風祭文庫・異性変身の館






「僕のデザイア」
(第4話:カーリ、危機一髪)

作・あむぁい

Vol.T-107





『もらったぁ!』

「危ない!」

てっきり、トリン様が攻撃されると思って、

僕が叫んだ瞬間、

フッ

レイスはその姿と消した。

あっあれ?

消えたレイスを探そうと僕が目を凝らした途端。

がしっ

僕は後ろから抱きかかえられ宙高く持ち上げられた。

ひいいいいい。

10m?

いや、もっと有るかな?

そう、僕はレイスに抱きかかえられて浮いていたのであった。

その瞬間、

「放せ!」

トリン様のその叫び声と共に、

トリン様の剣が光ると、

『痛い!!』

僕の後ろにいるレイスの悲鳴が上がり、

ボトッ

地面に向かって落ちてゆくレイスの片腕が見えた。

しかし、僕は解放されるわけでもなく

さらに、さらに高く持ち上げられていく。

「くそっ

 くうう

 く、カーリ様…不覚」



『あいたた、

 あいたたたた

 良くもあたしの腕を!

 でもね、勝負はあたし達の勝ちよ。
 
 空を飛べないのがトリンの最大の弱点ですものね』

その声と共に僕の首に大きな鎌がぴたりと当てられる。

うわあああん。

「私はどうなっても良い!

 カーリ様を放せ!」

わーん、トリン様、助けてよー。

『バーカ。

 もう、あんたなんかどうでも良いのよ。
 
 カーリさえ手に入ればこっちのものなんだから。
 
 あんたにやられたあたしの左腕の償いはこっちのお姫様に償ってもらうわ。
 
 口を開けな!
 
 カーリ!』

すごむレイスの顔がアップで近づく。

絶対ヤダ。

僕は顔を背ける。

レイスは中空をすべるように移動し、

僕にキスをすると無理やり舌をこじ入れようとする。

ヤダヤダヤダ。

すごく嫌な予感がする。

『あ、こいつ抵抗するかな?

 そんじゃあ…』

レイスは僕の鼻を摘む。

ず、ずるい。

1分経過…、、2分…持たないって。

ぷはあ。

開けられた僕の口にレイスの舌がするりと入り込む。

酸素を求めてもだえる僕の口一杯にレイスの舌が動き回る。

あ、あの…鼻摘んだままなんですけど!?

すごく止めて欲しいんですけど!?

ち、窒息する…

しかし、

ズルルルル…

ついにレイスの舌は僕の喉の先、胃の中まで入ってきた。

”く、苦しい…”

“えへへ、つながっちゃったよ、カーリちゃん。”

レイスの声が直接頭に響く。

”は、鼻外して!”

“あ、ごめん。”

取り合えず鼻は外してもらえた。

へ、変な形とかになってないよね?

すはー。

すはー。

“そんな事心配してる場合じゃ無いよ。

 そ〜れ、吸うよ〜”

その言葉の直後、

ジュルジュルジュル

僕の中から何かが吸い取られる感触が走る。

んんんんんんん!

す、吸われてる?

な、何これ、すごく気持ち良い?

ぜ、全身から力が…、

はあはあ”

“あははは。レイスちゃん復活ぅ。”

え?

レイスの切られた左腕がきれいに復活している?

それって?

“あ、な、た、の命でできたものよ♪

 カーリの命ってすっごく美味しいよ。

 好きになっちゃったかも。
 
 もっと、吸っちゃおうかな☆”

や、やめ…、

ずるずる…

レイスの舌が更に奥へと侵入を進める。

ごきっ。

嫌な音がして僕の顎が外れる。

痛くない…。

なんで?よだれが止まらず、

顎を伝ってはるか下まで垂れて落ちる。

“それはあたしの唾液に痛覚を麻痺させる親切成分が含まれてるからです♪

 くすくす。

 他にも色んな素敵成分が。

 もう、あたし無しでは生きていけないかもね?”

いやだあああああ!

僕が思いっきり叫び声を上げた途端。

どしゅっ。

目の前で恍惚に目を輝かすレイスの頭に大きな矢が刺さり、脳漿が飛び散った。

レイスの目は最早焦点が合っていない。

「今です!トリン様!」

デ、デザイア?

「悪の、消散!」

トリン気合の悪の消散の呪文が僕を抱えていたレイスを消滅させる。

重力が僕を呼ぶ。

ひやあ。

ずるるるるっ。

喉に違和感が走る。

刹那、レイスの舌が抜ける。

そして、

ひゅるるる〜っ

自由落下を始めた僕の頭はたった一つの事しか考えられない。

そう…

助けて!

トリン!

そう絶叫しながら僕は落ちて行く、

るるるる〜っ

山が伸び、木が掠める。

そして、小さかった地面が大きくなってきたとき。

サッ!!

がしっ。

落ちてきた僕をトリン様は見事にキャッチしてくれた。

「ご無事ですか、カーリ様?」

う、うん。

う、う、うえろぱ。

「あ、ごめん…なさい。

 う、うええええ」

ほんとに、ごめん。

憧れの人におもいっきりゲロを2回もぶちまけて僕は恐縮する。

「い、いえ。

 本当にお体は大丈夫ですか?
 
 カーリ様」

ちょっと嫌そうな顔をしたけど、でもトリンは僕は気遣う。

「ご主人様、大丈夫ですか?」

あ、デザイア。

来てくれたんだ。

良かった。

大きな弓。

そっか弓も使えたんだ。

「(ひそひそ)さらわれた姫君を助ける英雄。

 萌えシチュエーションです!
 
 これでたぶん、トリンのフラグが立ちましたね!」

てゆーか、僕は今死に掛けてたぞ。

い、今だって、命吸われて、ふ…ら…ふ…ら…

すると、

『おのれえ!

 覚えてらっしゃい!』

レイスは捨て台詞を吐いて撤収していった。

あっあれ?

確か致命傷だと思ったんだけどなあ。

はぁ…良かった。

安堵感に浸りながら僕は気を失った。



目が覚めると王宮のベッドに寝かされていた。

デザイアが看病してくれている。

「あ、ご主人様。目が覚めましたか?」

「……」

う、うん。

あれ?声が出ない?

「……」

あれれ?

喉もちょっと痛いし。

「えーっと、結構重症です。

 全身打撲。
 
 咽喉損傷。
 
 これはレイスの舌を入れたり抜いたりした時のものですね」 

そっか。

僕は包帯少女にされていた。

これはこれでそそる。

また、モニターが増えている気がする。

全身から力が抜けていて動けない。

「欲しいものがあったら何でも言って下さいね」

だから言えないんだって。

僕はぱくぱく口を動かしてデザイアにサインを送る。

「と…り…ん…、

 あぁ!

 トリンさんですね、

 えっと、
 
 トリンさんはシャワー浴びたいし、
 
 また撤退戦の指揮も取らなきゃって先に帰っちゃいましたよ」

くう…フラられちゃったのか。

「ま、カーリ様も重態ですし、今日は激しいプレイは無しにしときましょ」

くすん。

さびしいよお。

トリン様ぁ…

「じゃあ、あたしは隣の部屋でご飯作りますんで、

 何かあったら呼んで下さいね。
 
 たっぷり栄養つけないと」

だぁから呼べないって。

ああ。

トリン様…トリン様…あ、デザイア行っちゃうの?

僕は一人ぼっちになった。

さっきから何か変だ。

トリンの事を考えると体が熱くなって、胸がきゅんとなって。

ああああああ。

ああ?

あれ?

おかしい?

“くすくす。他にも色んな素敵成分が。”

レイスの言葉が脳裏に浮かぶ。

す、素敵成分って何ですか〜?



はあ。

はあ。

僕は必死で腕を動かそうとする。

も、もう少し。

ああ、そっそう。

あふん。

よし、今度は指を…ああっ。

もどかしい。

動け!動け!動け!動け!

ああああ。

駄目だ。

気が狂いそう。

ああああ。

パンツの上からじゃ、上手く。

ああああ。

あ、おお?

ちょっと体を揺らすと、包帯が摺れて気持ちいい。

すり。

すりすりっ。

すりすりすりっ。

ああああん!

こ、こんなんじゃ駄目!

だ、誰か!パンツ!脱がせて!

早く!

デザイア!

トリン様!

誰でも良いから!

早く!

ああああああん。

燃える身体に焼き焦がされるような責め苦を味わっている中、

「ご飯できましたよー♪」

と言う言葉と共にデザイアが戻ってきた。

デ、デザイア!

は、早く!

「って、どうしたんですか?

 ご主人さま?
 
 ん?
 
 ご飯食べさせて?
 
 いいですよー」

「……!」

ちがあう!

わかってるだろ!

こらっ!

「うふっそんなに泣いて怒らなくても…」

僕の涙の抗議にデザイアはオーバーな素振りをした後、

「じゃーん!

 はっ
 
 これ、何でしょう?」

と言いながらあるものを僕に差し出した。

え?

うわ、ちょっと待って。

それって、バイブって奴でしょう。

でっでも…

うっうん、

まっバイブは良いとしても

でっでもそれ太すぎ。

無理よ無理。

あああ。

でもっ。

でもっ。

デザイアに極太バイブを見せられた僕は思いっきり狼狽えていると、

「なーんてね。

 うそうそ」

と言いながらサッとバイブを僕の視界から除けた。
 
「うふふ

 ご主人様の処女はトリン様に取っとかないとね。
 
 だーいじょうぶ、あたしにお任せ下さい」

ポン

とデザイアは自分の胸を叩くと上手に僕のパンツを脱がし、

そして、ぺろぺろと僕のあそこを舐め始める。

ああん。

そう。

そこっ。

あふん。

ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。

ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。

ああん。

デザイア上手い…

ところが、

「ご、ご主人さま?

 あたし、何か変です?
 
 おかしいです。
 
 ご主人さまを滅茶苦茶にしたくなって…なんで?
 
 はあ。
 
 はあ。
 
 ああん」

え?

ちょちょっと。

デザイアの手がさっきのバイブに伸びる。

ういーん。

ういーん。

ああああー、素敵成分?

素敵成分を舐めちゃったから?

「だ、駄目…

 ご主人様のあそこは…
 
 トリン様の…、
 
 駄目ぇぇぇぇぇぇ!!」

バイブを握る片手をもぅ片手で遮りながらデザイアは叫び声を上げながら、

バイブは僕に迫ってきた。

そして

ずぷっ。

「……!」

バイブは僕の大事な汚れを知らない秘所を犯してしまった。



「いやー。

 危うくご主人様の処女を奪ってしまう所でしたが、

 あたしの機転で何とか事なきを得ましたね。
 
 デザイアちゃん賢い!
 
 なんちて!」

くすん。

お尻痛いよぉ。

「気持ちよかったくせに」

え?…、

うっうん。



撤退戦は悲惨なものだった。

交通の要所の2大都市を陥落させ、英雄隊は一路ラジャの首都を目指した。

しかし、首都のデスナイトの群に僕は転進を決意。

しかし…点や線での侵攻しかしていなかった僕の部隊は敵の反撃の前に風前の灯だった。

時に1420年。

ミラーンのバーバリアン大都市は治安維持を兼ねて

バーバリアンスピアマンで守っていた。

これは、ラジャの唱えた破滅の前にもろくも取り返された。

カーリ派の住民はことごとく殺されたと言う。

アルカナスの通りがかりに奪った都市もやはり破滅で滅んだ。

ラジャ首都とほど近く10キロの位置にあった最前線の都市はブシャンとタキ。

そして、レンジャー隊が5、ハイスピリットが守る我が帝国の一大…って最早一個しかないけど。

拠点だった。

「カーリ様大変です。

 トリン様達が帰る前にラジャ軍が…」



『あははは。

 トリンさえいなけりゃ、こっちのものよ。

 さあ、今日は腹いっぱい食うぞお!』

レイスのげちにしたがって、

レイス配下のレイス2部隊、プリースト4部隊、グリフォン2部隊といった攻撃部隊が出現した。

って、大ピンチじゃん。

「ど、どうしよう」

「と、兎に角魔法で援護でしょ。

 スキルはあるんですから」

「よーし、デザイア行くよ!」

僕たちは心を合わせてスペルを紡ぐ。

「聖なる祈りよ、ここに!」

『くくく。

 可愛いお嬢ちゃんたち。
 
 屍となりて我に従え。
 
 くははは。
 
 暗黒の祈り…』

「獅子の魂!」

タキの筋肉が盛り上がり、仁王像の様に変身する。

今回、勝てるとしたらタキが頑張るしかない。

がんばれ、一応英雄だし。

タキの職業はモンクで俊敏さが取り柄だ。

『くくく。

 無駄なことを。
 
 踊れ死のダンスを。
 
 破滅……」

破滅とプリーストの遠距離魔法でレンジャーの損失が馬鹿にならない。

「真実の光」

『なんの…闇の帳』

「くうう、悪の…」

「って、MP切れですよ、カーリ様」

「あうう」

『ほほう。ならば…、魔法浄化…』

聖なる祈り。

真昼の光。

そして獅子の魂までも消し飛んでしまった。

タキは元の弱弱しいタキに戻る…そんなあ…

後は地獄図絵だった。

『あははは。美味しい〜』

兵も一般市民も分け隔てなく食われた。

一夜にして大都市が壊滅してしまった。

『くくく。

 これがラジャのやり方…裏切ったものは、決して許さん…、
 
 我に逆らったカーリ…お前は死ぬ。
 
 くくく…、
 
 くははは』

レイスの言葉に背筋に寒気が走る。

僕はぎゅっとデザイアを抱きしめる。

恐ろしいラジャ…だけどなんとかしなきゃ。

あんな奴を許す訳には行かない。

タキとブシャンはかろうじて退却に成功した。



ミラーンサイドの都市にもラジャ軍団の猛威が迫る。

グリフォン2とプリースト5だ。

こちらは本国領から運んだダークエルフスピア6が守備隊だ。

結構厳しい。

「行くよ!デザイア!」

「はいっ!」

「聖なる祈りよ、ここに!」

『くふふ。

 無駄なことを。
 
 死の誘惑に勝てるものか…、
 
 死の呪術…』

何人かのダークエルフが倒れる。

くう。

ここは…

「混乱!」

グリフォンの混乱に成功。

『ふふふ。

 ならばもう一度…、
 
 死の呪術…」

さらに何人かのダークエルフが倒れる。

敵プリーストの攻撃も確実にこちらにダメージを与える。

こちらは有効な打ち手が無い。

『ふふふ。

 来ないのかな。
 
 どうした、お嬢ちゃん…、
 
 そーらっ死の呪術…」

「くはあ…」

「も、もう駄目…」

度重なる死の呪術の前に抵抗を続けたダークエルフも果てる。

な、なんてスキルだ。

『はははは。

 愉快だ。
 
 ふふふ…、
 
 死の呪術…』

「ああ…、カーリ様…」

この街の守備兵も全滅してしまった。

くそう…

「ご主人さま…しっかり…」

そ、そうだよね。

リーダーがこんなんじゃいけないよね。

うん、負けないよ!

見ていて、デザイア!


トリン、マーカス、ブシャン、タキは無事合流し、

アルカナスのラジャ帝国からの撤収を開始した。

なんとか、彼らだけは生き延びそうだが、

折角奪ったアルカナスの都市は全て取り返されるか、滅びるかした。

かくして、僕の第一次ラジャ征伐は失敗に終わった。

「ご主人さま…仕方ありませんよ、あれ見て下さいよ」

デスナイト5レイス3+バーバリアンスピアの部隊がミラーンのラジャの島をうろついている…、

デスナイトまでうろつくなんて…

『くははは。

 お嬢ちゃん。
 
 逃がしはしないよ。
 
 くはははは』

ラジャの不気味な声がこだまする。

その夜はラジャに襲われる夢を見た。

デザイアも、トリンも、みんなもアンデッドにされてしまって。

僕は何度も叫び声を上げた。

夜が充実していると、仕事がはかどる。

今月は支店長賞、いただきだね。

「藤村さん、1番に電話です」

ん?何処からだ?

「藤村さんご本人様でしょうか?

 Vクレジットなんですけど。
 
 108万円と高額のご請求になっておりますので、一応のご確認を。
 
 ドリーム・ラブ・テクノロジー社に108万1650円。
 
 よろしいでしょうか?」

おっおいっ

カードを好きに使っても良いとは言ったけど、

勝手に限度額上げても良いとまでは言ってないぞ。

デザイアの仕業だな。

「間違いない」

「あっそれなら良いんです」

ガチャ、ツー、ツー。

「あ、ちょっと…」

100万も一体何買ったんだ?



「只今〜。

 デザ…イア…先生?
 
 なの?」

先生というか、女教師というか、女教師シリーズというか。

兎に角そんな格好でデザイアは出迎えた。

伊達めがねがキラリと光る。

「遅い!

 遅刻です。
 
 早速勉強に入りますよ」

「は、はい?」

「どうして黙っていたんですか。

 1ヵ月後にTOEICを受けるんでしょ」

「う、うん」

忘れてたとゆーか、忘れてたかったとゆーか。

「点数良かったら選抜コース推薦なんでしょ?」

「う、うん」

まあ、選抜されたら結構出世に影響するかもね。

「金と、情熱と、愛情が有ればTOEICの点数アップなど簡単です。

 全てデザイアにお任せ下さい。
 
 既に英会話モードを購入してしまいましたし♪」

あうー。

それだ。

100万高けーよ。

「高く有りません!

 自己投資こそが重要なのです!
 
 ご主人さまの会社の場合、課長になるかならないかで在職中に2500万。
 
 年金で1800万の差が付きます。
 
 そこそこ努力でゲットできるならゲットしない手はありません。
 
 不肖、このデザイア今回の作戦には命を掛けて当たらせてもらいます。
 
 100万も掛けてTOEIC点数アップに失敗したとなれば
 
 ドリームラブテクノロジーの栄えあるナビの名折れ。
 
 その場合、パソコンと共に自爆して果てる覚悟!」

いや、ちょっと待って。そんな大げさな。

いいよもう100万ぐらい。

買っちゃったものはしょうがないし。

ほんわか行こうよ、ほんわか。

「駄目です!ご主人さまの為です!」

有無を言わさず、デザイアは僕にせえらあ服を着せる。

うわ、滅茶苦茶恥ずかしいぞ、これ。

そして、木の机と椅子が一個づつ。

そこに僕は座らされる。

デザイアは度の入ってない眼鏡を僕に掛ける。

すごく大人しそうで賢そうな美少女が鏡に映っている。

「思考制御、開始☆」

ブン…と音がして、僕は勉強に集中する。

「今日はこれぐらいにしときましょ」

眼鏡を外されて、僕は我に帰る。

こんなに集中して勉強したのは何年…何十年ぶりだろう。

まるで、雑念が…。僕は軽く頭を振るとデザイアに尋ねる。

「思考制御って?」

「簡単に言えば、湧き上がる雑念を全て強制的にカットしてやり、

 集中してもらうシステムです。
 
 勉強の能率は通常の4倍。
 
 さっきの状態なら、火事が起ころうが地震が起ころうがご主人さまは勉強し続けられます」

おお!!

すごい。

僕は湧き上がった疑問を口にする。

「でも、危なくない?」

「大丈夫です。

 思考制御中はデザイアが全力でサポートしますから。
 
 ご安心を」

そっか、ならいいけど。

「なんか、はかどっちゃった。

 賢くなった気分。今日はもうちょっとがんばっちゃおっかな」

「駄目です。思考制御は1日1時間が限度です。

 やりすぎると馬鹿になりますから。
 
 雑念があるからこそ、クリエイティブな思考ができるんです。
 
 大丈夫ですよ。
 
 ご主人さまの実力なら試験日までに1日1時間で十分750点が達成できます。
 
 らくしょーです」

おお。僕はもう750点を取った気になってきた。

TOEICさえなんとかなれば、営業成績は悪くないし、

部長は僕に甘いし、ほんとに楽勝かも。

「はぁい。

 勉強の後には甘いもの。
 
 と、いう訳でケーキとコーヒーをご用意しています」

「デザイアはほんとに気が利くね」

「お仕えしがいのあるご主人さまで、デザイアもとっても幸せです」

デザイアもケーキをぱくつく。

なんか、学生時代をちょっと思い出すな。

あいつら今何やってんのかな。

あいつらもゲームの中でせえらあ服着て勉強とかしてんのかな。



つづく



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。