風祭文庫・異性変身の館






「探し物」



原作・あむぁい(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-097





いない!

荷物もない!

あいつは「ちょっとトイレ」と言い残して出て行った。

ちょっとアルコールも入ってたし、

結構泳ぐのにはまってたし。

俺は大して気に止めなかった。

しかし、いつまで待ってもあいつは帰ってこない。

バイクも無い。

それどころか俺の服も財布も無い。

一体、何がどうなってんのか…

俺はすっぱだかで途方にくれる。

波の音だけが聞こえる。

「くっそぉ…

 こんなコトなら水着でも着ておけは良かった…」

後悔しても始まらない。

ことの起こりは今日の朝、

「ようっ

 天気が良いし海にでも行こうぜ」

陽気な彼奴の声で徹夜明けの俺は無理矢理起こされ、

半ば寝ぼけ眼の状態で海へと引っ張り出された。

そして、

「よう、せっかく来たんだから、

 海に入って見ないか…」

思い返せばその言葉が全ての発端だった。

就職活動のストレスもあってか俺は彼奴の話に乗り、

素っ裸のまま海へと入っていった。



プルルルル。

誰もいない夜の浜辺。

突然携帯電話の音が響く。

砂浜にポツンと置かれた携帯。

「あっ」

それを見つけた俺は屈んで携帯を手に取る。

「びっくりしたかい?」

「あっおいっ

 お前、一体どういうつもりだよ!」

そう、声の主はもちろん彼奴だ、桐谷だ。

俺は声を荒げる。

「もう少し小さい声で。

 こっちは十分聞こえてるよ。」

「ふざけるな!

 とっとと、戻って来い!」

「あはは。

 冗談じゃないんだよ。
 
 本気なんだよ。」 

「なに?

 お前こんな事して、どうなるか覚えて置けよ!」

「覚悟はしてるさ。

 でも、今は自分の事を考えた方がいいんじゃないかな。」

「何?」

「警察に通報しても良いんだ。

 変質者がいますって。
 
 逮捕されたら就職内定は、ぱあじゃないかな。」

「お前!」

「しょうがないさ。

 裸で町をうろうろしたら捕まって当然だよ。」

「お前だって裸だったじゃないか!」

「僕は見つかってないし、捕まってないよ。」

「兎に角、服を返せ!」

「まあまあ。

 慌てるなよ。
 
 こっからが楽しいんだからさ。
 
 さて、電話をかけてのは他でもない。
 
 ちょっとゲームでもと思ってね。
 
 右斜めに大きな赤い石があるのがわかるかな。
 
 先ずは、そちらにレッツ・ゴー」

何が、レッツ・ゴーだ。

俺は腹を立てながら赤い石の方に向かう。

ビニール袋に入った白い物体。

なんと、パンティをみつけた。

「…お前、何考えてる?」

「服が欲しいんだろ?」

「お前、今度会ったら只じゃ…」

「ルールを説明するよ。

 今から2時間後。2時間後に警察の巡回が来る。」

「おい、待て…」

「ルールは良く聞いといた方がいいよ?

 それに警察来なくても、人はくるかもしんないからさあ。
 
 どっちにしても急いだ方が良い。」

「…」

「ゲームは2段階に分かれている。

 第1段階はさっきもいったけど制限時間2時間。
 
 2時間以内に衣装を集めて警察に捕まらない格好になる事。
 
 第2段階はここから家まで誰にも君だと気付かれずに帰る事だね。
 
 ここでは第1段階の成果が問われる。」

「あのな…」

「僕は本気だよ。

 省吾。
 
 そして賭かっているのは君の人生さ。
 
 折角の就職。
 
 ふいにしたくは無いだろう?
 
 さあ、早くパンツをはこうよ。
 
 もう、3分経ったよ?」

俺はパンティを握り締めて考える。

あいつは本気だ。

もぅつきあうのは止める。

それで?

今はどうする?

「あはは。

 良い表情だねえ。
 
 たまらないよ。」

ちっ、ぐずぐず悩んでいてもあいつを喜ばすだけだ。

俺は意を決してパンティを履く。

「ぴったりだろ?

 サイズも合わせたんだ」

気にするな!

兎に角、早く家に帰るんだ!

夜が明けるまでなら人に会う確率も低い。

こんな事で就職をフイにしてたまるか!

「似合ってるよ。

 たまらない。」

裸ではなくなった。

しかし事態が好転してるとは思えない。

裸は100%捕まる。

では、パンティの場合は?

良く知らない。

でも、このパンティは駄目だろ。

エロいし。

第一、女物だ!!



「んー、そんじゃあ、次だね。

 海岸にさあ。
 
 コーヒーの瓶が落ちてるんだ。
 
 その中にあるから。」

瓶は有った。

俺は屈んで瓶を取ると蓋を開ける。

なんと、ブラジャーをみつけた。

自然に溜息が出る。

のろのろと俺はそれを着ようとする。

「おいおい。

 ブラの付け方を知ってるのか?
 
 先ずは確認さ。
 
 どうやったら、外れて、
 
 どうやったらはまるのか。
 
 自分が付けた時の位置関係をイメージして。
 
 それから、おもむろに手を通す。」

想像して情けなさに涙が出てきた。

そして指示されたとおり、

ここを、こう。

そんで、こう。

ホックが…、ホックが…、

こうだ!やった!…、

悪戦苦闘の末ようやくブラを身につけることが出来た思わず喜ぶが、

でも、何を喜んでんだ、俺は?

がっくりと項垂れながら

「できたぞ!

 次は?」

とぶっきらぼうに返事をする。

「あはは。

 良い子だ。
 
 次はねー、ちょっと難しいよ。
 
 砂が盛り上がっているのが見えるかな?
 
 そうそう、もうちょい右。
 
 あそこを30cm掘ると出てくるのさ」

ぬわにぃ、今度は掘れだとぉ!!

くそっ。

文句を言いながら俺は砂浜を歩く。

ん?あれだろうか。

盛り上がっている砂を見つけると俺は手で素直掘り起こした。

そして出てきたのは

なんと、セーラー服(上)をみつけた。

くそっ。

次々にアイテムが増えるが事態が全く好転してない。

なんだか、逆に深みに嵌まっている。

「さあ、着てみてよ。」

あぁ!!

着りゃーいいんだろーが、着りゃー!

俺はヤケクソでセーラー服に袖を通す。

何とか、この事態を打開するアイテムは無いのか…

「次は、左の松林の中…、(ぶちっ)」

あは。

あははは。

俺は馬鹿だ。

あるじゃん、アイテムが…

そう携帯があるんじゃん。

そうと分かれば、こんなばかげたゲームは終わりだ。

キチガイなんかと付き合ってられるか!

西川か…佐々木…そうだ佐々木がいいな。

着替えを持って車で来てもらおう。

俺は電話番号を思い出す。

確か…、こんなもんかな。

「只今、受信専門です。

 次のカードをご購入して下さい。」

がくっ。俺は膝を付いた。

プイベイドかよ…、やばいっ!

俺は慌ててコールバックを選択する。

お、怒ってなきゃ良いけど…、

「只今、受信専門です。

 次のカードをご購入して下さい。」

はううう。

そりゃそうだ。

やってしまった。



10分たっても20分たっても桐谷からの電話は来ない。

あいつ…絶対見てる癖に!

このままタイムアップで、警察が来るのか?

俺は装備アイテムを確認する。

パンティ、ブラジャー、セーラー服(上だけ)。

駄目だ。

上手く言い分けできる自信が全く無い。

せめてスカートが有れば…、

あ。そうだ松林!

確か、奴は松林って言っていた!


素足にちくちくして痛い中、

俺は必死である筈のアイテムを探す。

どこだ…どこなんだ…。

程なく、白い箱が見つかる。

30分以上掛かっただろうか。

中身は…、

なんと、安全剃刀とシェービングクリームをみつけた。


あいつが見ているのは間違いない。

兎に角、スカートを見つけないと動きが取れない。

これって、剃れって事だろ。

あぁわかってるさ、お前の考えぐらい!

剃ればいいんだろ!

くそー!

俺はヤケになりながらカミソリを手にした。



そして、俺の足はつるつるになった。

しかし、電話は沈黙を続ける。

ふふ。

いや、俺も分かってたさ。

全部、剃れば良いんだろー!

あー、もー!



情けない…、

海水で洗い落とすと俺の下半身は一本の毛も無い状態になった。

塩水が剃り後にしみる。

しかし、電話は掛かって来ない。

俺は愕然とする。

ひょっとして、俺は自分の首を締めたのか?

今、警察に捕まったらなんて言い訳すれば良い?


プルルルル。

俺は慌てて海から出ると携帯に出る。

「き、桐谷?」

「桐谷様。

 あと、しゃべる時は女の子みたいにしゃべれ。」

ぐ…

「あはは。

 堪能させてもらったよ、君の馬鹿さ加減。
 
 え、なに?
 
 自分であそこの毛まで剃っちゃって?
 
 君はそんな趣味があったんだ。あはは。」

「そ、それは…桐谷…、様が…、喜ぶかと思って。」

自分でしゃべった言葉に俺は赤面する。

「へえ、そうなんだ。

 ひょっとして、君は僕の事が好き?」

「は…はい。

 桐谷様の事を…愛しています。」

くううううう。

「そっかあ。

 奇遇だねえ。
 
 僕も君の事を憎からず思っていたんだ。
 
 そんじゃあ、さっきの非礼は水に流して、ゲームの続きと行くか。」

「はい、有り難うございます。

 桐谷様…、」

「んー。

 なんか、こうー、違うんだなあ。
 
 あー。
 
 あたしは桐谷様の為に素敵な女の子になりたいです。
 
 どうかあたしを桐谷様のどれいにして下さい。
 
 こんな、感じかなあ。」

くっそぉ…

「あ、あたしは、桐谷様の為に、素敵な女の子になりたいです!

 どうか、あたしを桐谷様の………
 
 どれいにしてください…、。」

「声が小さい。

 やり直し。」

「あたしは桐谷様の為に、素敵な女の子になりたいです!

 どうか、あたしを桐谷様の奴隷にして下さい!」

「ピー 

 『あたしは桐谷様の為に、素敵な女の子になりたいです!
 
 どうか、あたしを桐谷様の奴隷にして下さい!』
 
 んー。
 
 まあ、良く録れたからよしとすっか。
 
 いつまで、パンティ脱いでるんだ。
 
 立ってるぞ。」

な、慌てて下を見る俺を電話があざける。

「あはは。

 本気にした?」



「そこの海外沿いの岩場に小さなくぼみがあってさ。

 ちょっと屈むと手が届くんだけど…」

あった。

なんと、女物の靴をみつけた。

靴かよ…

「よくやったぞ。

 省吾。
 
 いや、もう祥子にしよう。
 
 これで5つのアイテムが見つかった。
 
 後1つだ。
 
 ところが、時間は後15分しかない。どうする?」

「はあ。

 はあ。
 
 桐谷様。
 
 あたしはあなたの奴隷です。
 
 どうかお情けをお掛け下さい。
 
 桐谷様の太いものを祥子のお尻に下さい。
 
 お願いします。」

「あはは。わかってるじゃないか。

 ビデオもテープもあるから、一生お前は僕の奴隷。
 
 可愛がってやるぞ、祥子。」

「はい。桐谷様。祥子を滅茶苦茶にして下さい。

 あああん。
 
 祥子のオナニーを見てください!」

そう言いながら俺はオナニーを始める。

「あはは。

 可愛いぞ、祥子。
 
 よーし、最後のスカートは僕が自ら君に履かせてあげよう。」

かかった。

馬鹿が。

その気の無い人間を簡単に調教できたりする訳無いだろーが。

現実と想像の境の無いあほうが。

あいつが現れた時、有無を言わせずぶんなぐる。

押し倒す。

脱がす。

毛を全部剃る。

奴の服を俺が奪う。

このセーラー服はあいつに着せる。

やり過ぎて殺しちゃうかもしれないが、もう構わない。

あんな奴死んだ方が世の為だ。

がたっ。

黒い影が動くのが見える。

あんなに近くに?

俺がうろうろとあちこち探し物をさせられたちょうど中央あたりだ。

何で気づかなかったんだ?

でも、間合いに入ればこっちのものだ。

「桐谷様〜!」

俺は奴に駆け寄る。

もう一つの人影…へ?

「六芒星を描く動き。

 そして六礼。
 
 汝の願い確かに聞き届けた。
 
 受けよ、デモンTS光線!」

びーむ!

黒ヤギの頭をした男の放つ光線が俺を直撃する。

閃光!

俺はがっくり膝をつく。

全身の骨がきしみ、汗がしたたり落ちる。

髪がはらりと舞う。

長いストレートの髪。

「良かったな。

 祥子。
 
 お前の願いはレオナルド様がかなえてくれるぞ。
 
 素敵な女の子になって、俺の奴隷になるって願いをな。
 
 ま、死後の魂はもってかれちゃうけど。
 
 あはは。気にすんなよ。この科学時代に。」

「桐谷殿。

 契約協力に感謝する。」

「あはは。

 また頼みますよ、先生。」

「こちらこそよろしく。」

「祥子、お前も礼を言いなさい。」

あ…桐谷様の声にあたしは我に帰る。

「祥子を桐谷様の可愛い奴隷に変えて下さって、本当に有り難う御座います。」

「祥子。

 君に僕からのプレゼントがあるんだ。」

桐谷様はプレゼントの包みを渡して下さる。

桐谷様の始めてのプレゼント。

あたしはどきどきして包みを開ける。

「うわー。

 これ、ずっと欲しかったんです。」

なんと、セーラー服(下)を見つけた。

ずっと、ずっと欲しかった。

心の底から欲しかった。

うれしい。

本当にうれしい。

「馬鹿だな。

 泣くやつがあるか。」

「どうして、あたしの欲しいものが分かったんですか?」

「お前の事はなんだってわかってるさ。」

桐谷様があたしの髪の毛をくしゃくしゃにする。

「ほーら、似合うぞー。

 祥子。」

ああん。

感激!桐谷様があたしにスカートを履かせてくれる。

「一生大切にしますっ!」

「それだけじゃないぞー、就職。

 見つけといた。すごいぞ。時給2万!」

「あーん、就職の事もすごいすごい気になってたんです。

 なんで知ってるんですかー?」

「いったろう。

 お前の事は全てわかってるって。」

さすがは桐谷様。

「さ、いくぞ。

 さっそく今日から働くんだ!」

「はいっ!」

「じゃ、レオナルドさん、またー。」

「はいよー。」

その言葉を残してレオナルドさんは白い煙を立てるとぼんっと消えた。

不思議な人だ。

「こら、さっさとしろ!」

「はいっ桐谷様!」 



「ご苦労様です。」

桐谷様がすれちがう警官に頭を下げる。

あたしはなんとなく、警官は嫌い。

桐谷様の陰に隠れて目を合わせないようにすれ違う。

桐谷様はあたしの腰に手を回して優しく言う。

「大丈夫。

 もう何も心配しなくて良いんだよ。」

「はいっ」

そう答えるあたしの秘所には

トロ…

淫らな粘液があふれ、

脚に沿ってゆっくりと流れ落ちる。

「どうした…」

あたしの異変に気づいた桐谷様が優しく声をかけ、

「濡れているのか?」

「!!」

的確にあたしの状態を言い当てる。

無論、奴隷であるあたしはそれを否定できず。

「……はいっ

 欲しくて溜まりません」

と正直に申し出ると、

「そうか…」

桐谷様はあたしの腰に手を回し、

スカート越しに股間を攻め始めた。

「あっ!!」

まるで、入る穴を求めているかのように蠢く指の動きに

あたしは思わず声を漏らしてしまうと、

「ふふっ

 今夜は楽しめそうだ」

桐谷様はそう告げると、瞬き始めた星を見上げた。



おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。