風祭文庫・異性変身の館






「お通じ奇譚」


作・風祭玲

Vol.635





「里奈っ

 いい加減に出なさーぃ、

 遅刻するわよ」

キッチンからママの怒鳴り声が響き渡る。

けど、

「………」

その声に返事をせず、

あるところにジッと座り続けていた。

”大丈夫、まだ5分ある”

腕時計の針とにらめっこしながら、

あたしは闘いを挑む。

敵は難攻不落の要塞。

「今日こそは…」

あたしの口から決意の言葉が漏れ、

そして、全身に力を込めた。

…掛かれぇ!!!

…ブォォォォッ!!!

あたしのゲチと共にホラ貝の音が鳴り響き、

一斉に敵が立てこもる要塞に向かって攻撃を仕掛ける。

このときのあたしは織田信長であり。

新田義貞であり、

そして源義経であった。

あたしの指揮の下、

怒濤の大群が要塞に押し寄せ、

要塞を守る堅固な防壁を一気に押し始める。

「押せぇぇ」

「押し出せぇぇ」

ググッ

ググッ

「押し出せぇぇぇぇ!!!

 もう少しで、門が開くぞ!!」

累々と屍を積み重ねながらあたしは必死に戦った。

”あと少し

 あと少し
 
 あと少し”

メリッ!

”やった、

 ついに!!”

一瞬、突破口が見えた。

勝利は間近だ。

”頑張れ!!

 ここを、

 ここを乗り越えれば我々の大勝利である。

 行け!

 行け行け!!!”

あたしはあらん限りの力を振り絞った。

しかし、

「もぅ!

 遅刻してもいいの!!!」

ドアのスグ向こうでママの怒鳴り声が響き渡った途端、

ニュニュニュ…

開き掛けていた突破口は萎むように閉じてしまったのであった。

「あぁっ!

 もぅママのバカぁ!!

 もうちょっとだったのにぃ!!」

ママに向かってあたしは怒りをぶつけるようにして怒鳴り声を上げると、

「いい加減にしなさいっ!」

その声を吹き飛ばしてしまうかのようなママの声があたしに襲いかかった。



朝の通学路。

「もぅ、ママのバカ…」

ママの悪口を言いながらあたしは学校へと向かっていると、

「おっはよーっ、里奈

 あれ?
 
 どうしたの…
 
 気むずかしい顔をしちゃって」

親友の志保が声をかけてきた。

いつもならスグに返事をするところだけど、

でも、今朝のこともあり、黙って歩いていると、

あたしからの返事がないことに不審に思ったのか、

志保がのぞき込んできた。

「…なんでもないよ」

そんな志保にあたしはポツリと返事をすると、

「らしくないぞ、

 里奈…、
 
 何か悩み事?」

と理由を尋ねてくる。

”もぅ鬱陶しいなぁ…”

そう思いつつも、

「…え?

 うっうんまぁ」

あたしは適当な言葉で濁した。

志保とは小学校からの付き合いである、

だから、あまり八つ当たりはしたくない。

「うん…って、

 それだけじゃ判らないよ、

 なにか深刻な悩み事?
 
 何なら相談に乗るよ」

口を濁らせるあたしに志保は心配そうな表情をすると、

「うん…

 ありがとう…でも」

あたしは視線を泳がせながらそう呟いた。

「あぁっもぅ、

 じれったいなぁ」

そんなあたしにイラついてきたのか、

志保は声を上げたとき、

グッ

あたしは両手に握り拳を握りしめ、

「あの…

 あのさ、志保…

 おトイレって毎日行ってる?」

と小声で尋ねた。

「え?

 トイレ?」

あたしの質問に志保はキョトンとした顔をすると、

「うっうん

 そりゃぁ…

 毎日行っているけど」

あっさりと答えた。

「そっそう…」

彼女からの答えにあたしは赤くして俯くと、

「あっ」

何かに気がついた志保が小さく声を上げ、

「ひょっとして、

 便秘?」

とあたしを指さし尋ねた。

「志保っ!」

その指摘にあたしは左右に束ねている髪を逆毛ながら

彼女の名前を呼ぶと、

「うん、図星ね」

志保は納得したような表情で大きく頷き、

「で、何日出ていないの?」

と率直に質問してきた。

「そんな…何日って」

「なに、恥ずかしがっているのよ、

 便秘って立派な病気よ、
 
 長く放っておくと死に至る病なのよ」

周囲を気にするあたしの肩をつかみながら志保は迫ると、

「うっうん…

 ありがとう」

「で、何日出ていないのよ」

「なっ7日かな?」

「なっ7日も?!」

あたしの口から出た便秘の日数に志保はオーバーに驚いて見せた。

「こっ声が大きいよ、

 志保…」

その姿のあたしはスグに注意すると、

「もう、

 なんで、相談してくれなかったの?」

とあたしに迫る。

「だって…」

「まぁいいわ…

 いまからはどうにもならないから…

 じゃぁ、今日の放課後、

 薬を買いに行こう」

機転が利くのか志保のいいところ。

彼女は即座にそう提案をしてくると、

「!っ

 付き合ってくれるの?」

あたしは顔を上げ志保を見つめた。

すると、

「当たり前でしょう?

 あたし達友達じゃない」

志保はあたしに向かって片目を瞑って見せる。

持つべきものはやっぱり友達かな…



そして、放課後、

「お待たせー」

「あっ里奈…」

部活終了後の雑用を片付けてきた志保が

校門で待っていたあたしの前に姿を見せると、

「遅くなってごめんね、

 さっ行こうか」

と言いながらあたしの肩を叩く、

ところが、

「アレどうしたの?」

あたしの手が自分のお腹を押さえていることに志保が気がつくと、

「え?

 うっうん、
 
 ちょっとお腹が痛いの…」

とあたしは午後の授業当たりからお腹が痛くなっていることを告げる。

「痛いって…

 あの日?」

それを聞いた志保は尋ねると、

「え?

 違うわよ、
 
 まだ、あの日じゃないわよ」

「そっそう、

 じゃぁ、ただの腹痛ね、

 で、出そうなの?」

あの日ではないことに志保は安心しながらも、

率直に尋ねてくると、

「出そうって…

 そんな…」

「どっちなのよ」

「うん、

 それないわ、
 
 只お腹が痛いだけ」

「そっか、

 じゃぁ、急がないといけないわね」

「急がないとって?」

「そうよ、

 里奈の身体は出そうとしているのよ、
 
 でも、出口が固まっていて、
 
 押し出せないの」

「そっそうなの」

志保の説明にあたしは驚くと、

「そうよ、

 じゃぁ、薬を買って、
 
 一気に押し出そう」

と言う。



「んーと、どれが良いかな…」

国道沿いのディスカウントストアに併設されているドラッグストア。

その中の薬棚を志保とあたしはのぞき込んでいた。

「これなんてどう?」

「うーん」

「あっこれって可愛い…」

「そうね…」

二人並んで薬棚に並ぶ便秘薬を品定めしていると、

「で、どれがいい?」

と志保はあたしに尋ねる。

「うーん」

その言葉にあたしは考え込むと、

「あれ?」

薬棚の下に隠れる様にして置いてある黄色いパッケージが目に入った。

「なにかしらこれ」

そう言いながらあたしがパッケージを取り出すと、

”超強力!

 何もかも全部流します”

と言う踊り文句が目に飛び込む。

「へぇ…黒蛇堂製薬…

 聞いたことがない名前だけど

 でも、効きそうね」

あたしが手に取ったパッケージを見ながら志保はそう言うと、

「そう?」

「うん」

「じゃぁこれにしよう」

志保の笑みにあたしは背中を押されるようにして、

パッケージを手にレジへと向かっていった。

「ありがとうございました」

店員の笑みに送られ、

あたしと志保はドラッグストアから出ると

「じゃぁ、頑張ってね」

「うん、ありがとう」

その前であたしは志保と別れた。



「うわっ、

 これって、浣腸じゃない!!」

自宅に帰ったあたしは

パッケージから中身を取り出した途端、

顔を真っ赤にして叫ぶ。

「うわぁぁ

 どうしよう…」

果実のイチジクを摸した容器を手にあたしは困惑するが、

グルルル…

「痛っ」

差し込むようにして響いてくる痛みに、

思わず腹部を押さえてしまうと、

「四の五の言ってられないか…」

と覚悟を決め、トイレへと向かっていった。

「んしょっ」

下着を下ろし、あたしは便器に腰掛ける。

そして、

ピキッ!

説明書通りに浣腸の口を切ると、

そっと、お尻を上げ、手を股間へと潜り込ませる。

「んーと、

 ここかな…」

軽くツンツンと浣腸の先を当てながら肛門へと近づけていく、

グニュッ!

「あっ、

 ここ違う!」

うっかり先端が秘所を突いてしまうと、

あたしは身体を一瞬強ばらせ、

慌てて引き下げた。

そして、その少し後ろに手を持って行き、

ゆっくりと上げていくと、

プスッ!

浣腸の口は肛門の中に潜り込んでいく。

「あんっ!!」

排泄することしか知らない固く閉じた門を

まるでこじ開けるようにして入ってくる異物に、

あたしは思わず身体をよじるが、

「くっ、

 ここは我慢…」

自分自身にそう言い聞かせ、

ゆっくりと浣腸を押し込んだ。

そして、

”身”の部分を持つ指が動きを止めたとき、

「この辺で良いかな…」

そう判断すると、

ギュッ!

っと指に力を入れ”身”を一気に押し潰した。

すると、

ジワッ…

肛門の直ぐ内側辺りから冷たい薬液の感触が広がりはじめ、

やがてそれは直腸全体へと広がっていく。

程なくすると、

ポッ…

あたしの身体は内側から熱くなり、

「ふぅふぅ」

小刻みに息を吐く里奈の顔には汗が流れ落ちていった。

「こんなのかな?」

グニュングニュン

浣腸を入れてから里奈のお腹の中では盛んに何かが動き回っている。

やがて、

グリュッ!

急速に便意をもよおしてくると、

「あっ…

 でるっ」

あたしはその場で力んだ。

すると、

プスッ…

小さなオナラの後、

ニュルニュルニュル!!!

一週間ぶりにあたしの肛門より排泄が始まったのであった。

「はぁ…」

あれほど強固だった敵の要塞が見る見る崩れ落ち、

突っ張っていたお腹が次第にしぼんでいく感覚を味わいながら、

あたしは快感に身を委ねる。

そして、

「はぁ、楽になった…」

と独り言を呟きながらお腹を撫で、

最後の一踏ん張りをしたとき、

ブボッ!

ベチャッ!

コレまで聞いたことがない音と共に何かが身体から飛び出し、

直後に別の何かが便器へと落ちた。

「え?」

排泄とは全く違うその音と感覚に

あたしはお腹を撫でていた手を股間へと動かしていくと、

プルン!

何かがあたしの股間から飛び出していた。

「なっなに?」

思わず引っ張ってみたが、

しかし、それはあたしの身体から生えているかのように

しっかりとくっつき、

強く引っ張ってみても取れることはなかった。

「なっなに?」

慌てながらあたしは股間を見ると、

陰毛の先に肌色をした肉の棒が突き出していたのであった。

「うそっ

 なんなのこれ!」

肉棒の存在に驚き、慌てて立ち上がると、

「え?」

真下の便器には自分が排せつした大便と共に、

見慣れた女の性器・オマンコが落ちていた。

「うっそぉ!!

 じゃぁこれって…」

便器の中のオマンコを見つめながらあたしは顔を青くするが、

ムクムクムク!

それとは反対に飛び出した肉棒が固くなり始めた。

「え?

 え?
 
 やだ、これって男の人のオチンチンじゃない。
 
 いやっ
 
 なんでこんなのが、あたしに…」

勢いよく勃起する肉棒・ペニスの存在にあたしは悲鳴を上げるが、

しかし、

ズルリ…

ペニスに後ろには皺だらけの袋が下がっていくと、

身体の中からその中へ2個の玉が降りてくる。

そして、その直後、

「いやっ

 いやぁぁ!!」

あたしの悲鳴がトイレの中に木霊した。



「はぁはぁ

 はぁはぁ…」

あれから2時間が過ぎ、

あたしは未だにトイレの中にいた。

「ハァハァ」

シュッシュッ

肩で息をしながらもあたしは勃起するペニスを扱き、

もぅ空いている片方の手は胸毛が生え始めた胸の乳房をもみほぐしていた。

シュッシュッ

シュッシュッ

次第にペニスを扱く手が早くなり、

やがて、

「うっ!」

と言う呻き声を上げると、

びゅっ!

上を向くペニスの先より白濁した粘液が吹き上がった。

「はぁはぁ

 はぁはぁ

 いっ入れたい…

 誰かのオマンコにこのオチンチンを入れたい…」

射精後の快感に酔いしれながら、

あたしはうつろな目でそう呟くと、

『相談に乗るよ…』

と言う志保の言葉を思い出す。

「そっそうだ、

 志保に願いしよう…

 志保ならあたしのこのオチンチンをオマンコに入れてくれるはず」

あたしはそう呟くと、

携帯電話を取り出し電話をかけた。

「もしもし、

 志保?
 
 あたし達、友達だよね…」



おわり