風祭文庫・異性変身の館






「悪魔のチョコ」


作・風祭玲

Vol.579





「ふっふっふっ」

グツグツグツ…

2月13日…バレンタインデー前日の夜、

真っ赤に煮えたぎる壷を前にして

黒装束に身を固めた1人の少女が笑みを浮かべている。

「明日は待ちに待ったバレンタインデー…

 くっくっくっ

 今年こそは…

 今年こそは…

 高塚健一っ

 お前のハートを鷲づかみにしてやるじゃい!!」

燃え上がるようなオーラを吹き上げる少女は

そう叫びながら、

パラパラ…

手にしていた正体不明の物体を壷の中へと追加していく、

そして、一瞬の間を置いて、

カッ!!

壷の中より閃光が走り、

ボムッ!!

鈍い音を響かせながら小さなキノコ雲が沸き起こると、

微かに少女の顔を覆い尽くした。

クンクン…

「うむっ

 微かに香るこのアーモンド臭…

 この文献に書かれているのと同じだわ…

 ククク…

 出来た!

 ついに究極のホレ薬の生成に成功したんだわ」

壷から漂う匂いを幾度もかぎながら少女は万歳三唱をすると、

「あっもぅ、こんな時間?

 さー急いで、

 仕上げなくっちゃ」

壁に掛かる時計をチラリと見た後、

少女は腕をまくった。




チュンチュン!!

キュッ!

「よしっ

 完璧だわ…」

朝日が差し込む窓を背にセーラー服に身を包んだ少女が振り返ると、

彼女の机の上には綺麗にラッピングされた小箱が置かれていた。

「くくくっ

 究極のほれ薬・トランスソウルマイシン…

 一度体内に入ればたちまち脳や中枢神経を侵し、

 目の前にいる人物に心の底から心酔…じゃなかった、

 愛してしまう言う、独裁者愛用…

 ちがう!、

 女の子にとって夢の秘薬。

 それが今、この私の手元に!!

 あぁ、なんと言う幸福なんでしょう。

 さっ、早く愛しの彼をわたくしの下僕…

 じゃなかった…恋人にしてしまいましょう」

小箱を手にクルクルと回りながら少女はわが世の春を謳歌していると、

ガチャッ!

「おーぃ、春子っ

 何時まで寝ているんだよ」

の声とともに学生服姿の男子がドアから顔を出した。

「げっ兄貴っ」

「はぁ?

 何踊っているんだ?

 お前?」

「うっうるさいっ

 乙女の部屋をドアもノックせずに開ける奴があるか!」

そう、顔を出したのは少女・春子より3つ年上の兄・篤だった。

「ぬわにが、乙女の部屋だ、

 どうせまた変なモノ造っていたんだろう?」

英文で書かれている小難しい科学系の文献から怪しげなオカルト系の文献まで

ズラリと揃っている妹の部屋をぐるりと見回しながら

嫌味たっぷりに篤は言うと、

「私がなにをを作ろうと、

 兄貴には関係ないだろう?」

と春子は言い返す。

すると、

「何だそれは?」

春子の机の上に置かれているこげ茶色の物体に気が付き、

そして近づいていくと、

「へぇぇ…

 手作りのチョコか…

 お前もいっぱしの女の子なんだぁ」

と篤はしみじみしながら妹見た。

「どっどうでもいいだろう」

そんな兄の視線に春子は顔を真っ赤にしながら

持っていた包みを手で隠い隠した。

「クスッ!」

「なっ何がおかしいいっ」

「いや、春子にもチョコを渡したいと思っている奴が居たんだなぁ…

 って思うとな…あはは」

「しっ失礼だろうがっ」

「あははは…」

「笑うなっ」

顔から火を噴出すかと思うくらいに真っ赤にして春子は怒鳴り返した。

すると、

「さて、その手作りのチョコの味はどーかなぁ?」

と言いつつ篤は

ひょぃっ

机の上のチョコを拾い上げると、

何もためらわずに口へと運ぶ。

「あっ!!」

それを見た春子は思わず声をあげるが、

「ふん、ふん、ふん、

 うーん、

 お前が作った割にはまともな味だな…」

チョコの味について篤はそう論じると、

ごくりと飲み込む。

「いっ……」

篤がほれ薬入りのチョコを食べてしまったことに春子は驚き、

身を引こうとすると、

「ん?

 何やってんだ?

 お前…」

そんな妹の姿を篤は見る。

しかし、

「?」

一向に篤の様子が変わらないことに春子は疑問を持つと、

「あっ兄貴?」

と恐る恐る声を掛けた。

しかし、

「なんだよっ」

探るように声を掛けて来た春子の姿を篤は厄介者のように言い、

そして、

「おーと、いけない、

 もぅこんな時間か…」

時計の針を見た途端、慌てて出て行こうとした。

すると、

「ちょっと待って!」

出て行こうとする篤に向かって春子が声を掛け、

ジッと篤の目を見つめる。

「なっなんだよっ」

春子のその行動に篤は驚くと、

「(ぼそ)…なんともないの?」

と小声で尋ねた。

「はぁ?」

その言葉に篤は聞き返すと、

「(ちっ失敗か…)」

何かを呟いた春子の表情から失望の色が滲み出だし、

「うっ…ううん、なんでもないわ

 これ、兄貴にあげるわ」

の声とともに春子は手にしていた包みを差し出した。

「はぁ?

 どういう風の吹き回しだ?」

包みを受け取りながら篤はその真意を確かめようとするが、

「(じろっ)別にいいでしょう?」

春子はキツイ視線で篤をにらみ付けるとそう言い放ち、

「さっ、

 出て行ってよっ

 もぅっ、あたし学校休むからねっ」

と言い出すと、篤を部屋から追い出してしまった。



それから約1時間後…

「ぬわにぃ!!!

 これはチョコではないか!」

「まっまぁな…」

篤が通っている高校に着いてから数分後、

カバンより出てきたチョコが見つかると、

まるで波紋のごとく教室内に動揺が広がって行った。

「なっなんということだ!!!

 あっあの…

 雪村がチョコを貰うだなんて…

 そんなっ

 そんなっ

 そんな理不尽なことがあるかぁぁ!!」

常に篤をライバル視していた木本大介が胸倉を掴み上げると、

「うせーっ!!」

その直後、

篤が放ったカウンターが大介に決まる。

「ちょっと、いい加減にしてよ

 まったく、朝っぱらから何騒いでいるのよ」

騒ぎ立てる男子達についにクラス委員の長谷川恵子が声をあげると、

「(はーぃ)委員長!!

 雪村君がご禁制のチョコを持ち込んでいまーす」

と男子の手が上がり篤のチョコ持込を報告した。

「うるせーっ

 何がご禁制だ!!」

その声に篤が反論すると、

「なによっ」

「あぁ、ほらっ、

 今日ってバレンタインだから…」

「あぁ、迷惑な話よね」

「ホントホント…

 うちの学校にはいい男いないしさ」

「ねーっ」

と女子達が話合い、その結論を言うかのように、

「はいはい、

 女の子から貰ったのがそんなにうれしいの?

 まっ

 とにかくそういうことは目立たないように処分してね」

と恵子は呆れながら指示をすると席に座りなおした。

「けっ

 ぬわにが処分してだよ」

恵子の言葉に篤は妹から貰ったチョコを奪い返そうとして、

「こらっ返せよ」

と大介らに言うが、

そのときにはチョコはすべて消え去っていた後だった。

「あぁ!!

 お前ら!!」

「いやーっ

 実に美味しかったです」

「はいっ

 ご禁制のものはクラス全員で分け合うのが規則ですから」

すっかり空になった包みを見せながら大介たちは悪びれずに言うと、

「この野郎!!」

それに怒った篤は大介に殴りかかろうとするが、

しかし、

「(グラッ)あっあれ?」

大きく振りかぶった篤が突然めまいを感じると、

そのまま大介に抱きついてしまった。

「おいっ

 なんだよっ

 男と抱き合う趣味はねーぞ」

篤の行動に大介は面倒くさそうに言うと、

「ヒッ!(びくっ)

 うっうるせー」

敏感に響き渡る体に戸惑いながら大介から離れる。

けど、

「(うっなっなんだ、この感覚は…)」

大介から離れても続く痺れるようなその感覚に戸惑っていると、

ズルッ!!

ややきつくなり始めたはずの制服に緩みが生じ、

また、髪もさっきと比べると明らかに伸び始めていた。

「なっなんだこれは」

ジワジワと広がる体の変化に篤は冷汗を流していると、

「おーぃ、

 チャイムは鳴っているんだ、

 ホームルーム始めるぞー」

の声とともに担任が教室に入ってきた。




続いて始まった1時間目…

「うっ…

 くっぅぅぅ…」

(はぁはぁ…)

篤は体を襲う異様な火照りに戸惑い、

そして、かみ殺しながらも荒い息をしていた。

「(まったく、どーなっているんだ、

  暑くてたまらねーよ…

  それに胸がさっきからチリチリっとしやがって…

  イテテ…

  なんだ、腫れているのか…)」

熱を持つ胸周りがかすかに腫れていることに篤は気づくと、

そっと揉んで見た。

すると、

ビクッ!!!

「(ひっ!)」

まるで電撃を受けたかのような快感が篤の体の中を走り、

それに驚いた篤は思わず飛び上がってしまった。

「ん?

 どーした?

 水上…」

突然飛び上がった篤に向かって教師が理由を尋ねると、

「あっいえ…

 何でもありません…」

と篤は答えるが、

しかしその声はいつもの篤の声ではなく、

絞り込んだ少女のような声が口から発せられた。

「なんだ?

 その声は…

 まるで女みたいだな」

その篤の声を聞いた教師が笑い飛ばすと、

「!!!」

篤はあわてて両手で口を塞ぎ、

ストンと座り込んでしまう。

「(どっどーなってんだ、

  おっ俺…)」

次々と襲い掛かってくるなぞの変化に篤は青ざめていると、

キーンコーン!!

授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。



「あーったく、

 マラソンだって?

 今日みたいな日の体育は勘弁してほしいよ」

「はぁ女子はいいねぇ…

 寒風梳きすさぶ体育じゃなくてさ…」

そんな文句をブツブツと言いながら

家庭科の授業を受ける女子と別れた男子は更衣室へと向かって行くが、

「………」

そんな男子達の列の最後部で

すっかりぶかぶかになってしまった制服を

幾度も引き戻しながら歩く篤の姿があった。

更衣室へと入った途端、

「キャッ!!」

男子更衣室内に少女の悲鳴が響き渡った。

「なっなんだ?

 今の声は?」

突然響いたその悲鳴に着替え中の男子の手が一斉に止まり、

そして、声が響いた方向へと全員の目が一斉に動いた。

すると、

「あっ

 いえっ」

そこには何かに驚いたような篤の姿があり、

また、胸の前で手を握り締めているポーズは少女を思わせていた。

「雪村、今の声ってお前か?」

「なっなんだよっ

 その女みたいなポーズは…」

「それ、やめろ!

 勃っちまうじゃないかよ」

篤の姿を見たクラスメイトから一斉に声が沸き起こるが、

「あっあっあっ…」

半裸のクラスメイトのその姿に篤は顔を真っ赤にしていた。

「なんだよ

 まるで女みたいな態度して、

 なんだ?

 オッパイでも膨らんだか?」

そんな篤の姿に業を煮やした大介が近寄ると、

問答無用とばかりに篤の胸を掴みあげる。

すると、

プニッ…

「!!!!!っ」

大介の手にあってはならない膨らみの感触が走り、

「んなぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」

それと同時に更衣室の中に大介と篤、

2人の悲鳴が響き渡った。



「ふむ…」

「うっ…あっあの…」

「ん?

 あぁ目が醒めたのね

 ここは保健室よ」

それから程なくした保健室…

意識を取り戻した篤が目を開けると、

彼の目に自分の体を診察をしている女性の養護教諭の姿が映った。

しかし、養護教諭は

「うーん…

 なんて言っていいのか…」

そう言いながら頭を抱えると、

「結論から言いますと、

 雪村君、

 あなた、女の子になっているますよ」

と篤に向かって告げた。

「はぁ?」

思いがけない言葉に篤の目が点になると、

「雪村君って男の人だったよねぇ…

 うーん、

 それなのになんで?

 そんなことってありえるのかしら?」

と養護教諭は首をかしげると、

「ちょちょと失礼します」

寝台から飛び起きた篤は慌てて股間を確かめた。

しかし、

「うそ…

 無くなっている…」

朝まであったはずの男のシンボルが股間から消え、

代わりに縦に開く溝の感触が篤の指に伝わってきた。

「そっそんな…」

プルプルと震える膨らんだ両胸の感触も同時に伝わってくると、

「おっ俺…

 ほっ本当に女になったのか?」

と声を絞り出すようにして呟いた。

「うん…

 詳しくは病院で検査をしてもらわないと判らないけど、

 でも、確かに女の子になっているよね」

篤のその言葉を受けて養護教諭は説明をする。

すると、

ドタタタタ!!!

駆け足の音が廊下に響き渡ると、

ガラッ!!!

「せっ先生!!

 大変です!!」

と言う声とともに学生服姿の男子生徒が駆け込んできた。

「こらっ、

 廊下は走らないの!」

飛び込んできた男子生徒に向かって養護教諭は怒鳴ると、

「ん?

 三島じゃないか、

 なっ何があったんだ?」

慌てて胸を隠しながら篤は飛び込んできた生徒が

自分のクラスメイトであることに気づき、

そして訳を尋ねる。

「あぁ…雪村か…

 大変だ、

 大木たちがお前と同じようになちまって

 大騒ぎになっているんだよ」

篤の質問にクラスメイトはそう返事をすると、

「ぬわにぃ!!!」

その説明に篤は驚くと、

大急ぎでクラスへと向かい、

そして、ドアを開けた途端。

「雪村っ

 これはどういうことだ!!!」

の悲鳴とともに

ブルン!!!

Dカップに膨らんだ胸を庇いながら大介が迫ってきた。

「うわっ!!」

その姿に篤が飛び上がると、

「ちょっと、雪村君っ

 これどういうことなのよっ

 なんで、三ツ沢君が女の子にならなくっちゃならないのよ」

「そうよっ、

 どうしてくれるのよ」

と今度は女子達が篤に迫ってくる。

「そっそんなこといわれても」

迫るクラスメイト達に次第に篤は追い詰められていくと、

「雪村、お前が持ってきたチョコを食べた奴がみんな女になっているんだよ、

 何とかしろよっ」

と声があがった。

「…俺が持ってきたチョコを食べた?」

その言葉を聞いた途端、

篤の脳裏に妹・春子の姿がよぎる。

そして、

「春子めぇぇぇぇ!!!」

ダッ!!

頭に血が上った篤は教室を飛び出し、

一直線に自宅へと向かっていく。

そして、

ドタタタタタタ!!!

「春子っ

 いるかぁぁぁ!!!」

の声とともに

グワラッ!!

関係者外立ち入り禁止の札が掛かる妹の部屋のドアを開けると、

「あっお兄ちゃん、ちょうどよかった。

 実は今朝あげたチョコに入っていたのはホレ薬じゃなくて…」

春子は厚手の本をめくりながらそう言いかけて篤を見ると、

「あら…

 やっぱり女の子になっちゃったのね…」

っとため息を漏らした。

「やっぱり、

 これはお前がしたことか」

プルンッ

胸を震わせながら篤が妹を掴みあげ、

「さっさと、男に戻せ!!」

と怒鳴ったとき、

「ん?」

机の上に朝食べたチョコが数個残っていることに気が付いた。

「チョコだ…

 一度食べて女になったんだから、

 もぅ一回食べれば男に戻れるはず」

チョコを見据えながら篤はそう断定すると、

ひょいっ

残っていたチョコを手にとる。

すると、

「あっ

 ダメ!!

 それは!!!」

それを見た春子の静止するが、

篤はそれを振り切り

パク!

ゴクリ!

と飲み込んでしまった。

「あぁ!!!」

その途端、春子の叫び声が響き、

「なっなんだよっ」

妹のその態度に篤は言い返した。

ところが、

「あっ(ドクン!)

 あはんっ

 あっ

 あぁぁ…

 かっ体が…

 熱い…」

いきなり篤の体に動悸が走ると、

異様に体が火照り始め、

それから逃れるように、

クチュッ!!

篤は自分の股間に手を入れ慰めはじめた。

「はぁ…

 やっぱりねぇ…」

「あっあぁ…

 いっいぃ…」

膨らんだ胸を掴みあげ、

また股間を激しくこすり始めた兄の姿に春子は頭を抱えると、

「あのねっお兄ちゃんっ

 そのチョコに入っていたのは男を女にする性転換の薬だったの…

 心を変えるトランスソウルと

 性を変えるトランスセクシャル

 ってページが隣同士だったので、間違えて造っちゃったのよ、

 って聞いてないか…

 あっでもね、

 ここにも書いているけど多重して服用すると、

 体はさらに女の子になり、

 それどころか心までも女の子になっちゃうんだけど…

 …はぁもぅ遅いみたいね…」

そう呟く春子の目の前では、

Cカップ以上に膨らんだ胸をもみ、

そして、妖美な色気を振りまきオナニーを篤の姿があった。


「あっいっいぃ…

 いやぁぁ…

 いっちゃう

 いっちゃうわぁ…

 あぁダメもぅ…

 あたし、とんじゃう!!!!」



その後、篤はどうなったかについてはあえて書かない、

ただ、風のうわさでは女子生徒として学校を卒業後、

その並外れた豊満な肉体を生かした仕事についているとの事である。



おわり