風祭文庫・アスリート変身の館






「白アシの秘密」



作・風祭玲


Vol.662





「はぁ…」

あたしの口から思わずため息が漏れる。

秋風が漂い始めた晩夏の午後、

あたしはトボトボと国道脇の道を歩いていた。

「はぁ…」

再びあたしの口からため息が漏れ、

「もぅちょっとでレギュラーメンバーになれたのに」

と後悔を滲ませる言葉が続いて出る。

あたしの名前は竹沢琴美。

16歳の高校1年生なんだけど、

いま、あたしの頭の中にあるのは”後悔”の二文字であった。

そして、

「はぁ…

 あたしに力があればなぁ…」

と自分の細い手を眺めながら悔やんだ。

中学から続けてきた水泳。

高校に入っても水泳部を選んだんだけど、

でも、そんなあたしに突きつけられたのは歴然とした力の差。

それはそうだ、

中学と違って高校ではいろんな学校から人は来る。

だから中学で1番だったあたしが

高校で1番になれるほど甘くはないとは思っていた。

でも、あたしはレギュラーメンバーの選考から漏れてしまったのだ。

「美津江ちゃんはいいよなぁ…」

中学時代、あたしと共に水泳部に入り、

そして、今度の選考でレギュラー入りした友達の名前が出てくる。

「はぁ…」

自然とあたしの脚は遅くなり、

そして、立ち止まったとき、

ゴワァァァァァ!!!

あたしの真横を大型トレーラーが猛スピードで通り過ぎてゆくと、

ブワッ!

風に煽られた制服のスカートが大きく巻き上げられてしまった。

「きゃっ!

 エッチ!」

慌ててめくれ上がるスカートを押さえあたしは文句を言うが、

しかし、トレーラーはそんなあたしに構わずに走り去って行く。

「もぅっ!

 人が落ち込んでいるっていうのに(ベェェ)」

次第に小さくなっていくトレーラーに向かってあたしは舌を出していると、

「なに女の子みたいなことをして居るんだよ」

と男子の声。

”うっ

 この声は…”

聞き覚えのある声にあたしは振り向くと、

キィ…

あたしの背後に自転車が止まり、

それを跨いでいる日焼けした顔があった。

男子水泳部・三宅健二。

小学校、中学校、そして高校と、

どういう訳かあたしの傍にいつもその顔があり、

それどころか、部活まで一緒。

まさに、あたしに意地悪をするためにこの世に存在して居るのだと、

常日頃思っている嫌な奴である。

「なっなによっ」

半ば睨み付けるようにあたしは返事をすると、

ピッ!

健二は徐にデジカメを取り出し、

「…いやね、

 新聞部の連中から手伝って欲しいっていわれてな。

 街角の笑顔…

 つぅータイトルに相応しい取材をしてきて欲しい。

 って言われたんだけど、

 うーん、

 いまのシーンが学園のマドンナ・白鳥優香さんなら、

 この画像も高値で取引されるだろうけど、

 竹沢のじゃぁなぁ…

 さしずめ、コンピュータウィルスぐらいにしかつかえないか」

とため息混じりに言う。

「なっなによっ

 その言いぐさは」

健二の言葉にあたしは突っかかると、

ビシッ

健二はあたしに向かってデジカメの液晶画面を突きつけた。

すると、そこにはさっきのシーンを撮影したのであろうか、

スカートを押さえるあたしの画像が表示されていた。

「いっ何時撮ったのよ」

その画像を見ながらあたしは文句を言うと、

ピッ

ピッ

ピッ

画像をあたしに見せながら健二はデジカメを操作し、

そして、

「ハイ、消去!」

と声を上げた途端、

デジカメに表示されていたあたしの画像が消えてしまった。

「なっ」

躊躇いもなくあっさりとあたしの画像が消えてしまったことに、

ホッとする気持ちがわくの同時に、

画像を消す作業をいとも躊躇いもなく行った健二に対して、

怒りがこみ上げてくると、

無意識にあたしの手が上がり、

ブンッ!

健二目がけて一気に振り下ろした。

バチン!

周囲に大きな音が響き渡り

間髪入れず、

「健二のバカ!!!!」

あたしの怒鳴り声が響き渡った。

「なにするんだよっ!

 この男女!!!

 そう言うバカ力はプールで出せよ」

頬を押さえる健二の叫び声が響くが、

その時にはあたしはダッシュで走っていた。

”バカバカ

 みんなでよってたかって…”

がむしゃらにあたしは走り続けた。

そして、

「ただいまぁ!!」

その勢いを保ったまま家に戻るのと同時に、

「あら、琴美、

 随分と早かったのね」

とママの声。

「え?

 そっそかな…」

その声にあたしは頭を掻きながら返事をすると、

「なにレギュラー落ち?」

とママは痛いところをつく。

「うっ(グサッ)」

その指摘にあたしは声を詰まらせると、

「理由は聞かないわ、

 琴美は頑張ったのだから…」

とママは慰めてくれるが、

でも、そのママの気遣いが返ってあたしの心を締め付けてくる。

「うっうん」

ママの言葉にあたしはそう返事をすると、

そのまま自分の部屋へと向かっていった。

「あっ、

 水着、出して置いてね
 
 洗っておくから」

そんなあたしの背後からママの声が響く。

「うん…」

その声にあたしは短く返事をして、

自分の部屋のドアを開けた。

ぱふっ

部屋に入るのと同時にあたしはベッドの上に倒れ込む、

「はぁ…

 なんであんな賭けしちゃったんだろう、

 沼田先輩に勝ち目なんてないのに…」

ベッドの上で仰向けになりながら

あたしは選考で1年先輩の沼田先輩と交わした掛けについて思い出した。

沼田先輩はあたしが水泳部に入ってから、

なにかとあたしを目の敵にしているイヤな人だった。

今日もそう…

『あら、随分と余裕じゃない』

『別に余裕なんてありませんよ』

『うふっ

 嘘おっしゃい。
 
 あたしからレギュラーの座を奪うつもりでしょう?
 
 顔に書いてあるわ』

『そんなこと、

 全然思っていません』

『そうかしら…』

プールサイドで沼田先輩と交わした会話があたしの頭の中によみがえってくる。

そして、

『そうだ、

 一つ賭をしてみません?』

『賭ですか?』

『そう、これから行われる選考会でレギュラーから漏れた方が、

 今後の部活はコレを履いてするというのはどうかしら…』

『せっ先輩、

 それって、男の人の…』

『えぇ、

 そうよ、男性用の競泳水着…

 あなたも水泳部なら、

 レギュラーメンバーが着ることが許される

 P2素材の白アシの事は知っているでしょう。

 これも、同じP2素材でつくられた競泳用パンツ…、

 うふっ、

 男用だから女性向けと違って隠すところはお股だけ…

 どうかしら』

『どうかしらって…

 そんなのあたし穿けけませんよ』

『あら、もぅ敗北宣言?』

『そうじゃなくて…』

『じゃぁ、受けてくださる?』

『だから…』

『うふっ

 決まりね』

『せっ先輩…』

ほとんど強引な賭だった。

大体、なんで男子用の競泳水着を着なくてならないのか、

その理由がわからなかった。

でも、沼田先輩の手に乗ってしまったあたしは、

そのまま選考会に出たものの、

しかし、賭のことが頭から離れず、結果は無惨なことに…

そして、

『うふっ、

 賭は賭ですわ…』

更衣室に戻ったあたしに向かって

沼田先輩は競泳水着をあたしに突きつけたのであった。



「はぁ…」

またあたしの口からため息が漏れる。

そして、身体を横向きにすると、

モゾッ

あたしの手が動き、

スカートの中へと潜り込んでいく。

すると、

スルッ

あたしの股間にはすべすべした感覚共に一枚の下着…

いえ、男子用の競泳水着・競パンの感触が指の先に伝わってきた。

そう、あたしはいまその競パンを穿いているのだ。

更衣室で沼田先輩に無理矢理穿かされた白い男子用の水着。

そう白アシがいまあたしの股間を覆っているのだ。

もし、あの時、

トラックがもっとあたしに近いところを通り過ぎていたら、

あの健二にあたしが男子用の白アシを穿いていることがバレたと思う。

もしそうなったら…

新学期、学校に行くのと同時にみんなから笑われることになったかも…

そう思うと、あたしはホッとする反面、

そうなって欲しい…と言う欲望が心の奥底からわき上がってくるのを感じた。

みんなの目の前で白アシ・競パン姿になり、

その姿のままプールで泳ぐあたし…

そんな自分の姿を妄想すると、

「はぁはぁ」

あたしの息は自然と乱れ、

そして、股間を覆う競パンの上に指を置き、

そこに刻まれている縦溝に沿って指を這わせた。

スーッ

スーッ

女子でもレギュラーメンバーしか着ることが出来ない

P2と言う素材で作られた競泳パンツの感触。

もし、メンバーに選ばれたらこの素材で作られた女子用の水着を着られるはずなのに、

選ばれなかった故に、男子用白アシを穿かされたあたし…

「あぁっ

 うっく…
 
 くはぁ…」

股間を覆う白アシに染みを浮かび上がらせ、

そして、白色故に染みの中にオマンコを透かせてながらあたしは

絶頂への階段を上っていく。

「あぁ」

クチョクチョ…

指の動きが次第に速くなり、

競泳パンツの染みはさらに大きくなっていく、

クチョクチョ…

クチョクチョ…

「あぁっ

 あ・あたし…

 穿いているの…

 男の子の水着を…
 
 レギュラー入りできなかったから、
 
 あたし…
 
 男の子の水着を穿かされたの…
 
 あぁ、
 
 見て、あたし…
 
 あたしは男の子…」

絶頂へと上り詰めていく身体を硬直させ、

その一方で、あたしの頭の中はこの競泳パンツ一枚でプールを泳ぐ自分を映し出す。

そして、

「あぁ…

 あぁ…
 
 あぁぁぁっ
 
 あぁぁぁぁっ
 
 あっあぁぁぁぁぁ!!」

競泳パンツ姿の自分を思い浮かべながらあたしは絶頂へと達してしまった。

けど、絶頂に達するのと同時に、

ピリッ!

ピリッ!

ピリッピリッ

あたしの身体になにか刺激が走ると、

「うっ

 なっなに…」

白アシに覆われたあたしの股間に何かが突き出ようとしていた。

「なにっ

 なにかが…
 
 うっ
 
 なにかが…
 
 出て
 
 出てくる、
 
 あっあぁ…
 
 いやっ
 
 いやっ
 
 いやぁぁぁ!!」

ズニュゥゥゥゥゥ!!!!

あたしの悲鳴が響き渡り、

そして、股間を覆う白アシが見る見る持ち上げられていくと、

モッコリ!!!

あたしの股間から大きなテントが突き出してしまったのであった。



新学期…

「まったく、

 琴美の野郎…
 
 あれっきり姿を見せなくなりやがって」

放課後、男子水泳部で競パン姿になった健二は、

あの日以来、姿を見かけなくなってしまった琴美の悪口を言う。

彼自身、文句を言うことで

琴美への引け目をごまかそうとしているのであるが、

でも、内心は会ったらあの時のことを謝ろうと考えていた。

その時、

「おぉぃ聞いてくれ」

男子水泳部のキャプテンがが姿を見せるなり声を張り上げると、

「新入部員を紹介する」

と叫んだ。

「新入部員?」

キャプテンの言葉に部室に居た皆が振り向くと、

「あっあの…

 よろしくお願いします」

の声と共に、

華奢ながらも張り出した胸板、

そして、6つに割れたお腹を晒し、

競泳パンツを穿いた一見少女にも見える少年が

部室に入ってきたのであった。



−もしもし、

 あぁ、春子ぉ?

 薬ありがとう、

 これで、あたしのレギュラーも安泰よ(うふっ)、

 出る釘は早めに潰しておかないとね−



おわり