風祭文庫・異性変身の館






「カットサロン“ドリーム”」
(第2話:スパイ)

作・あむぁい

Vol.T-141





僕の名前は本城雄二。

鏡先生のカットサロンで美少女アシスタントやってまーす。

なんで、男なのに美少女アシスタントなのかとか、

色々突っ込むトコはあるけど。

まあ、人生いろいろって言うか、あ、お客様だ。

「いらっしゃいまぁせぇ」

僕は可愛くお客様を出迎える。

チンピラ…だね。

来る店間違えてるなー。

先生気難しいしなー。

カットしてくれるかなー。

「えーっと、少々お待ちして下さいね」

僕は先生に御伺いを立てようと、振り返る。

さわっ。

「きゃ」

僕は思わず声をあげる。

お尻触られちゃった。

「な、何するんですかー!?」

「おう、ワリィ」

僕はきっとそいつを睨む。

こんな客追い返しちゃえ。

「あの。

 申し訳ありませんけど、うちは…」

「どうしたユウくん。

 お客様をお通ししたまえ」

先生の声。

うそ?

絶対こんなの追い返すと思ったのに。

振り返る僕のお尻をまたあいつが触る。

もーっ!



椅子にふんぞり返り、タバコを吸い始めるあいつ。

「うちは禁煙です!」

僕は慌ててタバコを取り上げる。

ぎろっと睨まれるが、僕も睨み返す。

ひょいひょい。

先生が僕に手招きする。

僕はとっとこと先生のそばに寄る。

「もーなんであんな奴店にあげたんですか…」

「練習に、お前がやれ」

え?

僕はぽかんとする。

練習…ええっ!?

「何度も見ていたろう。

 やってみろ」

「はあ…」

普通にカットする訳じゃないよね。

今日は月曜日だし。

やってみろと言われても、先生は天才。

僕は可愛いだけの女の子ですよ?

先生が睨むのでしょうが無い。

僕はあいつの後ろに回る。

「ええっと、お肩お揉みしますね」

「おう」

ぎゅっ。

ぎゅっ。

ぎゅっ。

ぎゅっ。

「どうでしょうかぁ?」

「もっと強く」

あうう。

ぎゅっ。

ぎゅっ。

ぎゅっ。

ぎゅっ。

…、

ふぅ。

結構難しいな。

これだけで僕は汗をかいてきた。

えと次は…蒸気噴出機っと。

香料と薬を入れてっと。

顔面変形剤の用意っと。

しゃかしゃかしゃか。

うん。

こんなもんかな。

僕はペタペタと客の顔に顔面変形剤を塗っていく。

そして吸盤を使って顔の皮膚に刺激を与えて薬がなじみやすいようにする。

これを丁寧にやらないと綺麗に変形しない。

それが終わると、目隠しして、耳から薬液を注入する。

骨を柔らかくしておく必要があるのだ。

何が起こっているかわからないまま薬を注入しちゃうのがスムーズに進めるコツだ。

こしこし耳をいじってやると彼も気持ち良くなったのか、

口が半開きになってくる。

可愛いもんだ。

いつもはここで先生がお客さんにキスするのだが…

まあ、キスするのは可愛い子だけだけど。

僕が目で尋ねると先生は自分でやれとの合図。

仕方無い。

僕は思い切って彼にキスをする。

最初はびくっとしてたけど、

すぐに抵抗せずに舌を受け入れた。

そうそう、良い子。

僕は慌てずに彼の首と胴体を固定してしまう。

気持ちいいのか彼は固定された事にも気付いていない。

えーっと。

ここで、お客様の潜在的なニーズを汲み取り、

どんな姿になりたいのかを鮮明にイメージするのが大切。

って先生は言うんだけど…

高位接触テレパスの先生と違って僕にはそんな能力は勿論無い。

一生懸命舌を絡めてイメージを引き出そうとするけど。

するけど…うーん、よくわかんないなあ。

どうしよう…

しょうがないので勘で行く事にする。

僕は体を起して、先生のそばにとことこと近寄ってひそひそ声で話す。

「わかったか?」

「はい」

えっと、あたりさわりの無い普通のニーズは。

「えっと、多分。

 彼はロリで巨乳でマゾな女の子になりたいんだと思います。
 
 ばっちり見えました」

勘だけど、ロリか巨乳かマゾか。

どれか一個ぐらいは当たるだろ。

「そうか」 

先生が僕を抱き寄せる。

あ、イメージを確かめるんだね。

僕は思い切りロリで巨乳でマゾな女の子のイメージを思い浮かべながら上を向いて目をつむる。

先生の舌が入ってきて僕の舌を吸う。

あんっ。

「まあ良い。

 やってみろ」

「はい」

うん。

先生もやれって言うし。

結構良い線だよね。

「抵抗するかもしれんから、先に固定するのを忘れるな。

 脱がす前に固定してしまえ」

なるほど。



「あ、ちょっとお前何やってんだ!?

 お、おい?」

ほんとだ暴れるや。

さすがは先生。

でも、固定しているから大丈夫。

ズボンとパンツは脱がさなくても、ずらしただけでカットはできるしね。

「てめー、馬鹿やろ!

 何しやがんだ!
 
 変態…」

聞くに堪えない下品な言葉。

あばれるからタオルが落ちてしまい、

自分が拘束されてしまっている事にやっと気付く彼。

うるさいので拾ったタオルを口に詰めてしまう。

「んぐーっ!」

これで良し。

「大切に扱えよ」

先生が鋏を渡してくれる。

黒蛇堂の銘が入った名品。

心正しく技優れたものが扱えば不要な物だけを痛み無く切ると言う。

僕に扱えるだろうか…思えば、最初にここに来た時、

これを入手する事が目的だった。

先生の技と道具を盗んで三郎伯父さんの店を今よりもっと大きくする為に

僕はスパイとしてここにやって来た。

でも、先生は最初からわかっていたんだ。

先生の仕事に対する姿勢。

技。

見るにつけ僕はどんどん先生に惹かれていった。

予約で一杯の先生の店は定休日の月曜日に気まぐれに店を開ける。

そこで何かが起こっている。

僕は先生に探りを入れた。

そして、キスされて僕は心の中を全部先生に見られてしまった。

そして僕も気がついた。

僕は先生が大好きで。

本当は女の子になりたくって。

そして先生は僕以上に僕の事をわかってくれていたんだ。

丁寧に丁寧に。

優しく優しく。

先生の手で僕は作り変えられて行った。

ああ…先生。

その先生が僕を信頼して僕にやってみろとおっしゃてる。


「よぉし!やるぞぉ!」

僕は気合を入れて、彼のペニスに真剣な眼差しを送る。

思えばここで働く前は僕は自分が女の子になるなんて思いもしなかったし、

ペニスをこんな目前で見ることも無かった。

でも、もう見慣れたし。

僕はゆっくりとペニスに手を伸ばす。

彼は必死に嫌々と首を振っているが…危ないぞ。

手元が狂ったらどうするんだ?

慎重に、

慎重に…、

きらーんっ!



「うぇっ、

 うぇっ、
 
 うぇっ…」

気持ちいいのか悲しいのか、

彼…彼女か?は嗚咽をあげる。

ロリで巨乳でマゾで。

一応、イメージ通りにあがったぞ。

…まあ、さすがに先生の作品に比べるべくも無いが。

この期に及んで彼女が僕を恨みがましく睨む。

僕は無言で彼女の長いクリトリスに手を伸ばす。

彼女の顔が恐怖に引きつる。

「あ、ああーんっ!」



僕も身を持って知ってるけど。

こんなに長いクリトリスがあってはもう、

あっと言う間に調教されてしまう。

彼女はすっかり改心して麻薬の密売人だった事を告白する。

腕には注射の跡も見つかった。

「これからは真面目に水商売でもして暮らせ」

「あい」

「薬が欲しくなったら代わりにクリをいじれ」

「あい」

こんこんと説教される彼女。

さすがは先生だ。

まだまだ僕は先生には到底適わない。

世の中から屑が一人減って、可愛い女の子が増える。

今日の仕事は大成果だ。

「この薬はうちで使うからもらっとくぞ」 

「あい」

「って、先生!?

 何、麻薬着服しようとしてるんですか!?」

抗議の声をあげる僕。

「大丈夫だ。

 悪用はせん」

真剣な瞳。

この瞳に僕は弱いのだ。

ちゅ。

いとも簡単に僕は誤魔化されてしまう。

「もう、悪用しないように僕がちゃんと見張っときますからね!」

僕は腰に手を当てて怒ったふりをする。

顔が真っ赤で全然説得力が無い。

「ああ。

 よろしく頼むよ」

にっこり笑う先生の顔は、やっぱり三郎伯父さんより何倍もカッコ良いのだった。



つづく



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。