風祭文庫・異性変身の館






「アゲイン」


作・風祭玲

Vol.998





草木も眠る丑三つ時。

街は静かな眠りについていた。

だが、

ギィ…

寝静まる街の一角に建つ一軒の住宅。

その2階にある部屋のドアが小さな音を立ててゆっくりと開いて見せると、

ヌッ!

如何にも怪しそうな人影がシンと静まり返っている部屋の中へと侵入してくる。

ギシッ

ギシッ

抜き足差し足忍び足…

時代掛かった黒装束を身にまとい、

装束には似合わない怪しく光るサーバーゴーグルを付けた侵入者は

慎重に足を運びつつ部屋の奥へと進んでいくと、

やがて、静かに寝息を立てているベッドが姿を見せる。

「…ふっふっ、

 長かった…

 実に長かった…」

ベッドの傍に立つ侵入者は感慨深げにそう呟くと、

チャッ

おもむろに懐から一丁の銃を取り出だして、

ベッドに向かってその銃口を向けてみせる。

そして、

「我が愛しの者よ、

 いまこそ甦りせんっ」

と言う声と共に、

パァァン!

一発の銃声が轟いたのであった。



ピーボー

ピーポー

表の市道を救急車がサイレンを鳴らしながら走りぬけ、

ドップラー効果によって歪む音がゆっくりと小さくなっていく

………

……

…

音が消えた部屋の中でほのかに煙をあげる銃口をそのままに、

侵入者はベッドの様子を瞬きもせずに観察するが、

しかし5分が経過しても

10分が経過してもベッドに変化は起きず、

侵入者が目論んでいたことは何も起こらなかったのであった。

「なっなんじゃぁ…失敗かぁ?」

ようやく20分か経過しようとした時、

侵入者は己の計画が失敗に終わったことを悟るや残念そうに呟き

いい加減痺れてきていた腕をゆっくりと下ろすと、

冷たくなった銃をだらりと下げてみせる。

そして、

「はぁ…」

っと大きめのため息をひとつ付いた後、

「いくら待ってもダメなものはだめだ。

 仕方がない。

 今夜は引き上げるか」

と言う言葉を残して肩を落とし

侵入者はトボトボと部屋から出て行くが、

シュワァァァァァ…

侵入者の姿が部屋から消えるのと同時に、

ベッドの中がほのかに光り輝きはじめると、

次第に光度を増し、

やがて

パァァァン!

と強烈な閃光が光り輝いたのであった。



ピピピピピピ!!!!

朝日が射し込む部屋の中に目覚まし音がけたたましく鳴り響く。

「………ん?

 ……もぅ朝?」

鳴り響く目覚まし時計によって

深い眠りの底から叩き起こされたこの部屋の主・高校生の野方雅一郎(18)は

寝ぼけ眼のままムクリと起き上がると、

「あれ?

 なんかいつもと違うな…」

と自分の体の異変を感じつつベッド横の窓を覆っているカーテンに向かって手を伸ばすが、

スカッ

スカッ

いくら腕を伸ばしてもカーテンを掴むことができなかった。

「んだよ」

いつもならいとも簡単に握り締められるはずのカーテンがなかなか掴めないことに苛立ちながら、

雅一郎は腰をわずかに上げてようやくカーテンを掴むと

シャッ!

勢いよく開けて見せる。

その途端、

部屋の中を朝日が照らし出し、

ウーン!

その光を全身で浴びながら雅一郎は大きく背伸びするが、

ハラリ

背伸びをする雅一郎の頬を髪が優しく撫でてくると、

「ん?

 あれ?

 なんで髪が…」

頬を撫でる髪を鬱陶しそうに引っ張って見せる。

すると、

ククッ

なんと髪は雅一郎の後頭部から伸びており、

手の動きに合わせて頭の後ろが引っ張られてしまったのであった。

「え?

 え?

 髪が伸びている…」

先日床屋に行ったばかりで短髪にしていたはずの髪が伸びていることに、

雅一郎は驚きつつも自分の手を頭に這わせて改めて確認をしてみると、

彼の頭から生えている髪の毛は長く伸びていて、

その毛先は肩を隠し、

体に絡みつくようにして背中まで達していたのであった。

「え?

 えぇ?

 うそっ、

 なっなんで?」

まるで女性の髪のごとく体に絡みついてくる髪に雅一郎は困惑するが、

さらに

「げっパジャマが…」

着ていたパジャマも一周りいや二周りほど大きくなっていて、

すっかりブカブカになっていたのである。

「なんじゃぁ

 こりゃぁ?」

肩の線がズレ、

袖口を伸ばせば自分の手がすっかり隠れてしまうほどになっているパジャマに雅一郎は驚き、

そして、潜るようにしてそれを脱いで見せると、

ぷるんっ!

今度は形のよい胸の膨らみが下着としてきているTシャツを押し上げている光景が目に飛び込んでくる。

「………」

B…いや、Cカップはあろうか、

弾性をもって突き上げている見事な膨らみの存在に雅一郎の口からはもはや声は出ることはなく、

ペタン!

ベッドの上に座り込んでしまうと、

「こっこれって、

 まさかおっぱ…」

体を小刻みに震えさせながら、

雅一郎は小さくなった手でそう言い掛けた自分の口を押さえる。

そして、そのままの姿勢で数分間座り込んでいたが、

無言のまま空いている手をパジャマのズボンの中に入れると、

ゆっくりと手を滑らせ

股間の近くで生えている毛の先にて湿り気を帯びている溝があるのをその指先で確認した途端。

サーッ

雅一郎の顔から一斉に血の気が引き、

「なにこれ…

 これじゃ…

 まるで…

 女の子…」

と小声で呟くが、

しかし、彼の指はそこでとまることは無かった。

昨日までは無かったはずの溝の両脇を指はゆっくりを開き、

中指の先を溝の中へと潜り込ませていく、

そして、触れるだけでピリピリと全身に響いてくる感覚に、

「はんっ」

雅一郎はつい声を漏らしてしまうと、

クリッ

さっきまで口を押さえていたはず手が胸の膨らみの上でツンッと硬くなっている触角を弄り始める。

「んんっ

 だめっ

 俺は何をやっているんだ。

 こんなことをしちゃぁダメだ。

 でも、指が指が止まらないよぉ」

クチュクチュ

と溝の奥より留めも無く湧き出してきた粘液に指を絡ませながら

「あはんっ」

雅一郎は唇をかみ締め喘ぎ始めたとき、

「おいっ!

 雅一郎っ、

 いつまで寝ているのだ」

と言う声と共に彼の父親である野方航太郎が部屋のドアを開け放ったのであった。



「!!っ」

突然の父親の登場と同時に雅一郎の心臓は凍りつき、

股間から急いで手を引き抜くと、

「まっ

 まっ

 まっ」

その雅一郎の姿を見るなり航太郎は震える手で彼を指差し何かを言おうとする。

その一方で、

「おっオヤジっ

 いやっ、

 これはその…

 なんていうか…」

鈴のような音色の声を上げて雅一郎は必死で言い訳をしようとすると、

「まっ

 まっ

 真砂子ぉぉぉ〜っ!」

部屋中に声を轟かせて航太郎は雅一郎に抱きつき、

「逢いたかったぞぉ!!!」

と声を張り上げ大泣きに泣き始めたのであった。

「オヤジっ

 血迷うなっ

 俺だぁ

 雅一郎だぁ」

父親の胸に抱かれながらも雅一郎は声を上げるが、

航太郎はきつく抱きしめ、

ただ泣くばかりでなかなか手放そうとはしなかった。

そして、

「いっいい加減にぃ」

ついに雅一郎の我慢が限界に達した時。

「…しやがれってぇーんだ。

 このクソオヤジぃぃ」

の声と共に

ゴツッ

航太郎の顎を強烈なアッパーが打ち抜き、

「うごわぁ」

それと同時に航太郎の体は宙を舞うと、

ドォンッ!

家を揺らす音を立てて落ちていく。

そして、

「はぁぁぁ」

「はぁぁぁ」

ベッドの上で雅一郎は髪を振り乱し肩で息を吐きながら仁王立ちになっていたが、

すぐにベッドから飛び降ると、

急いで部屋の壁に掛かっている鏡に自分の姿を映し出して見た。



「こっこれが俺かぁ…」

鏡に映る美少女の姿を見るなり、

雅一郎はガックリと肩を落とすと、

「あいたぁ〜、

 起こしに来た父に向かって何をするのだ、

 雅一郎」

痛む頭を押さえながら航太郎は起き上がるやいつもの調子で息子の名を言う。

「ん?

 オヤジっ、

 今俺の名前を読んだな」

それを聞いた雅一郎はゆっくりと振り返ると、

「この父がお前を間違えるわけないだろう?」

ダメージをものともせずに航太郎は、

パンパン

とズボンをはたいて見せ、

そして、

「ふむ、

 失敗と思っていた実験は大成功だったようだな」

そう言いながらほくそ笑んで見せると、

「なに?」

それを聞いた雅一郎の表情が一瞬硬くなり、

「いまなんて言った?」

と聞き返す。

ところが、

「さぁてさてさて、

 朝は忙しいのだ、

 さっさと着替えなさい」

航太郎はその問いには答えずに部屋を後にしようとするが、

「こらぁ貴様ぁっ

 この俺を怪しげな実験の実験台にしたのかっ!」

その直後、

屋敷に轟くような雅一郎の怒鳴り声が響き渡ると、

ズドォォォン!

朝の街に地響きが響き渡ったのであった。



笑みを浮かべる母親の遺影が見つめる畳間に用意された朝の食卓を挟んで、

父と娘…

あっいや、父と息子の朝食が静かに進んでいた。

「ちっ、

 邪魔くせーなぁ、この胸は…」

ツン!

と突き出す両胸の膨らみに苛立ちを覚えながら雅一郎は茶碗を掻っ込んでみせると、

「そんなガサツな食べ方があるか、

 母さんはもっとお淑やかに食べていたぞ」

と航太郎はさりげなく注意する。

その途端、

バンッ!

テーブルに箸が叩きつけられるのと同時に、

「で、オヤジ、

 コレ、元に戻るんだろうなぁ…」

と凄みを利かせるようにして雅一郎は問い尋ねるが、

「安心しろ、

 このわしが嫁にもらってやる」

問いに対して航太郎は満面の笑みで答えてみせた。

その直後、

ズシンッ!

またしても大きく自宅が揺れるが、

「危ないなぁ、

 食事を粗末にするでない」

食事が乗る卓袱台を抱え上げて航太郎はそう注意をすると、

「オヤジ、

 言って良い冗談と、

 言って悪い冗談があるぞ」

拳を畳に叩きつけながら雅一郎は肩を震わせて見せ、

「どこの世界に息子を性転換させて己の嫁にしようとする父親が居るというんだ」

と怒鳴りつけると、

「何を言う。

 お前と私とではすでに遺伝的なつながりは無いぞ」

と航太郎は言い切ったのであった。

「遺伝的なつながりは無い?

 それってどういうことだ」

それを聞いた雅一郎はすかさず聞き返すと、

「わしはのぅ、

 死んだ母さんを蘇らせるためにあらゆる努力を行ってきた。

 しかしだ、イヴノーベル賞候補にもなったことがあり、

 様々な秘密結社から誘いを受けたこの天才科学者のわたしの頭脳をもってしても、

 荼毘に付された母さんを蘇らせることは至難の業だった。

 そして、わたしは悩みに悩み抜いた末、

 あることに気がついたのだ。

 わたしの手元にはお前と言う母さんの忘れ形見があると言うことを、

 そうお前には母さんの遺伝子の半分があるのだ。

 そのことに気づいたわたしは早速行動を開始した。

 なぁに難しいことではない。

 お前の遺伝情報からわたしに関する部分を抜き去り、

 不足部分を偶然見つけた母さんの毛髪から読み取った遺伝情報で補完すればよいのだ。

 しかもミトコンドリアに関しては母さんのをそっくり引きついているから、

 神の手を借りなくても造作の無いこと…

 そして、昨夜、万感の想いを込めてわたしは実行したのだぁ〜」

風を巻き上げライトを浴びながら航太郎は声を張り上げる、

だが、それと同時に彼の肉体は宙を舞い、

ぐわしゃぁぁん

と言う音と共に自室兼研究室まで吹き飛んでいく。

「ひっ人の体を粘土細工のごとく弄くりやがって…

 なにが母さんを蘇らせるだ。

 お前がやったのは人権無視の人体実験なんだぞ!

 おっ俺の人生をどうしてくれるんだよっ、

 これまで大目に見てきたけど…

 こんな家、出て行ってやるっ!!」

振り抜いた拳を握り締めながら雅一郎はそう怒鳴ると、

ドタタッ!

足音荒く自宅から飛び出してしまったのであった。



「はぁ…

 勢いで飛び出してきちゃったけど…

 どーするかなぁ」

勢いで飛び出してしまった雅一郎は

自宅近くにある橋の欄干より下を流れる水面を見つめながらそう呟くと、

大きくため息を吐いてみせる。

そして、そこに映る少女の顔を眺めながら、

「写真でしか見たことは無かったけど、

 母さんってこんな顔をしていたんだ…」

と雅一郎が幼い頃に亡くなった母親の面影と水面に映る自分の顔を重ねてみせるが、

それと同時に

「それにしても…

 オヤジの野郎…

 何てことをしてくれたんだよぉ、

 俺の人権をいとも簡単に踏みにじりやがって」

と無断で肉体改造を行った父・航太郎への怒りを燃やしてはみたものの、

スグにジワッとその目に涙がたまり始めると、

「ちくちょう、

 どうしてくれるんだよ、

 女なんかにしやがって」

と座り込んで泣き出してしまったのであった。

その時だった。

「どうしたの?」

と彼、いや彼女に向かって女性の声が掛けられた。

「え?」

聞き覚えのある声に雅一郎は顔を上げると、

「あっ、

 久美子さん」

と声をかけてきた女性の名前を言う。

「あら?

 あなたとどこかでお会いしましたっけ?」

変身をした雅一郎とは初対面である鷺宮久美子は小首を捻って見せると、

「え?

 あっ、

 いや、その…」

そのことに気づいた雅一郎は顔を真っ赤にして立ち上がり言いつくろうとするが、

サーッ!

慌てて立ち上がった途端、一気に頭の血が下がってしまうと、

「あっあれ…」

鳴り響く耳鳴りと共に瞬く間に雅一郎は視界を失ってしまい、

久美子に抱きつくようにして倒れてしまったのであった。



「うん、

 ここは?」

気を失っていた雅一郎が目を覚ますと、

見慣れた和室の中に寝かされていた。

「ここは…久美子さんの…」

小さかった頃によく訪れていた部屋の佇まいを見ながらキョロキョロと周囲を見回すと、

「あぁ、気づいた?

 まーちゃん」

の声と共に部屋の入ってきた久美子が声をかけてくる。

「あっ、

 いや、どうも…」

入ってきた久美子に向かって雅一郎は頭を下げるが、

「って、

 久美子さん。

 俺って判ったんですか?」

と雅一郎は自分を指差し驚いてみせる。



説明しよう。

雅一郎を助けたこの久美子と言う女性は実は雅一郎の自宅の隣に住む女子大生であり、

高校生の雅一郎を弟のようにかわいがってきたのであった。

無論、雅一郎も久美子を慕ったのだが、

隠し撮りした久美子の入浴中の写真をオナニーのオカズにしているのは公然秘密である。



「おじさんに経緯を聞いて驚いたわよぉ」

驚く雅一郎を指差して久美子はそう言うと、

「え?

 あっオヤジに会ったんですか、

 それにしてもオヤジの奴、

 よく久美子さんに事情を話したな…」

それを聞いた雅一郎は感心して見せる。

すると、

「まーちゃんが倒れた後、

 まーちゃんを探していたおじさんと出会ってね、

 朝、起きたら女の子になっていたんですって?

 おじさんもなんでこんなことになったのか判らない。って言っていたわよ」

と久美子は雅一郎が倒れた後のことを言うが、

「ぬわにぃ!」

それを聞いた途端、

雅一郎の胸に怒りが燃え上がると、

「あのぉ、クソオヤジ、

 でたらめをぬかすんじゃねぇ!」

と声を張り上げるものの、

クラッ

再び貧血を起こしてしまうと、

「あら…」

ドタンッ!

仰向けになって倒れてしまったのである。

「だめよ、

 女の子は貧血になりやすいんだから、

 男の子のつもりで無茶をしないの」

と久美子は優しく諭すように話しかけると、

「うぅっ…」

それを聞かされた雅一郎は泣き出してしまった。

「あらあら、

 確かにね、

 いきなり女の子になっちゃったんだから仕方が無いか、

 おじさんが学校を欠席するって連絡を入れたそうだから、

 落ち着くまでここに居なさい」

泣き続ける雅一郎を慰めつつ久美子はそう言うと、

気遣いながら部屋から去っていき、

雅一郎がようやく気持ちを落ち着いてきたのはそれから小一時間ほどたってのことであった。



「あーぁ、

 結局今日は休んじゃったな…

 まったくオヤジの野郎…

 帰ったら絶対折檻してやる」

目を真っ赤に腫らしつつ雅一郎はそう呟くと体を起こし、

「それにしても久美子さんの部屋に上がるだなんて、

 何年ぶりかなぁ」

と小学校高学年を最後に訪れることが無かった部屋を見回しながら

以前とさほど変わらない佇まいに懐かしさを感じていると、

「ん?

 なにかな、あれ」

部屋の隅に置かれている箪笥の上に意味ありげなボール箱が置かれていることに気づいた。

ところが、いつもなら無視しても構わないその箱のことが妙に気になってしまうと、

「ヨイショ」

箪笥の横に置いたイスを踏み台にして雅一郎は手を伸ばし、

そしてゴトゴトと物音を立てる箱を取り出すと、

「何が入っているのかな…」

と興味津々にその蓋を開けたのである。

すると、

ムッ

と来る生臭い臭気が湧き上がり、

それと同時に箱の中を埋め尽くす物体が姿を見せた。

「これは…」

驚く雅一郎の眼前に姿を見せたもの…

それはまさに男性の性器を模した淫具であり、

様々なサイズから用途にあわせたものが箱の中を埋め尽くしていたのであった。

「これって…ばっばいぶ…」

衝撃に事実に雅一郎は声を詰まらせながらひとつを手に取ると、

カチリ!

とスイッチが入る。

その途端、

うぃんうぃんうぃん

淫具は軽いモーター音を響かせながら蠢き始めると、

「いっいやっ!」

それを見た雅一郎は思わず淫具を放り出してしまった。

そして、ドキドキする胸を押さえながら畳の上で蠢く淫具を見つめながら、

「まさか、

 これを久美子さんが使って…」

雅一郎はそう呟くと、

「ハッ」

見てはいけないものを見てしまった後悔を感じるや否や、

急いで淫具を片付けようとする。

しかしその背後に人の気配を感じ取ると、

雅一郎は恐る恐る振り返ったのであった。

そして、そこには…

「くっ久美子さんっ」

驚く雅一郎を見下ろす久美子が立ち、

ゆっくりと雅一郎から箱へと視線を移していく。

「あっあのっ、

 これはその…

 おっ俺は何も見なかったので…」

冷や汗をかきつつ雅一郎は淫具を片付け、

急いで箱を手にして立ち上がろうとした時、

ゆらり…

久美子の体が一瞬揺れるや、

パァァン!

響きの良い音共に雅一郎の頬に強烈な痛みが走ると、

ドタンッ!

部屋の端まで吹っ飛んでしまった。

「うぐぐぐっ」

頬を押さえつつ仰向けに倒れた雅一郎が起き上がろうとした時、

ドスンッ!

久美子は腹の上に馬乗りになり、

「まーちゃん…

 あなたはあたしの秘密を見てしまったのよぉ」

鬼気迫る表情で雅一郎の頬に両手を添えるとそう告げてみせる。

「ひっ秘密って、

 あの、

 それって、

 くっ久美子さんがまっ毎夜ばっバイブでオナっていることですか?

 おっ男に抱かれている自分を妄想しながら喘ぎ声をあげている。ってことですか」

久美子を見つめながら雅一郎はあまりにも単刀直入にズバリと言い切ってしまうと、

彼女の表情が一瞬歪み、

パァン!

再度雅一郎の頬が力いっぱい叩かれたのである。

しかも、さらに2・3発…

いや、4・5発続けざまに叩かれてしまうと、

「ひぐっ」

頬を真っ赤に腫らして雅一郎が涙目で久美子を見据えて見せる。

しかし、

「うふっ、

 まーちゃんはあたしの秘密を知ったの」

と久美子はそう呟きながらゆっくりと双頭型の淫具を手に取ると、

「じゃぁ、

 今度はあたしにまーちゃんの秘密を教えてぇ、

 秘密って共有してこそ意味があると思うの」

と囁きながら着ていたワンピースに手を掛け、

やがて、

ギシッ!

強烈な革の臭いと共に雅一郎の目の前に鋭い切れ込みにボンテージ衣装が姿を見せる。

そして、

キュッ!

と引き締められ括れた腰とバストアップされた胸が妖艶な女を演出してみせるが、

「うっそぉ!」

それよりも久美子の股間からそそり立つ男性器顔負けの巨大な張り子に雅一郎の目は釘付けとなっていた。

「くっ久美子さん、

 それは…」

張り子を見つめながら雅一郎は驚くと、

「これが本当のあたしの姿よ、まーちゃん。

 うふっ、

 まーちゃんが女の子になっちゃっただなんて、

 あたしはとっても嬉しいの。

 だって、

 ほらっ、これでまーちゃんを犯すことが出来るようになたから」

そう言いながら久美子は股間からそそり立つ張り子のスイッチを入れると、

うぃんうぃん

唸り声をあげて巨根は蠢き始める。

と同時に、

「あはんっ、

 あたしの中で暴れて…

 あん、感じちゃぁう…」

久美子は体をよじりあえぎ声を上げてしまうと、

「久美子さん…

 それって久美子さんの中にも…」

と雅一郎は聞き返す。

すると、

「さぁ、まーちゃん。

 あたしと一つになろうね」

と久美子は囁き、

鼻息荒く雅一郎に襲い掛かったのであった。



妖艶な女に変身した久美子に徹底的に嬲られた雅一郎が開放されたのは

その日も遅くなってのことであった。

フラフラになって自宅に戻ると、

「こんなに遅くまで何をしていたのだ雅一郎。

 久美子さんに迷惑でもかけたのか?」

と何も知らない父・浩一郎は問いかける。

しかし、その問いには何も答えずに雅一郎は一直線に自室へと飛び込んでいくと、

そのまま自分のベッドに潜り込んでしまったのであった。

そして、

「あぁ、

 どうしよう…」

と呟きながら股間に手を入れると、

ギシッ

雅一郎の股間を革で出来た貞操帯が覆い、

それどころか、

久美子によって処女を奪われた秘所には極太のバイブが仕込まれていたのである。

これらはすべて久美子の仕業であり、

秘所に仕込まれたバイブは一定時間ごとに振動するようにプログラムされていたのであった。

「あぁ…

 どうしよう…

 こんな体にされて…」

鍵によって拘束され脱ぐことが出来ない貞操帯を触りながら雅一郎は困惑していると、

ブブッ

秘所の中に納められたバイブレーションが振動を始めだす。

その途端、

ビクン!

雅一郎の体は大きく跳ねると、

「あっあっあっ、

 あああああぁぁぁん」

と声を張り上げ、

ツンと膨らむ乳首を頂く乳房をもみ始める。

「はぁぁん、

 はぁぁん」

夜の部屋に艶美なあえぎ声が響き渡り、

貞操帯が覆う股間から多量の淫汁を流しながら雅一郎は絶頂への階段を上り始める。

「おっお願い…

 やめて、

 くっ久美子さん。

 許してぇ」

ぴくぴくと体を痙攣させながら雅一郎は許しを請おうとするが、

しかし、陰部の中で振動するバイブはその動きを止めることなく、

「はぁん、

 はぁん、

 あっあぁぁぁぁ…」

雅一郎はそのまま絶頂へと達してしまったあった。

その一方で、

「ふっふっふっ、

 どうやら、久美子さんの調教は進んでいるようじゃな、

 さすがは現役女子大生SM女王の久美子さんだ。

 うぶな雅一郎など赤子の手を捻るようなものであっただろう」

雅一郎の部屋に聞き耳を立てながら航太郎はそう呟くと、

「こうしてはおれん、

 早くわしの若返りの薬を作らねば、

 雅一郎…あっいや、

 真砂子が女としてわしを求めてくる前にのぅ」

と航太郎は決心をすると、

バッ

白衣を羽織るや否や、

己の研究室へと向かっていったのである。

全てをやり直すために…



おわり