風祭文庫・異性変身の館






「遺伝子操作」



原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-292





「淳夫さん、久しぶりね」

「ま、真理江こそ…

 元気そうじゃないか」

ある晴れた日の午後、

野口真理江(30)とばったり再会した新田淳夫(26)は冷や汗をかきつつ

当たり障りの無い挨拶をしてみせる。

しかし、

「あら、顔色が悪いようね。

 何か隠し事でもしているの」

そんな淳夫を見透かすように真理江は尋ねると、

「べ、別に…な、何でもないよ

 うん、何でもない何でもない」

淳夫は額より滝のような汗を流して受け答えをしてみせる。



郊外にあるとある研究所。

そこで助手を務める淳夫と若くして大学教授になった真理江はかつて交際関係にあった。

しかし、真理江の独占欲に辟易した淳夫が一方的に別れ話を切り出し、

いろいろ揉めた末に二人は別れたのだが、

それから約半年経っての再会である。

「まっ真理江さん、

 どうしてここに…」

「ここの所長に協力してくれって頼まれたのよ」

「そっそう」

緊張感を伴った会話を二人がしていると、

この研究所の所長・大西英二郎(55)が姿を見せ、

「やぁ野口教授、

 当研究所にお越しに頂き、誠にありがとうございます」

と真理江に向かって丁寧に挨拶をする。

「こちらこそ、

 お招きに預かりましたわ」

「あはは、

 野口教授が来てくれたなら100人力ですよ。

 ところで新田君。

 野口教授と親しそうに話をしていたみたいだが、

 君は教授とは御面識があったのかね?」

「ええ、まあ…いろいろと」

淳夫は英二郎に真理江との関係について聞かれた途端、

返答に窮してしまったが、

「そんな事より所長、例の物をお見せいただけますか?」

と話を遮るようにして真理江が口を挟んできた。

「え?

 あぁ…

 はい、どうぞこちらです」

英二郎は淳夫との話を打ち切ると、

真理江を連れて研究所の最上階へ向かって行く。



ぐもももももももぉぉぉぉ〜っ

研究所の最上階。

そのフロアを全て占有して巨大なマシーンがうなり声を上げていた。

「こ、これは?」

照明を控えた空間に寝そべる巨人のごとくシルエットを浮き上がらせるマシーンを見上げて

淳夫は驚きの声を上げると、

「そうか、新田君がこのルームに入るのは初めてだっけな。

 そう、これぞこの研究所の心臓部であり、

 人類最後の希望でもある遺伝子操作マシーン”つくりかえる君・初号機”なのだよ」

英二郎は両手と両足を大きく広げ、大の字になって声を上げてみせる。

「いっ遺伝子操作マシン…つくりかえる君・初号機?」

まるでどこかの女神が名づけそうなネーミングと、

その目的を聞かされた淳夫はただあんぐり口を開けてみせるが、

その一方で、

「すばらしい…

 これが本格稼動すれば遺伝病の治療に大きく貢献する事になるだろうし、

 それに…

 それに遺伝子を自由に弄れちゃうなんて…

 あぁんもぅ、想像しただけでも萌えちゃう」

と話を聞かされた真理江は身悶えてみせる。

「ひぐっ」

一番見たくない真理江の姿を見た途端、

淳夫の体は固まり、

彼の心臓は一気に鼓動の速度を上げていった。

「野口教授、

 会議がありますので私はこれで失礼させてもらいます。

 あぁ、マシーンをご自由に触られても結構ですよ。

 新田君、野口教授のお手伝いをする様に」

その言葉を残して英二郎が最上階を後にすると、

「あぁ、所長!

 それを言っては…」

淳夫はすぐに飛び出して英二郎に今の発言を撤回させようとするものの、

ウィーン

無常にも英二郎が乗ったエレベータのドアは閉まってしまったのである。

「所長!

 所長ぉぉぉ!」

涙を噴出し、

鼻水を流しながら淳夫はエレベータのドアにすがり泣いていると、

「何も泣くことはないでしょう。

 さぁ淳夫さん。

 所長の許可を頂いたことだし、

 あなたにあたしの助手としてこのマシーンの実験台になってもらうわよ」

と淳夫の背後に立つ真理恵は手薬煉を引くようにして囁いた。

「ひぐっ!

 そっそれは」

「大丈夫、生命の危険は一切無いから」

「まだ試運転段階って…」

「どんな実験には危険が付きものよ、

 良いから早く服を脱いで」

淳夫に迫りつつ真理江は無理矢理服を脱がしてしまうと、

「あらら、

 カエルさんのお腹ね。

 そんなお腹じゃ服を脱ぎたがらないわけだわ」

淳夫の出っ張ったお腹を見て真理恵は呆れ半分に呟くが、

「んしょ」

どう言う訳か今度は真理江も自分の服を脱ぎ出したのである。

「?」

奇行とも思える真理江の行動を淳夫は眺めるが、

程なくして二人そろって全裸になってしまうと、

「さあ、始めるわよ、

 そのカプセルに入って」

「あの、まだ心の準備が…」

「もぅさっさとしてよ」

「お前、まだ根に持っているのか?」

「ちょっとくすぐったいけど我慢するのよ」

「俺はいやだぁ」

「ジタバタするな」

真理江は抵抗する淳夫を透明なカプセルに押し込んだ後、

「さぁて最後の調整をしないと」

と言いながらマシーンの正面に置かれているコンソールのキーボードを叩き始めた。

そして、

「よしっ、

 これでOK、準備ができたわ」

設定を終えた真理江は淳夫が入っているカプセルの右隣にある

透明なカプセルに入ると笑みを浮かべてみせる。

真理江がカプセルに入って間もなく、

ブゥゥゥッ!

ブザー音と共に二つのカプセルに緑の液体が注がれ、

カプセルがその液体に満たされてしまうと、

今度はカプセルはゆっくりと横に傾き、

チューブを通してカプセルに電流が流し込まれる。

そして、

バチバチバチバチ!!!

激しく放電をさせた後、

ザッバァァァ!!

ゴボゴボゴボ!!

カプセルは中を満たしていた緑の液体が排出しながら起き上がっていく

そして、

ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!

明るいチャイムの音共に

パカッ!

カプセルのドアが開くと、

フラフラしながら淳夫がカプセルから出て来るが、

その淳夫のお腹は見事なまで凹んでいるものの、

手足は前よりも白く華奢に

胸がわずかながらの膨らみがあり、

それどころか股間からペニスの存在が消えていたのであった。

「ぬわにぃ!?

 俺、お、女に…」

衝撃の事実に淳夫は混乱していると、

「君、可愛いね」

と男の声が話しかけてきた。

「だ、誰だ?」

思わず淳夫が振り向くと、

そこには細身の少年の姿をした真理恵が立っており、

「真理恵なのか?、

 いっ一体、何の真似だ?」

と少年が真理江であることを確認しながら聞き返す。

「淳夫、もうこれであなたは女の子を抱けなくなったよ」

「もっ元に戻せ」

「あたしに黙っていつも他の女ばかり抱いていた報いよ」

「何のことだかさっぱり判らないよ」

「あら、これでもシラを切る気かな」

そう言いながら真理恵が淳夫に見せた一枚の写真、

それは淳夫と英二郎の娘がラブホテルに入っていく瞬間を写したものであった。

「価値観の違い?

 よく言ったものね。

 あなたはここに潜り込むために所長の娘さんに接近したんでしょう。

 そして、邪魔になったあたしと縁を切った。

 うふっ皆の目は騙せても、

 お天道様はちゃぁんと見ているのよ」

その途端、淳夫は態度を急に変え、

「俺が悪かったから許してくれ」

と懇願するが、

「だーめっ、

 淳夫、あなたは私だけの物」

と言いながら真理恵はペニスを勃起させると、

怯える淳夫に向かって近づいて行くのであった。



おわり