風祭文庫・異性変身の館






「ゲームの王様」



原作・あむぁい(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-122





「えーっと、じゃあ四番がぁ…」

その時、美里さんの顔色がさっと変わるのを俺は勿論見逃さない。

「王様のおでこにキスね」

「あう…」

美里さんの口から小さな声が漏れる。

「四番の人?」

「はい…」

「じゃあ、王様にキスね」

「…はい」

ここでは考える間なしに即座に口頭で了承させるのが重要だ。

一度了承してしまえば、それは既定事項となり自分を縛る。

アルコールが赤らめた彼女の顔が近づく。

息が僕の顔にかかる。

彼女の手がそっと僕の髪をかきあげ。

目をつぶって。

そっとキス。

うむ。王様ゲーム、最高!

王様ゲームこそまさにゲームの王様と言えるだろう!

当たり前か。

「なんか、また大上さんにやられちゃったなぁ」

「ありがとう、美里さん。愛してるよ」

「くやしいなあ」

雰囲気を盛り上げる軽口も重要だ。

勿論、おでこにキス程度で終わる気は無い。

今夜のこのメンツなら!

必ず、美里さんは俺のモノに!



「えー、じゃあ、

 二番と五番が青汁焼酎割り、一気飲み」

「げぇ〜」

「あ〜ん」

王様ゲームで最も大事なもの!

それは「場の空気」!

日本人は場の空気には逆らえない。

王様の命令は絶対。

この雰囲気を少しずつ少しずつ形成し、

テンションを上げ続けるのが重要だ。

「模擬刑務所の実験」は知っているかな?

募集されたアルバイトが看守役と囚人役に分かれて、

それぞれを演じるうちに、

人格まで変わってしまうというお話だ。

可能なら、テンションは女の子側に上げさせたい。

もちろんそう仕向けるのが我々のテクニックだ。

緻密に。静かに。場の空気を作り上げていく。

そう、王様ゲームを制するものは人生も制するのだ。



「そんじゃあ、三番と一番がポッキーゲーム!」

「げげー。

 男同士かよ…」

「がんばれ、小林ちゃん!」

現在、場のテンションはBランクまで達している。

キャラによっては直接接触まで可能なレベルだ。

今回のメンバー、美里さんは「負けず嫌い」

亜美ちゃんは「おっちょこちょい」

輝美ちゃんは「エッチ大好き」だ。

場のテンションが高まりさえすれば、

王様の命令に逆らう事は無い。

たまにいるのだ。

場のテンションがどんなに高まろうと一人だけ冷静な奴が!

根暗がっ!

そんな奴が俺は大嫌いだった。

あ、勿論男性側は我が王様ゲームサークル

スーパースリーのメンバーで固めてあるから、

事、王様ゲームにおいて手抜かりは無い。

小林も沼崎も百戦錬磨の猛者と言えるだろう。

王様ゲームに勝つ方法は実に簡単だ。

必要なときに王様を引き。

誰が何番かを知っておく。

それだけだ。

勿論、くじの棒にはわからないように目印が彫ってあるし。

小林や沼崎とのサインの打ち合わせは万全だ。

途中でサインの系統を変える事だってできる。

気づかれないように番号を見るテクニックは完璧だし。

顔色で番号を読むこともできる。

俺は…

俺たちは…

無敵の王様ゲームのプロフェッショナルだ。



「ん〜、なんかおかしいなぁ…ちょっと、トイレ!」

美里さんがトイレに立つと、僕は軽く手を振って見送る。

なんだか、メルアド交換が始まったので取り合えず参加する。

「ねえ、美里ちゃんのメルアドは?」

「えー、本人に聞いて下さいよぉ」

「大上さん、

 美里が良いんだ〜、
 
 ふ〜ん」

「そう言えば、美里は大上さん意識してるみたい」

「あはは。

 そう?
 
 そうかな?
 
 やっぱ」

「え〜、でも美里は勝負事に熱くなりすぎるからなあ。

 ま、そこが可愛いんだけど」

「あ、でも、ビリアードとか、

 ボーリングとか、
 
 結構なんでも強いよね。
 
 美里」

「そそ。

 最初負けても、ムキになって練習するのよね。
 
 あたしなんかボーリングの練習付き合わされて腕パンパンになっちゃった」

「あなたの腕が太いのは前からでしょ」

「あ、ひどーい」

ぱさっ。

真新しい包装をされた袋が机に置かれる。

振り返ると、美里さんが立っていた。

「トイレから店が見えたの。

 新しい王様ゲームセット買ったから。
 
  続きはそれでやりません?」

「おお〜っ!やる気だ」

「マイ、王様ゲームセットか。

 美里も相変わらずと言うか…」

「良いですか?」

美里さんは俺の目をまっすぐ見詰めて言う。

ここで目を逸らしたら負けだ。

「良いよ。

 勿論さ」

俺はイカサマの事なんかおくびにも出さずさわやかに頷いた。



黒蛇堂とか書かれた包装の中にはくじとルールを説明した紙が入っていた。

俺は人数分の棒状のくじを取り出すと、手際よくかき混ぜた。

「じゃ、続きを始めようか」

なーに、くじの目印が使えなくなったとしても、

サークルメンバーとはサインが通っているし、

美里さん以外の女の子は結構無防備なんで

くじを引くときや持っている時に番号が見えることが良くある。

100%の勝ちは無くなっても、

長くやれば俺の勝ちに揺るぎは無い。

「さあ、どうぞ」

俺はくじを差し出した。



美里さんは王様を初っ端引いた。

勝負強いと言われるだけの事はある。

「じゃあねえ。二番と四番と五番は〜」

俺だ。

と言うか、全員男だ。

「今後、王様を引くな☆」

美里さんはにっこり笑って命令する。

おいおい。

「引くなって言われても…」

「あはは」

「どうしろと…」

「じゃあ、引かないように努力しなさい。

 これならできるでしょ」

「はいはい」

「女王様の仰せのままに」

「了解」



「じゃあ、引いてね」

美里さんはにこにこ笑う。

あ、なんかすごい良い表情かも。

好きかも。

欲しいかも。

ええっと。

どれを引こう…

左から二番目以外だったらどれでも良いな。

あ…なんか右からニ番目を引きたくなって…

ち。

二番か。

「あー、王様あたしだー」

また、美里さんが王様だ。

「じゃあねえ。二番はあ」

げ、又、俺?

「ビール一揆のみ。

 ただし、精液の一揆飲みをイメージして飲み干す事☆」

「ほへ?」

「え?」

「うわ、美里やるぅ」

「いいぞお〜美里〜♪」

なんか、一気に命令のランクが上がったぞ。

「二番、誰?」

「はい」

俺はしぶしぶ手を上げる。

まあいい。

美里さんがそんな人だとは思わなかったけど。

女性陣の方で命令ランクを上げてくれるのは…

イメージねえ…

俺の目の前に精液で一杯の大ジョッキが置かれる。

は?

「な、なんじゃこりゃああああ!」

「おお」

「さすがだ。

 大上。
 
 ナイスリアクション!」

「ちょっと、このビールおかしくない?

 白いし?
 
 臭いし?」

「すごい」

「やるねえ」

俺はごしごしと目をこする。

あれれ?

なんだ、普通のビールじゃん。

「さ、早く」

「おう」

急かされて再びビールに視線を戻すと、

それは精液に戻っていた。

あれ?

「はい。

 大上さん。
 
 一揆、一揆、一揆〜」

「一揆、一揆…」

美里さんのコールに皆が付随する。

俺の震える手がジョッキを持つと小刻みに震えるそれはカタカタと音を立てる。

俺は一気に肩の高さまでジョッキを持ち上げると思い切って飲み干し始める。

ねばっこくって。

ぬるぬるしてて。

喉越しが悪くって。

何度も吐きそうになりながら。

俺はやっと大ジョッキを飲み干した。

汗をびっしょりかいていた。

俺は大きく肩で息をする。

「はあっ。

 はあっ」

「いや〜いい演技だった。

 さすが大上さん〜」

「良かったっすよ」

「すごぉい〜」

あ、あれ?

目の前のジョッキに残っているのは普通のビールだ。

な、何がどうなって…

俺は訳がわからなくなってきた。

いや、落ち着け。

冷静に考えれば。

あんなにたくさん精液を用意できる訳が無い。

雰囲気に飲まれる。

これが場の支配と言うものだ。

「じゃあ、次どうぞ〜」

「よおし、今度こそ〜」

真中以外を引かないとな。

右端かな。

ち、五番か。

「またまた、あたしが王様で〜す」

美里さんが可愛くガッツポーズする。

「そんじゃあ、五番がぁ」

げっ。

又、俺?

「ビールを精液をイメージして飲むんだけどぉ」

「又かよ」

「おいおい」

「女の子の気持ちで、美味しく飲むの〜☆」

「え?」

「五番の人?」

「はい…」

俺は手をあげる。

「いい?

 女の子の気持ち」

「女の子の気持ち…」

俺は美里さんの瞳から目を逸らせない。

「だ〜い好きな人の美味しい精液だから、

 一滴もこぼさず飲む事」

「はい…」

あたしの目の前に美味しそうな精液で一杯のジョッキが置かれる。

じゅるっ。

涎がこぼれそうだ。

あたしは、肩までジョッキを持ち上げるとごきゅごきゅと喉を鳴らして精液を飲み干す。

この触感がっ。

ぬめりがっ。

味がっ。

さいこーっ!

「はあっ。

 はあっ。
 
 あ。
 
 もったいない」

あたしは、ジョッキに付いている精液をぺろぺろと舐め始める。

美味しい。

美味しいのっ。

「大上さんっ。

 そろそろいけるんじゃないですか」

「いつまでやってるんすか」

「こ、こらっ。返せっ…、あれっ」

なんだか無我夢中で…あれ?

おおっ。

我ながら良い演技だ。



「そろそろ王様取って一気に行きますよ?」

「お、おう」

沼崎にひそひそ声で返す。

最早雰囲気マックス!

今なら!

どんなHな命令でもっ!



そろそろ王様を引いてもいい頃なんだけどなあ…

ええっと、左端以外を引かないとな。

えいっ。

一番だ。

「じゃあ、一番と二番と四番があ」

また王様の美里さんが命令する。

って、また男全員?

「女の子の気持ちでぇ、

 ビール瓶をぉ、
 
 彼氏のおちんちんをイメージしてぇ。
 
 フェラチオ☆
 
 あは。言っちゃった」

「きゃあ。

 美里、だいたん」

「えへへ。

 恥ずかしかったよお」

あ…

机の上に。

大きくて。

立派な。

あたしの彼のおちんちん。

「ああっ」

あたしはそれを引き寄せて、むしゃぶりつく。

好きっ。

好きっ。

あはんっ。

隣では、後の二人が一つのビール瓶を代わりばんこに舐めあってる。

口一杯に。

喉の奥まで。

突かれて。

感じる。

感じちゃう。

ああんっ。

あああんっ。



「じゃ、そろそろ次行こう」

美里さんが言うので、

しぶしぶあたし達はフェラを中止する。

ビール瓶の底には何cmかあたしの唾液が溜まっていた。

あ、あれ?

何か、変?

俺は…

美里さんにくじを差し出されて、

反射的に引いてしまう。

右端以外を引かないと。

じゃ、左端を引くか。

二番。

あ、しまった。

「そんじゃあ、二番がぁ」

あはは。

また、美里さん。

あはは。

「女の子の気持ちでぇ。

 バストが90cmになるまで、
 
 揉み続ける☆
 
 なんてどうかな。
 
 あはっ」

「あはは」

「さいこー」

じょ、冗談じゃ、ああっ。

俺の手は勝手にあたしの胸を。

揉み。

揉み。

あふんっ。

ああっ。

こんなのっ。

こんなのっ。

手が、手が止まらな…ああっ。

気持ち。

気持ち良いっ。

…!!

「大上さん、まだやってるねー」

「90cmは厳しかったんじゃない?」

「あ、でも、もう少しかも」

あはっ。

ああん。

ああああっ。

も、もう少しっ。

「す、すいません。

 もう、大上さんを許して下さい」

「王様ゲームのイカサマしてすいませんでした」

こ、こらっ。

小林、沼崎、お前らっ!

そんな事で、ああっ。

どうするっ!

プ、プライドがっ、

あああ。

う。

無いのかっ!

「ま、待てっ!」

俺は胸を揉みしだきながら何とか理性を引き戻す。

「美里っ、てめー、

 最後の勝負だっ!
 
 一対一だっ!」

「勝負?」

ぴくくっ。

っと、美里の顔がひきつる。

「とか言っても手塞がってるし」

「く…あはんっ。

 だ、大丈夫だっ!
 
 さあ、くじを用意しろ!」

「ふんっ」

美里の目に真剣さが戻る。

男と女立場は違っても、

勝負に賭ける意気込みに些かの違いも無い。

ここで。

ここで負けたらっ。

引き下がっては一生俺は王様ゲームで勝てないっ!

俺の目も前に二本のくじが出される。

どっち…どっちだ。

左を引いちゃいけないから。

右か。

いや。

ちょっと待て。

なんで駄目なんだ!

俺はありったけの精神力で抵抗する。

左を引いちゃ駄目。

引いちゃ駄目。

なんの、負けるかっ!

俺は王様ゲームの、王様ゲームのっ!

王様になるんだーっ!

左っ!

俺は両手が塞がってるので、口で直接くじを引き抜いた。

やたっ!

王っ!

ぽろりと口からくじが落ちる。

ふはっ。

ふはははっ。

勝った!

俺は王様ゲームに勝ったんだ!

「奴隷としてここにいる全員に奉仕しな。

 全員を5回イかせるまで、
 
 お前はずっと奴隷でどんな命令でも喜んで実行しな。
 
 ははは。
 
 そして先ずはこの場でオナニーだ。
 
 イく時は、本名と年齢言ってから「イク」って言ってイけ。
 
 さあ。
 
 どうした。
 
 始めろ」

ふははは。

沈黙。

あれ?

美里の顔がにっこり微笑み。

美里のくじが。

ゆっくり。

こちらへ。

回転して。

王。

…あれ?

俺はゆっくり。

足元の。

俺のくじを。

王。

そうだよね。

冷や汗が流れる。

俺の王の。

真中の棒が。

少し歪んで。

歪んで?

三?

「NO王〜!」

俺の口から絶叫が迸る。

「じゃ、命令はさっき自分で言ってたのをベースにして。

 後、女の子の気持ちで。
 
 後、女の子の体で。
 
 後、髪型は三つ編みで。
 
 後、顔は童顔で。
 
 後、お尻は小さめで。
 
 後、指は細くって。
 
 後、ちょっとマゾッ気があって。
 
 後…」

すごいスピードで美里様の命令が続き、

俺の体が命令に従おうとギシギシと音を立てて変わって行く。

めきめき。

ばきびきっ。

ぴしっ。

「いたたた。

 痛いっ。
 
 いたいぃ」

既に大きくなりつつあった胸は。

綺麗に形を整えてでっぱりを形成し。

体中の骨がきしみを上げて変形を始める。

肉が移動する。

筋肉が限界まで引っ張られる。

あっ。

金玉が金玉が。

中に…

痛いっ。

痛いっ!!

激痛の中。

俺の両腕は下半身へとまっすぐと向かう。

オ、オナニーしなきゃ。

既に俺のおちんちんは小さく縮んで。

内部から徐々に膣が形成されようとしていた。

痛っ。

俺の指が皮を掻き破ると。

血の中から真新しい女性器が姿を表す。

あたしは一心不乱に女性器に指を突っ込み掻き回す。

気持ち良い。

気持ち良い。

気持ち良いよー。

「ああっ。

 大上真一郎 28歳。
 
 い、今から。
 
 イきまーすっ!
 
 ああっ」

勢い良く潮を吹き上げ、あたしは盛大にイく。

あふぅ。

美里様が靴を履いて席を立ちかける。

あたしはふらふらに成りながら、上半身を起して引き止める。

「あ…待って下さい。

 美里様を5回イかせないと。
 
 あたし、ずっと奴隷で」

「いい勝負だったわ。

 大上さん」

「あ、俺立ってきたから、先頼むわ。

 大上ちゃん」

「はい。ご主人様」

ご主人様の小林様の命令に、

あたしはくるりと向きを変え、

にっこり笑うと小林様の大切な物を優しく手で奉仕しはじめる。

「あ、じゃあ、あたしは口でお願いしようかな」

「は、はいっ」

あたしはご主人様の輝美様のおマンコをペロペロと舐め始め…

「じゃあ、俺はこっちを使うか。

 お尻を上げて」

「も、もぁい」

ご主人様の沼崎様の命令であたしはお尻を高く上げる。

ずぶずぶずぶっ。

何か大きなものがあたしの中に入ってくる。

き、気持ち良い。

なんだかあたしは訳がわからなくなって。

ああっ。

あああっ。

きたっ。

くるっ。

「今日もあたしの完全勝利だ。

 ビクトリー!
 
 じゃ、大上さん,
 
 再戦したくなったらいつでも来なさい。
 
 あたしは誰の勝負でも受けるから!」
 
高らかにVサインを掲げると美里様はきびすを返し、

スタスタと歩いて行く。

新たな勝負を探して。

あっ。

待って。

あたしは口をおマンコから離して叫ぶ。

「大上 真一郎 28歳。

 い、今から、イきまーっすっ!」

ああっ。

王様ゲーム、最高っ!



おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。