風祭文庫・異性変身の館






「りんの受難」
(Yes!プリキュア5・二次創作作品)


作・風祭玲

Vol.837





広大なるサンクルミェール学園。

「えぇ?

 足を挫いてしまったんですかぁ?」

生徒達で賑わう昼下がりのカフェテラスに春日野うららの驚いた声が響き渡ると、

「いやぁ」

ギブスで固定されている左足を隠すようにして足を引っ込めながら夏木りんは苦笑いをする。

「しっかし、

 りんちゃんが足を挫じいたのを見たときは本当に驚いたわ」

そんなりんを横目に見ながら夢原のぞみは大きく頷くと、

「のぞみったら、

 ただ騒いでいるだけで何もしなかったじゃないの」

とりんは皮肉を込める。

「フットサルの練習中?」

隣のテーブルに座る秋元こまちが挫いたときの状況を尋ねると、

「えぇまぁ、

 油断していた。

 と言われれても致し方ないですけどね」

りんは恥ずかしそうに頬を掻きながら自分の負傷を冷静に分析して見せると、

「それが判っていればいいんじゃないかしら、

 同じことを二度繰り返さなければ良いんですし」

りんを見ながら水無月かれんはそう言い、

「でも、困りましたわね…」

とため息を付と、

「そうねぇ」

のぞみを除く全員が困惑した表情になった。



「え?

 え?

 何か問題でも?

 大丈夫、りんちゃんはあたしがちゃんと面倒を見てあげるから」

そんな4人を見渡しながらのぞみは立ち上がって胸を叩くと、

「のぞみぃ」

そう言いながらりんは情け無さそうに見上げた。

「プリキュア…ですか」

一呼吸置いてうららがポツリと呟き、

「ねぇ、ココさん。

 いまの状態のりんさんが変身した場合、

 足はどうなるんです?」

とココに尋ねると、

「うーん、

 難しいココ。

 変身中に受けたケガは戻ったときには消えるし、

 変身前のケガもある程度まではカバーするけど、

 でも、りんの場合はどこまで大丈夫なのか判断付かないココ」

ココはそう答えた。

「じゃじゃ、

 りんちゃん、ちょっと変身してみない?

 変身すれば一発でわかるでしょう?」

それを聞いたのぞみが提案をすると、

「この場所で?」

「ナイトメアが襲ってないのに、ですか?」

「無駄な変身は慎むべきじゃぁ?」

「必要性は感じるけど、いまはその時じゃぁないでしょう」

と4人から冷たい視線が浴びせられる。

「あうう…」

自分の提案が全員から蹴られたことにのぞみはシュンとしてしまうと、

「ケガをした時は焦って弄らずに治るのを待つのが一番だよ」

とおタカさんの声が響いた。

「おタカさんっ」

その声に皆が振り向くと、

「夏木さんがケガだなんて鬼の霍乱ってやつかしら」

とおタカさんは続ける。

「おタカさぁん、

 あたしは鬼ですかぁ?」

それを聞いたりんは眉を寄せて抗議すると、

「じゃぁ、桃太郎かしらぁ?」

おタカさんは悪びれずに言うが、

「どちらかというと、金太郎…」

「浦島太郎って感じじゃぁ?」

「竜の子太郎でもいいんじゃない?」

うらら、かれん、こまちはヒソヒソと囁きあう。

ピクピク…

「聞こえているわよぉ」

こめかみをヒクつかせながらりんは呟いていると、

パシャッ!

いきなりフラッシュが焚かれ、

「サンクルミエール学園のスーパースター、

 足に負傷!!

 どうなる、フットサル部!?

 これはトップ記事になるわぁ」

と煽り文句を言いながら増子美加が盛んにシャッターを切り始めた。

すると、

「あんた達ぃ、

 いい加減にしなさぁぃ!」

ついにキレたりんが怒鳴り声を張り上げた。



「うーん、りんちゃんのケガ…

 何とかして治してあげたいなぁ」

放課後、

「練習には出られないけど、

 アドバイスぐらいは出来るから、

 のぞみは先に帰ってて…」

と言うりんと別れ、

帰宅の徒につきながらのぞみは一人で考えていると、

ドドドド…

後方から一台のバイクがよってくるなり、

「夢原さーん」

と声がかけられた。

「あれ?

 …あぁ、のどかさん」

ヘルメットの中からのぞく顔を見てのぞみは声を上げると、

「一人なの?

 こまちは居ないんだ」

と妹の姿を探しながらのどかは尋ねた。

「あっ、

 えっとぉ、

 こまちさんは図書委員のお仕事で…」

のどかに向かってのぞみは話すと、

「そうだ、

 あの…」

とのぞみはりんのことを話し始めた。



「ふぅーん、

 そうなんだ」

バイクを止め、

のぞみの話を聞いたのどかは大きく頷くと、

何かを思いついた顔になり、

「そうだ、これあげるわ」

そう言いながらバイクにくくりつけてあるバックより

錠剤の入った小瓶を取り出すとのぞみに差し出した。

「これは?」

興味深そうに小瓶を眺めながら尋ねると、

「身体の代謝を活発にさせる栄養剤よ、

 知り合いの雪城ほのかって子が作ったんだけど、

 うちの学校ではケガが早く治るって評判なの」

とのどかは錠剤の説明をする。

その途端、

ニパッ!

にわかにのぞみの表情は明るくなり、

「いまから学校にもどってりんちゃんにあげてくる。

 ありがとう、のどかさん」

というや否や消し飛ぶようにしてのどかの前から走り去ってしまった。



「りーんちゃんっ」

「のっのぞみっ、

 帰ったんじゃないの?」

フットサル部の練習場に姿を見せたのぞみを見て、

松葉杖をつくりんは驚きの声を上げると、

「うふっ、ちょっとこっちに来て」

とのぞみは含み笑いをしながらりんの腕を引くと、

「なっなによっ、

 一体…」

のぞみに引っ張られるようにしてりんは練習場から去り、

校舎の裏へと連れて行かれる。

そして、そこで

「りんちゃん、

 お口をあーんして」

と言うと、

「あーん…

 ………

 っていきなり何をさせ…」

つられるようにしてりんは口を開けるが、

スグに突っ込みを入れたとき、

「はいっ」

ポンッ!

りんの口の中に錠剤が入れられた。

「!!っ

 ゴクン

 うげっ、

 飲んじゃった!」

反射的にりんは錠剤を吐き出そうとしたものの

タイミング悪く飲み込んでしまうと、

「のぞみっ

 あんた、いま何を飲ませたのよっ」

と怒鳴りながらのぞみを掴みあげるが、

ドクンッ!

「!!っ」

同時に襲ってきた動悸にりんは手を離してしまうと、

「なっなっなっ

 かかか体が変…」

どもりながらガックリと膝をついてしまう。

「りんちゃん?」

それを見たのぞみは驚きながら声をかけるが、

メリッ!

いきなり、りんの首筋に筋が盛り上がると、

「うがぁぁ!」

喉を押さえながら苦しみ始めた。

「あっあわわわわ、

 どっどうしよう…」

りんの急変にのぞみは顔を青くすると、

「夢原さん、そこで何をしているの!!」

の声とともにかれんとこまち、

そしてうららが駆けつけてくると、

「あぁぁ、

 りっりんちゃんがぁ!」

慌てふためきながらのぞみはりんを指差した。

「夏木さん?」

「どっどうしたんです!?」

苦しみもがくりんの姿を見て3人は驚くと、

「うがぁぁぁぁ!!!」

りんは声を張り上げ、

ビリィ!!

筋肉が盛り上がる腕で着ていた制服を一気に引き裂いた。

すると、

ムキィ!

とても少女のものとは思えない分厚い胸板がりんの胸を覆いつくし、

さらに、胸板の下には綺麗に6つに割れた腹筋が姿を見せる。

「うわぁぁぁ!」

「気味が悪いわね」

まさに鍛え上げた男性の肉体と言っても良いりんの身体に、

皆は2・3歩引き下がるが、

メリメリメリぃ…

りんの変身はさらに進み、

体中の筋肉が盛り上がっていくと、

バキッ!

痛めた左足を保護していたギブスが砕け散りる。

そして、

グンッ!

りんの股間が急速に盛り上がっていくと、

グググググ…

穿いていた下着を内側から押し上げるモノが姿を見せた。



「くはぁ

 はぁはぁはぁ」

変身が終わるのと同時に、

りんは苦しみから解放されると、

「あれ?

 みんな…」

とのぞみの他、

かれんやこまち・うららも揃って自分を見ていることに気づいた。

そして、

「え?

 え?

 なに?」

裸体を晒す自分の姿に気づくと、

改めてその体を見るが、

「なにこれ?

 これがあたしの体?

 なっ何かが生えている…

 えぇ、

 これって…

 えぇまさか…」

次第に焦りの表情を見せながらりんは自分の身体を触りまくり、

そして、それが全て事実であることに気づくと、

「なっなんじゃ、こりゃぁぁぁ!!!」

野太い声を張り上げながら

マッチョな男の肉体となってしまった自分の身体を確認して頭を抱えた。

そして、のぞみを改めて睨みつけると、

「のぞみぃぃ!」

と声を張り上げ迫っていく、

「りっりんちゃんっ

 あっ足、痛くない?」

迫るりんに向かってのぞみは冷や汗を掻きながら尋ねるが、

「足ぃ、

 えぇ、おかげさまで痛みは感じないけど、

 こっこれはなぁに?

 誰が男にしてくれって頼んだのよぉ」

怒り心頭のりんは自分の身体を指差しながらのぞみに怒鳴ると、

その直後、

「うわぁぁん、ごめんなさぁーぃ」

と言うのぞみの声と共に、

ゴツンっ!

何かが殴られる音が響き渡った。



「みんなっナイトメアが出たココぉ!」

ココが叫びながら来ると、

「あわわっ」

りんは慌てて物陰に隠れ、

頭を押さえるのぞみの他、

かれんやこまち、そしてうららは構えた。

すると、

「見つけたわぁ

 ドリームコレットを渡してもらいますわよぉ」

の声と共に戦闘スタイルのアラクネアが自信満々に声を張り上げて姿を見せると、

『コワイナぁ〜』

コワイナーが立ちはだかる。

「だっ誰が渡すものですか!」

「みんなっ」

「はいっ」

「プリキュア・メタモルフォーゼ!」

のぞみの掛け声と共に

キュアドリーム

キュアレモネード

キュアミント

キュアアクアの4人のプリキュアが揃い踏みをすると、

「っ!

 ねぇ、

 あんた達、いつもより一人足りなくないか?」

とアラクネアは指摘するが、

「うっ、

 いいじゃないっ別に…

 一人は…欠席よっ」

その指摘にキュアアクアが顔を赤くしながら言い返すと、

「ルージュは居ないココ?」

とキュアレモネードに抱かれたココは尋ねた。

「えぇ…

 まぁ…その…」

ココの質問にレモネードは答えに窮すると、

「まぁ、居ないんなら仕方が無いわね

 じゃぁ始めましょうかぁ!」

アラクネアはプリキュアたちに襲い掛かる。

そして、皆が戦っている姿を物陰から眺めながら、

「こんな身体で戦うわけには行かないでしょう?」

とマッチョな肉体を恥ずかしげに隠しながらキュアルージュが嘆いていたのであった。



おわり