風祭文庫・アスリート変身の館






「アスリート道場」


作・風祭玲

Vol.875





「あたし、運動をする!」

それはいつにも増して異様に暑かった夏が去り、

ようやく迎えた初秋の昼下がりの事だった…

夏休み明けの生徒でにぎわうカフェテラスに突然、吉祥寺沙羅の声が響き渡ると、

「はぁ?」

彼女を取り囲みティーを嗜んでいた制服姿の少女達が一斉に沙羅を見るが、

「あたし、決めたのっ、

 運動をして体重を3kg減らすのっ!」

と燃え上がるような闘気を振りまき沙羅は決意表明をしてみせる。

「まぁた始まったよぉ」

それを見た幼なじみの荻野美加はため息混じりに呟くと、

「毎年の恒例行事なんですね」

そんな美加を慰めるようにして伊加川知子は笑みを浮かべる。

「まぁね、

 で、今年のノルマは3kg?

 確か去年は4kgだったと記憶しているけど、

 去年の分のノルマはちゃんと達成したの?」

頬杖を付きながら美加は問いただすと、

「うっ、

 それは…」

その言葉に沙羅は言葉に詰まり、

「きょ、去年の分も纏めてすればいいしょ」

ツンと横を向いて沙羅は言い切ってみせる。

すると、

「ほぉほぉ不良在庫を抱えている。

 と仰るわけですか、お嬢様。

 ですが、世の中そんなに甘くなくてよ」

と美加は沙羅に言い返すと、

バンッ!

美加は威勢良くテーブルを叩き、

「だから、いまからやるっつってるのよっ!」

身長150cm、体重マル秘、

上級生男子から妹にしたいNo1の評価を得ているその愛らしい姿とは似合わないドスの利いた声で叫び、

さっさと席を立ってしまったのであった。

「あっ、待って、

 いまは昼休み…」

席を立った沙羅を知子は呼び止めようとするが、

「放っときなさいって、

 知子だって知っているでしょう。

 沙羅の頑固ななところ。

 もぅ知子が何を言っても無駄よ」

と美加はさじを投げる仕草をして見せると、

だが、

「それは…でも…」

美加の返事を聞いた知子は納得をしながらも一抹の不安を感じていたのであった。



「まったく、

 みんなしてあたしをバカにして、

 見てらっしゃいっ

 去年の分も含めてキッチリとダイエットして、

 美加を見返してやるんだから」

とズンズンと校内を移動していく沙羅は決意を新たにするが、

「って、あれ?

 ココって何処だっけ?」

ふと気がつくと、

沙羅はなじみが薄い景色の中を歩いていて、

自分の居場所が判らなくなってたのであった。

そして、

「やっばーっ、

 こっちって旧校舎の方じゃない…」

森の中にひっそりと佇む校舎を見上げながら沙羅は口に手を当てると、

「どうしよう…

 戻るって言っても道判らなくなっちゃったし」

元々方向音痴気味だったのをよそに勢いに任せて歩いてきたことを後悔しながら沙羅は来た道を振り返るが、

すべては後の祭りとなっていたのであった。



現在、沙羅たちが通う学園はかつてこの地に存在していた3つ学校を一つに統合して作れたため、

現校舎を中心にして3角形を描くように遺された旧校舎があり、

その中の一つの校舎の敷地へと沙羅は踏み込んでしまっていたのである。

「うーん」

それから1時間近くが過ぎても沙羅は立ち止まったままでいると、

ゴロゴロゴロ…

晴天の空がにわかにかき曇り、

雷鳴をとどろかせる雲が沸き立ち始める。

「えーっ、

 雷ってそんな予報あったっけ」

迫る雷雲に尻を叩かれるようにして沙羅は旧校舎の中に駆け込み雨宿りをするが、

だが、雨の方はなかなか降っては来なかった。

「もぅっ、

 降るのか、

 晴れるのか、

 どっちかにしてよ」

雷鳴だけが賑やかな空に向かって沙羅はいらだちを見せていると、

『雨はまだよ』

と言う声が女性の声が響き渡った。

「きゃっ!」

思いがけない人の声に沙羅は飛び上がると、

『失礼ね、

 あたしは幽霊なんかじゃないわよ』

歳は大学生ぐらいだろうか、

白銀の髪を肩まで伸ばし、

ドレスのような白ずくめの衣装を身に纏った女性が

大きな旅行キャリーに腰を下ろした格好でジロリと沙羅を睨み付けていた。

「いつの間に…人が…

 って、あっあなたは…」

長いドレスのようなスカートの中に二本の足があることを確認しながら沙羅は尋ねると、

『見ての通りの乗り換え待ち』

と女性は手持ちぶたさのように両手を軽く挙げて見せる。

そして、

『…まったく、業屋ったらこんなところであたし達を下ろしちゃって、

 …次のライナーまで時間が空きまくっているじゃない』

と小声で文句を言うと、

「乗り換え?

 ライナー?」

女性の言葉を聞いた沙羅は小首を捻て見せる。

『白蛇堂、あまり原住民をからかうのはどうかと思いますが』

の声と共に黒いケープを纏い杖を携えた男性が姿を見せると、

「げっ、

 なんか変なのが出てきた」

男性を見ながら沙羅は1・2歩下がってみせる。

『あらあら、すっかり怯えちゃって、

 鍵屋さぁん。

 原住民のお嬢ちゃんが怯えているわよぉ』

そんな沙羅を指さして女性・白蛇堂は鍵屋を見ると、

『白蛇堂さんっ、

 人聞きの悪いことは言わないでくださいっ』

笑みを浮かべる白蛇堂に向かって鍵屋は声を荒げ、

そして、改めて沙羅の方を向くと、

『こほんっ、

 えーと、私の名前は鍵屋と申しまして、

 見ての通りの行商人です。

 決して怪しいものではありません』

一つ咳払いをして見せた後、

鍵屋は自己紹介をしてみせる。

「はぁ…」

鍵屋の言葉を理解してないのか沙羅はただ頷くと、

『ねぇあなた。

 ここは特異点と言って原住民は立ち入れないはずだけど、

 どうやって来たの?』

と白蛇堂が問いただした。

「え?

 あっあたしは…

 その…

 つまり…」

素直に”道に迷いました”と言えない沙羅は人差し指を同士を突っつき合わせながら口を尖らせると、

『白蛇堂さん。

 こんな少女にいきなりそう言うのを聞くのはいかがかと思いますよ』

それを聞いた鍵屋は口を挟んでみせる。

すると、

『鍵屋さん、これは大問題よ。

 ここは特異点であり閉じられている空間。

 だからこそ天界はこの場を連節点として出入り口を置き、

 あたしたちはそれを利用して居るんだけど、

 その閉じられているはずの特異点に見ず知らずの原住民が入り込んで来ただなんて一歩間違えれば大惨事。

 ちょっと前にどこかの天使がバカやらかして大騒ぎになったのを覚えているでしょう』

と白蛇堂は数年前に発生した時空間トラブルについて指摘した。

『でも、黒蛇堂さんはその特異点に店を構えていますし、

 現地のお客さんも来られますが…』

鍵屋は黒蛇堂の事を持ち出すと、

『あれは特別よ、

 黒蛇堂店舗そのものが特異点であって、

 しかも自在に移動するわ。

 その反面、長時間その場にとどまることは出来ないし、

 管理人も特異点に縛り付けられる。

 最もあたしはゴメンだけどね………』

そう言いながら肩をすくめる白蛇堂の横で、

「…一体この人達ってさっきから何を喋っているのかしら…」

すっと白蛇堂と鍵屋の話を横で聞いていた沙羅は微笑みながらも冷や汗を流し始めると、

『あっ、白蛇堂さんこの話はもぅ控えましょう。

 ほら、彼女、完全に置いてけぼり喰らってますよ』

沙羅に気づいた鍵屋は白蛇堂を促した。

『もぅ、面倒くさいわね、

 ちょっと心を見せて貰うわよ』

鍵屋の言葉に白蛇堂はため息をつくと、

ジロッ

そう言いながらその透き通る碧眼で沙羅を見た。

「うわっ、

 何この人の目は…」

心の底から吸い取られてしまう白蛇堂の眼力に沙羅は本能的に怯えると、

『なぁるほど、

 鍵屋さん、

 そういえばあなたの知り合いでなにかの道場を開いている人がいたでしょう』

沙羅の心を読み取ったのか白蛇堂は鍵屋へと話を振った。

『え?

 それはまぁ…

 知り合いに武道道場…あぁいや、スポーツクラブかな…

 まぁそんなのを作った奴が居ますが』

白蛇堂の話に鍵屋はキョトンとしながら返事をすると、

『彼女、運動をしたいんだって、

 そこ紹介してあげたら?』

長い銀髪を手で梳きながら白蛇堂は鍵屋に言う。

「え?」

思いがけない白蛇堂の言葉に沙羅は驚き、

そして、目を輝かせると、

「ご紹介してくださるのですかぁ?」

と鍵屋に迫ってきたのであった。

『いや、まぁ、

 それは…

 まぁ仕方がないか、

 アイツのところ生徒が入ってこないってぼやいていたし』

照れくさくなったのか鍵屋は頬を掻きながらそう呟くと、

チャラ

一振りの古風な鍵を取り出しそれを何もない空間に差し込んだ。

そして、徐に回すと、

ガチャリ!

何かが開く音と共に空間に四角い筋が走り、

まるでドアが開いたかのように空間が動いて見せる。

「ほぇぇぇぇ!」

まさに魔法掛かりとしか思えないそれを見た沙羅は呆気にとられると、

『さぁ、どうぞ、

 この奥にて知り合いは待っています』

と鍵屋は勧めたのであった。



「どういう仕掛けかは判らないけど、

 じゃぁ遠慮無く」

鍵屋の話が終わるまもなく、

沙羅の姿が開いたドアの奥で渦巻く闇の中へと消えてしまうと、

『早っ!』

彼女の行動の素早さに鍵屋は驚くが、

「あれ?

 ここは…」

ふと気がついた沙羅は慌てて左右を見渡していたのであった。

「あたしは何をしにここに来たんだっけ…」

ドアを開けた以前のことは忘れてしまったのか、

沙羅は小首を捻りながらも先に進んでいくと、

『ようこそ、アスリート道場へ。

 わたしはこの道場の道場主です』

の言葉と共に作務衣姿の男性が姿を見せる。

「はぁ…」

伸ばした髪を後ろで束ね、

人当たりの良さそうな顔つきの男性は笑みを見せると、

「あ…思い出した…

 そうだ、あたし…」

と一部の記憶を取り戻させられたのか、

沙羅は男性に向かって話しかけようとすると、

「はい、存じております」

と男性は柔らかく返事をし、

「あなた様でしたら、

 そうですなぁ、

 伝統の道着・防具で身を固め、竹刀を携えて相手と撃ち合いをする剣道は如何でしょうか』

と道場主はまだ人の姿がない板張りの剣道場を案内し紹介をする。

「うーん、剣道かぁ

 また本格的な」

道場を眺めながら沙羅は考え込むと、

『では』

そう言いながら道場主はパチンと指を鳴らした。

するとその途端。

「え?

 わっ

 わわわわ!!!

 うわぁぁぁ!!」

瞬く間に沙羅が着ていた制服は濃紺の剣道着となり、

さらに黒の防具が身体を固めてしまうと、

「おっ重い…」

と沙羅は防具の重さにを訴えてしまう。

『おやぁ?、

 バランスが悪いみたいですね。

 これでは運動にはなりませんか、

 では、こうしましょぅ』

それを見た道場主は再び指を鳴らすと、

メリッ!

メリメリメリィィ…

「ひっ!」

防具の下の沙羅の身体の筋肉が発達しはじめ、

モコッ!

袴が覆う股間が鋭く盛り上がっていく。

「うがぁぁぁ!!!」

面が覆う顔を抑えながら沙羅は悲鳴を上げてしまうと、

すぐに

「はーっ、

 はーっ」

沙羅は心身共に逞しく成長させられた剣士となり、

息を乱しながら竹刀を構えてしまったのであった。

『立派、

 立派、

 剣士はこうでなくては…

 では、早速わたくしめがお相手を致しましょう』

いつの間に道着・防具で身を固めた道場主が沙羅の前に立ち、

静寂が支配していた道場の空気が一瞬乱れる。

そして、

ドタンッ!

2人の剣士が絡み合いながら道場内に倒れると、

籠手を跳ねた互いの手が相手の手が股間内に潜り込み、

その中で固く勃起するイチモツを扱き始めた。

「おーっ」

『おーっ』

「おぉぉぅ!」

己の肉刀を激しく扱き合い、

そして同時に身体を痙攣させながら雄汁を飛ばしてしまうと、

2人はガックリと項垂れ、その場に果ててしまったのであった。



「あぁぁ、いい汗を掻いたよ」

普段の制服姿に戻った沙羅が男のカケラなど微塵も感じさせない姿で起きあがると、

『いかがでしたでしょうか』

そんな沙羅に向かって道場主は感想を尋ねる。

「うーん、剣道って結構ハードなんだな。

 確かにこの格好にはちょっと憧れていたけど、

 でも、臭いがねぇ…」

と沙羅は学校で嗅いだことがある剣道防具の臭いについて指摘すると、

『あははは…

 どの様なスポーツでも汗を掻きますので臭いはついて回りますよ』

その指摘を道場主は豪快に笑い飛ばし、

いつの間にか戻っていた作務衣姿で歩き始めた。

そして、

『では、柔道は如何でしょうか?

 畳の上で組み合った相手の重心を先に崩した後。担ぎ上げるか巻き込むか…

 どちらにせよ瞬発力が養われる武道です』

と言いながら畳が敷き詰められた柔道場を紹介をした。

「うーん…

 柔道かぁ…

 面白そうだけど」

その紹介に沙羅は小首を捻ると、

パチンッ!

道場主の指が鳴り、

「え?

 あぁっ…」

たちまち沙羅は柔道着を身に纏わされてしまい、

ギュッ!

その腰を黒帯が締めると、

メリメリメリ!!

「おっおっ…

 おごぉぉぉ!!!」

沙羅は身体を盛り上げ、

瞬く間に沙羅は短髪頭の雄臭い漂う柔道野郎と化してしまったのであった。

そして、

ドタン!

ドタドタ!

柔道場に物音が響き渡った後、

「はっはっ」

『はっはっ』

寝技を掛け合う野郎同士が互いの股間で太い腕を動かし合い、

そして、

「おっおっ」

『おぉぉぉっ』

「うぉぉぉっ」

声を合わせて雄汁を解き放ったのであった。



「なっ、

 なんか、紹介される事に身体の力が抜けていくんだけど」

よろめきながら壁に手をつき沙羅は身体の不調を訴えると、

『あはは、

 紹介だからと思って甘く見られてはいけません。

 次はこちらはいかがでしょうか』

道場主のその言葉と共に整備された丸い土俵の部屋が姿を見せ、

『腰にキリリと黒廻しを締め、

 立ち向かってくる相手に激しい突っ張りを喰らわせる相撲。

 汗を流し合うにはもっとも効果的かと』

相撲道場を紹介しはじめると、

「ちょっとぉ!

 あたしに褌を締めろ!って言う気?」

それを聞いた沙羅は目くじらを立てて道場主に迫るが、

『まぁまぁそう怒らずに、

 廻しも実際に締めてみれば良いものですよ』

と道場主が言うなり、

パチンと指が鳴った。

その直後、

「いやぁぁぁんん!」

華奢な沙羅の腰に黒廻しを締められてしまうと、

「うごっ!」

モリモリモリモリ!!!

彼女の身体は膨れあがるかのように膨張をし始め、

締められた廻しの上に腹が飛び出してくると頭に髷まで結われてしまう。

そして、

「うごぉぉぉわぁぁ」

沙羅は大相撲力士も真っ青な巨漢の力士と化してしまうと、

『さぁ、どこからでもどうぞ!』

土俵の中に立つ道場主はポンッ!と筋肉質の身体に締めた廻しを叩いてみせると、

「どすこーぃっ!」

『うぉぉぉっ!』

バシーン!

砂埃舞う土俵の中で激しくぶつかり合い、

がっぷり四つの相撲取り始めた。

そしてぶつかり合いながらも廻しの中に手が伸びると、

シュッシュッ

シュッシュッ

互いにイチモツを扱き会い始め、

そして、

「はぁはぁ」

『はぁはぁ』

「おっおぉぉっ!!」

互いに限界に達してしまった時、

シュシュッ!

神聖な土俵の中に己の男汁を解き放ったのであった。



「つっ疲れた…」

果てた後、

元の姿の戻り相撲道場を後にした沙羅はよろめきながらそう漏らしてしまうと、

『今日はこれくらいにしますか?』

と道場主は心配そうに尋ねる。

「え?

 ううん、

 まだまだよ」

彼女は頭を左右に振って答え、

「ねぇ、武道以外には何かないの?」

と道場主に向かって尋ねると、

『え?

 武道以外ですか?

 そうなりますとこちらは如何でしょうか?」

沙羅に尋ねられた道場主はそう言いながら円形の模様が描かれたマットがある部屋を紹介し、

「ここは?」

興味津々にのぞき込みながら沙羅は尋ねた。

「己の逞しい肉体を誇示するかのような吊りパンツ1枚のアマレスラーが

 マットの上で汗を跳ばし組み合い闘う姿はとても魅力的です。

 如何ですかな?」

道場主は説明をすると、

「アマレス?

 吊りパン?」

道場主の言葉に沙羅は小首を捻り、

『ここではこういう事をするのです』

と言いながら道場主は指を弾いた。

その途端、

「あっあっ、

 なにこれぇ

 いやぁぁぁ!」

悲鳴を上げる沙羅の身体から制服が消えてしまうと、

ぴちっと吊りパンが張り付き、

さらに絞り込まれた筋肉が発達していくと、

モリモリモリ!!

股間が盛り上あげ沙羅はアマレス野郎へと変身していく、

そして、

キュッ

キュキュッ!

男の足となった沙羅の足からシューズの音が響き始めると、

同じアマレス野郎となった道場主とマットの上で対峙した。

ピッ!

ホィッスルの音共に

「シッ」

『シッ』

2人のアマレス野郎は激しく組み合い、

ポイントを稼ぎながら一瞬の隙をつき寝技へと持って行く、

そして、

「あっはぁはぁ」

『うっくっ』

2人は盛り上がる股間を互いに扱き会い始めると、

「あっぉぉっ」

『うぉぉぉぉ』

野太い声を響かせながら雄汁を放ったのであった。



「なっなんで、

 こんなに虚脱感が…」

座り込んでしまった沙羅はガックリと項垂れながらそう呟くと、

『剣道、柔道、相撲にレスリング、

 みっちり試合をして出しまくればまっとうな男でもくたくたですよ』

と強壮剤を飲みつつ道場主もそう呟く、

「ねぇ、

 もうちょっとまともなスポーツは無いの?」

目に隈を作りながら沙羅は尋ねると、

『ではこちらは如何でしょうか』

と言いながら道場主が沙羅を連れて行ったところは広大なフィールドであった。

「えっと、

 なに?
 
 サッカーでもしようというの?」

風になびくスカートを抑えながら沙羅は尋ねると、

『ここではこういう競技をするのです』

と言う道場主の声が響くと、

パチンッ!

指が鳴る。

その途端。

「うわぁぁ、

 なにこれぇ!」

瞬く間に沙羅は厳ついプロテクターが覆うフットボーラーへと変身し、

さらに筋肉が盛り上がり男性化していくと、

モリッ!

ピッチリと足に張り付くズボンの股間をイチモツが盛り上げたのであった。

『アメフト

 頭に被ったヘルメットとガッチリとプロテクターが身体を覆い鎧の如く身体を防護する上半身、

 俊足を求め脚力を落とすものを極力排除してピッチリと足に吸い付くズボンを穿く下半身、

 このアンバランスさがとても堪りませんでなぁ』

と言いながら道場主もまたフットボーラーへと姿を変え、

ドンッ!

空固くボールが蹴り上げられると、

2人は走り始め互いにけん制しながら転がるボールに向かって飛びかかっていく、

そして、男の汗を流しあった後、

「はぁはぁ」

『はぁはぁ』

フィールドの中央で互いに抱き合い、

そして股間を扱き合うと、

「あっあっあぁぁぁ…」

『おっぉぉぉぉ!』

激しく男汁を流しあったのであった。



「なんか思いっきり走らされた見たいだけど、

 もぅ走るのはいいわ
 
 っていうか、もぅ身体が動かないんですが」

すっかり動けなくなってしまった沙羅がそう漏らすと、

『おやおや、

 では、気分を変えて水泳などは如何でしょうか』

と道場主は囁く。

「え?」

その言葉に沙羅は目を輝かせるが、

しかし、彼女を待っていたのは、

「あぁっ

 あはあは…
 
 くはぁ」

逞しく鍛えた男の身体にモッコリと股間を膨らませた競泳パンツを穿いた水泳野郎となり、

同じ水泳野郎となった道場主と共にプールの中で抱き合い己の股間を扱き合うことだった。

「あっ、

 おぉぉぉぉっ!」

髭が生える顎を上げて沙羅は男汁を飛ばしてしまうと、

『あっあぁぁぁ』

同時に道場主も果ててしまう。

そして、次の道場に向かった沙羅はサテンのパンツに両手にグローブを填めたボクサーとなり、

ここでも四角いリングの中で道場主と打ち合い

そして抱き合うと男同士の汗と汁を飛ばし合ったのであった。



『よくここまで持ちましたね』

3本の強壮剤を飲み干しながら道場主は沙羅のスタミナに舌を巻くと、

「えへへへへ…

 大丈夫よ、
 
 あはは…」

ほぼ限界に来ているのか沙羅は薄ら笑いをしてみせるだけだった。

『残っているのはバレエなのですが、

 どうします?』

そんな沙羅に向かって道場主はそう囁くと、

「え?

 バレエ?

 やるわ、あたし、やるっ」

震える身体を奮い立たせて沙羅は起きあがると、

バレエ道場のレッスン室へと進んでいくが、

ポロン…

ピアノの伴奏が流れるレッスン室の中で、

モリッ!

沙羅はタイツが張り付き股間をモッコリ膨らませるバレリーノの姿になると、

流れる音楽の中で道場主が変身したバレリーノと共に舞い踊り、

そして、抱き合うと互いのイチモツを扱き合ったのであった。

「あはあはあは…

 あっあぁぁ」

道場主に抱き上げられながら沙羅は男の汁を飛ばすが、

だが、飛ばした汁は薄くなってしまっていて、

まさにここで沙羅は精も根も尽き果てたのであった。



『沙羅様。

 わたしの道場にここまで付き合うことが出来たのはあなた様が初めてです。

 あなた様ならどの競技にしようかと悩むことはありません。

 どの競技でも十分にこなすことが出来ます。

 あなた様にピッタリの競技を見つけておきました。
 
 ねばり強いあなた様ならきっと大活躍されると思います。

 では、あなた様のこれからご活躍をお祈りいたします』



「おーぃ、

 吉祥寺ぃ!

 そんなところでいつまで寝ているんだ?

 試合始まるぞぉ」

沙羅の耳元で彼女を起こす声が響き渡ると、

「え?」

その声に頭を上げた沙羅は頭に掛けてあったスポーツタオルを取った。

すると、

「なんだよ吉祥寺、

 お前本気で寝ていたのか?

 出番だ出番」

と言いながらウェイトリフティング部の文字が光るジャージを着た男子が沙羅の腕をひいてみせる。

「え?

 なにこれ?
 
 あたしは、なにを…」

事情がわからない沙羅はキョトンとしていると、

ゴンッ!

いきなり沙羅の頭を拳骨が落ち、

「寝ぼけるな、吉祥寺!」

と髭面の男の怒鳴り声が響いた。

そして、

ウェイトリフティングのユニフォームに腰を支える幅広のベルトを締めた沙羅が競技会場に出されると、

がしゃんっ!

盛り上がる筋肉を総動員して130kgもあるバーベルを担いで見せたのであった。



おわり