 もっと自分に素直になれよ、

 純、俺はな、

 お前に惚ちまったんだよっ」

その言葉を封じるように博は告げると、

大きく膨らんでいる純の股間に手を入れ、

グニッ!

競泳パンツの中で息苦しそうにしている肉の棒を思いっきり握り締めた。

「うっ」

その行為に純は身体を硬くすると、

「へぇぇ

 こんなにチンポおっ勃てやがって、

 お前も男が好きなんだろう?」

博は呟くと、

「やっやめて…

 止めてくれぇ

 離してくれ!」

純は乾いた声を上げながらそう懇願するが、

しかし、純のその声が博の心に火をつけてしまうと、

博はゆっくりと純の顔に自分の顔を近づけ、

チュッ

その頬にキスをする。

「・・・・」

もはや純はなにも口にすることが出来なくなってしまった。

ただ、博の行為が一刻も早く終わることを祈るのだが、

「純っ、

 お前が好きだ」

純の頬に舌を這わせつつ、

博はそう言うと、

ゆっくりと身体を回し、

徐に自分の腰を上げると、

純の顔のまん前に自分の膨らみきっている股間を晒した。

そして、

「なぁ純っ、

 俺のチンポを舐めてくれ」

と懇願すると、

グリッ

虚栄パンツが覆う自分の股間を純の顔にこすりつける。

「うっ」

塩素の匂いと共に競泳パンツから漂ってくる男の臭いに、

純は思わず顔を背けるが、

ハムッ!

ギュッギュッ

ギュッギュッ

突然、純の股間を生暖かいものが包み込むと、

純のいきり立つ肉棒を競泳パンツ越しに刺激し始めた。

「!!!!っ」

ビクンッ!

その感触に純の身体は大きく跳ね上がると、

「そうかそうか、

 そんなに気持ちいいか」

純が見せた反応を満足げに見ながら博はそう呟くと、

「さぁ、

 俺にも同じようにしてくれよ…」

と囁き、

生臭さを漂わせ始めた股間を押し付ける。

そして、

ハムッ!

再び純の股間を噛むと、

ピチャピチャ…

と競泳パンツごと舐め始めた。

「うぅっ

 先輩が僕のを…

 そんな…汚い…

 汚いのを…」

まさにそのときの純は、

獰猛な獣に首根っこを押さえつけられている一頭の草食獣だった。

逃げようともがけばもがくほどその傷は深くなり、

そして、流れる血を猛獣に舐め取られる。

このまま餌食になってしまうか、

それとも…

「止めてください。

 僕は…

 こんなことは…」

自分を押さえつける脚を押しのけながら、

純は抵抗をすると、

「うわぁぁぁ!!」

ついに悲鳴と共に博を突き飛ばしてしまうと、

脱兎のごとくこの場から逃げ出して行ってしまった。



ピロピロ…

ピロピロ…

鳴り響く電子音に、

ハッ!

望美は目を覚ますと、

「あっ!」

何かを思い出したように飛び起きて自分の体を確かめはじめた。

そして、

「あっ…

 女の子だ…」

プックリと膨れる2つの乳房と、

新体操で鍛えたキュッと引き締まるウェストを確認しながらホッとするが、

だが、

ヒヤッ…

股間を覆う下着から冷たい感触を感じると、

「あぁぁぁ…」

望美はベッドから飛び出し、

大慌てで下着を押し下げる。

すると、

ビンッ!

望美の縦溝の上から真っ赤に充血した豆が飛び出しているのと同時に

ジュル…

縦溝の中から溢れかえる愛液で下着はもちろん、

股間までもシットリと濡れてしまっていた。

「あちゃぁ、

 どうしよう」

そんな自分の股間の惨状を眺めつつ、

望美は頭を掻き揚げると、

ティッシュを取り出し後始末を始めだす。



「はぁ、またあの夢…

 あたしどうしちゃったのかなぁ。

 男の子になりたい。だなんて願望があるのかしら」

学校に向かう通学路で望美はため息をつきながら、

今朝方見た夢のことを思い出していた。

そう、ここ数日、

望美は純と言う男の子になって

同性の先輩から性的な恥辱を味わう夢ばかり見るのである。

「はぁ…

 でもなんか気持ちよかったなぁ、

 男の人ってあんな感じなのかな」

夢の中とはいえ男の子の性的な一端を知ってしまった恥ずかしさからか、

望美は頬を赤らめていると、

「おはよーっ!、

 望美ぃ

 どうしたの?

 顔が赤いよ」

の声と共に同じ新体操部の頼子が声をかけてきた。

「え?

 べっ別に」

その指摘に望美はそっぽを向くと、

「うふっ、

 朝から先輩とのひと時を思い出していたの?

 大会を控えて先輩、

 結構欲求不満になっているから

 激しかったでしょう?」

と頼子は皮肉を言う。

「うっ」

その指摘に望美は思わず言葉を詰まらせてしまうと、

カァァァァ!!

望美の顔はさらに真っ赤になり、

「だっ誰が!」

と怒鳴ってみるが、

「判ってます、判ってますよって、

 そりゃぁ、

 先輩からの命令とはいえ、

 試合用のレオタードを着て

 先輩と付きっ切りで練習に励めば、

 愛の一つも育くまない方がおかしいって、

 で、先輩のお味はどうだった?

 あっ逆に食べられちゃったか?」

とニヤケながら頼子は尋ると、

ついに我慢も限界に達したのか、

「いい加減しにしてよ!」

と怒鳴り声を上げ、

「もぅ、一刻も早く忘れたいのに!!!」

そう言いながらその場で頭を抱え込んでしまった。

実は昨日、新体操部の練習があけた後、

望美は先輩である由香に呼び止められると、

試合用のレオタードを着用しての居残り練習を命じられたのであった。



周囲から評判の良い、

花をあしらった赤紫色のレオタードを着用しての居残り練習。

すなわちそれは同世代の男性の姿が無い女子校という特殊な環境下における

女の情欲の処理係を意味し、

同じレオタード姿の由香の前に望美が向かうと、

由香の猛特訓につき合わされたのであった。

そして特訓の締めくくりとして由香は迫ると、

汚れを知らない望美を毒牙にかけようとした。

しかし、

「いやぁぁぁ!!」

望美は叫び声と共に由香を突き飛ばしてしまうと、

そのまま逃げ出してしまったのであった。

ゾワァァァ…

思い出したくないその時の光景を思い出した望美は背筋を寒くさせると、

「由香先輩、

 結構前から望美に目をつけていたみたいだから、

 もし、昨日、先輩に失礼なことをしたら、

 お仕置きされるかもよ、

 特に今日の練習後あたり…」

そんな望美の脇を突付きながら頼子はダメを押す。

「やっやめてぇ!」

それを聞かされた望美は悲鳴を上げると、

ダッ!

まるでその場から逃げ出すように

学校の方向とは反対方向に走り出してしまった。

「いや、

 いや、

 いや、

 何であたしが先輩に抱かれなければならないの、

 抱かれるのなら男の人と…」

そう念じながらただひたすら走り続けていると、

ドンッ!

「あっすみませんっ」

飛び出してきた男性とぶつかり、

望美は反射的に謝った。

だが、

「うそ!」

「あれ?」

互いにぶつかった相手の顔を見たとき、

望美はその男性が夢の中のあの男性・純であることに気付くと、

思わず彼を指しながら声を上げ、

男性もまた望美の顔を見て、

同じように驚いていた。



「そっそうですか、

 ぼっ僕があなたの夢の中で…」

「あの、あたしのこと…

 夢で見ているんですね」

”早朝からも営業”

の幟が建つディスカウントストアの中で、

望美と純は互いに自己紹介をすると、

互いが見ていた夢の奇遇さに感心をしていた。

「あの…

 夢であたしのことを見ていると仰っていましたが、

 ということは、

 あたしと先輩のことも?」

顔を赤らめながら望美は尋ねると、

「えぇ…

 ほぼ一部始終を…」

と純は返事をする。

「うっ、嫌だわぁ…」

それを聞いた望美は顔を背けると、

「いや、

 あの、ワザとではなくて…」

そんな望美を見て純は慌てて取り繕うが、

「でも、あたしも見ているんですよね、

 純さんと先輩との関係も…」

と望美は言いながら純を見た。

「うっ

 そうですよね。

 あっあの、

 だからと言って、

 僕は…

 その、男性が好き。だなんてことは

 絶対に無いですから」

望美に向かって純はそう強調すると、

「わっわたしも…

 好き好んで女性同士であのようなことはしていません」

と望美も同じように強調した。

「はぁ…」

「ふぅ…」

互いに主張しあったのち、

同じようにため息をつくと、

「このまま学校にいって、

 部活に出れば先輩が手薬煉を引いて待っているだろうし、

 僕は男の人に抱かれるは嫌だよ」

「あたしだって、

 女の人に抱かれるのは嫌」

「そんな時、

 いっそそのときにはこの身体を交換できたらなぁ…」

と声をあわせて呟いた。

その途端、

『聞かせてもらいましたよぉ〜っ!』

ヌゥ!

その言葉と共に二人の前に和服姿の老人が姿を見せると、

ニタリと笑う。

「うわっ」

「ひぃっ」

突然出てきた老人に二人は驚き、

「だっ誰?」

と怯えながら尋ねると、

『ほっほっほ、

 そんなに驚かないで下さい。

 申し送れましたがわたくしはこの店の店長ですので、

 あぁ、これ名刺』

老人は笑いながら自己紹介をすると、

二人にそれぞれ名刺を手渡した。

「”心と身体のお悩み解決します。

  ディスカウントストア業屋

  店長・業屋庵”」

二人は名刺を読み上げると、

『さぁさぁ、

 こちらにおいでください。

 お二方にぴったりの商品がございます』

と告げるなり店長は純と望美を案内しはじめる。

「どうする?」

「うっうん」

そんな店長の姿に二人は一度顔を見合わせた後、

素直に後を付いていくと、

『お二方とも同じ夢をご覧なられているそうですなぁ、

 しかも、相手が体験したことを夢としてご覧になる。

 一見珍しそうで、実は間々ある話なのですが、

 そういう方の場合、

 感換丹という商品をお使いなることをお勧めします』

店長はそう言いながら、

ディスカウントストアに併設されているドラッグストアへと出向き、

そこの店員に向かって何かを話しはじめた。

やがて、

『これでございますなぁ』

と言いながら店長は包装がされた小さな箱を2つ持って来る。

「これが?」

店長の手に収まっている箱を見ながら純が尋ねると、

『それでしたら、

 業〜ちゃんに代わって

 この私が説明してあげますわぁ』

店長を押しのけてドラッグストアの女性店員が前に出て来るなり、

二人に向かって説明を始めるが、

その口調、態度、

どれをとっても威圧的で、

時には店長を小突いたりもしながら、

とても客商売とは思えない有様であった。

「はぁ…

 こんな人もいるもんだなぁ」

半ば呆れながら純は説明を聞いていたが、

『コホン!』

店員は咳払いをすると、

『さぁーて、ここからがお楽しみよ』

と煽り始め、

『なぁんて言っても、

 この”感換丹”の凄いところは、

 ピンク色のドリームを飲めば、互いの触覚を取り替えちゃって、

 赤のルージュを飲めば、嗅覚。

 黄色のレモネードを飲めば、味覚。

 緑のミントを飲めば、聴覚。

 そして、青のアクアを飲めば、視覚と

 人間の五感を自由に取り替えちゃったりしちゃったりしちゃったりする

 とっても凄い仁丹なの』

とボルテージを上げながら説明をする。

「!」

「!」

その説明に二人は顔を上げると、

「じゃぁ、

 先輩の相手をさせられそうになったとき」

「互いに連絡を取ってこの薬を飲めば」

「僕は女の人と」

「あたしは男の人と…」

明るい表情をしながら言い合い、

そして、

「おばさんっ、

 この薬、幾らですか!」

と声をそろえた。

『お姉さんっ

 だっつーのっ!』

水下のネームプレートをつける店員の怒鳴り声をあげると、

『とは言っても、

 いきなり感換丹を飲んでも感覚交換はできないわよぉ、

 飲んだ後に、

 ”デュアル・スピリチュアル・パワー”

 と掛け声をかけたときに発動をするわ』

と説明をする。

『コホンッ

 あまり聞きたくは無い台詞ですな、

 それは…』

それを聞いた店長は一言小言を言うと、

「えーっ、

 別のがいいなぁ」

眉を寄せながら望美もかけ声に難色を示した。

『掛け声なんて何だっていいのよっ、

 要は二人の心がシンクロすれば交換する。

 って話よ。

 シンクロが外れれば元に戻るわ』

と店員は使用上の注意事項を告げた。

こうして、

二人は嬉嬉してレジへと向かっていくと、

互いにケータイの番号を交換し別れて行った。



そして、

「あら、望美、

 昨日、随分なことをしてくれたけど?

 よく部活に出て来られたものね」

部活が終わり人気が消えた体育館、

居残させられた望美に先輩の由香が近づいてくるなり、

望美のお尻を触りながらそう話しかけるが、

「はい…判っています」

その言葉に望美はそう返事をすると、

チラリと由香の胸を見た。

すると、

ムクッ!

試合用レオタードが覆う由香の胸の膨らみの頂点より、

プクッ!

っと小さな影が盛り上がっていて

彼女の乳首がすっかり硬くなっているのが見て取れる。

「(はぁ…

  なんで女相手に乳首を硬くしているのよ)」

それを見た望美は小さくため息をつくと、

「では、着替えのため一旦部室に戻りますので」

と言い残して体育館からから足早に立ち去り、

そのまま部室へと駆け込むと、

急いで試合用レオタードへと履き替える。

そして、周りに誰もいないことを確認して

ケータイを開いた途端、

純から電話が掛かってきた。

『案の定、さっき先輩から誘ってきたよ』

そう純が切り出してくると、

「あたしも先輩に誘われたところなの」

望美は返事をする。

すると、

『じゃぁ、

 感換丹飲もう…

 何色にする?』

と純が尋ねてきた。

その問いに望美は少し考え、

「5粒全部でお願い、

 あたしもぅ嫌なの」

全ての感覚交換を申し出ると、

『え?全部?

 それでいいの?

 判ったよ』

それを聞いた純からその返事が返ってくる。

すると、

望美はあの感換丹を取り出すと、

一気に5種類の粒を飲み込んだ。

そして、店員から言われた掛け声を上げると、

ギュンッ!

いきなり望美の視界が動き、

パッ!

気付くと望美は別の部室の中に立っていた。

「ここは?」

物珍しげに部室の中をキョロキョロしていると、

「あっ」

自分の上半身が裸であり、

股間に小さな競泳パンツを穿いていることに気がついた。

そして、改めて身体を見ると、

モリッと盛り上がった胸板。

グリッと腹筋が刻まれているウェスト。

ギュッと引き締まったヒップ。

そして、鍛え上げた脚。

そう、望美は男子水泳部員である純になっていたのであった。

「うわぁぁ、

 凄い…

 本当に交換をしたんだ」

そんな自分の姿を見ながら純は感心をしていると、

チャッ!

部屋のドアが開き、

「おいっ、

 いつまで待たせるんだ」

の言葉と共に純の先輩である博が姿を見せた。

「(彼がホモの先輩か…

  結構イケメンじゃない)」

競泳パンツ姿の博を見ながら”望美”は呟くと、

「先輩っ、

 お待たせしてすみません」

と返事をしながら”望美”は博の腕を取り身体を摺り寄せる。

「おっ、

 なんだ、随分と積極的じゃないか、

 なんか拍子抜けしちゃうな」

何時もにも無く積極的な純の態度に博は困惑しながらも、

「今日の特別メニュー

 判っているだろうなぁ」

と告げながら、

純の競泳パンツの盛り上がりを軽く触る。

その博の行為に

「えぇ、

 判ってますよ」

”望美”は笑みを似せながら、

博の腰に手を添えると、

二人はプールサイドに向かい、

そしてその後、

男と男の熱い咆哮がいつまでも続いていたのであった。



おわり