風祭文庫・異性変身の館






「リズム」



原作・あむぁい(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-109





タタンタタ、タタン。

タタンタタ、タタン。

いつもと同じ満員電車の中。

ぎゅうぎゅう詰めの車内。

僕の右手はかばんで塞がり、

左手は吊革。

そして、右の乳首は後ろの客に弄られていた。

最初は何が起こっているのか分からなくって、

痴漢なんかされた事無くって、

何だかとっても恥ずかしくって、

声を上げる事もできなくって、

でも、これは痴漢で、

間違いなくって、

だって、僕が感じちゃってる。



リズミカルに、

そして時に奔放に、

何故だか全然嫌じゃなくって、

とっても気持ち良くって、

僕はその指に翻弄されていた、

一体、誰が?

僕は振り向こうとするんだけど、

車内はやっぱりぎゅうぎゅう詰めで、

なんだかいい匂いを嗅ぐ事しかできなくって、

ずっと、それは続いて…

タタタン、タ〜。

タラタタタ、タン。

「はん」

僕は思わずうめき声をあげてしまう。

「あっ」

その瞬間、

前に座っている女子高生と目が合うと、

僕は赤面してしまい、

ちょっとだけ我に返りかえった。

でも、熱い吐息が首筋にかかって、

背筋がぞくりと震えちゃって、

だんだん、胸への愛撫が激しく強くなって、

乳首はさっきから立ちっぱなしで、

僕はただどきどきする事しかできなくって、

そして、快楽のリズムに身を委ねる。

タタタン、タ〜、タ〜。

タラタタタ、タン。

タタタン、タン。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

「ああっ…」

僕は必死で声を抑える。

乳首を攻めていた指は次第に胸全体を揉みしだくようになって、

ああ…気持ち良い…

僕は快感に身を委ねて。

やがて、指は左の胸にその矛先を変える。

左の胸の、

乳首を弄られ。

左の乳からパルスが送られる。

タタタン、タン。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

僕の頭の中では。

もうずっと、その音楽がかかっていて、

離れなくって、

乳全体を揉みしだかれながら、

僕は右の胸が気になってしょうがなくって、

敏感になってしまった胸は、

ぱんぱんに張っていて、

僕に訴えていて、

触って、

弄って、

パルスが来る度、

ああっ。

両方。

両方弄って欲しくって、

リズムに狂って、

ところが、指は左の胸からも外れてしまう。

ど、どうして。

僕は喪失感に絶望する。

その時、かばんを握っていた僕の右手は、

後ろからぐいと掴まれ、

そのまま上へと持ち上げられて、

かばんはいつの間にか僕の手から離れて、

僕の右手は僕の右胸に導かれて、

ぴたりと吸い付いてしまって、

左胸への愛撫が再開されると、

僕は自分の右手で胸を揉みしだき始める。

タタタン、タン。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

左と同じリズムで。

同じ強さで。

同じ動きで。

タタタン、タン。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

片方だけの時よりも、

それはずっと気持ち良くって。

良くって。

僕は我を忘れた。

タタタン、タン。タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー、ラー、ラー、



指が下半身に向かった時、

僕は左手でも胸をもみ始めて、

でも、もうやり方はわかってて、

指がしていたように…

タタタン、タ〜。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

指は指揮棒を握って、

それを振り始める。

同じリズムで。

同じ強さで。

同じ動きで。

タタタン、タ〜。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー

指揮に合わせて、

僕は不安定な姿勢になったけど、

後ろから彼が支えてくれて、

それがとっても温かくって、

僕はリズムに集中できた。

下半身への愛撫はとっても不思議で、

指揮棒をいじられているうちに何だか変な感じになって。

なんだか、

出すたび、

どろどろに、

出すたび、

溶けて行くようで、

出すたび、

いつの間にか、

不思議な事に、

全然気持ち良くって、

おっぱいが気持ち良くって、

おちんちんも気持ち良くって、

リズムが共鳴して…

タタタン、タン。

タラタタタ、タン。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー、ラー、ラー、

気持ちよかったのに、

いつの間にか、

なくなっていて、

何だか変で、

やっぱり気持ち良くって、

じゅくじゅくしてて、

でも、気持ち良くって、

すごく気持ち良くって、

変な気分で、

でも、全て指にいじられるままに、

僕は、

僕は…

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー。

テンポが上がるのに合わせて、

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー。

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー。

僕の指のテンポもどんどん上がって、

どんどん上がって、

上がって、

上がって、

タタラタタタタ、タン。

タタラタタタタタラララタラララ、ラー、ラー、ラー、ラー、ラー、

ジャンっ!

割れるような拍手と大歓声の中。

僕は盛大にイッてしまう。

ああ…、あああ…、



「さあ行こうか」

男が僕に言う。

僕の手はだらんと下がり、

しびれきっている。

口は中途半端に開いて、

涎が口の端を伝う。

僕の胸はいつの間にかはちきれんばかりに膨れ、

男に支えていてもらわなければ、

立っていられない。

「ああ…」

僕はぼーっと男を見つめる。

「名前を思い出せるか?」

「僕の…名前…」

変だ。

思い出せない。

僕は…僕は…。

すごく不安になる。

そうだ。学生証を見れば…

僕は胸ポケットから落っこちそうになっていた学生証を

確かめようと手を伸ばす。

しかし、

「あ…」

びりびり。

学生証は破られてしまった。

僕はしびれた手でどうする事もできない。

困った。

これで…もう、僕は僕が誰だか…分からなくなってしまった。

「そうだな。

 佐智子、でいいか」

「佐智子…」

「お前の名前」

「僕の名前?」

僕は佐智子。

佐智子。

なんだかうれしくなって来た。

彼のくれた名前。

僕の名前。

「お前に新しい服を買ってやろう。

 かばんも服も、全て捨てるんだ。
 
 その服、似合って無いぞ」

「ああっ!?」

何故だか僕は男物の学生服を着ていて。

しかもズボンがびしょ濡れで。

ずり落ちそうで。

すごく変で、

コスプレみたいで、

恥ずかしくってたまらなくって、

彼の言う通り、全然似合って無かった。

「行くぞ、佐智子」

「あ、待って」

僕は彼を追いかけて、

降りた事の無い駅に降りる。

大きな胸が邪魔で、

こすれて、

声を上げちゃって、

必死で掻き分けて、

僕は彼に追いつくと、

彼の手に腕を回す、

暖かい温もりを肌に感じて、

僕はなんだかホッとする。

そんな僕と彼の横を満員電車は走り去って行く。

タタンタタ、タタン。

タタンタタ、タタン。

タタンタタ、タタン。

タタンタタ、タタン。



おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。