風祭文庫・異性変身の館






「あゆみ」


作・風祭玲


Vol.647





『あっ、あゆみちゃん。

 今日学校の帰りにここの薬局に行って

 これを買って来てくれない?』

登校の支度をする僕に向かって

何かの広告を掲げながらママが話しかけてきた。

『別にいいけど、

 なにを買ってくるの?』

意味深な笑みを浮かべるママに向かって僕はそう返事をすると、

差し出された広告を受け取る。

僕の名前は住吉歩、高校1年生の16歳。

だけど、僕の名前を見て一発で読める人はなかなか居ない。

たいていの人は”ほ?”とか”ふ?”と読んでしまって、

見事”あゆむ”と読んでくれる人に出会うとなんだか嬉しくなる。

そして、そんな僕の性別は無論”男”なんだけど…

でも、ママは僕が女の子に憧れてることを知っていて”あゆみ”と呼んでくれる。



ママにカミングアウトしたのは中学生の時、

”僕、女の子になりたいの”

隠していた少女向けファッション雑誌をママに見つかって、

詰問されたとき、僕は心の奥底で思っていた事をママに告げた。

すると、ママは僕を怒るどころか、

”まったく、あなたったら…”

呆れたような目で僕を見たあと、

”判ったわ、

 この家の中ではあなたは女の子の”あゆみ”で居なさい。

 でも、外に出たらあくまでも男の子”あゆむ”なのよ”

と僕に言ってくれた。

ママのその一言で僕の気持ちは楽になり、

その日、女の子”あゆみ”として、

ママが買ってきてくれたレディスの服に袖を通したのであった。



「で、なにを買ってくればいいのかな」

窮屈に感じるようになってきた男の子の制服を着ながら

僕はママから渡された広告を見ると、

生理用品の所に大きく丸印が書かれていたのである。

「へ?

 ママ、

 いくら僕が女の子に憧れているからって言ったって、

 これ、生理用品じゃない。

 僕、男の子だから生理用品を買ってきても僕つかえないよ」

と広告を片手に指摘すると、

「それがどうかしたの、

 あゆみちゃんは女の子でしょう?

 女の子なら生理もキチンとしなくちゃね」

ママはそう僕に告げた。

”これって、普段レディスばかり着ている僕への当てつけ”

そう思いながら、広告に見を通すと、

それは色々多種多様な薬を販売しているドラッグストアの広告であり、

と同時に最近、国道傍にディカウントストアがオープンした事を思い出した。

「ここって、

 あの国道脇のディスカウントストアの中にある、

 ドラッグストア?」

ママに聞きながら広告に目を走らせる。

すると、とあるところで僕の眼がとまった。

”性転換入浴剤”

そう書かれているポップに

「なっなにこれ?」

ポップを見ながら僕は首を捻ると、

「それね、ママも気づいたのよ。

 買ってみる?

 あゆみちゃん。

 うふっ』

ママはそう言いながら笑うけど、

でも、

”これを使うと女の子になれるんだ…”

そう考えた僕は学校に行かないで、

このまま買い物に行こうとするが、

「だめよ!

 学校は行くのよ!」

とすかさずママが咎める。

どうも、僕の行動はママにはお見通しみたいだ。

「はーーい」

僕はそう返事をすると、

「行ってきまーす」

後ろ髪を引かれる思いで僕は学校へと向かっていった。



そして、僕にとって長い一日が終わり、

友達が声をかけるが聞こえないように学校から飛び出すと、

一目散にあのドラッグストアへと向かって行く。

開店を祝う花輪が掲げられてゲートを通り、

そして店内に踏み込むと、結構な混み方である。

「うひゃぁぁぁ」

黒山の人だかりをかき分け、

僕はあの入浴剤が置かれている棚を探すが、

しかし、それらしきものはなかなか見つからない。

「うーん、困ったなぁ…」

幾ら探しても見つからない入浴剤の姿を求めて、

傍に居た店員に声をかけ、

「すみません、広告のこれってまだありますか?」

と尋ねると、

「少々お待ちください、

 在庫を見てきます」

と店員は在庫を確認しに倉庫へ向かっていった。

5分ほどたった後、

店員はパッケージされた一本の容器を持ってくると、

「お待たせいたしました。

 注文するのに持っていってて、よかった。

 追加が2ヵ月先らしくって。

 これが最後です」

と言いながら店員は僕にそれを手渡す。

「そっそうですか」

はにかみながら僕は容器を受け取ると、

「あ・と・は、

 そうそう、生理用品…」

と朝、ママに頼まれた生理用品を手にした。

”そっか…

 女の子になったら毎月これのお世話になるんだな…

 でも、生理ってどんな感じなのかな…

 女の子の話では、

 痛くって辛いってしか聞いてないけど”

僕はまだ未知のことである生理について考えながら、

レジへと向かっていった。

ピッ

POSの音が響くのと同時に

「………」

レジ担当の店員が小さい声で何かを僕に告げるが、

聞き取れなかった僕は思わず

「なんですって?」

と聞きなおすと、

「この商品はよく考えて使ってください。

 一回分ですから」

と声を大きくして僕に注意をした。

「うっうん」

店員のその言葉に僕はうなずくと、

ガサッ

買った品物が入った袋を抱いて店外へと出て行き、

そのままウチへと向かっていった。



「ただいまぁ」

「おかえりなさい」

「広告のもの買ってきたよ」

ウチに帰ると早速ママに

今朝言われたものを買ってきたことを伝えると、

「へぇ、

 ねぇ、どんなもの?」

とママは僕に尋ねる。

「うっうん」

何故か僕はニコニコしながら袋からそれを見せると、

「ふーん、

 これが、あゆみちゃんを本物の女の子にしてくれるの…」

とママは感慨深げにそう言い、

「へー、こんなもんなんだ。

 でも、一回分って書いてあるわよ。

 楽しみね」

笑みを浮かべながら僕を見る。

「うっうん」

ママの笑みに僕は顔を赤くして俯いてしまうと、

「ところでもぅ一つのあれは?」

とママは生理用品のことを尋ねた。

「あっはいっ」

ママに一緒に買ってきた生理用品を渡し、

「これからお風呂入ってくる」

僕はそう言い残してバスルームへと向かうが、

「あとで覗くわね」

とママの声が後ろから響いた。


ザーザー…

浴槽にお湯が溜まる音が響き当たる。

「早く溜まらないかなぁ…」

買ってきた入浴剤を片手に

僕はお湯が溜まるのが待ちきれなさそうにするが、

「そうだ、服を脱がなくっちゃ、

 女の子になったらこの制服を着ることはなくなるな…」

クスリと小さく笑いながら僕は制服を脱ぎ、

そして裸になると、

浴室の洗い場に座って説明書を見直した。

作っているところは黒蛇堂製薬と言う会社らしい。

男の子を女の子にする入浴剤なんて、

ノーベル賞モノだと思うけど、

でも、そんなことは何処にも書いていない。

「ふーん、

 すごいことだと思うんだけどなぁ…

 実は知らないのは僕だけで、

 世間では当たり前のことなのかな?」

説明書に目を通しながら僕はそう呟く、

さて、この入浴剤、

湯に溶かすとどうやら真っ白になるらしい。

そして、浸かってる間に変身。

一度変身してしまうと元には戻れない。

と注意書きとして書いてある。

また、女性に変身する場合は陰部が詰まることがあるらしい。

この部分の説明を読んだ途端僕は笑ってしまった。

さらに、胸はその人に合わせたバストになって

異常な大きさにはならないらしいとも…

そう言えば店員が言っていたっけ、

この説明書を前に買った人はお店に落として行ったらしいって…

うまくその人は使えたのかなぁ…

と僕はその人のことを思っているウチに浴槽に湯が溜まる。

「よしっ」

溜まったお湯を見ながら早速入浴剤湯に入れはじめると、

バタバタ足音が聞こえ、

「どうなった?

 つるつるになるだけ?」

とママが様子を見に来た。

どうやら本気で性転換することは信じていないようである。

「これから、はいるとこ」

そんなママに僕はそう返事をしながら湯に足をつけた。

チャポン!

まるで白い絵の具を溶かしたような真っ白なお湯。

腰まで浸かったところで

クスッ

つい笑ってしまう。

「もー、

 もったいぶらないで早く入りなさいよ」

そんな僕を見てとママが急かすと、

「はーぃ」

そう返事をしながら僕は肩まで浸かった。

お湯の中で腕をなぜたりしてみると、

確かにつるつるしてくる。

「ふーん…」

そう思いながらふと下を見ると、

スゥー

お湯の表面に僕の胸が持ち上がってきた。

「え?」

上がってきた胸を撫でてみると

いつの間にか乳首が大きくなっている。

「うそっ」

大きくなっている乳首にドキドキしながら

今度は膝から太腿をこすり股間に手を伸ばしてみると、

ん?

ない。

さっきまでオチンチンがあったハズの場所には

一直線に伸びるラインがあるだけである。

クニッ…

そのラインを指で押しながら左右に押し分けてみると、

ジワッ

僕のお股にお湯の染み渡る感触がし始め、

「うっ」

思わず僕の口から声が漏れる。

クニッ

クニッ

お湯を感じながらも僕の指は動き、

そして、ラインの奥深くに小さな窪みと、

その上に付いているお肉の突起が指に触れた。

「あっ

 これってクリトリスに

 膣の穴だ…
 
 僕…本当に女の子になって居るんだ」

クニクニ

クニクニ

いつの間にか細くなっている指を動かし、

ラインの中をまさぐっているウチに、

トクン

トクン

僕は次第に感じ始め、

キュッ

乳首が硬くなってきた。

「うっ

 くっ
 
 うふっ」

お湯の中で固くなった乳首を抓り、

そして、ラインの中をクリトリスをいじり始めていると、

「あゆみちゃん。

 さっきからなにをしているの」

とママの声が響いた。

「ヒッ!」

その声に僕は思わず飛び上がると、

「そろそろ上がったら、

 のぼせちゃうでしょう」

ママは呆れながら僕を見ていた。

「あっ、

 うっうん」

ママのその声に僕はお湯から上がろうとすると、

コツン!

何かが僕の脚に当たった。

「なにかな?」

そう思いながらにごった湯の中で手を動かして探すと、

クニャッ…

弾力性を失い、へたってしまっている肉の固まりらしきものが指に当たり、

そして、それを持ち上げてみると、

それは間違いなくお風呂に入るまで僕のお股にあったオチンチンだった。

「まっママ…」

ママを呼びながらそのオチンチンを見せると、

「うそっ

 ほっ本当だったの」

とママは驚き座り込んでしまった。

「うふっ

 ねぇみて、
 
 ママ…
 
 僕、女の子になっちゃた」

そんなママを見ながら僕は徐に立ち上がると、

プルンッ!

恥ずかしげに膨らんでいるオッパイと、

そしてお股で口を閉じているオマンコをママに見せ、

僕は微笑んだ

「あゆみちゃん…

 本当に女の子になったのね」

僕に向かってママはそう言うと、

「あっ」

何かに気づいた僕はもう一回浸かり直し、

さらにザブンと頭のてっぺんまで湯の中に潜った。

そして、

「ぷはぁ」

顔を上げてみると

顔つきもちょっと変わったようだ。

ほっそりとした顎周りを触っていると、

「おめでとう、あゆみちゃん。

 ママは本当の女の子のママになったのね」

とうれしそうに僕を見る。

「うんっ

 あたしも本当の”あゆみ”になれたのね」

そんなママに向かってあたしはそう言うと、

「さぁ、

 お風呂から出なさい。

 お祝いをしなくっちゃね」

あたしに向かってママはそう言ってくれた。

今日は女の子・あゆみの誕生日。



おわり