風祭文庫・異性変身の館






「性転症」



原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-288





「司君、しっかりして」

「おいっ司

 何とか言え」

「だっ大丈夫か?」

大学の講義中、二回生の黒田司(19)は突然倒れてしまい、

そのことに気づいた傍に居た彼の友人達が慌てて駆けつけ介抱を始めた。

しかし、

「ぐっ」

司は苦しそうに息をするだけで、

周囲の問いかけには答えることができない状態であった。

「救急車!」

教室内に怒号が響き、

程なくして駆けつけてきた救急隊によって司はそのまま病院に搬送されていく。



「あれ?」

司が意識を取り戻したのはそれから数日後のことであり、

それと同時に彼は自分の体に起きている変化に気づいたのであった。

「膨らんでいる?」

自分の胸の違和感に気づいた司は胸がわずかに膨らんでいる事に気付くと、

「気がついたかね」

と共に彼の主治医が病室内に入ってきた。

「先生?、

 おっ俺…

 これはどういう事ですか?」

胸を押さえつつ司は問い尋ねると、

「君は性転症に感染してしまったのだよ」

と主治医は司が掛かっている病名を告げてみせる。

「性転症って…

 そ、そんな」

その言葉に司は衝撃を受けるや泣き崩れてしまった。



司は5日程で退院できたが、

「女になってしまったなんて」

と呟きながらすっかり軽くなってしまった股間に手を添えていると

「司君、元気がないみたいだけど?」

偶然、隣町に住んでいる筈の赤崎望(23)に出会った。

「の、望さん、どうしてここに?」

「仕事が休みだから戻って来ただけだよ」

「そうですか」

司の家と望の家は隣近所であったが、

望は就職して隣町に引っ越してしまい、

それから2人は1年以上会っていないのだ。

「司君、痩せたかな?」

「そんな事ないですよ」

「悪い病気じゃないといいけど」

望の一言に司が苦笑いをしてみせると、

「どこかへ食べに行かない?

 奢って上げるよ」

と司を気前よく誘ったのであった。

「え?

 じゃぁ」

望の誘いに司が応じると、

望は司を伴って駅前のラーメン屋に連れて行くが、

「望さん、よくそんなに食べられますね」

と食欲旺盛な望の姿に司は呆気にとられたのであった。

「仕事で体力を使うからね」

「とはいっても…」

「司君、食欲ないの?」

「まっまぁ」

こう言うやりとりの後、

食事を終えた二人はラーメン屋から出ると、

コンコン

突然、望は咳込み始めた。

「喉の調子が悪いみたいですね」

「2、3日前から咳が出るようになってね」

「望さんも体には気を付けてください」

「じゃあ、またね」

と言葉を交わして二人は分かれていった。

さて、司が性転症に感染した事に対する家族の反応は意外なもので、

「前からお前みたいな娘が欲しいと思っていたんだよ」

「か、母さん」

「可愛いじゃないか」

「兄さん、からかわないでよ」

「本当の事を言ったまでだよ」

司は女になっていく事に抵抗を感じていたが、

そんな司に構うことなく体の女性化は進行していき、

望に会ってから1ヶ月以上経ったある日、

「ハアーハアー、

 女ってどこを触ってもこんなに感じるなんて」

司は右手で膨らみの増した胸、

左手でクリストスを弄ってオナニーをしていたのであった。

そして、

「いっイクぅぅぅ」

絶頂に達しようとしたとき、

「確かにそうだね」

と言う声が響いたのであった。

「エッ?」

突然の声に司は振り返ると、

そこには見知らぬ男性が立っており、

ニヤリ

と笑ってみせる。

「キャー」

反射的に司は悲鳴を上げて膨らんだ胸を手で隠すそぶりを見せると、

「あれから一度も会っていないし、

 髪も短く切ったから分からないか」

と男は済ました口調で言う。

「!!っ」

その言葉に司が男性の顔をよく見ると、

男は望によく似ており、

「望さんですか?」

恐る恐る尋ねると、

「そうだよ、僕も君と同じ病気になっちゃった」

とペロリと舌を出して返事をして見せたのである。



司は慌てて服を身に着けると望にお茶を出し、

「咳込んでいたのは性転症に感染していたからだよ」

「病院には行ったんですか?」

「いや、行っても治療できる見込みが無いから行かなかったよ」

「未知の病気ですからちゃんと病院で診てもらわないと」

「大丈夫だって」

「どうやら性転症に感染してからも仕事を続けていたみたいですね」

「ああ、体力がいる仕事だったからむしろ男になって良かったよ」

「そうなんですか?」

「あのさ、君の裸を見ちゃってからどうも落ち着かなくて」

と言う望の股間ではペニスが力強く勃起しており、

「女として男に抱かれるのに抵抗があるのかな?」

「あの、そうじゃなくて」

「大丈夫、痛くしないようにするよ」

と囁きつつ望は司を抱き寄せて見せた。

そして、流れに逆らえないまま二人が司の部屋で裸になると、

「こんな太い腕で抱き締められたら骨が折れてしまいそう」

「そんな乱暴はしないよ」

「冗談ですよ」

の言葉の後、

望のペニスが司の陰部に挿入されると、

「くっ」

「痛い?」

「少し痛いですけど、もう大丈夫」

「良かった」

司の言葉を聴いた望は腰を動かし、

「アアーアアーン、

 き、気持ち良い」

「ウウー、

 で、出ちゃいそうだよ」

の言葉と共に二人は絶頂に達した。

そして、

「そう言えば子供の頃、

 僕のお婿さんになりたいって言ってなかったっけ?」

「でも、私、女だからお婿さんじゃなくてお嫁さんですよ」

司が恥ずかしそうに言うと、

「今でも僕の事が好きかな?」

「どういう意味ですか?」

「君が好きだって事さ」

と言いながら望は司を強く抱き締め、

程なくして司は夏海と名前を変えたのであった。



おわり