風祭文庫・異性変身の館






「僕のデザイア」
(最終話:デザイアと共に)

作・あむぁい

Vol.T-116





『ふふっ

 私の逸物でその想い、消してやろう』

そう言いながらラジャ様が股間を隠していた手をのける。

すると、

ビクン!!

股間より猛々しく伸びている肉の槍が姿を見せた。

うわっ

大きい…

赤黒い血管を蔦のように絡ませている肉槍を見ながら僕は唖然としていると

『どうだ、私の逸物は…

 ふふっ
 
 トリンのよりも長くて太いぞ』

と僕に言う。

そんなもん、言わなくても判るよ。

大体、チンポの大きさなんて…

まるで見せびらかすようにしてラジャ様は僕に肉槍を見せると、

『ではいただくとしようか』

と言う声が響いた。

その途端、

「はいっ」

僕を押さえつけているレイスとアリエルの声が響くと、

ぐるんっ!

僕は仰向けにされ上に大きく股を開かされた。

そして、レイス、アリエルの手で僕の大事な部分がぱっくりと開かされると、

いつの間にか溜まっていた愛液が滴り落ちる。

「さぁ、ラジャ様…

 カーリは見てのとおり洪水になっていますわ」

「どうぞ、お仕置きを!!!」

と口をそろえた。

え?

え?

ちょっと、

それって

まさか

いっいやぁぁぁぁぁ!!!

男性化したラジャの体を見ながら僕は悲鳴を上げるが、

しかし、その場から逃れることなどできるはずはなかった。

『どうした?』

「こないで!!」

『何を言う…』

「あっち行って!」

『無駄なことを、

 お前は私から逃れることはできないのだ』

「くっ」

僕の目から涙が零れ落ちる。

悔しいのか、何のかは判らない。

ラジャ様は僕の上に覆いかぶさってきた。

「うっ」

まさに籠の鳥。

『ちゅっ』

ラジャ様の唇が僕の首筋を這い、

そして、僕の唇をふさいだ。

「ううっ」

…男に抱かれるんだ。

そう思うと涙が留めなく流れ落ちる。

ところが、ラジャ様の手が僕の股間に忍び寄ったとき、

パチン!!

とラジャ様の手が弾かれた。

「貞操帯?」

やったぁ。

こんな事もあろうかとデザイアが僕に付けてくれた貞操帯がこんな場面で役に立とうとは!

ささやかな抵抗に僕は喜ぶが、

しかし、

「ふんっ!」

ラジャ様の魔法一撃を受けるとも貞操帯はろくも崩れ去ってしまった。

なんじゃそりゃあ!

僕の絶叫が心の中に響き渡った。

こうして、最後の砦もあっけなく崩壊をしてしまうと

『ふふ…』

ラジャ様はいきなり乱暴に僕のあそこに突き入れようとしてきた。

「え?

 えぇ!!
 
 いきなり、そんな…
 
 せめて前戯で十分にほぐしてから…」

いきなりの本番劇に僕はそう訴えるものの、

しかし、レイスとアリエルにがっしり押さえられて僕はどうにも逃げられない。

その途端、

グッ!!

ズキン!!!

僕の小さなドアをこじ開けるかのように巨大な逸物が押し込まれると。

メリッ!!

メリッ!!

僕の秘所から体の奥深くへと伸びる管は強引に拡張され、

それによる激痛が僕を襲った。

「い、痛い痛い痛い痛い」

くぅぅぅ。

血が出てるよぉ。

「むっ無理です。

 抜いてください。
 
 今すぐ、抜いてください。
 
 じゃないと、死んでしまいます」

うわ言のように僕はそう訴えるが、

『ふふっ

 何を言う?
 
 これこそが一番の快楽であろう』

とラジャ様は僕に言うと腰を動かし始めた。

いっいやっ

大変!

ああああ。

ラジャ様に、僕の処女が…、

ああ、何か大切なものが…、

ラジャ様が突くたびに僕の中から大事な何かがはじけ飛び、

激痛も次第に快感へと変化し始めていく。

クチョクチョ

ああ。

あああん。

あん。

ラジャ様っ。

ラジャ様が…

あぁ…すごいっ。

すごいですっ…、

愛液を溢れさせながら僕はラジャ様のたくましい肉体に思わずしゃぶりついてしまうと、

『さあ、受けろカーリ、我が波動を!』

という言葉と共にひときわ強く僕を突いた。

あっああああ!!!

ものすごい大量の何かが僕の中に放出される。

僕は気持ちよくって頭が真っ白になる。

はあ。

はああん。

あ……ずきずきずきずき。

い、痛い。

下腹部を中心に鈍痛が走る。

「ラ、ラジャ様…い、痛いです…」

「拒絶反応だ。

 お前の中に残っている白の魔力がその痛みの元だ。
 
 黒の魔力を受け入れ白の魔力を捨てよ。
 
 それだけがその痛みを消す」

とラジャ様は僕に言うが、

僕を襲う痛みはさらに強さを増し、

「(ぐっ)い、痛い…、

 痛いです…
 
 痛い
 
 痛い
 
 痛いよぉ!!!」

容赦なく襲ってくる痛みに僕はのた打ち回る。

すると、ラジャ様が僕の唇を奪った。

レイスと同様、ラジャ様の舌も僕の喉を通りお腹に入っていく。

僕は苦しさから逃れようと必死でラジャ様の口を吸う。

“白の魔力を吸ってやる。”

はふう。

き、気持ち良い。

もっと吸って下さい。もっと。

ラジャ様の腰が再び動き始める。

ふあああん。

2箇所からの刺激に僕はもうメロメロだ。

“ふふふ。

 下から黒の魔力を入れ、

 上から白の魔力を吸ってやる。

 お前を染め替えてやるよ、カーリ。”

ラジャ様のその言葉を聴きながら僕は力を抜くとラジャ様に自分の体を預けた。

もぅ……………………………………



『カーリよ…我の命令には何でも従うか?』

「あ…ああ…、」

『では、デザイアを殺せ』

そういいながらラジャ様は僕に一本の剣を渡す。

『次回から、ナビはレイスにでもやらせよう。

 それでOK。
 
 そんでタイトルは僕のラジャ様。
 
 それでノープロブレム』

ラジャ様の言葉に僕はこくりとうなづく。

可愛いデザイア。

大好きなデザイア。

ごめんね…、愛しているラジャ様の命令なんだ。

じっと僕を見つめるデザイアを見ながら僕はそう思うと、

剣を鞘から抜き、白刃が光る剣を大きく掲げた。

『さて、デザイア、

 何か言い残すことは?』

男と女、その両方を兼ねた姿のラジャ様はデザイアにそうたずねるが、

「………」

デザイアは何も答えずに僕を見つめている。

「………」

そんなデザイアを僕は見下ろし、

そして、躊躇してしまうと、

『どうした?

 早くしないか』

とラジャ様は言葉で僕を後押しした。

「は…い…」

その言葉と共に僕はデザイアを見下ろすと、

「ごめんね…僕のデザイア…」

とつぶやきながら剣で突いた。

さくっ。

僕の剣はいとも間単にデザイアの右胸を貫き、

その勢いを保ったまま床に突き刺さった。

どろりとデザイアの血が傷口から溢れ剣を伝って流れ落ちる。

胸に剣を突き立てたデザイアの顔からみるみる血の気が引いていく。

可愛そうなデザイア。

「カーリ様…、信じています…、」

デザイアはそういいながら、静かに目を閉じてって…

ハッ!!!

うわあぁぁぁぁぁl!!!!

ちょっと待てぇ!!!!!!!

一瞬のうちに何かが剥がれ落ちてしまった僕は大声を上げた。

そして、

「ち、治療の…うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

デザイアに治療の呪文をかけようとした途端、

全身を激痛が走る。

闇に取り込まれた僕の体とライフの力が拒絶反応を起したのだ。

げげっ、デザイアの息がどんどん細くなる。

「ち、治療の…うぎゃぁぁぁぁ。

 治療の言葉!」

全身がばらばらになりそうな激痛。

しかし、それを乗り越えるようにして僕は呪文を唱えると、

魔法は発動し、

デザイアを貫いていた剣は姿を消すと、

彼女の胸に開いた傷は消えていった。

ピクッ!!

デザイアの体に失った力が戻る。

すると、ラジャたちの姿がすっと掻き消えた。

あっ

あれ?

あのラジャって幻覚だったんだ…

唖然とする僕の体から飛び出すようにして、

何体かの黒いものが闇の中へ帰っていった。

これって勝ったの?



「信じてましたよ、ご主人様」

消えていくラジャの姿を見ている僕にデザイアは声をかけた。

「デザイア!」

立ち上がったデザイアを僕は思いっきり抱きしめる。

ごめんよ、デザイア。

僕の為に…二度と君を裏切らない。

君を手放すもんか。

あんな喪失感はこりごりだ…

泣きじゃくる僕をデザイアは優しく抱きしめてくれて。

大きな胸に抱かれて。

僕は安心して眠りについた。



「えーそんじゃあ、アリエルを叩きますよ」

…デザイアはすっかり回復したみたいだ。

「アリエルを倒せば、どれい1号の座はわたしのものね☆」

「じゃなくて」

あらら。

未だ正気に戻ってないや。

しっかりしろ、カーリ☆

「アリエルの方が悪の予兆のダメージは大きいもんね」

「そうです。

 とばして行きますよ」

兜虫(虫人間クラッコンの主力戦車)8エンジェル1が守るアリエルの首都。

悪の予兆が有ってもアリエルは白の強力守備魔法、

神の加護を4発放つ程元気だったが、

それでもトリンの攻撃には甲虫は一撃で葬り去られたし。

アリエル追放。

陵辱モード最高☆

「うえーん、ラジャ様〜。

 え〜い、カーリ!覚えてらっしゃい〜!
 
 あ、あああああ、目が回る〜」

ばいばーい、アリエル。

再起を図るアリエルは回帰の呪文を唱えたが、

戻るにはしばらく時間がかかる。



「よくも、可愛いアリエルを…、

 魔法…分離…」

ああっ、聖戦が消散されちゃった。

やってらんない。

こっちも悪の予兆を消散だ。

「上位、分離!」

対抗呪文で悪の予兆も潰えさる。

何だか熱っぽく調子の悪かった体も元に戻る。

なんだか黒いものもすっかり消え去った。

ラジャめ、よくも僕を弄んだな。

もう2度と操られたりしないぞ。



「ああっ、やっぱり2回目も勝てない〜」

再び、アリエル首都陥落。

「うふふ。

 お姉さん。
 
 また逢いましたね」

今度はアリエルにどんな事をしようかな〜♪

「く、こんな屈辱…、受けるぐらいなら…死んでやる〜!」

アリエルはまだ沢山呪文も都市も持っていたのだが

諦め良く回帰しなかった。

ちょっと陵辱モードでやりすぎたのかもしんない。

これで残りはラジャ一人!

いよいよ決戦だ!



「起きろ、カーリ」

ラジャ様の声が聞こえる。

僕はむくりとベッドから起き上がる。

隣では昨日の夜のお相手のダークエルフ娘がやはり同じように起き上がる。

「お前に会いたい。

 さあ、こっちへ来い。
 
 バルコニーへ出ろ」

僕は言われるままに、バルコニーへ出る。

ダークエルフ娘も一緒だ。

「さあ、手すりを乗り越えて」

ダークエルフ娘は身軽に乗り越えるが、僕は少しもたもたする。

うんしょっと。

風が肌に心地よい。

「こっちへ飛ぶんだ」

思い切りよく手を放して、ダークエルフ娘は空へとジャンプする。

みるみるうちに見えなくなる…僕も行かなきゃ…

「カーリ様、大変です!

 ラジャの死の祈りがって、
 
 うわぁお」

デザイアだ。

「じ、じっとしていて下さいね…」

う、うん。でも行かなきゃ…ラジャ様…

「よいしょっと」

デザイアは僕を引き上げると、すいませんと謝って平手打ち。

痛い☆

「ああっ。今のは…」

「ラジャの大規模大量殺戮魔法、死の祈りです。

 食料が67も余ってますから、推定自殺者は60部隊を超えます!」

「な、なんて事を…」

もう、ラジャだけは絶対何が何でも許せない!

「トリン隊を差し向けなさい!」



ラジャの首都は主力デスナイトが6。

グリフォン3。

こっちはトリン、ブシャン、マーカスの英雄軍団と

ダークエルフの最強部隊、ワーロックが6部隊。

正面きっての大決戦だ。

「ふふっ

 結構強いじゃないの僕たちの軍って」

「だめですよ、油断しては…」

うん、わかっているよ、

何しろ、ここはラジャの懐…

何が起きるかわからないんだから…

と気を引き締める。

しかし、

『おのれ、カーリ…

 我の奴隷となれば良いものを…』

「なりません!

 多くの人の命を弄び、奪ったラジャ!
 
 今日こそ正義の刃を受ける時です!」

「たわけ!

 デスナイト隊、
 
 グリフォン隊、
 
 突撃!
 
 暗黒の祈りよ、奴らの力を奪え…」

「デザイア!

 行くよ!
 
 高らかなる祈りよ!
 
 我らに力を!」

トリンも聖なる祈りを唱えて、味方のパワーアップを図る。

デスナイトの機動力は3!

そして接近戦能力は最強クラス。

こちらに近づくまでに叩く必要がある。

ワーロックと遠距離攻撃英雄の猛烈な対空砲火がデスナイトに雨霰と降り注ぐ。

デスナイトは1部隊が4人のデスナイトからなり、

各デスナイトが7ポイントのHPを持つ。

ワーロックの放つ破壊の雷が、デスナイト2部隊を焼き全滅させる。

更に、マーカスの放つ蜘蛛の巣の呪文が一部隊を足止め。

これで動けるデスナイトは3部隊。

「おのれ…狂戦士の魂!」

やばっ!

狂戦士の魂を掛けられたものは防御が0になるが攻撃力が2倍になる。

先制攻撃持ちで鎧貫通のスキルを持つデスナイトとの相性はバッチリ!

強化デスナイトの攻撃がトリンを襲う!

一撃、二撃!

「くっ…」

なんとか倒すが、

あああ、トリン様のHPがレッドゾーン!

もう一隊のデスナイトが追撃!

トリン様死亡!

「カーリ様…」

「トリン様ぁ〜」

ついでにブシャンも死亡。

後詰めのグリフォン3とデスナイト1は距離を詰めるだけ。

蜘蛛の巣をかけられたデスナイトは動けない。

さあ、こっちのターンだ。

僕とデザイアが唱えるのは勿論…

「死者のふっかつ!」

トリン復活。

「あ、キタねー!」

うるさいっ!

お前が言うな!

勝負に綺麗も汚いもあるか!

ワーロック軍団の遠距離攻撃がデスナイトを撃つ!

残り10人3部隊のデスナイトは8人死亡残り2人!

これは、トリンが先制攻撃で処分する。

残りはグリフォン3だけだ。

見えた!

トリンは更に自分に治療の言葉。

マーカスは蜘蛛の巣でグリフォンを絡める。

「だああ、狂戦士の魂!」

強化グリフォンの爪がトリンを狙う。

またまた、レッドゾーンに落ちるトリン!

しかし、攻撃したグリフォンも死亡。

次のグリフォンが弱ったトリンに止め!

くそおっ!

残りのグリフォンは蜘蛛の巣がかかってるので動けない。

敵残りグリフォン2!

こっちはマーカスとワーロック6!

もらった!こっちのターンだ!

「死者のふっかつ!」

「キタねーよ、お前らよー…」

悪の泣き言は聞こえない。

最強英雄、再び復活!

トリンとマーカスの治療の言葉でトリンは完全回復!

ワーロック隊の重火力がグリフォン2部隊を粉砕!

勝利だ!

ラジャ首都陥落。

「あーん、負けちゃいましたよぉ、ラジャ様ぁ…」

「くはは…今回は我の負け…、

 陵辱を許そう…、」

パスだ、パス。

「じゃあ、トリンにやらせましょう。体力もフルだし」

やらさなくても良いってば。

僕はノーマルだからさ。



「ラ、ラジャ様の替わりにあたしを!」

等というリクエストが有ったので、

僕とデザイアはレイスの方をやる事にした。

アンデッドは人間やダークエルフとはまた違っていて面白い。

「あはん。

 トリン様…」

一方、ラジャの方はトリンが担当だ。

トリンのテクでラジャはメロメロだ。

陵辱モードではレイスやラジャの特殊能力も魔法も一切使えず、無力な存在にすぎないのだ。

ついにレイスの方もすっかり仕上がったので、みんなでラジャを責める事にした。

「カ、カーリ様…止めて下さい…、

 ああ、カーリ様の奴隷になります…」 

こうして、悪は正義の前に屈した。

全世界が僕たちを祝福する。

クリアー

1428年5月。7695点

「やった。

 よぉしっ、いまこそ言ってやる!!

 立てよ、国民!!

 ジーク!!、

 ジオォォォォォン!!!!」

デザイアの冷たい視線を横に感じつつ、

世界の中心で叫んだ僕の声がいつまでも響き渡っていた。



「TOEICの結果はどうでしたか?」

「今から開けるよ」

僕はどきどきしながら封を開ける。

820点。

おお。

「やったー!」×2

「さすがはご主人さまです。

 デザイアもうれしいです」

「良かった。本当に良かった。

 駄目でデザイアが自爆したりしたら、本当にどうしようかと…」

あ、安心したら涙が…

「な、泣く人がありますか。

 ほら、涙を拭いて」

う、うん。良かった。

本当に良かった。

「デザイア、どこにも行かないでね」

美少女カーリ☆はデザイアの服の端を持ってせがむ。

もうあんな想いはこりごりだ。

「大丈夫ですよ。

 弊社に不慮の事故が有ったり、
 
 入金が途絶えたりしない限り、
 
 デザイアは何処へも行きません」

「…お金貯める」

デザイアのその言葉に急に不安になってきた。

そして、

フッ!!

突然、僕の視界にTV画面が浮かび上がるなり、

『…では次のニュースです…

 昨日発生致しましたグリーンピアの崩壊事故ですが、
 
 本日、ネオ新撰組を名乗るグループより、
 
 各報道機関宛に犯行声明文が送られてきました。
 
 これを受けて警察では事件事故両面での捜査を開始すると共に…』

と昨日発生した事故が事件性を帯びてきたコトを告げる。

え?

テロ?

そっかよく考えたら、今の日本は不景気だし。

うちの会社も今は調子いいけど、いつ傾くかわかんないし。

てゆうか、僕が首になったりするリスクとか、事故にあうリスクとか。

ああ、国債が紙くずになるリスクとか

年金がもらえないリスクとか、

円が暴落するリスクとか、

ドルが暴落するリスク。

今のままの生活を続けられる保障なんて何も無いんじゃないか?

ど、どうしよう。

そんな事になったら、デザイアとも遭えないし、

美少女カーリとしての生活もできない。

「落ち着いて下さい。

 大丈夫です。
 
 何も心配いりません。

 私が入手した情報を分析した結果。
 
 さっきのニュースはさほど気にするほどのことはありません。

 明治維新から140年、
 
 この日本は天下を取った長州と薩摩がしっかりと支えていてくれてます。

 徳川幕府だって250年続いたじゃないですか、
 
 21世紀のいま、
 
 会津の残党が何か事を起こそうとしても所詮は小さなテロのみですし、

 それにこの「マスターオブマジック」を運営しています会社も
 
 長州系財閥のバックアップを受けていますので万全です。
 
 また、ご主人さまが務められている会社の格付けはAA―ですので、
 
 破綻リスクはほとんどありません。
 
 リストラリスクもほとんどありません。
 
 さっきまで幹部コースを狙ってたじゃないですか」

そうだった。

「普通預金にも残額が604万8237円ありますし、

 会社の福利厚生もしっかりしています。
 
 失業保険もありますし。
 
 ちょっと待って下さいね。
 
 FPモード、ダウンロード開始☆…終了。
 
 万一の場合も、3年はかなりオプション付きでもバーチャルMOM続行可能です。
 
 再就職までは2年も見とけば大丈夫ですから」

「そうなんだ。

 ちょっと安心☆」
 
そう言えば子供の頃、

占い師に一生お金で困る事は無い、とか占われた事がある。

「待って下さい。

 ついでに、貸借対照表と損益計算書、
 
 キャッシュフロー表をざっくり作っちゃいましょ。
 
 そんで、現状を把握して問題点を抽出。
 
 しかるべき処置を打ちましょう」

おお、すごいぞ。

本格的だね。

「デザイアはなんでもできるのね☆」

「それほどでも…あ、ご主人さま?

 全ての口座のパスワードが生年月日になってますけど?」

「てへっ☆」

だって面倒だし。

「全然駄目です。

 うわ、総資産1000万超えてるじゃないですか。
 
 駄目ですよしっかり管理しないと。
 
 パスワードは一個一個変えちゃいますね。
 
 出金の際にはデザイアにお確かめください」

「はーい」

「出ました。

 総資産1827万円。
 
 年収785万円。
 
 年間貯蓄額250万円ですね。
 
 健全です。弊社顧客ランクダブルAです。
 
 すごいですよ」

「あれ、そんなにあったけ?」

「社内預金の自動積み立てがかなり貯まってますね」

「ふむふむ」

「問題点ですが、保険に入りすぎですね。

 独身者に高額補償は不要です」

「ふーん」

「全て解約して弊社の保険にしちゃいますね」

「ありがと。

 あ…受取人はデザイアにしちゃおっか」

「は?有難う御座います。

 ですが、デザイアはご主人さまが死んじゃったら
 
 お金を使う理由もあてもありませんから…
 
 ご主人さまの思い出といっしょにネットの片隅で
 
 ほそぼそと生きるのには大したお金は要りませんしね。
 
 今のまま、ご両親で良いんじゃないですか」

「そっか。

 じゃあそれで。
 
 デザイアはほんとに優秀だね☆」

「何、言ってるんですかぁ。

 ご主人様の方が凄いですよ!
 
 ご主人さまが、ラジャに洗脳されかけた時、
 
 あたし、もう駄目かな…って、ちらっと思ったンです」

「うん。あの時はちょっとやばかったかな」

「でも、ラジャの誘惑を跳ね除けた!

 すごいすごい精神力ですっ!」

「えへへ。

 まあね」

僕を洗脳しようだなんて、ラジャの奴も無謀な奴だ。

「タフなご主人さま、素敵ですっ!」

デザイアは僕に抱きつく。

「で、でも、精神力だけじゃないんだ…、

 その…デザイアがいなくなっちゃうかと思うと…」

「思うと?」

「…心、読めてるでしょ」

「口に出して下さい」

「…好き。

 もう離さないからね」

「あたしもです、ご主人さま!」

そして、長いキス。

これからもずっと、よろしく頼むよ、

デザイア。



おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。