風祭文庫・異性変身の館






「キャンデー再び」


作・風祭玲

Vol.937





「ねぇねぇ、マキぃ」

あれから一週間が過ぎていた。

やっとの女の子の体に戻ったあたしにクラスメイトのミクが不意に話しかけてくると、

「んなぁに?」

お昼ごはんの牛乳パックを飲みながら振り返って返事をする。

すると、

ドスッ!

ミクは空いていたあたしの前の席の椅子に馬乗りになって座り、

「男の人の感覚ってどんなんだった?」

と真剣な表情で尋ねてきたのであった。

ブッ!

彼女のその言葉を聞いた途端、

あたしは飲みかけの牛乳を思わず噴いてしまうと、

「なっなによっ、

 いきなり!」

汚れてしまった口の周りを慌てハンカチで拭きつつ怒鳴り返すが、

「だってぇ

 マキったら一週間の間、男の人になっていたじゃなぁい。

 したんでしょう?

 オ・ナ・ニー?

 ねぇ、どんな感じだった?

 ねぇねぇねぇ…」

瞳をキラキラ輝かせ興味津々そうにミクはあたしに迫る。

「べっ別にいいじゃないっ、

 ミクには…関係ないことでしょう」

そんなミクを押し戻してあたしは話を打ち切ろうとすると、

「もったいぶらずに教えなさいよぉ

 この薄情者!」

とまで言い出してミクはあたしの肩を掴みゆらし始める。

「あのねぇ!

 あたしはいまやっっっっと

 女の子に戻れたって実感を味わっているのっ、

 さっさと忘れ去りたい過去を蒸し返させないでよ」

ミクの手を払いあたしはつい怒鳴ってしまうと、

「ケチ!」

ミクはあたしに向かってそう叫び、

「ケチケチケチケチ!」

と連呼し始めた。

「あっあっあのねぇ!」

ミクの連呼に次第にあたしの頭に血が上り、

「だっだったら、

 ミクが男の人になれば良いでしょう!!

 まだあのキャンデーは科学部のノリコの手にあるはずだから」

と声を張り上げてしまった。

すると、

ガタン!

ミクは立ち上がり、

「判ったわよっ」

の言葉を残して教室から飛び出してしまうが、

「…ふんっ、

 まったく、あのキャンデーはあたしが強く言って処分させたから、

 もぅこの学校にはありませんよぉ」

ミクが出て行ったドアに向かってあたしは舌を出し、

「あーぁ、

 牛乳が…もったいない」

と嘆きつつ残り僅かになってしまった牛乳を飲み始める。

そして、それから5分も経たずに

ドタドタドタ

廊下から足音が迫り、

「マキぃ!!

 貰ってきたわよ!!」

の声と共にミクが再登場したのであった。

ブッ!

その声が響くのと同時にあたしはまたしても牛乳を噴いてしまうと、

「あーぁ…」

ポタポタと滴り落ちる牛乳を惜しそうに見つめた後、

ジロッ!

とミクを睨み付ける。

そして、

「ミクぅ…

 あたしに何の恨みがあるのぉ」

額をヒクつかせながら迫るが、

「何を言っているのよ、

 マキがもらって来いっ

 って言うからこのキャンデーをもらってきたのよ、

 いーぃ、

 あたしいまこれ飲んじゃうからね、

 あたしが男になったらマキはあたしのお嫁さんになるのよ。

 絶対だからね」

とミクはあたしに言い聞かせると、

キャンデーーの包み紙を取り、高々と手を掲げてみせる。

「全く何を言い出すのかと思えば…」

端っからキャンデーは存在しないと思っていたあたしは取り合わないつもりだったが、

チラリとミクが手にするキャンデーを見た途端。

サーッ!

あたしの頭から一斉に血が引き、

「そっそれって!」

と驚きながら指差してみせる。

そう、ミクが掲げていたのは紛れもなくあたしを男にした悪魔のキャンデーである。

「ミクっ、

 それってどこで手に入れたの?」

キャンデーを指差してあたしは聞き返すと、

「はぁ?

 何を言っているの?

 科学部のノリコさんに決まっているでしょう。

 マキが”行け。”って言ったじゃない」

とミクは呆れてみせる。

そして、

「あたしが男になったらね、

 マキを縄で縛って、

 天井から吊るして、

 オマ○コがグチョグチョのベチョベチョになるまで突きまくるんだからね。

 それだけじゃないわよ、

 お尻の穴だって容赦はしないんだから」

そうあたしに向かって事細かく大声でプレイ内容を話し始めた。

「ちょっとミクっ、

 そんなことを大声で言わないの、

 大体どこからそんな情報を仕入れてきたのよ」

それを聞いたあたしはミクに迫りながら注意をすると、

「言っておくけど、

 ぜーんぶ、マキが悪いんだからね。

 男の体のことをあたしに教えてくれなかったマキが悪いんだからね。

 飲んじゃう、これ!」

とミクは声を上げて掲げたキャンデーを飲もうとする素振りを見せる。

「やめなさいって」

彼女を制止させようとあたしはミクの体に抱きつき、

手の中のキャンデーを奪い取ろうとするが、

「いやっ

 止めて、

 犯さないで!」

ミクは何を考えているのかそんな声を上げ始めた。

「なっなんてことを言い出すのよ!」

ついあたしはミクに向かって怒鳴り声を上げた途端、

ポンッ!

あたしの口の中に何か飛び込んできた。

ゴクリ

「!!っ

 みっミクっ!

 いっいま何を飲ませた?」

1週間前に味わったキャンデーの味を噛みしめながらあたしはミクに尋ねると、

「おほほほほ…ごめんなさぁい。

 マキが余りにあたしを止めようとするから、

 それならとあのキャンデーをマキの口の中に入れてしまいましたぁ

 忘れちゃった男の感覚、思い出してくださいね」

満面の笑顔でミクはそう答え、

「あのね、

 マキは女の子でいるより男の子の方が似合っているよ」

と囁きながらあたしのスカートの中に手を入れると、

グィッ

グィッ

っと盛り上がり始めた下着をなで始める。

「ミクぅ〜

 貴様ぁ〜っ」

そんなミクを睨み付けながらなみだ目あたしは声を上げるが、

グググググ…

身長163cmだったあたしの身長が伸び始め、

上着とスカートの間に隙間が開くと、

ミシッ!

ウエストが急にきつくなってくる。

そして、肩幅が開き、

肩周りが張り出してくると、

ペタン…

胸の膨らみが消えてしまった。

「あーっ、

 何てことだよぉ」

喉仏が盛り上がり、

野太い声をあげながらあたしはスカートを持ち上げて見せると、

ぐんっ!

あたしの股間には下着を男のイチモツが聳え立っていた。

「はぁ…

 また一週間、男でいろというのかよぉ」

髪を伸ばした女装男のいでたちとなってしまったあたしは頭を抱えながら訴えると、

「うぅん、

 今度はひと月よ。

 ノリコさんが教えてくれたの。

 効果が4倍長く持つ改良型のキャンデーだって。

 うふっ、

 あたしねぇ、お兄ちゃんが欲しかったんだ」

そんなあたしに向かってミクはそう言いながら

ヒシッ

男になったばかりのあたしを抱きしめたのであった。



おわり