風祭文庫・異性変身の館






「僕のデザイア」
(第3話:どきどき初デート)

作・あむぁい

Vol.T-105





「カーリ様は気高く美しい透き通るような白肌の美少女魔道師、16歳。

 あたしはそんな高貴な彼女にお仕えする健気なダークエルフ美少女、デザイア。

 デザイアはカーリ様の事だけを考えて、
 
 カーリ様だけを見てる…ど・れ・い☆
 
 でも、つらくなんかない。
 
 だって、デザイアはカーリ様の事が、大大大大大好きなんだもん。
 
 どんな無茶な命令にも、デザイアは喜んで従っちゃうの。
 
 でも、ベッドの上では逆に………

 5/24 10:33 PN デザイアさん」

…うわ、最近やたらモニターが増えてると思ったら、

 デザイアの奴、こんなトコで営業してやがったのか、

 でも、まっ

 あいつ…いいトコあるじゃん…

ビジター向け掲示板に掲載されていたデザイアからの書き込みを見てしまった

僕はちょっとはにかみながら微笑んでいると、

「あちゃー、

 ばれちゃいましたか。
 
 すみません。
 
 ごめんなさい。
 
 勝手な事して。
 
 なるべくデザイアの欲しいものはデザイアのお小遣いで買おうと…」

それに気づいたデザイアが恐縮して謝りはじめる。

「…別に怒ってないよ」

「ご主人さま?」

「何が欲しいの?

 相談してくれたら良いのに?」

「無線LANを特製の強力なのに換えたかったんです。

 これが有れば、デザイアこのお家の外にも出れるんです。
 
 県内全域をカバーなんです。
 
 デザイア、ご主人さまのサイドシートに座って、
 
 おしゃべりできたら楽しいかなって」

理由を言いながらデザイアは恥ずかしそうにのの字を書く。

「へぇー。

 そんな事ができるんだ。
 
 いいよ。
 
 買おうよ」

「ええっ?

 でも、16万円もするし、
 
 電気代も食うし、
 
 やっぱり駄目です!
 
 大丈夫ですよ。
 
 デザイアお金貯めてるし、
 
 いつかそのうち…」

…デザイアは健気だなぁ。

 そんなに僕といっしょにいたいんだ…

「いいよ。

 私が欲しいんだし、買おう」

「え?

 ほっ本当ですか?
 
 本当に買ってもいいんですか?」

「いいって、

 いいって」

「やったぁ!!

 デザイア感激です!
 
 もぅ一生ついていきます!」

体中で喜びを表しながらデザイアは僕の胸にとびこんで来る。

僕の方が小柄なのでちょっとよろける。

デザイアはうるうるした瞳で僕を見つめ、

そして、

「あの、

 あのですねえ。

 実はもう一つお願いが…」

と場の勢いに任せて更なる告白を始め出した。

「なあに?」

「実はデザイア、

 勝手にヤプゥオークションで、

 カーリ様☆の水着デザイン権を売っちゃいまして…」

と言いながらおずおずと手を差し出すと

そのデザイアの手には小さな布切れが握られている。

…え?

 うわ、こっこれって水着って言うヤツ?
 
 え?
 
 うっそぉ!!
 
 うわー!!…

「まさか、

 無線LANをご主人さまに快く出してもらえるとは考えず、
 
 ほんとーに御免なさい。
 
 一生のお願いですから、これを着て頂いてですねぇ…」

と言いながらデザイアは僕に向かって手を合わせると、

ぺこぺこ謝り始めた。

「しょ、しょーがないな。

 もう、
 
 …恥ずかしいなぁ」

幾度も頭を下げるデザイアを横目で見ながら、

…まあ、別に悪気があったわけじゃないし。

 しょうがない。
 
 一肌脱ぐか。

と僕は思うと、

「で、これってどうやって着るの?」

初歩的な質問をしてしまった。



「はい、ご主人さま、

 そこでにっこり」

…こ、こうかな。

 にこっ。
 
 お、可愛い。

「ナイスです。

 じゃあ、次は右手を挙げて、
 
 そう彼氏に、こっちよ〜って感じで」

…か、彼氏!?

 それってト、トリン様のこと?

デザイアの言葉に僕はトリン様のことを思い浮かべた途端。

ドキン!!

僕の胸は一気に高鳴り、

顔中がまるで火を噴出したかのように熱くなってしまった。

すると、その影響だろうか、

僕はちょっと顔を赤らめながら、萌えの感じを出しつつ右手を挙げた。

「ああ、その恥じらいが良いですよ〜。

 じゃあ、今度は胸を強調して、
 
 上腕部で両サイドからぎゅ〜っと」

…ぎゅ〜。

まるでデザイアに操られるかのように僕は言われたとおりにポーズをとる。

…うわ。

 こら凶悪だわ。
 
 結構モニター増えてるんじゃないかな?

ポーズをとりながらそんな事を思っていると、

「じゃあ、そのまま目をつぶって」

…う、うん。

「彼氏の事を思い浮かべて」

…トリン様…

「ちゅ〜をおねだり」

…う〜ん。

…………きゃっ!!(あ〜ん、恥ずかしいよぉ)



「もう、あんな恥ずかしいのは絶対駄目!」

撮影後、僕はそう言いながら顔を真っ赤にしていると、

「でっでも

 ご、ご主人さまだってノリノリだったじゃないですかぁ!」

とデザイアは指摘する。

「そんな事…兎に角絶対駄目!」

図星をさされて僕はどぎまぎしていると、

「でも、デザイン料+撮影会1時間で10万も出してきたんですよ。

 ちょっとはサービスしないと…ね」

デザイアはそれとなく僕の背中を押した。

「10、10まん?」

…うわ。

 けっこー張り込んで来たな。

 マニアか?

「ご主人さまはそんなに可愛いんですもの。

 これからもっともっと値が上がるかも」

「そうよね。

 わたし、かわいいもんね」

…ふふん。

 そうよ、わたしは可愛いのよ

 今月はもっとランキングが上がるようにがんばらないと☆
 
 ってあっあれ?(なんか誤魔化されたような)



一方、本題となるシミュレーションゲームの方も順調だ。

「トリン様っ〜☆」×2

僕とデザイアの声がかぶる。

…強い。

 絶対に強い!

 他の英雄、タキ、マーカス、ブシャンの出る幕が全く無い。

 バジリスク4、スプライト1

 撃破。

 ウォーベア4
 
 撃破。

 パイロタイタン(炎巨人)6ヘルハウンド(犬)2

 撃破。

トリン隊は次々と悪の尖兵を打ち破り、お宝と経験値をゲットする。

このゲームでは倒すべき四魔道師の他に野良モンスターもいてお宝や魔法を守っているのだ。

「あっちの方の経験値も上がるんです」

「うはっ☆」

理由はよく分からないがそれは楽しみだ…

理由を考えたら怖くなって来た。

それって??

もしかして、アレのこと?



「大地に眠る、悪霊たちよ。死せる兵達に偽りの命を与えよ。

 くくく!
 
 死人蘇りの秘術!」

ズムッ!!

追い詰められた黒魔導師ラジャ…

しかし、ラジャは追い詰められては居なかったのだ。

いや、それどころかこの状況を待ち望んですらいたのであった。

追い詰めて居ると思いながら、

戦士(プレーヤー)たちは集められていたのであった。

そして、そのとき、

全世界に向けて黒魔道師ラジャの呪詛が発動し撒き散らされた。

そう、ラジャの大技(世界呪符)「死人蘇りの秘術」の発動だ。

これによって全世界は陰気な黒雲の魔力に包まれ、

戦場で死んだ兵たちは新たにゾンビとして

ラジャの下僕としての第二の人生(?)を送るのだ。

味方の兵も、敵の兵も。

死んだ兵は全てゾンビになる。

ゾンビ自体は中程度の強さだが、

しかし戦闘の度に続々と補給されるゾンビ兵の集団は脅威だ。

くそお、ラジャの奴…寒気が背中を走る。

こんな恐ろしい奴を相手に果たして僕は勝てるのだろうか?

ラジャが放つ魔力を肌で感じながら僕は思わず震えていた。

しかし、ラジャの黒魔術の発動と共に戦況は急速に悪化し、

ついに…

「幼きもの老いたもの弱きもの達よ。

 無理に生きる事は無い。
 
 死こそが唯一の安息なり…破滅…」

ラジャの魔力が一気に攻め込んできたのであった。




「ぐわー」

「スピアマン!!」

「カーリ様…」

「ボウマン!!」

「ひ、ひどい…わたしの兵たちが…」

リアルなだけに正に地獄図絵だ。

僕の都市の一つがラジャ軍団に襲われ、ラジャの魔法の前に屈したのだ。

破滅は体力の無いものから順に命を奪う魔法だ。

体が芯から震える。

落胆する僕に、デザイアは無言で首を振る。

なんてひどい事を…ラジャだけは許せない!

「ラジャ首都に英雄たちを突っ込ませて、その首を!」

僕は威勢よく宣言する。

「や、やめて下さいカーリ様。

 お気持ちは分かりますが、残念ながら勝てません。
 
 今のトリン様ではデスナイト5には勝ちきれません!」

デスナイトは黒最強のクリーチャーで飛行、

先制攻撃、

鎧貫通、

生命力剥奪などなど、

色々とエグい能力を持つアンデッドの守護神だ。

それが5体もいては流石にトリンでも勝てない。

「でも、でも…」

僕は涙を浮かべて反論する。

「いい加減にして下さい!…

 何度、やっても駄目だったじゃないですか」

そ、そうなんだよなぁ。

セーブ&ロードで何度突っ込んでも駄目。

アンデッドを浄化する聖なる言葉が有っても駄目。

くぅ…。

今は未だトリンの経験が足りない。

ここは撤退しかない。

くっそぉ、ラジャの奴ぅ

ラジャを憎みながら僕が歯軋りをしていると、

「大丈夫です。

 カーリー様はまだまだ10年は闘えますわ、
 
 それよりも、面白い壺が手に入りましたの」

と言いながらデザイアは僕に一つの中国壺を見せる。

「壺?」

「はい、南宋のモノだそうで…」

「ふぅぅぅん」

壺を見ながら、

ふとここでクシャミの一つでもすれば

壺の中より魔王が現れてラジャを吹き飛ばしてくれるかな…

なんて思いながら

チーン!!

壺の淵をかるく爪で弾いた。

「とは、言うものの。

 ホント、どうしたものかしらね、ラジャの奴。
 
 守備兵の問題もあるし
 
 はぁ…頭痛いな」

抵抗の高い、ダークエルフの兵は高いし、

レイスやデスナイトが来ればやはり全滅の可能性が高い。

そして、講和するにもデスとは相性が悪いし…、



んで、外交モード

「いいですか、ご主人様、

 ここは今までの恨みを置いといて、
 
 怒らせずに大人の対応ですよ」

「う、うん。

 わかっってる」

小声での念押しの後、僕はラジャに向かって愛想笑いを浮かべて言う。

「あの、ラジャさん。

 戦争止めませんか。
 
 不毛だから」

「勝手な事を言うな。

 お前たちが我が国に侵略を掛けて来たのではないか」 

「う…」

僕は言葉に詰まる。

確かにラジャの言うことも一理は…ある。

だって、暗黒の儀式とかで女子供が生贄にされてて、どうか助けて下さい。

って市民の皆さんからの訴えがそもそもの発端なんだけどさ…

「押さえて、押さえて」

「す、すいません。

 若気の至りです。
 
 些少ではありますが、お詫びの品を…」

「たわけ。

 わびると言うならお前が誠意を見せろ。

 土下座して、わたしはラジャ様の奴隷です。

 何なりとご命令を。

 と哀願せよ」

丈居高な姿勢のラジャに

くっ。

僕は唇をかみ締めていると、

「何をしておる。

 早く脱げ」

とラジャはけしかけてくる。

うう…仕方がない…

そう思いつつ僕の手が動くと、

「って、何ご主人様脱ぎかけてんですか?

 交渉決裂でしょ?」

とデザイアの叫び声が響き渡った。

おおっ。

確かに。

「話し合いは無駄のようですね」

「そうか、まあ、今日はお前のへそを見ただけで良しとしよう」

言われて、僕はあわててへそを隠す。

しまった。

「お前が私に屈服する日を楽しみにしているぞ。

 くは。
 
 くは。
 
 くはははは」

ということで見事交渉は決裂。



「はあ」

交渉の失敗に僕は思わずため息をつく。

「そーゆー時は気分転換には18禁モードですよ☆

 トリンさま達のところに慰問しに行きましょ」

「えぇー!?

 慰問って何よ(一応、知ってるけど)」

「大丈夫ですって」

「でもでも、一生懸命戦ってる彼らの所に

 私たちが遊びにいったら迷惑なんじゃ…」

「そんな事、ありませんって。

 じゃ、ちょっとトリンをモニターして見ましょう」

というデザイアの声と共に魔法の鏡にトリンが大画面で映し出される。



『かっカーリ様…あ、はぁ、はぁ

 はぁはぁ
 
 はぁはぁ

 うっ!!!』

「えっ」

突然現れたトリンのクライマックスシーンに

「ね、ねえ、デザイア、

 ちょっととタイミング悪かったみたいだね…」

僕はヒキツリ笑いをしながらデザイアに尋ねた。

ピュッ

ピュッ

幾度も吹き上がる白濁した体液を見ながら、

「あははは。

 あは。
 
 あは。
 
 なっ何が悲しゅーて…
 
 男の…こんなところを…
 
 あっでも…
 
 へー」

一度は自分のタイミングの悪さを呪ったが、

でも他人の男がするところを見る機会はめったに無いので

手の隙間から僕はしっかり見る。

へえ。

人によって微妙にやり方が違うんだ。

一応、勉強にはなるか…

「うわ、流石はトリン様、大きいですねえ。

 それにあの筋肉。素敵ですねえ」

デザイアが僕の耳元で囁く。

た、確かに。

僕は決してホモでは無いが、あの体にはなかなか魅せられるものがある。

しかし、僕が見ている事など気づかずに

トリンは僕のあられない映像をオカズにして一心不乱に右手を動かす。

「彼女とかいないのかなぁ(よくもまぁ…僕をオカズにして)」

「カーリ様、何言ってんですか。

 トリンはこの世界一の英雄ですよ。
 
 その気になれば女なんて選り取り緑ですよ」

あ、そうなんだ。

「それをわざわざ、一人でやってんだし、

 よっぽどカーリさま☆の事が好きなんですよ」

「へ、へえ。

 そこまで慕われたら悪い気はしないね」

僕はいつの間にかトリンから目が離せなくなっている。

でもやっぱり僕が男のオナニーのオカズになってるなんて何だかイヤな気分だ。

「折角だから、彼の心もモニターして見ましょう」

デザイアの言葉と共に魔法の鏡は画面を変えて、

カーリとトリンの濡れ場を映し出す。

うわ。

僕はトリンからはあんな風に見えてるんだ。

ああ、この小さな胸が又たまらないよね。

ええっ、こんな表情まで?

うわ、気持ち良さそう…はあ。

あふん。

またまた変な気分になると思ったらいつの間にか

デザイアが後ろに回って僕に愛撫を始めていた。

「我慢することなんか無いんですよ。

 これはゲームなんですから」

そ、そうだよね。

トリンの想像の中の僕がいやらしい声を引っ切り無しに上げ続けると

僕の方もそれに引きづられて同じような声を上げ始める。

デザイアは巧みに加減を調整して、

トリンとトリンの想像の中の僕と、

僕の3人を同時にイカせる事に成功する。

あ、はああん☆

デザイア、上手すぎ…

「カーリ様、素直に成れましたか?」

「う、うん。

 トリン様のとこに連れていって…」

「ええ。

 でも、準備しないと☆」

「へ?」

………

「お化粧♪」

「ブラッシング♪」

「勝負パンツ♪」

なんだかこんな事をやっていると

僕はどんどん変態になって行くような錯覚を覚える。

「心配ありませんってば。

 安全モードがあるから大丈夫ですよ。
 
 現実の性格や記憶には一切悪影響はありません。
 
 任せて」

「ほ、ほんとーに大丈夫なんでしょうね?」

なんか、びみょーに不安なんだけどな。

「ほーら、完成です☆」

おおおおおっ。

完璧。

鏡に映った僕は正に究極美少女だった。

「えへへ。

 トリン様は気にいってくれるかな☆」

鏡に映るドレスアップした自分の姿を見つめながらそんな事を考えていると、

「はーぃ、

 準備はいいですかっ

 じゃぁ、行きますよぉ」

デザイアの声が響き渡った。



「えへへ、来ちゃった」

「カーリ様?

 こんなところへ?」

僕はデザイアに連れられて、

トリン様の待つ前線都市に赴いた。

アンデッドの攻撃でトリン以外の英雄たちは大なり小なり負傷し、

元気が無い。

「お見苦しい所を…」

僕に視線を合わせないようにしてトリンは恐縮する。

「えーっと、この辺を案内してくれるかな」

「トリンさん。

 カーリ様を連れてその辺を一周してきて頂戴」

「え、ええ、構いませんが?」

「さあ、しっかりがんばんなさいよ!」

デザイアは小声で僕に囁くが…

男の落とし方なんてわかんねーよ。

まあ、でも男の方の心理はわかるから…

なんとかなるっしょ。


「カーリ様は馬に乗った事は?」

「いえ?

 ありません」

「ではしっかり私に捕まっていて下さい」

デートはお馬でのお散歩になったようだ。

僕はおっかなびっくり馬に乗せてもらう。

トリンは身のこなしも軽く、僕を乗せた後で前に乗る。

さすが☆

「こ、こうかな」

僕は手を伸ばしたけど、

トリンの胸はとても大きくて、

僕の腕はとってもちっちゃくて密着しないと手の先が掴めない。

どきどきどき。

「ええ。

 では行きますよ」

ぽこぽこぽこ。

馬はゆっくりと歩き始める。

トリンのテクニックが上手いのか危なげなく進む。

あはは。

トリンとデートだ。

なんでこんなに楽しいんだろう。

んーでも、美少女カーリと最強英雄のトリンとは絵になるし。

なるようにしかならないよね。

色んな事を考えながら僕たちは馬に乗っての散歩を楽しんだ。

自然が美しい。

しかし、そこにもラジャの爪あとがところどころ残っている。

死と腐敗。ラジャはなんとかしたかったが、

デスナイトが相手ではどうしようもない。

トリンたちが退却すればこの美しい自然もいつまで持つか?

「カーリ様?」

き、きたっ?

どきどきどき。

い、いよいよかな?

「私を信じて下さい」

振り返るトリンのどアップが僕に迫る。

「う、うん。信じてるよ」

な、何からかな。

ちゅーかな?

僕はそっと目をつむる…

「あの、カーリ様?」

「あははははは。

 囲まれても気づかないなんて、間抜け魔道師もいいトコね、カーリ!
 
 あんたなんか、ラジャ様の下で奴隷がお似合いよ!」

え?

女?

誰?

「え?

 え?」

地面からゾンビが湧き上がる…

5体、6体…、

げげっ、20体以上いるぞ…

「トリンを張ってたら、大物が引っかかったわね。

 あたしはラジャ様配下の悪霊将軍!
 
 レイスちゃんよ。
 
 ここから生きて帰れるとは思わない事ね!」

宙を舞い、全裸に黒マントのきれーな姉ちゃんはレイスと名乗る。

その周りには黒マントの宙に舞う骸骨が十数体。

全員大きな死神の鎌を持っている。

ラジャ配下の上級アンデッド。

レイスだ。

特技は飛行と生命力剥奪など色々。

生半可な兵では太刀打ちできない。

ええっと、

今世界は「死人蘇りの秘術」の影響下にあるから、

レイスに命を吸われて死んだ場合は、

そのままの姿でアンデッドとして蘇り、

知性はそのままにラジャの下僕。

レイスの鎌で命を落とせば、ゾンビとして復活。

やっぱり、ラジャの下僕。

う〜む、どっちもヤダ。

まあ、僕は魔術師だからアンデッドにはならないと思う…けど。

「ラジャ様の勢力圏で護衛一人なんてなめてくれるじゃないの?

 ラジャ様!
 
 我らにお力を!」

中空にラジャの顔が大画面で浮かび呪詛を紡ぐ。

「暗黒の力、あれ!闇の帳…」

闇の帳がおり、アンデッドの力を増すと共にトリンの力を奪う。

「一人で不足かどうか、試して見るか?

 真実の光!」

負けずにトリンも魔法を唱える。

トリンは剣に優れるだけでなく魔法にも優れるスーパー英雄なのだ。

真実の光は闇の帳と打ち消しあってアンデッドの力を削ぐ。

ええっと、僕はいきなり始まった戦闘にとまどっていた。

デザイアいないと、魔法のサポートできないじゃん!

こ、困った!

「ご心配なく。あなたは私が命を掛けて守ります」

きゅん。

どきどきどきどき。

「う、うん」

「聖なる守り…、です」

おでこに優しくキス。

これで僕の守備力が上がった…らしい。

なんだか、映画のヒロインにでもなった気分だ。

「しっかりつかまっていて下さい」

「はいっ」

トリンの背にしっかりつかまると、

トリン様はゾンビの群れに突っ込んでいく。

たちまち蹴散らされるゾンビの群れ。

「だ〜。

 あんた達、使えなさ杉っ!
 
 レイス軍団!突撃!」

レイスの命令で中空から死霊レイスが次々と襲い掛かるが、

その全てがトリンの一撃で真っ二つになっていく。

つ、強い。

強いよ、トリン様。

『レイス。

 お前が行け』

『は、はいいい。

 ラジャ様。
 
 こ、こうなったらあたしが相手よ』

ラジャの指令で、レイスが鎌を構える。

スキが無い。

「ふむ。少しはできそうだな」

あ、でもトリン様は余裕だ。

『ええええええーいっ!』

気合で突撃するレイス。

その時、ラジャの魔法が放たれる。

『生命の吸収!』

黒い雲が現れ、トリンの命を奪おうとすると共にその視界を奪う。

『もらったぁ!』

「危ない!」

僕が叫んだ瞬間、僕は後ろから抱きかかえられ宙高く持ち上げられた。

え?

え?

えぇぇぇぇぇ!!

ちょっとこれって大ピンチなのでは?



つづく



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。