風祭文庫・異性変身の館






「カットサロン“ドリーム”」
(最終話:夢オチ)

作・あむぁい

Vol.T-142





「こ、これが僕!?」

鏡に映る美少女がにっこり微笑む。

まるで夢のようだ。

僕、大島徹夫は感動に打ち震えていた。

夢にまで見た女の子の顔。

女の子の体。

女の子の…ああっ。

僕は鏡をうっとりと見つめる。

なんか拘束されて。

なんか気持ち良くなって。

なんか脱がされて。

一体何がどうなっているか良くわからなかったが、まさかこんな事になるなんて。

クリちゃんが気持ち良くって気持ち良くって。

僕は何度もイッてしまって。

”有難う、先生!”

先生に感謝しながら僕はほっぺたをつねる。

”痛い!”

夢じゃない。

しかし…

「駄目だな。

 失敗作だ」

腕を組み、難しい声をして先生がうなる。

「へ?」

その言葉に僕の声とユウさんの声がはもる。

「え、そんな事無いですよ。

 すごく可愛くできてますよ?」

先生に向かってユウさんが主張する。

その通り!

その声に僕は頷く。

しかし先生は冷たく首を振り、

僕の肩に腕を置きながら

「こんな不本意な作品を世に出すわけにはいかん」

と宣言した。

そんな…

僕はぷるぷると首を振る。

し、失敗って?

な、なんで?

どうして?

「や、やです!

 折角可愛くなったのに!」

そう叫びながら僕は先生の腕を振り解き、

必死でユウさんの後ろに隠れる。

「あ、あの。

 本人も気に入ってるようですし…」

そんな僕をかばいながらユウさんは先生に言う。

そうそう。

ユウさんのその言葉に僕はこくこく頷く。

しかし先生は冷たく首を振り、

「そこをどきなさい」

とユウさんに告げた。

ああっ。

振り向くユウさんの顔が悲しみに曇っている。

「そ、そんな…」

まるで死刑宣告をされたかのような絶望に僕は打ちひしがれる中、

ユウさんは振り向き、

「ごめんね」

と一言謝った。

「いやっ

 女の子で居させて」

「ごめんね、

 先生がダメといった人を表に出すわけには行かないの」

「そんな…」

呆然と立ち尽くす僕にユウさんの手が伸び、

僕のクリちゃんを触る。

「はうっ」

それと同時に僕はたちまちイきそうになってしまう。

こ、こんな時に。

ああっ。

「ごめんね」

何度も謝りながらユウさんの口が僕のクリちゃんを含んで。

そして、何度もイかされて、

ぐったりなってしまった僕は再び椅子に拘束されてしまう。

ああっ、僕はどうなってしまうんだろう。

ユウさんが悲しそうに何かを蒸気噴霧器に入れる。

ぷしゅー。

それを吸っているうちに僕は眠くなってくる

先生の声が聞こえる。

「今のは無し。

 キミは夢を見ただけだ。
 
 男が女になるなんて。
 
 そんな馬鹿な事は無い」

自信に満ちた声。

僕は、まどろんで…



「こ、これが僕!?」

鏡に映るイケメンが僕だなんて自分でも信じられない。

さすがはカリスマ美容師だ。

「素敵ですー。

 さすがは先生」

ユウさんも誉めてくれる。

先生も腕を組んでうんうん頷いている。

でも、あれ…何か変…

ちょっと違和感がある。

「えーそれでは

 カット代1万円と下着代8千円…じゃなかった。
 
 カット代1万円になります」

この出来で1万円なら安いものだ。

すごくカッコ良くなったし。

すごく気持ち良かったし。

あれ…なにか釈然としないが僕はお金を払う。

まあいいか…



表に出た途端、

すれ違う女の子が振り返ったり。

なんだか熱い視線を感じちゃったり。

世界が変わると言うのはこういうのを言うのだろうか?

逆ナンされたのなんて初めてだ。

いや、ナンパだってした事無かったんだけど。

でも、ナンパもしたら結構女の子付いて来るし。

もう、ヤリまくりで…



けど…

何かが違う。

でも何が?

セックスってこんなもんだっけ?

オナニーって?

もっと、こう。

頭の中が真っ白になるような。

何がなんだかわからなくなるような。

そんな感じ。

あれは…あれは…どんな娘と寝ても、

あの感じにはならなくて。

思い出せなくて。


「あっ!」


思い出した!

夜中の2時に僕はうなされて目が覚める。

あの店だ。

あの店で僕は女の子になって。

クリトリスが滅茶苦茶気持ち良くって。

鮮明に思い出せる。

先生の顔。

ユウさんの顔。

あれが夢な訳は無い。

あの快感…

僕はペニスをじっくり観察してみる。

付け根に薄いピンクの跡が見える。

継ぎ足したみたいに。

間違いない。

前は右に曲がっていたのに今はまっすぐなのも考えてみれば変だ。

僕はカッターで継ぎ目にそっと刃を…、


ああっ、痛い痛い!

そんな馬鹿なっ!

血が、血が、あわわわ!


お医者さんに滅茶苦茶怒られた。


あれは、やっぱり夢だったのかな。

場所がどうしても思い出せない。

あれだけいた女の子達も一人減り、二人減り。

そして誰もいなくなった。

女の子はどうでもいいけど。

あの店に。先生にもう一度会いたい。

そして今度こそ。



おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。