風祭文庫・異性変身の館






「あたしの親友」


作・風祭玲

Vol.941





それは朝の予鈴のチャイムが鳴る10分前のことだった。

体育の授業が1時間目に設定されているため、

登校してきたクラスメイト達は皆カバンを机に置くと

そのまま更衣室へと向かってしまい教室は閑散としていた。

「はぁ」

そんな教室のドアを開けて入ってきたあたしはついため息をついてしまうと、

あたしの登校に気づいた親友のユリコが駆け寄りってくるなり、

「どうしたの?

 元気ないじゃん」

心配そうに声をかけてくる。

「別にぃ」

その声に向かってあたしは無愛想に返事をすると、

自分の席でそのまま突っ伏してみせる。

「まさか、タツヤと喧嘩でもしたの?

 昨日あれだけ張り切っていたじゃない」

あたしの姿を見ながらユリコは声をかけてくるが、

「………」

あたしは一切黙ったまま返事をしなかった。

すると、

「まったく、

 どうせまたくだらないことで意地を張ったんでしょう。

 タツヤ君のようなキャラの場合、

 女の子が意地を張り通すと喧嘩になっちゃうのよ。

 空気を読んでこっちが適当に折れなきゃ」

黙ったままのあたしにユリコは諭すように話し始めると、

バンッ!

あたしは机を叩き、

「はいはいはいはい、

 空気が読めないあたしが悪いですよぉ!

 えぇそうよっ

 そうですとも、

 みんな私が悪いですよっ」

ゆっくりと顔を起こして怒鳴り返して見せる。

そころがユリコはあたしの声に臆することなく、

あたしの真横にドカッと腰を下ろし、

「で、何が原因で喧嘩になったの?」

と見下すようにして聞き返して来た。

「うっ…うっるさいわねぇっ、

 何だって…いぃでしょう!」

彼女の質問と態度にカチンと来たあたしはユリコを睨み付けると、

「ふっふーん、

 どうせエッチでもしようとして、

 人気のないところにタツヤを無理やり連れ込んで押し倒したんでしょう?

 もぅアヤったらドスケベなんだからぁ」

あたしをからかうように笑い、

ツンツン

と人差し指であたしの額を突っついてみせる。

「ユリコぉ!

 さっきから聞いているとあたしに喧嘩を売っているのぉ!」

彼女の言葉についにあたしの堪忍袋の緒が切れ、

腕を振り上げようとすると、

それよりも早く

サッ!

っとユリコは素早く机から腰を上げて立ち上がり、

「さぁーて、

 お立会いっ

 取ぃ出したるこの御札。

 男の子には女の体験を、

 女の子には男の体験を味あわせてくれる摩訶不思議な御札。

 この御札をこの娘にぺたりを貼り付けますとぉ」

大きく声を張り上げてユリコは口上を述べながら

あたしの額にぺたりと手にした奇怪な御札を貼り付けた。

「え?

 なにこれ…」

額に張られた御札をはがすよりも早く、

ビリッ!

あたしの体の中を電気が突き抜けていくような刺激が走って行くと、

ピクッ

ピクッ

ピクピクピク!!!

体中の筋肉があたしの意思とは関係なくうごめき始める。

「ひゃっ、

 なっなに

 何をしたの?」

ピクピク

ピクピク

と蠢きまわる筋肉にあたしは思わず悲鳴をあげてユリコに理由を尋ねるが、

ビクンッ!

一際強い刺激が走り抜けていくと、

メリメリ

ムクムクムク!

いきなりあたしの体が伸び始め、

制服の上着とスカートの間が開き始める。

さらにそこそこあったはずの胸の膨らみは瞬く間になくなり、

肩が張り出し見る見るきつくなっていく、

「ひゃぁぁ!!

 どうなっているのよ」

骨太になっていく膝を折り曲げ、

筋肉の弾力が増してくる胸を庇いながらあたしは床に座り込んでしまうが、

ジワジワ…

スカートから覗く足にはいつの間にか脛毛が生え始めていたのであった。

「ユリコぉ!」

濁る声を上げながらあたしはユリコに向かって怒鳴ると、

「うーん」

変化していくあたしの姿に驚かずにユリコは小首をかしげて見せると、

「もうちょっとかな…」

と感想を言う。

「もうちょっとって

 ちょっとぉ!」

その言葉にカチンと来たあたしは立ち上げってユリコの胸元を掴み上げようとするが、

「え?」

ユリコの顔があたしの胸元までしか届かなくなっていることに驚くと、

ギュっ!

いきなりユリコはあたしに抱きつき、

「アヤの体から男の子の匂いがする。

 うふっ、

 あたし、この匂いを嗅ぐと体が熱くなっちゃうのよ」

と囁きかけてきた。

「だっ誰が…」

さっきよりも太くなった声を張り上げてあたしはユリコを引き剥がせようとすると、

ユリコの手があたしの股間にもぐりこみ、

ムギュッ!

いきなりなにかを掴み上げた。

「うひゃっ!」

股間を引っ張れるその感覚にあたしは驚くと、

「ちゃんとおチンチンが生えたわね。

 アヤは立派な男の子よ」

とユリコは上目遣いであたしを見る。

「おっおチンチン?

 男の子?

 あたしが?」

彼女の言葉にあたしはショックを受けるが、

ムクッ

ムクムクムク!!

ユリコの刺激に反応してか、

あたしの股間が急激に膨らみ始めると、

モコッ!

制服のスカートが下から持ち上がってしまったのであった。

「ひっ!」

それの感触にあたしは悲鳴を上げながらユリコを突き飛ばし、

慌ててスカートを押さえようとするが、

その途端、

ビリっ!

ウェストが膨らんでキツキツになっていたスカートのホックが破れ、

「あっあっあぁぁぁ」

あたしは肌蹴落ちていくスカートを見ているだけだった。

すると、

「へぇぇ、

 アヤったら意外とイケメンじゃない」

唖然とするあたしを見ながらユリコは感心してみせると、

自分の席に戻り、

「ほぃっ」

と言いながら手鏡を手渡した。

手鏡を受け渡されたあたしは冷や汗を掻きつつ、

恐る恐る鏡を覗き込むと、

「うわっ、これがあたしぃ?」

鏡に映る自分を顔を見てあたしは驚いた声を上げたのであった。




「さて、どうする?

 これから体育の授業なんだけど…

 まさかその体で女の子の授業を受けるわけには行かないでしょう」

と完全に男性化してしまったあたしに向かってユリコは話しかけてきた。

「ユリコぉ、

 あなた…」

あたしは話しかけるユリコを睨み付けると、

「そんな怖い顔をしないでよぉ、

 せっかくの男前が台無しじゃない。

 さぁて、

 じゃぁあたしとアヤとで保健の授業を自習しようか、

 無論、ここでね」

ワサワサと怪しげな手の動きをさせながらユリコはあたしに迫る。

「ユリコぉ、

 ちょっとぉ、

 なっ何をする気?」

迫るユリコに向かってあたしは声を上げると、

「じっとしてなさい。

 お姉さんがオトコのイかせ方を教えてあげる。

 今度はドジを踏まないようにじっくりとね」

と言いながらまるで雌ヒョウを思わせる目つきでユリコはあたしを押し倒し、

そしてそのままの勢いで男の快感をあたしに教え込んだのであった。



「これって、全部アヤのためよぉ、

 別に…あたしの欲求不満の解消じゃぁないんだからね」



おわり