風祭文庫・異性変身の館






「想定外」


作・風祭玲

Vol.732





「…ふふっ」

「…うふふふっ」

その日の練習が終わり、

夜の帳が降りた新体操部の屋内練習場。

明かりが消されたその練習場に少女達の含み笑いが静かに響き渡ると

カッ!

消されていた照明が一斉に点った。

煌々と灯る明かりの力に練習場を包み込んでいた闇は一気に消え失せ、

代わりに赤地に白いストライプが入る練習用レオタードを身につけた

新体操部員達の姿が照らし出される。

「うふふふっ」

「ふふふふふ」

ハードな練習を終え、

すっかり疲れ果てている彼女たちのはずだが、

だが、皆の表情には疲れの色は一切無く、

それどころか、

これから始まる楽しいことを待ちこがれる期待感からか

皆、頬を紅潮させていた。

「ふふふふ」

「ふふふふ」

そこかしこから漏れ響く小さな笑い声が次第に高くなり、

そして練習場に響き渡るようになった頃、

ギィ…

閉じられていた壁のドアが徐に開く。

「!!」

ザッ!

ドアが開く音が響くのと同時に部員達が一斉振り向くと、

タッ…

同じ柄のレオタードを身につけた少女を先頭にして、

シニョンに髪を結い上げたレオタード姿の少女が3名、

静に練習場へと入ってきた。

ダダダダ!!!

その途端、

立ち位置がバラバラだった新体操部員達は一斉に動き、

入ってきた3名の少女達の前に整列をすると、

「皆さん…」

部員達の前に立った3名の少女の真ん中に立つ少女が声を上げた。

そう、この少女こそ、

S高校・新体操部を率いるキャプテン。

3年生の中山真由美である。

第一声を放った真由美はゆっくりと自分を凝視する部員達を見つめ、

「皆さん、お待たせしました」

と続ける。

すると、

ギリギリギリ

ギリギリギリ

真由美の背後からX字型をした磔が持ち上がりはじめ、

裸体を曝し真新しい競泳パンツのみを穿いた一人の男子が

拘束されている様子が皆の目に飛び込んでくる。

「きゃっ、

 裸よ」

「可愛い」

「うふっ、

 あの子が今度の新入部員?」

それを見た途端、

新体操部員達の間からそんな声が響くが、

男子は気を失っているらしく、

部員達声には何の反応を示さない。

すると、

「静に…」

その声を制するように真由美の声が重く響いた。

「…」

真由美の声が響いた途端、

部員は一斉に黙ると、

「紹介しましょう。

 彼の名前は1年生の飛鳥健一、

 見ての通り男子水泳部に所属していました」

真由美は磔にされている少年の紹介し、

「…1年生なんだ…」

「それで水着が新しいのね」

「ちょっと逞しそうで良い身体、

 女の子にするのが勿体ないわ」

紹介を聞かされた部員達は再びひそひそ話をし始める。

だが、真由美は部員達を咎めずに、

キッ

キツイ表情になると、

「彼は男子水泳部のホープとして、

 活躍を期待されたのですが、

 本日、16:30。

 あろう事か、我が新体操部更衣室に忍び込み、

 2年生の有賀美里さんのロッカーを物色、

 レオタードを盗み出そうとしているところを発見し、

 拘束をしました」

と健一が犯した罪について説明をはじめだした。

その途端、

「んまぁ!」

「可愛い顔をして」

「痴漢っ」

「変態!」

と部員達の間から罵声が飛び交い、

次第にボルテージが上がっていく、

すると、

サッ

彼女たちを鎮めるように真由美は両手を掲げ、

さらに両脇に控えている者に何かを命じた。

シーン…

口を閉じた部員達が見守る中、

磔にされている健一の元にレオタード姿の少女が近寄り、

その鼻に持ってきた薬品を嗅がせる。

「うっ」

嗅がされた薬品の効果なのか、

スグに健一の意識が戻り、

そして、目を開けた途端、

「うわっ、

 なに?

 え?
 
 え?
 
 え?」

健一は驚いた顔をすると、

周囲をキョロキョロ見回しはじめた。

だが、真由美は驚き動揺する健一を一瞥すると、

「私たちは新体操部顧問を通じ、

 男子水泳部にそのことを抗議した結果、

 飛鳥健一は男子水泳部を即日退部。

 身柄は新体操部預かりとなりました。

 我が新体操部では、

 飛鳥健一に自分が犯した罪の深さを認めさせるため、

 新体操部員として迎えることにします」

と部員達に向かって健一の入部を告げる。



「え?

 なになに?

 何でオレが競パンを穿いて居るんだ?

 それに何で…うわっ裸じゃねーかよ」

競泳パンツ一枚の姿になっていることに健一は気づくと

顔を真っ赤にして話しかける。

すると、

クルッ

それを聞いた真由美は振り返り、

「飛鳥健一っ

 新体操部の更衣室に忍び込んだ罰として、

 君を新体操部員にしてあげるわ」

と指さし、そう告げた。

「なっ

 えっえぇぇ!」

それを聞かされた健一は驚いた顔になるが、

だが、レオタード姿の新体操部員の前に晒されていることに

下半身は敏感に反応し、

ムクリ

と薄い布地の競泳パンツを押し上げて

男のシンボルがそそり立ちはじめていた。

「やだぁ」

「スケベ!」

その途端、部員達の間から健一を非難する声が上がり、

「キャプテン!

 こんなスケベ男に早く天誅を下してください!」

と声が上がる。

すると、健一の両脇に部員が立ち、

グイッ!

っと剥き出しになっている彼の腕を掴んだ。

「ちょちょっと、

 新体操部の部室には呼ばれて…

 って、オレが何をしたんだよ、

 おっオレを新体操部員にって、

 オレは男だぞ、

 男が新体操できるわけ無いだろう」

拘束された状態で健一が言い返すと、

「うふっ、

 女の子になればいいのよ」

と真由美は告げる。

「え?

 女の子に?

 そんなことが…
 
 って、大体オレは…」

「問答無用よ、

 さっやってあげて、

 みんなもこの男が新体操部員に相応しい肉体になっていくところを

 しっかりと見届けてあげるのよ」

なおも言い返そうとする健一の反論を封じて真由美は指示を出した。

すると、健一の腕に注射器らしきものが押し当てられ、

プシュッ!

っと薬液が健一の体内へと注入された。

「うわっ!」

間髪を置かずに健一の悲鳴が響くが、

「くすくす…」

「スグに始まるわ」

「水泳部の男の子って初めてね…」

「殆ど裸だから

 変身してゆくところがよく判るわね」

と部員達から笑い声が聞こる。



「お前…」

その声に向かって健一が怒鳴ろうとしたとき、

ビクンッ!

その身体が小さく動くと、

ウグッ!

健一は身体の中から始まった変化に歯を食いしばった。

「始まったわ」

「ホント」

健一の変化を部員達は見逃さずに指摘すると、

「うぐぐぐぐ…」

ムリッ

ムリムリムリッ

見る見る健一の鍛え上げた胸板が萎むように薄くなり、

腹筋や僧房筋、その他の筋肉がやせ衰えていく、

そして、消滅してゆく筋肉と歩調を合わせるようにして、

骨太の骨格も角が取れ、

細くなっていくと

健一の身体は萎むように小さくなっていく。

「うぐぅ」

メキメキ!!

骨格が一回り小さくなり、

磔台の上で手足をピンと張るようになってしまうと、

今度は薄くなった筋肉を埋めるようにして脂肪が付き始めだした。

さらに筋肉が萎えて薄くなった胸からは乳房が膨らみ、

その頂にはピンク色の乳首が硬く隆起してゆく。

また、競泳パンツが覆う股間では、

押し上げそそり立っていたシンボルから力が抜けると、

まるで吸い取られていくようにして萎縮してゆき、

見る見る小さくなっていく。

「見て見て、

 女の子になっていくわ」

「あはっ、

 本当だ」

膨らみを失い、

代わりに縦溝が浮き上がっていく健一の競泳パンツを指さして、

部員達が指摘した頃には、

健一の身体はほぼ女子化してしまっていたのであった。



「そろそろ変身が完了する時間ね」

時間の経過と健一の変化を見比べながら真由美はそう呟くが、

健一の変化はなぜか止まらずに、

ムリムリムリ

ムリムリムリ

さらに変化が継続されていく。

「うわっ、何これ!」

度を超してゆく健一の変化に皆が驚くが、

ブルンッ!

ムチィ!!!

健一の胸の乳房はさらに大きく育っていくと、

両脇からこぼれてしまい、

「うわぁぁデカすぎ」

「っていうか、マジIカップ?」

「それ以上?」

「お尻もスッゴイよぉ!」

「もぅエロエロだよ」

女性アスリートとしてのプロポーションを逸してゆく姿に、

皆が一斉に引いていく。

「どうします?

 あの胸では演舞は無理かと…」

「うん、お尻も大きすぎます。

 あれではクレームが来ますよ」

健一の変化を見ていた副キャプテン達がそう進言してくると、

「あららぁ

 薬の効き目がちょっと強すぎたみたいね。

 科学部に文句を言わなくっちゃ。

 さて、折角だけど、飛鳥君。

 貴方のそのプロポーションでは新体操は無理。

 悪いけどうちの部では要らないわ」

と真由美は健一に向かってあっさりと戦力外通告をする。

「えぇ、

 そんな、

 こんな身体にして、それはないでしょう?
 
 せっ責任をとってよぉ」

真由美の言葉を聞いた健一はトーンの上がった女の声で反論をすると、

「文句は言わないで、

 大体、こんなオッパイが大きな体型じゃ

 鍛えても新体操は舞えないわ」

と真由美は指摘し、

「ねぇ、あなた達の中で要る人、居る?」

と開け放たれているドアに向かって声を掛けた。

すると、

「うーん、悪いけど…」

「うちだっていらないわよ。」

「同じく!

 うちにもいらな〜い」

いつの間にかドアの外に居た柔道着や剣道着を着た武道系、

ボクシングやレスリングの格闘技系、

バレーボール、ソフトボールの球技系の

それぞれの部の女子部長・キャプテンが顔を出し、

皆一斉に引き取りを断ってきた。

「もぅ…有望女子選手になると思ってたのにぃ

 男にも戻せないし誰か引き取ってよぉ

 あーぁ、厄介者を抱えちゃったわ」

そんな彼女たちを見ながら、

真由美は額に手を置いたのであった。



それから1週間後…

「キャプテーン!」

放課後の新体操部練習場に真由美を呼び止める声が響くと、

「あのぅ、飛鳥健一はどうなりましたか?」

と新体操部員達が健一の処遇について尋ねてきた。

すると、

「あぁ、そのこと…

 一応引き取ってくれるところがあったので、
 
 そこに預けることにしました」

真由美はサッパリとした口調で答えると、

「さぁっ、練習をしなさい」

と部員達に向かって指示を出す。



「おかえりなさいませぇ…

 ご主人様!!」

日本最大のカルチャー街・アキバ

そのアキバの一角にあるメイド喫茶で

一人の新人メイドが客達の注目を一身に浴びていた。

ブルン!

溢れんばかりの巨乳を揺らし、

ムチィ!!

思わず抱きつきたくなるお尻を振る彼女は

S高校・メイド研究部に引き取られたあの飛鳥健一であった。



おわり