風祭文庫・乙女変身の館






「のぞみの受難」
(Yes!プリキュア5・二次創作作品)



作・風祭玲


Vol.839





「はぁぁ…

 酷い目に遭ったぁ」

朝の光の中、サンクルミェール学園の制服を翻し、

スクールバスのバス停に向かっている夏木りんは

この数日間の間に起きた出来事を思い返しながら、

「はぁ、

 でも、体が元に戻ってよかったわ。

 家族の目を誤魔化すのももぅ限界だったし…」

と膨らみを取り戻した胸に手を当てて安堵の表情をしてみせる。

しかし、

「それにしてものぞみったら、

 どこであんな薬を手に入れたのかしら、

 お陰でこの数日間滅茶苦茶にされたわ」

数日前、夢原のぞみから飲まされた謎の薬のことを思い出すなり、

ギュッと握り締めた拳を震えさせていると、

「えっと、夏木…夏木りんさん?」

とりんを呼ぶ声が響き渡った。

「え?」

その声にりんは振り返ると、

「あっ…

 こまちさん…じゃなくて、

 お姉さんののどかさん」

自分に向かって手を振る女性を指差した。

「いまから学校?」

りんの横に立ったまどかは尋ねると、

「えぇまぁ…

 のどかさんは学校じゃないんですか?」

とりんは聞き返す。

「あぁ…

 あたしの学校は今週一週間休校よ。

 ほら、いまハシカが流行っているじゃない。

 そのトバッチリを受けてね。

 だからと言って家に居ても仕方が無いしね、

 電車で都心に出てみようと思ってね」

ウィンクをしながらまどかは事情を話し、

そして、りんの足元を見るなり、

「足、良くなったんだ」

と指摘する。

「え?

 あれ、あたしが足を痛めたのを知っていたんですか?」

それを聞いたりんは少し驚いて聞き返すと、

「えぇ、のぞみさんに聞いたのよ、

 あなたが足を痛めているから何とかしてあげたいってね。

 それで、何かの足しになればと持っていたあの栄養剤を渡したんだけど…」

下唇に人差し指を当てる仕草をしながらまどかはそのときのことを思い出す。

「あっ、あの薬ってまどかさんのだったんですかっ!」

りんは冷や汗をかきながら聞き返すと、

「うーん。

 薬じゃないわ栄養剤よ、

 あたしの知り合いの子が作ったものだけど、

 結構評判が良くてね」

りんの身に起きた出来事を知らないのどかは笑みを見せながら返事をする。

「はぁ…そう言う訳ですか、

 えぇそりゃぁ凄い効き目でしたよ。

 足の痛みもどこかに飛んでしまうほどの…」

それを聞いたりんはジト汗を掻きつつのどかを見ると、

「あっそうだ!」

何かを思い出したのか

のどかは肩から提げていたバックを開けると、

「これ、みんなで食べて」

と言いながら色々な色の飴玉が入った小ビンをりんに手渡した。

「え?

 いいんですか?」

手渡された小瓶を見ながらりんは喜ぶと、

「こまちったらいつも豆大福ばかり持っていくでしょう。

 うちの店は豆大福以外にもこういったのも扱っているのを知って欲しくてね」

喜ぶりんを眺めながら、

のどかはそう言った時、

スクールバスがりんの横を通り過ぎてバス停に止まった。

「バスが着たわね、

 じゃぁね」

スクールバスが止まるのを横目に見ながらのどかはりんに別れの挨拶をすると

手を振りながら駅の方向へと去って行くが、

彼女と入れ違うようにして

「うわぁぁぁん、

 待ってぇ」

声を張り上げながら夢原のぞみが走ってきた。



「うわぁぁ、

 りんちゃん。

 その飴どうしたの?」

スクールバスの中でりんが持つ小瓶を見てのぞみが声を上げると、

「あぁ、

 さっきのどかさんに貰ったのよ」

とりんは答えた後、

キッ!

改めてのぞみを見据えると、

「で、その前に何か言うことは無いの?」

と問いただした。

「へ?」

その言葉の意味が判らないのかのぞみはキョトンとして見せると、

「まったく…」

りんは額に右手の指を当て、

「のぞみぃ、

 あんた、あたしに何をしたのか忘れたわけ?」

と問いただした。

「おぉ!」

それを聞いた途端、のぞみはハタと手を打つと、

「おめでとう、りんちゃん。

 元の姿に戻れたんだねぇ

 足の痛みも無いんでしょう、

 今日から部活ばっちりだね」

そう言いながらりんの肩を2・3回叩いた。

「はぁ…

 のぞみが羨ましいよ」

そんなのぞみの姿にりんはため息をつきながら、

のどかから貰った飴が入った小瓶をバックに入れようとするが、

「あれ?

 入らないや…」

と呟くと、

「のぞみぃ

 悪いけど、預かってくれない?

 あたしのカバン、一杯なのよ」

そう言いながら小瓶をのぞみに手渡した。

「やったぁ!」

飴玉が入った小瓶を片手にのぞみは喜ぶと、

ジロッ

りんはのぞみを睨みつけ、

「みんなで食べるんだからね」

と釘を刺す。

「うっわっ判っているわよ、

 一人でこっそり食べたりはしませんよ」

頬を赤らめながらのぞみは渡されたビンをカバンの中に入れるが、

「果たしてどうだか…」

りんは疑いの目でのぞみを見ていた。



そして、放課後、

「え?

 お姉ちゃんから?」

「えぇ、

 飴玉を貰ったんですよ」

ナッツハウスでりんはのどかから貰った飴玉のことを言うと、

「こまちの店の飴って美味しいのよ」

話を聞いていた水無月かれんはそう言う。

「へぇ、そうなんだ…

 のぞみぃ、

 のどかさんから貰った飴、

 出して」

それを聞いたりんはのぞみに指示するが、

「えっとぉ、

 あれ?

 うーん、

 何所にしまっちゃったかな?」

のぞみは自分のカバンを漁りながら飴が入った小瓶を探し始めるが、

しかし、なかなか見つからず、

ついにカバンを引っ掻き回し始めだした

「まさか、

 一人で食べちゃったわけじゃないでしょうね」

そんなのぞみの姿を見ながらりんは囁くと、

「りんちゃんっ!!

 ひっどーぃ」

のぞみの怒る声が響き、

それと同時に

「あっあったぁ」

嬉しそうに声を上げながらのぞみはカバンの中から小瓶を拾いあげる。

そして、

その小瓶を開けてのぞみは一粒一粒を皆に手渡すと、

「いっただっきまーす」

の声と共に、

ポンッ

真っ先に自分の口の中に入れてしまった。

だが、

「あれ?

 これって、うちの飴じゃないわ…」

渡されたものを見ながらこまちは呟くと、

「!!っ」

それを聞いた皆は一斉にこまちを見ると、

「まさか、これって!」

渡されたものに心当たりがあるりんは

慌ててのぞみのカバンを漁ると、

「ちょちょっと、

 のぞみぃ!!

 のどかさんから貰った飴はこっちよ。

 あんた、何を舐めているの?」

顔を引きつらせながらのぞみのカバンから朝貰った小瓶を取り出して見せた。

「へ?」

錠剤を口に含んだのぞみは振り返り、

ゴクン!

それと同時に飲み込んでしまった。

「これって…

 あたしをマッチョな男にしたあの忌々しい栄養剤…」

のぞみから渡された錠剤を見ながらりんは呟き、

そして、のぞみを見ると、

ドクンッ!

「うぐっ」

急にのぞみの心臓は高鳴り、

メキメキメキメキ!!!

見る見る体が膨れ始めた。

「のぞみ…

 あの錠剤、捨てずに持っていたの…ね」

股間を大きく膨らませ、

筋肉質の身体を盛り上げていくのぞみを見ながらりんはため息をつくと、

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

程なくしてナッツハウスに野太い声が悲鳴が響くのと同時に、

「何か出たココ!」

ナイトメア来襲を報せるココの声が響き渡った。




「さぁドリームコレットを渡してもらいますよぉ、

 ガマオみたいにはなりたくないのでね!」

コワイナーを伴いナッツハウスに襲ってきたギリンマは

なぜか切羽詰りながら声を張り上げると、

『コワイナぁ〜』

りんやかれんの前にコワイナーが立ちはだかった。

「だっ誰が渡すものですか!」

「みんなっ」

「はいっ」

「プリキュア・メタモルフォーゼ!」

その掛け声と共にりん達は変身し、

キュアルージュ

キュアレモネード

キュアミント

キュアアクアの4人のプリキュアが揃い踏みをする。

「っ!

 君たち、

 人数が一人足りなくないか?」

数を数えながらギリンマは指摘すると、

「ドリームは…今日は欠席です!!」

そう言いながらキュアミントはナッツハウスを振り返る。

「全く…

 私との戦いに欠席者が出るなんて、

 随分と見くびられたものです」

それを聞いたギリンマは不機嫌そうに言うと、

「でも、2回続けてはちょっと問題じゃない?」

冷や汗を流しながらキュアレモネードが指摘する。

すると、

「仕方が無いでしょう、

 のぞみがあんなことになっちゃったんだから、

 ここは4人で頑張るしかないのよ」

前回、戦いに出られなかったキュアルージュはギリンマと対峙すると、

「みんなぁ

 大丈夫ココ、

 こんなこともあろうかと代役を立てたココ」

とナッツハウスから飛び出してきたココが声を上げた。

「ハァ?

 代役?

 ちょっとぉ、

 そんな話、聞いてないわよ!!」

それを聞いたルージュが驚きながらココに迫ると、

「遅れてすみませーん」

カメラ片手にあの増子美加が駆つけてきた。

「げっ!」

「美加ぁぁ!」

美加の姿を見るなり4人の顔が硬くなると、

「いやぁ、

 ナッツさんから聞きましたよぉ、

 あなた方の正体…」

と増子は喋る。

「ちょちょっと、

 正体って…」

それを聞いた4人の顔から血の気が引いていくと、

「学園と街の平和を守るために立ち上がった生徒会長。

 そして、その生徒会長と志を同じにする4人の有志。

 いやぁ、生徒会にこのような実働部隊があっただなんて

 この増子美加も知り得ませんでしたぁ」

屈託無く美加は言う。

「だっだから何だって言うの?」

美加のその言葉にルージュが迫ると、

クイッ!

と美加はメガネを掛け直し、

バッ!

手を高く掲げて見せた。

すると彼女の腕にはピンキーキャッチュが光り輝き、

「プリキュア、

 メタモルフォーゼ!」

と掛け声をかけた途端、

美加はキュアドリームへと変身をしてしまった。

「はぁ?」

「なんでぇ?」

思いがけない美加の変身に皆は呆気にとられると、

「5人も居れば何が起こるか判らないココ

 代役は多いほど良いココ」

とココは涼しい顔をし、

一方で、

「さぁ、みんなで頑張りましょう!!」

新・キュアドリームはカメラ片手に気勢を上げていたのであった。



おわり