風祭文庫・異性変身の館






「御札の力」


作・風祭玲

Vol.891





「おっくれたぁぁ…」

学園へと向かう通学路より少女達の姿がまばらとなる始業直前。

周囲に叫び声を轟かせながら肌蹴る制服も構わず、

須川真由美は丘の上に建つ学び舎に向かって心臓破りの急坂を駆け上がっていた。

「やば、寝坊しちゃったぁ。

 やっぱ、昨日の校内一斉清掃で張り切りすぎたかぁ!」

2年でありながら漫画研究部を率いる真由美は

昨日行われた校内一斉清掃では部の先頭に立ち張り切って掃除に精を出したのだが、

しかし、その疲れがたたってこのような事態に陥っていたのであった。

「ちっ、

 やっぱり新作が描きあがって調子に乗ったのがまずかったか。

 まぁでもいいや、おかげで部室はきれいになったし、

 余勢を買って校内の掃除もしたので部の評判も上がっただろうし」

危機的な状況でありながらも気分良く真由美は急坂を上っていくと、

彼女の周りには同じように慌て走る同じ制服姿を着た少女達の姿が見え始め、

自然と抜きつ抜かれつのデットヒートを演じはじめた。

そして、彼女達の前にゴールとなる学校正門が見えてくると、

ダンッ!

その乙女のか細い足におのずと力が入り一気に引き離しに掛かった。

ゴールまであと200m。

予鈴の音が辺りに鳴り響きはじめる。

「まずいっ

 普段より100m遅い!」

周囲の景色を見比べ真由美は焦りを感じつつ体育の授業ですら見せたことの無い健脚を見せ、

徐々に迫ってくる校門に向かって文字通り特攻体制をとる。

150m

100m

50m

聞こえてくる周り音が消え、

周囲の景色が視界から消えてなくなる。

そして、全ての神経を集中させて真由美が校門に飛び込むと同時に、

がしゃんっ!

天国と地獄を分ける校門の扉が閉まったのであった。

「ふぅ…

 ギリギリ

 せーふっ!」

迸る汗を頬から飛ばしつつ真由美は振り返ると、

閉じられた扉の向こうでは

「はーぃ、

 遅刻者は生徒手帳をだしてぇ!」

間に合わなかった女子生徒たちに群がるようにして

校門の周囲で待機していた生徒会の週番たちによる落ち武者狩りが一斉に始まり、

がっくりと肩を落とす生徒達から次々と生徒手帳が取り上げられていくシーンが繰り広げられていた。

「はぁ、

 一歩遅かったらあたしもあぁなっていたわね」

天国と地獄を分ける扉の向こうより

それら光景を横目にしつつ真由美はホッと胸をなでおろすと、

「さて、本鈴までに教室に入らなきゃ…」

と校舎に向かおうとするが、

「ちょっと待ってください」

そのとき、彼女を呼び止める声が響き渡った。

「はい?」

自分を呼び止めた声に真由美は立ち止まって振り返ると、

ジロッ

校門の内側で眼鏡を光らせ腕を組んでみせる少女・仁科真紀が真由美を呼び止めたのであった。

「あっ、仁科さん…いや、生徒会長。

 何か用ですか?

 あたしちょっと急いでいるんで手短にお願いしまぁす」

駆け足をする仕草をしながら真由美はクラスメイトであり、

生徒会長でもある真紀に気安く話しかけると、

スッ

真紀は顔の眼鏡を徐に上げながら、

「須川さん。

 最近、あなたの漫画研究部ではいかがわしい漫画を描いているそうですね」

と指摘する。

「え?」

彼女の指摘に真由美は驚くと、

「いっいやだなぁ…

 誰がそんな漫画を描いているんですか?

 大体、どういうストーリーで?」

その指摘に心当たりがある真弓は額に冷や汗を流しつつ聞き返す。

すると、

「あら、あたしが何も知らないでそんなことを言っていると思うの?」

真由美の質問に真紀は悠然と答えながら、

右手を横に差し出すと、

サッ

っと横に待機していた女子生徒より一冊の茶封筒が差し出された。

「あっそれは!」

それを見た真由美は自分の新作を納めてた封筒であることに気づくと、

「見覚えがあるようですわね。

 これは昨日の校内一斉清掃の際、

 ゴミ捨て場に捨てられていたのを生徒会の者が重要書類と思い回収したものです」

そう説明をしながら真紀は封筒を開け、

ぎっしり詰まった原稿を取り出して見せると、

「この内容を見てどう思いますか?」

と問い尋ねた。

「うっ!」

原稿を手に迫る真紀に真由美は思わず身を引くと、

「こう言うのはなんていうのでしょうか、

 男性同士が寄り添い、

 そして愛を語る…

 私には到底理解できませんが」

と真紀は尋ねながらパラパラと原稿をめくっていくと、
 
「しっ知らないわよっ、

 そんなものっ」

咄嗟に真由美は真紀に言い返した。

「あら、知らないんですか?

 この表紙に書かれているサインは確かあなたのモノだと思いましたが?」

真由美の返答を聞いて真紀は驚きながら扉ページに書かれているペンネームを指さすが、

「知らないったら知らないわよ。

 大体、その封筒はうちの部室から出てきたんじゃないでしょう。

 だったら言いがかりだわ。

 失礼よ、

 その程度のことで生徒会はあたしを犯人扱いする気なの?」

と真由美は気迫で押し返す。

すると、

「あら、あなたのじゃなかったの…

 あなたのならお返ししようと思っていたんですけども、

 じゃぁ仕方が無いですわね。

 すみません、これ処分してください」

真由美の返答を聞いた真紀は呆気に採られながらそう返事をすると、

手にしていた原稿と封筒を差し出した女子生徒に付き返す。

「えっ!」

それを聞いて真由美は驚いた声を上げかけるが、

「それと、来年の予算ですが、

 漫画研究部はきっちりと査定をいたしますので、

 覚悟してください」

その声をさえぎるようにして真由美に向かって真紀は言い聞かせると、

立ち去っていったのであった。



「ちっくしょう!!!」

放課後、

漫画研究部の部室に真由美の怒鳴り声が響き渡ると、

「あの漫画…

 今度の冬コミの新刊で出そうと思っていたのに…ぃ」

悔し涙を流しながら真由美はそう訴えると、

「夏コミを犠牲にしてまで描いたあたしの漫画ぁ!

 返せぇぇぇぇぇ!

 デコ眼鏡ぇぇぇ!」

と一際高く声を張り上げ、

真紀の悪口と共に手当たり次第に物を放り投げ始めた。

そして、

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

放り投げられるものを粗方投げ尽くしてしまうと、

昨日折角きれいに片付けた部室がまるで嵐が過ぎ去ったかのような惨状となり、

ペタン…

真由美は作業机の前においてある椅子に座り込んでしまうと、

「うわぁぁぁん!」

と机に突っ伏し大泣きで泣き始める。

そのまま泣き続ける事小一時間近くが過ぎた頃、

カラ…

「あのぅ、

 部長?」

「もぅお済になられましたか?」

前もって避難していたアシスタント兼部員達が部室に戻ってくると、

「うわっ」

「思いっきり暴れましたね」

と部室の惨状を眺めながら呆れ果て、

突っ伏したままの真由美を腫れ物のごとく避けながら部室の片づけをはじめる。

そしてほぼ片づけが終わると

「部長、元気を出してください」

「また新しいのを描けばいいんですから」

そう慰めの言葉をかけながら、

「これ、描きかけのまま止まっていますが、

 どうします?」

と真由美の傍に原稿が入った封筒を置くと、

「じゃぁ、今日はこれで帰ります」

そういい残して部員達は部室から去っていった。



ガサッ!

部員達が去った後、

真由美はそばに置かれた封筒を取ると、

「そうねぇ

 新しいの描かなきゃ…ね」

と呟きながら封筒を開け、

中に入っている原稿をめくりながら、

「これ、ネタに詰まっちゃって途中で描くのを止めちゃったけど、

 いまから新しく描くわけにも行かないしなぁ、

 でも、実録に近い男の子感覚を赤裸々にって…

 このときは気張ってみたけど、

 元々男子の居ない女子高じゃ無理よね」

と自称気味に笑って見せると、

「はぁ」

大きくため息をつきながら席を立った。




「うーん、どうしようか

 あれの続きを描くか、

 それとも新作を描くか…でも時間はないし」

日はとっくに暮れ、

部室を出た真由美は今後について考えながら帰宅の徒に付く、

そして、ふと途中の神社に立ち寄ると、

パンパン!

「神様ぁ

 あたし、どうしたらいいんでしょう!

 教えてください」

と神頼みをはじめだしたのであった。

念じはじめてから5分が過ぎ、

「ん?」

何か気配を感じた真由美がそっと目を開けると、

なんと、彼女の前に白銀の毛並みも艶やかな一匹の狐が賽銭箱の上にすわり、

ジッと彼女を見つめていたのであった。

「うそっ

 狐?

 へ?

 なんで?」

神々しい狐の登場に真由美は思わず呆気に取られると、

『あら、ごめんなさい』

狐はそう詫びながら賽銭箱よりフワリと浮き上がるようにして飛び上がり、

そして、地面に足をつけた途端、

一人の女性の姿となって真由美の前に立ち上がる。

「あっあなたは…」

目をぱちくりさせながら真由美は白い異国風の衣装をまとう女性に尋ねると、

『私は白蛇堂…

 ここってターミナルの真上なのよ。

 で、そのターミナルからライナーが発車するまでの間、

 仕事の打ち合わせもかねて途中下車をしていたんだけど、

 あなた、なかなか面白い願い事をするわね』

と白蛇堂と名乗る女性は碧眼の目で真由美を見る。

「そっそうですか?」

白蛇堂の言葉に真由美は身構えながら聞き返すと、

『心の中を読ませてもらったわ。

 なるほど、

 いろいろ酷い目に遭われたみたいね。

 あぁ、別にあなたに悪さをしようなんてことはしないわ、

 ここには怖い管理人が居るからね』

と白蛇堂は言い、

チラリと明かりの灯る神社の社務所の方に視線を向ける。

そして、

『…あの巫女はまだ気づいていないか…よしっ』

そう呟くと、

『さて、あなたにどれだけ手助けになるかわからないけど

 これを差し上げるわ。

 1枚に付き1件の願い事を叶えられるとってもありがたい御札。

 2枚あるから、

 そうねぇ…あなたが憎む何処かの誰かさんを男にしてしまって彼女の様子を観察する。

 っていうのはどうかしら、

 散々弄んで飽きたころに元に戻してあげれば、

 あなたの新作に役に立つんじゃなくて?』

と白蛇堂は囁くと不意に首をひねり、

『あら、定刻どおりに発車?

 業屋ったら駅長となにやら勝負事をしていたけど、

 また何か始める気なのかな…』

その言葉を残して

スッ

まるで煙のごとく姿を消してしまうと、

「あっ」

姿を消した白蛇堂を追って真由美は2・3歩進み出るが、

しかし、真由美の手に握られた御札2枚を残して白蛇堂は完全に消えてしまったのであった。



翌日、

「白蛇堂ってなんだったのかしら…

 狐の妖怪?

 それとも誰かのいたずら?」

授業を聞きながら真由美は白蛇堂から渡された御札を眺めていると、

ポンッ!

いきなり頭が叩かれ、

「須藤、授業に集中しろ!」

と教師の声が響き渡る。

「はいっ」

その声に真由美は慌てて背を伸ばすと、

クスクスクス…

クラス中に笑い声があふれ、

クスッ

そんな真由美の姿を見て斜め前の席に座る真紀も小さく笑ってみせた。

「うっ(カチン!)」

真紀のその様子を見た真由美は無性に腹が立ってくると、

「決めたわ!」

と呟くや否や、

瞳に炎を燃やしつつ、

ビタッ!

真由美は机の上にあの御札を一枚置き、

サラサラサラ…

御札にある願いを書き込んだのであった。

そして、願いを書き終わるのと同時に

「では、仁科っ

 次ぎを読んでみろ」

教師のその言葉が響くと、

「はい」

真紀は立ち上がり、

教科書に目を通しながらその澄んだ声を教室に響かせ始める。

「けっ!」

響き渡る真紀の声を聞きながら真由美は悪態をついていると、

急にその声が濁り始め、

ウンッ

ウンッウンッ

真紀は盛んに咳払いをし始める。

そして、何度も澄んだ声を上げようとするが、

彼女の声はなかなか治らず返って野太くなっていくばかりであった。

「ほほぉ…」

変化していく真紀の声を聞いて真由美はニヤリと笑うが、

「どうしたの?」

「風邪?」

事情を知らないクラスメイト達は真紀を気遣って心配そうに声をかけてくる。

「大丈夫…

 ちょっと喉が荒れただけよ」

周囲に心配をかけさせまいと真紀は返事をするが、

しかし、野太い声を放つ彼女の喉からは喉仏が盛り上がりはじめていたのであった。

「そうか、

 じゃぁ、その後ろ」

真紀の不調を見て教師は彼女の後ろに座る生徒に続きを読ませ始めるが、

着席した真紀は幾度も咳払いをし、

喉をさすってみせる。

そして、それから程なくして、

「え?」

ジョリ…

真紀は自分の顎の周りに太い毛が伸びていることに気づくと、

幾度も顎を摩りはじめだした。

「ん?

 次はなにかな?」

顎をさすってみせる真紀を見ながら、

真由美は首を伸ばすと、

ジョリ

ジョリ

ジョリジョリ

「なんで…

 どうして?」

真紀は泣きそうな顔になりながら顎をこすり、

こするごとに生えてくる毛は伸び、

さらにその範囲が徐々に広がっていく、

そしてついにもみ上げから、

顎の下、

さらに頬へと範囲が広がってしまうと、

「いやぁぁぁぁ!!!」

突然教室に低い叫び声が響き渡り、

ガタン!

両頬を押さえながら真紀は立ち上がったのであった。

「え?」

「どうしたの?」

授業に集中していたクラスメイトは一斉に顔を上げ、

顔を蒼くしながら立ち上がる真紀を見上げると、

「仁科っどうした?」

と驚いた教師が真紀の下へと駆けつけてくる。

しかし、

「いやぁぁぁぁ!」

真紀は何も答えずに自分の手で顔を隠したままだったが、

ググッ

ググググーッ

立ち上がった彼女の身長が伸び始めると、

制服の上着とスカートの間が開き始め、

丸みを帯びた台形形のヒップから張りが無くなっていくと、

肩が横に広がりながら突き出してくる。

そして、

クックックッ

プリーツのスカートを内側から突き上がっていくと、

「ひっ」

そに気づいたのか真紀は慌ててスカートを押さえて、

顎髭が生える顔を周りにさらしながらその場に座り込んでしまい、

「なにこれ…

 なんであたしにこんなのが…」

目をまん丸に剥きながら、

真紀はスカートの上から股間をまさぐると、

グニッ

彼女の股間には女性にあってならない男のイチモツが伸びていたのであった。

「うそよ、

 うそよ、

 なんであたしにこんなのが…

 だって、あたしは女の子よ…」

顔つきが変わり、

同世代の男子と余り変わらない姿へと変わっていく真紀の姿を見て、

「うそっ、

 仁科さんが男の人になっちゃった」

「なに、まさか病気?」

「えぇ!」

クラスメイト達はみな立ち上がって距離を置き、

「あははははは…

 ひひひひひひ…」

脛毛が生えてきた足を見せながら笑いはじめた真紀を遠巻きに見ているが、

「うふふふ…

 凄いわぁ、

 あの御札って本物だったのね。

 それにしてもこれは格好のネタ、

 しっかりと見届けさせてもらいますわ」

一人真由美は笑みを浮かべつつケータイのカメラで真紀の姿を撮影していたのであった。



「生徒会長が男の人になったですって?」

「本当だって、

 あたし見たんだもん」

「ねぇ、人間って簡単に性別変えられたっけ?」

「これってニューハーフって言うんじゃないの?」

授業中に突然性転換してしまった真紀のニュースはたちどころに校内に広がり、

学校中その話題で持ちきりになるが、

しかし、性転換をしてからわずか3日後には真紀は元気な姿を校内に見せると、

「あの、会長…その格好は…」

体が男性化しても女子の制服のまま登校してきた真紀に向かって、

生徒会の面々は恐る恐る指摘しようとする。

しかし、

「なんですって?

 この学園の制服はこれに決まっているでしょう」

と真紀は男性特有の声色で聞き返すと、

「いや、確かにそうですが…」

その言葉に皆は返す言葉がなくなってしまうが、

「ちっ、

 こんな所に剃り残しがあった。

 髭剃りはどうも苦手だ」

周りの困惑を無視して真紀は鏡を見ながら、

頬に残っている剃り残しの髭を引っ張ってみせていた。

そして、授業が始まると、

「コホン…

 なんかクラスの匂いが変わったな…」

思春期の女子特有の匂いに包まれているはずの教室の匂いが一変していることに教師は気づくと、

クラスの女子達の中から浮き上がるかのようにして、

男の体臭を振りまき教科書に目を通している真紀を見下ろし、

「…これが原因か…」

そう呟いてみせる。

そして、

「おほんっ

 では授業を始める」

真紀から目を逸らしながら咳払いをすると授業をはじめだした。

だが、

ひそひそ…

ひそひそ…

授業中、真紀の周囲からは常に小声の会話が続き、

「ほらっ、

 そこ、静かにしろ」

と教師は注意の声を張り上げる。

「あー見えて、

 結構タフなのね、仁科さんって…」

自分だったら1分たりともこの場に居られないかもしれない環境の中で

平然と授業を受ける真紀の姿を眺めつつ真由美は感心するが、

「でも、

 次の授業は体育だけど、

 どうする?」

と次の体育の授業での真紀がどのような対応を見せるのかに期待をしていた。

そして始まった、他クラス合同で行われた体育の授業だが、

「はいっ!」

ダァン!

脛毛が生える足をさらし、

赤いブルマが覆う股間をモッコリ膨らませながら、

真紀は身長170cmを越えた体を高くジャンプさせると、

普段よりも女子バレー部員の数を増している相手チームに向けて

鋭いスパイクを次々と落ち込んで見せる。

「おいおい、

 男がブルマ履いて恥ずかしくはないのぉ?

 モッコリだよ

 モッコリ…

 もぅちょっと恥ずかしがってくれると思っていたのに…」

コートの脇で真由美は体育座りをしながら真紀を見るが、

女であった頃と何ひとつ変わらない真紀の姿に若干の失望を抱き始めていた。



「ねぇ生徒会長って女の子かな?

 それとも男の子かな?」

「そんな事言われても…」

「でもなんか素敵じゃない?」

「はぁ?」

「だって、よく見てみると会長って結構男前じゃない。

 なんかイ○ローみたいで、

 あたしなんかときめいちゃうわ」

「いっイ○ローねぇ…

 似てる?」

「うーん、似ているといえば…

 でもちょっと強引じゃない?」

一方、日を追うごとに男性化した真紀に好意を寄せる少女達の姿がチラホラ見かけるようになり、

「会長!

 今日も手紙がいっぱい着てますよぉ」

「贈り物のもこんなに…」

いつしか生徒会長室には好意を寄せる女の子達からの手紙や、

あくまで女装を通す真紀へ男性用衣料を中心とした贈り物が届けられるようになっていた。

「まったく…

 そんなにしてまで俺を男にしようというのか」

山と詰まれた手紙や贈り物を前にして腰に手を当てながら真紀は怒鳴り声を上げると、

「会長ぉ、

 言葉遣いが男の人になってますよぉ」

とジト目で他の役員達が注意をする。

「え?

 あっ

 そっそう?」

その指摘に真紀は慌てて口を閉じると、

ムクっ

急に真紀の股間が持ち上がり始める。

「あっ

 ちょっと、

 トイレ…」

それに気づいた真紀はその言葉を残して会長室から飛び出すと、

女子トイレには行かずに職員用の男子トイレへと飛び込んでいく、

そして、

「はぁ…」

男子用小便器に向けてため息をつくと、

「俺、どうなっちゃうんだろう…

 このまま男として生きていかなければならないのかな…」

と小さく呟くが、

「くふふふ…

 いつの間に立小便なんて覚えたのかしら、

 うーん、これは十分ネタになりますねぇ」

そんな真紀の姿をこっそり追ってきた真由美は

ほくそえみながらケータイのカメラで撮影をしていたのであった。



週に一度、温水プールを使った水泳の授業。

競泳水着を身にまとった女子達の中に同じ競泳水着を着た真紀が姿を見せると、

ザワッ

真紀の姿を見て一斉にざわめきが起きる。

「あーん、水着だなんて…

 もったいないわぁ」

「男らしく裸見せてよ」

股間を膨らませる真紀の競泳水着姿に女子の間からそんな声が漏れるが、

「うわぁぁぁ…」

真由美は一人興奮をしていたのであった。

「これよっ

 これよっ

 あたしが求めていたのはまさにこれよっ!」

授業そっちのけで真由美は男性の研ぎ澄まされた肉体美を

女性用の競泳水着で覆い隠してプールを泳ぐ真紀の姿をひたすら追いはじめると、

「くっそぉ、

 なんでこの場にケータイを持ち込めれば…」

と手ぶらで授業を受けさせられる自分を恨み、

そして、授業が終わるのと同時に真由美は更衣室で真紀を待ち構えるのであったが、

しかし、真紀はなかなか更衣室に戻らず、

皆が着替え終わった頃にようやく更衣室に戻ってきたのであった。

「うわっ来たっ」

着替えもせずに真由美は更衣室の物陰に隠れると、

真紀は自分のロッカーの前に立ち、

そして扉を開けて見せるが、

不意にその手が止まると、

じっと俯きながら自分の体を見つめ始めた。

「ん?

 どうしたのかな?」

そんな真紀の姿を見て真由美は小首をひねると、

真紀は徐に自分の股間へと手を入れ、

ゆっくりと股間を摩り始める。

そして、

ハッ

ハッ

ハッ

次第に呼吸を荒くし始めると、

グィッ

グィッ

ググググググググ…

競泳水着が抑えていた股間が盛り上がり始めたのであった。

「うっそぉ!

 これってオナ…」

衝撃の光景を目撃した真由美は真紀がはじめて見せる痴態に思わず生唾を飲み込むが、

ハッハ

ハッハ

さらに呼吸を荒くして

シュッシュッ

シュッシュッ

股間を扱き始めた真紀の姿を真由美は息を殺して見つめると、

そんな真由美に気が付かないのか、

真紀は後ろの壁に背中を付け、

グッ!

股間から伸びるイチモツを突き上げると、

さらに大段にそして激しくしごき始めたのであった。

「あぁうっ、

 はっ

 はっ

 うわぁぁ」

うめき声を上げながら手馴れた手つきで自分のイチモツを扱いてみせる真紀の姿に、

真由美は我を忘れて見入り、

そして、いつしか自分の股間に指を滑る込ませると、

一度は乾きながらも湿り気を増してきた股間の縦溝を刺激し始めた。

「はぁはぁ

 はぁはぁ…

 いいわぁ…

 とっても素敵よ仁科さん。

 あぁん、

 あたしも混ざりたい」

クチュクチュ

クチュクチュ

と淫らな音を響かせながら真由美はうわ言の様に訴え、

そして胸の乳房の膨らむをもみ始めたとき、

「そうだ」

ある考えが真由美の頭の中にわきあがった。

そして、元々開けてあった自分のロッカーに足音を殺して向かうと、

そこから残っているあの御札を取り出し、

サラサラ

とそこにある文言を書き込んでみせる。

すると、

モリッ!

縦溝が刻まれていた真由美の股間に膨らむが姿を見せると、

縦溝を埋めるようにしてムクムクとそれは大きくなっていく、

さらにヒップが小さくなっていくとお尻に凹みができると、

グググググ…

真由美の体は膨れるように大きくなり始め、

横に広がる胸板。

厳つい肩。

そしてお腹が割れると、

「はぁはぁはぁ…」

そこには真由美ではなく水着の股間を大きく膨らませる男の姿があった。

「へへ…

 なっちゃった…男に…」

シュッシュッ

膨らむ股間を扱きながら真由美は立ち上がると、

相変わらずイチモツを扱き続ける真紀のところへと向かい。

「おいっ」

と声をかけると、

「君は?」

声をかけられた真紀は慌てて股間から手を離すと真由美を見る。

「なんだよ、

 止めるなよ、

 一人でするより、

 俺としたほうが楽しめるぜ」

股間を盛り上げるイチモツを扱きながら真由美は話しかけると、

「お前は!

 まさか、須川?」

男性化した真由美を指差し真紀は驚くと、

「へへっ、

 あぁそうだよ、

 どういうわけ知らないけど、

 俺もたったいまそこで男になったばかりなのさ、

 なぁ、男同士、

 ここでじっくりと楽しまないか」

そう言いながら真由美は真紀の手を取り、

グイッ

と抱き寄せると、

「やっやめろ、

 男同士でそういうことは…」

真紀は拒否をするようにして体をよじり始めた。

すると、

「何を言うんだよ、

 男同士だって良いじゃないか、

 なぁ、俺のちんぽ、握ってみろよ、

 こんなになっているんだよ」

真紀に向かってそう囁きながら真由美は自分の股間へと真紀の手を導き、

「あっ」

真由美の股間に触れた途端、真紀は驚いた表情を見せる。

「別に驚くことはないだろう。

 俺もお前も同じものを持っているじゃないか、

 しかも、女の競泳水着を着て、

 ふふっ、

 こんなところ事情をしたない者が見たらなんていうかな?」

そんな真紀に向かって真由美は囁き、

「知っているか?

 俺達みたいなのを変態って言うんだぜ」

と真由美は真紀に告げたのであった。

「へっ変態?」

「あぁそうだ、

 ふふっ、

 変態なら変態同士、

 思いっきり楽しもうじゃないかよ。

 なぁ、

 お前のチンポ、さっきよりもずっと硬くなってきているじゃないか、

 俺のも触って見ろよ、

 ほらもっときつく!」

困惑する真紀に真由美はそう言って見せると、
 
ギュッ!

真紀の手に自分の手を重ね手ごと握り締めた。

その途端、

「あぁっ」

真紀は思わず声を上げると、

「なぁ、硬いだろう、

 さぁ俺のも扱いてくれよ」

と真由美は真紀の股間を扱きながら声を掛ける。

そして

シュッシュッ

シュッシュッ

二人して互いのイチモツを扱き会うと、

「はっはっ、

 おっ俺、仁科っお前のことが」

と訴えながら真由美は真紀を抱き寄せ、

「あぁっ、

 なんで、

 なんで、男同士なのに…こんなに…

 気持ち良いんだ」

真紀もまた快感に突き動かされるようにして真由美に抱きつく。

そして

「あっはぁ」

「あぁはぁ」

「あぁぁぁぁっ」

競泳水着に身を包んだ男同士が声をひとつに合わせたとき、

プッ

シュシュシュッ!

二人は仲良く水着の股間を汚してしまったのであった。



「うふふっ、

 これよ、

 これこそ男の感覚…

 はぁぁ…

 大作が描ける気がするよぉ」



おわり