風祭文庫・異性変身の館






「つぐみの悩み」


作・風祭玲

Vol.691





「どうしたの?

 元気ないじゃん」

学校からの帰り道、

中津登喜子は友人の佐藤つぐみと並んで帰宅の途についていたが、

いつになくつぐみがションボリしている登喜子は気づくと、

気を遣いながら声を掛けた。

「そっそう?」

その声につぐみは小さな声で返事をすると、

「もう、何が”そう”よ、

 今日ずっとヘンだったわよ、
 
 授業中、ぼんやりしているし、

 体育の時だってあの貴子にボールぶつけられていたじゃない。

 つぐみらしくなかったよ」

堰を切ったように登喜子は今日一日のつぐみの様子について指摘すると、

「うん、ごめんね」

とつぐみは小声で謝った。

「つぐみっ

 どうしちゃったの?
 
 いつもの張りのある返事はどうしたの?」

そんなつぐみに登喜子はハッパを掛け、

「なに?

 幸隆君とうまくいってないの?」

と単刀直入につぐみが付き合っている加藤幸隆のことを尋ねた。

「!!っ

 べっ別に大丈夫よ」

登喜子のその言葉につぐみは驚き、

そして慌てながら不仲説を否定すると、

「ビンゴか…」

と登喜子はつぶやき。

そして、

「原因はなんなの?」

とつぐみに迫った。

「びっビンゴって…」

「ごまかしてもダメよ、

 ”何ともないよ。”
 
 とか、
 
 ”大丈夫よ。”
 
 とか、
 
 ”心配しないで”
 
 とかそんな台詞が口から出る時って、
 
 必ず破局の瀬戸際まで追いつめられている。
 
 ってサインなの。
 
 で、原因は何なの?
 
 加藤君に別の彼女が居たの?
 
 それとも、
 
 その彼女からつぐみと縁を切るように迫られているの?

 まさか、その彼女がじつは妊娠していて、

 つぐみに金の無心をしていたの?
 
 んまぁ、なんてヤツなのかしら、
 
 つぐみをいったい何だと思っているのよ」

と登喜子が一人でボルテージを上げていると、

「ちょっとぉ、

 さっきから聞いていれば一方的に加藤君が悪い。
 
 って言っているじゃない」

登喜子の話を聞いていたつぐみは不快そうな表情で言い返す。

「え?

 違うの?」

その言葉に登喜子は振り向きながら聞き返すと、

「当たり前でしょう!

 加藤君にはあたし以外の女性は居ません」

つぐみはキッパリと言い切った。

「ふぅーん」

その言葉に登喜子は流し目でつぐみを見ると、

「100%そう言いきれる自身はあるかなぁ…」

と囁いた。

「登喜子っ!」

登喜子の度重なる言動についにつぐみが切れると、

「あははは、

 ごめんごめん
 
 で、何で悩んでいたの?」

とコレまでの自分の言葉について謝り、

そして、改めて悩みについて尋ねた。

すると、

「うん、

 あのね。
 
 その男の子の気持ちって言うか、

 感覚ってどんなのかな?」

とつぐみは改まって登喜子に尋ねた。

「は?」

思いがけないその問につぐみの目が点になると、

「だって、登喜子には弟が居るでしょう?」

といまにも泣き出しそうな声を上げ、

つぐみは登喜子に弟があることを指摘するが、

「え?

 うんまぁ、
 
 居ることには居るけどさ、
 
 でも、だからといって、
 
 男の人の感覚が判るようにはならないよ」

と登喜子は返事をする。

「そう…」

その返事につぐみはシュンとすると、

「やっぱり、何かあったのね」

と自信を深めながら登喜子は尋ねた。

「うん、あのね…」

そんな登喜子につぐみは黙っていることは出来ず、

ついにこれまでの経緯を話し始めた。



「えぇ!

 加藤君の部屋にポルノ雑誌があったぁ?」
 
つぐみから話を聞いた登喜子が思わず声を張り上げると、

「ちょちょっと声が大きいよ」

と即座につぐみが制する。

「どんなの?」

「うん、良くは見なかったけど、

 なんか外国人の女の人がヌードになって…」

「で?

 ヌードって、
 
 当然、一糸まとわず?」

「うん、

 あそこが金髪だった」

「うひゃぁぁぁ!!」

つぐみの口から伝えられるポルノ雑誌の詳細について登喜子が知ると、

「で、ほかは?」

と興味津々に尋ねる。

「ちょっとぉ!

 そんなことどうでも良いじゃない」

執拗に尋ねる登喜子につぐみが声を上げると、

「うーん、

 彼女が居るのにあえてポルノを手に入れる。
 
 と言う神経が判らないわ」

登喜子は考え込んでしまうと、

「はぁ…男の人って判らないわ…」

そんな登喜子を横目につぐみが呟く。

「うーん…

 あたし達も男になれば判ると思うけど」

と登喜子は呟くが、

「男になれれば。って言ったって、

 そんな簡単に出来ないでしょう?」

「まぁね

 出来れば苦労はしないわよ」

「はぁ…

 全然解決の糸口はつかめてない」

「そんなことないよ、

 他の方法を考えれば」

ジト目で登喜子を見るつぐみに、

登喜子は冷や汗を掻きながらそう返事をした。

その時、

『もしもし、

 そこのお嬢さん達』

といきなり二人は声を掛けられた。

「はい?」

「え?」

その声に登喜子とつぐみが振り返ると、

『あなたの悩みを一発で解決できる良い薬があります』

そう言いながら頭を7・3に分け、

胸に締めた濃紺のネクタイ、

漆黒の背広に、

そして、大きな革鞄を抱えた

大柄の男性が立っていて、

『試供品ですが、

 そのような場合はぜひこのお薬をお使ってください』

と言いながら鞄より液体が入っている小瓶を2つ取り出すと、

つぐみと登喜子に1つずつ手渡した。

「これは?」

渡された小瓶を片手に登喜子が尋ねると、

『ふふっ

 それはですね。

 性転換の薬です。

 この薬を飲めばたちまち男の子は女の子に、
 
 女の子は男の子になってしまう魔法の薬なのです』

と男性は説明すると、

「おじさん…

 マジで言っているの?」

呆れ半分に登喜子は男性に向かって尋ねた。

『しっ

 失礼な…

 私はまだおじさんと呼ばれる歳でない。
 
 おっと、コレは失礼。
 
 と言うわけで、
 
 いま薬のデータを取って居るのです。
 
 是非、その薬を飲んだ後の効果を…
 
 ってあれ?
 
 ねぇ、何処に行ったの?
 
 お嬢さん達!!』

いつの間にか姿を消してしまった登喜子達を探して男性は声を上げるが、

しかし、その時にはつぐみたちは人混みと共に移動し、

遠くへ離れてしまっていたのであった。



「ふーん、性転換の薬ねぇ」

「本当かなぁ?」

「さぁ、どうかなぁ」

「効くのかな?」

「効くって…

 こういう場合はそう言うの?」

「さぁ、どうかなぁ」

「………」

駅前のハンバーガーショップのテーブルで、

つぐみと登喜子は男から手渡された薬瓶を

ただ、ひたすら薬瓶をながめていた。

「黒蛇堂製薬かぁ

 聞いたことある?」

ラベルに記載されている製造メーカーについて、

つぐみが尋ねると、

「さぁ、

 聞いたことがないわ」

と登喜子は返事をする。

「飲んでみる?」

「つぐみこそ、お先に…」

「うーん」

二人は互いにけん制し合い、

そして、

「よしっ!」

突然声を張り上げつぐみは気合いを入れると、

その瓶を手に持った。

「つぐみ…」

「あたし、飲んでみる…

 これで加藤君の気持ちが判るのなら」

とつぐみは言うなり、

ピシッ!

瓶の封を切ると、

グビッ!

液体の薬を一気に飲み干してしまった。

「つぐみ…」

目の前で薬を飲み干してしまったつぐみの行動に登喜子は驚くと、

「へっへっへっ、

 飲んじゃった」

薬を飲み終えたつぐみはにやける。

「大丈夫?

 身体何ともない?」

そんなつぐみに登喜子は身体の調子を尋ねると、

「ヘーキ

 ヘーキ
 
 大したことはないわ…」

と言いかけたところで、

「ウグッ!」

つぐみは自分の喉を締め苦しみ始めた。

「つぐみ!!」

それを見た登喜子の悲鳴を上げると、

「え?」

店内に居た他の客が一斉に二人をみる。

「うぐぐぐぐぐ…」

喉を押さえるつぐみの顔から滝のような汗が噴き出し、

次第に彼女の身体より、

キツイ汗の臭いが漂い始めた。

「お客様?

 大丈夫ですか?」

それを見た店員が慌てて駆け寄ってくると、

「え?

 あぁ、
 
 大丈夫っ
 
 つぐみったら、
 
 幾らお腹が空いているからって、
 
 慌ててがっつくからよ」

場を繕いながら登喜子は苦しむつぐみの背中を押し、

そのまま、女子トイレに押し込むと、

「吐いて吐いて」

と言いながらつぐみの顔を便器に押し込む、

しかし、

メキッ

バキバキバキバキ!!

そんな登喜子の目の前でつぐみの全身の筋肉が盛り上がると、

見る見る身体を膨らませていく、

「つっつぐみ

 そんな…

 そんな…
 
 つぐみが、筋肉のかたまりになっていく」

大きくなっていくつぐみの身体と

それに反比例して小さくなっていく制服を見ながら

登喜子は怯えると、

「うごぉ

 うごぉ」

つぐみの口から獣のような低い声があがり、

さらに

ギュッ!

自分の股間を押さえ込みながら、

「ウォォォォォッ!!」

遠吠えの如く声を張り上げ、

ドンッ!

起きあがる背中で登喜子を突き飛ばした。

「きゃっ」

ドサッ!

飛ばされた勢いで登喜子は壁にぶつかり、

小さく悲鳴を上げると、

クル

ゆっくりとつぐみが振り返る。

「つぐみ!!」

目の前に立つつぐみの姿に登喜子は彼女の名前を呼ぶが、

しかし、自分の目の前に立つつぐみは

彼女が呼びかける声には反応しなかった。

そしてさらに

ムリムリムリムリ!!

つぐみの股間が膨らみはじめると、

スカートをしたから押し上げ始めだした。

「そんな、

 本当につぐみが男になっていく」
 
目の前で起こっている変身劇に登喜子は唖然とすると

「ふぅ…

 ふぅふぅ…」

ようやく変身が終わったのか、

つぐみは大きく息を吐くと、

がっくりと肩を落し、

そのまま両手で膝を掴むと、

首を下げながら幾度も荒い呼吸をしてみせる。

そして、首を上げると、

「あれ?

 登喜子?」

と低い男の声で登喜子の名前を呼んだ。

「つぐみ?」

その声に登喜子は驚き、

「あたしが、判るの?」

と尋ねる。

「え?

 えぇ…
 
 あれ、ここトイレじゃない。
 
 なんで、こんな所にいるのかしら?」

登喜子の質問につぐみは返事をすると、

「つぐみ、

 あなた、
 
 男の子になっちゃたのよ!」

と登喜子が声を上げる。

「え?」

登喜子の言葉につぐみは唖然とすると、

「そう言えば、あたし…

 薬を…」

と直前の行動を思い出し、

バッ!

慌てて洗面所の鏡を見ると、

「うっそぉ!!!」

それに映る自分の姿に悲鳴を上げた。

「つぐみ!!」

「そんな、あたし、

 本当に男になっちゃった…」

鏡に映っている自分の姿を見ながらつぐみは唖然とすると、

「大丈夫?

 本当に大丈夫?」

と登喜子は尋ねる。

「うっうん、

 身体は大丈夫だけど…
 
 でも、どうしよう、
 
 こんな格好じゃ表に出られないよ」

とつぐみは登喜子に相談をした。

確かに、つぐみは身長が180cm近くあり、

また、広い肩幅に厚い胸板、

引き締まったウエストに

男性独特の小さめのヒップ。

そして、すね毛が生えた脚がスラリと伸び、

もし、それなりの服装をすれば、

イケメンの彼氏として自慢できる程の姿になっていたのだが、

しかし、いま身につけているのは女子の制服であり、

しかも、大きな体に無理して着ているために、

とても人目には見せられないものであった。

「うわぁぁ…どうしよう…」

何かの罰ゲームかと思わられそうなつぐみの姿に

登喜子は頭を抱えていると、

突然、つぐみは股間を押さえ、

「とっ登喜子ぉ」
 
 ここが固くなって…

 どうしよう」

と声を上げた。

「はぁ?」

その声に登喜子がつぐみを見ると

つぐみのスカートが中から押し上げられている。

「どうしようって…

 おっオシッコしてみたら?
 
 あたしの弟、そう言うときにはオシッコしいるよ」

と指示をする。

「オシッコって、

 座っては出来ないよぉ」

「じゃぁ立ってする?」

「そんなぁ」

「出来ない?

 じゃぁ、便器に向かって立って」

困惑するつぐみに登喜子はそう言うと、

言われたとおり便器に向うつぐみの背後に立ち、

そして、スカートを捲り上げると、

その下で下着から飛び出しているつぐみのイチモツを握りしめる。

「あっ」

登喜子がイチモツに触った途端、

つぐみは声を上げると、

「もぅ、

 変な声を上げないでよ」

と登喜子は言うが、

心の中では

「(うわっ

  つぐみのオチンチンって大きい…)」

とその大きさを硬さに目を見張る。

そして、

「さぁ、

 オシッコしてみて」

と声を掛けると、

「う・うん」

その言葉に促されるようにして、

「んっ」

つぐみは腰に力を入れた。

すると、

シャッ

シャァァァァ!!

水が噴き出す音と共に、

つぐみのイチモツの先から小便が伸び、

ジョボボボボボ…

女性しか座らない便器に中へと落ちていく、

「あぁ…」

はじめて立ってするその行いに

つぐみは排泄の快感とは違う快感を味わっていると、

ゆっくりと固くなっていたイチモツが柔らかく、

そして小さくなっていく。

「うわっ

 本当なんだ」

それを肌で感じながら登喜子は驚くが、

「でも、

 問題はこれからよね、
 
 どっどうしたらいいの?」

男になってしまったつぐみと如何にして、

この女子トイレから出るか…

登喜子はその心配をしていたのであった。



おわり