風祭文庫・異性変身の館






「性別適性検査」



原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-294





「優也、久し振りだね」

停車した電車より野田優也(14)が降りると、

駆け寄ってきた見知らぬ少年に声を掛けられた。

「?」

「優也、テニス部に入ったの?」

「そっそうだけど」

「そっか、

 うん、そうだね。

 優也はテニス一直線だったもんね」

と声を掛けた少年は優也の事情に詳しいそぶりを見せる。

そんな少年の態度に違和感を感じた優也は、

「お前、誰だよ?

 僕のことについて随分と詳しいみたいだけど」

と少年に向かって問い尋ねると、

「あは、判らないか。

 無理も無いなぁ…

 小学校で同じクラスだった土井真だよ」

彼に向かって少年は自己紹介をしたのであった。

「え?

 そんな馬鹿な」

少年の口から出た名前に優也は衝撃を受けると、

「本当だってば」

と少年はダメを押す。

「確かに…真と顔つきは似ているけど、

 でも、真は確か…」

「信じてよ」

優也は目の前の少年が

小学校の頃のクラスメートだった土井真であるとは容易には信じられなかった。

何故ならば、真が女の子だったからである。

「?」

困惑した表情を見せつつ優也は考え込んでしまうと、

「優也、性別適性検査っていうのを知っている?」

と少年は尋ねた。

「性別適性検査…

 TVで聞いた事はあるけど…」

「まぁ確かに身近なものじゃないか、

 簡単に言えば男性、女性、どちらの性がふさわしいかを判定するものだよ」

優也に向かって少年はそう説明すると、

「そうなのか…ってまさか」

「そう、僕は男になった方が良いって診断されたから男になったわけなんだ」

驚く優也に向かって少年はあっけらかんと答えてみせる。

「男になった。

 ってそうあっさり言われても…

 だって…」

「信じたくないのは判るけど、

 事実から目を背けちゃぁいけないと思うよ」

「ちょっと待って、

 頭の中を整理するから…

 って、お前が男になったのは取り合えず判ったことにする。

 だけど、

 真、お前、確か遠い街に引っ越した筈だろ?」

「あぁ、そのこと?

 父さんの仕事の都合でまた戻って来たんだ」

「そっそうだったのか」

「あぁっともぅこんな時間。

 ごめん、もう帰らないと」

優也と会話をしていた少年はホームに掛かる時計を見るなりそう言うと、

「じゃぁね」

その言葉を残して去っていった。

「…あの真が…

 男にね…

 確かに男っぽい奴だったけど、

 本当になっちゃったのか」

去っていく後姿を見送りながら優也はそう呟いていた。



翌日、担任の教師が教室に入ってくるや、

「これから転校生を紹介する」

と声を上げた。

そして、追って入ってきた制服姿の少年が正面に立つと、

「土井真です、よろしく」

と皆に向かって挨拶をしてみせる。

「あっ!」

それを見た途端、

優也は思わず声を上げ掛けるが、

しかし直ぐにその言葉を飲み込むと、

「野田君の隣の席に座ってください」

と教師は真に向かって指示をする。

「はい」

その声と共に真が優也の隣の席に着くと、

「ま、真」

「優也、また同じクラスになったね」

驚く優也に向かって真は笑みを見せた。

真は気さくな性格と可愛らしい容姿から

たちまちクラスの人気者になり、

そんな真の姿を優也は複雑な気持ちで見ていると、

「真は女子に人気があるな」

とクラスメイトが話しかけてくる。

「そうだな」

その声に優也はぶっきら棒に返事をすると、

「なんだよ、優也、

 真がうらやましいのか?」

クラスメイトは優也の脇を突いてくる。

「ち、違うよ」

「無理するな、

 俺だってうらやましいんだからさ」

「だからぁ」

「はぁ…

 俺もいっそ女の子にでもなれたらなぁ」

「おぃおぃ」

確かに元女の子だった故か、

真は女子のあしらい方が上手で、

それが彼の人気を押し上げている要因になっていることは優也も判っていた。



真が転校して数週間後、

優也が学校から帰って来ると一枚の封筒が届いた。

「性別適性検査?

 何で俺がこんなのを受けなきゃいけないんだ?」

封筒を眺めつつ優也はそう呟くと、

「この町でも15歳未満の子を対象に実施する事になったみたいよ」

と台所に立つ母親はそう言う。

「母さん、俺は女になるつもりは無いよ」

「でも、一回受けてみたら」

「…分かったよ。

 受ければいいんでしょ」

不機嫌そうに優也は封筒を持って自分の部屋へ向かうと、

「真の奴、勝手に男になりやがって」

と文句を言いつつも優也の目には涙を浮かんでいた。

その3日後、

真が優也の家に遊びに来ると、

「性別適性検査の結果、女になった方が良いって結果だったよ」

と優也は真に検査の結果について話した。

「へぇ、それで女になる気なのか?」

「あのさ、女になったら彼氏になってくれない?」

「急にどうしたのさ?」

「俺、ずっと前から真の事が好きだったよ」

「優也」

「それなのに、勝手に男になっちゃうなんてずるいよ」

優也の目から涙がこぼれ落ち、

「ごめん、お前の気持ちを分かってやれなくて」

「俺、いや、私、女になる決心がついたから気にしなくて良いよ」

優也は真の目の前で性転換薬を飲み干すと、

優也の胸が膨らみ始め、

筋肉が落ちて体つきが華奢になった事でズボンがずり落ちそうになるが、

大きく張り出した大臀部がズボンをしっかり受け止める。

その間にもペニスが体の中に引っ込んでしまうと、

優也の股間を女の証である縦溝が刻まれていった。

「大丈夫か?」

「体がちょっとふらふくけど、大丈夫」

「とにかく今日は体を休めた方が良いよ」

「そうするわ」

真はフラフラになっている優也をベッドに寝かせると優也の部屋を後にした。

その後、女になった優也は優美と改名し女子の制服に身を包むと

以前から女の子であったかのように振る舞い登校して行く、

そして、

「優美、また胸が大きくなったね」

「真こそ、逞しくなって」

「優美、体を見せ合うだけじゃ物足りなくないか?」

「私もそう思っていたわ」

放課後の体育倉庫に真と優美の声が響き渡ると、

二人はお互いの体を抱き寄せたのであった。



おわり