風祭文庫・異性変身の館






「選択」


作・風祭玲

Vol.520





「わちゃぁぁぁ…」

6月上旬、

返されてきた中間テストの答案用紙の惨状に俺は思わず頭を抱えた。

「なに落ち込んでいるんだよっ」

そんな俺の姿を見かねてか、親友の田中が

セーラ服のタイを揺らしながら声をかけてくる。

「なんだよっ」

答案用紙を隠すように片付けながら俺は言い返すと、

「ふ〜ん…

 45点か…これは厳しいね」

いつの間にか机の上から落ちてしまっていたのか、

田中は俺の答案を拾い上げると、

その点数に頷きながら論評をする。

「あっ

 この野郎!!」
 
バッ!!

それを見た俺は田中の持つ答案をひったくると、

「で、どうするんんだ?」

と田中は俺に聞いてきた。

「なっ何が…」

「何がって…

 男として生きていくのか、
 
 女として生きていくのか

 そろそろに決めなくっちゃならないんだろう?
 
 来月はお前の誕生日じゃないか」

丈が膝上しかないスカートに手を置きながら田中はそう言うと、

「そりゃぁ…

 そうだけど…」

「悩むことか?」

「あのなぁ…

 俺は慎重なんだよっ
 
 お前みたいにあっさりと”女になります”とか言って
 
 さっさと女になっちまうのとは違うんだよ」

呆れた視線で見る田中に向かって俺は怒鳴りかえした。

すると、

「そうか…

 うん」

急に田中は思案顔になり、

「いやぁ、

 俺もななぁ
 
 果たして女になってよかったか、
 
 考えているところなんだよ」

と言いながら頭を掻く。

「そーれみろっ

 何の考えもなく女になるからだ」

そんな田中を俺は軽蔑した視線で見ると、

「まぁ、

 決めたものはしょうがないし、
 
 それに、女と言うのもなかなかいいぞ、
 
 ムチムチの身体に、
 
 オッパイだって誰に気兼ねしなくても触れるし、
 
 きわどい水着を着ればプールサイドで女王様になれる。
 
 うんっそれは大きいねっ」

「おいっ

 お前…そんな基準で女にしたのか?」

「んあ?

 まぁそうだな…

 大体、人生なんて男で生きて行っても、
 
 女で生きて行ってもラストは同じだろう。
 
 それなら少しでも楽しいほうがいいじゃないか」

俺の机の上に腰掛け、

ムッチリとした太ももを俺に見せつけながら田中はそう結論づけると、

「そりゃ…そうだけど…」

俺は口篭る。

「それに

 女の子だと、

 ワリと集中して勉強ができるから、

 結構頭に入るよ」

と駄目押しの言葉を俺に言った。

「え?

 そうなの?」

田中のその言葉に俺は顔を上げると、

「へっへー」

得意満面な顔をしながら、

「ほれっ」

と言う言葉と共に俺の目の前に答案用紙を見せ付けた。

「なっ!!」

「どうだ」

それに記されている点数に俺は目を剥くと、

「まぁ、そう言うことだ、

 俺は女のほうが利点あると思うけどなぁ」

と駄目押しの言葉を吐いた。

「う〜〜〜ん…

 やっぱり女の方がいいのかなぁ…」
 
下校途中、俺は前を歩く女子達を見ながら唸りながら歩く、

再来月にやってくる18歳の誕生日…

その日をもって俺の体の”性”は固定される。

大人になる…

そう言ってしまえば簡単だけど、

でも、

男で生きていくか、

女で生きていくか、

まさに人生をかけた選択である。

もっとも、ほとんどの連中は無意識に

生まれたときの性のまま大人になっていくが、

でも、俺のようにその選択に足を止める奴もたまにいる。

「はぁ…

 全く…
 
 なんで、そんな選択が出来るようになっているんだろう」

ブツブツと文句を言いながら歩いていくと、

『取りあえず薬を飲んで、女になってみれば?
 
 女の生活が合わなければ男に戻ればいいし』

という田中の声が俺の頭をよぎった。

「薬か…」

そう、いまは有効になっている性転換のスイッチを入れる薬…

でも性転換は体に大きな負荷を与えるため、その使用は厳しく規制され、

入手は医者の処方箋が必要となっている。

「仕方がないなぁ…」

俺は文句を言いながら脚を病院へと向けた。



「ふむ…

 これがその薬か…」

夜…

俺は医者から処方された性転換薬を見ながら考え込んでいた。

そして、

「はぁ…

 まっ、イヤなら男に戻ればいいんだし、

 そこまで悩むことはないか…」

と考えをまとめると、

「えいっ」

と勢いを付け薬をひとのみした。

ゴクリ

薬特有の固形感が喉を通り胃の中に落ちていく、

「ふぅ…(飲んじゃった)

 さぁて、
 
 来るなら来いっ」

体の性転換時に起きるショックについて色々聞かされていた俺は、

反射的に身構えると、

ザワザワザワ…

薬によって体のスイッチが入ったのか、

俺の体中が逆毛立ち、

そしてその直後、

ドクン!!

「うぐっ!」

俺の身体の中を衝撃波のようなショックが走り抜けた。

「くぅぅ…

 効いたぁ…」

まるでK1選手にタコ殴りされたようなショックに

俺はのたうちながらも、必死で立ち上がると、

「あれ?

 視界が…」

そう立ち上がったはずなのに、

その視界がさっきまでは明らかに低く、

また、

サワッ

俺の肩に髪の毛が軽く掛かった。

「え?

 え?
 
 えぇ?」

驚きながら俺は自分の体を見ると、

タブダブになったパジャマ、

細くなった腕、

そして、胸から突き出す2つの膨らみ、

「うわっ

 マジで女になったのか」

それらを見ながら俺はキーの高い女の声を上げた。

「うひゃぁぁ…」

女体に変身してしまった自分の体を見つめつつ、

俺は驚いていると、

「あっ

 そうだ」

股間がどうなっているか気になった俺は思わず両手を股の間に這わせた。

すると、

ヌルッ!!

「ひゃうんっ」

あまりにもストレートに指を運んだためか、

俺の指先は股間で開く陰裂のなかに飛び込み、

敏感な部分を直撃してしまった。

「くはぁ…

 くぅぅぅ…かっ感じる…」

ガックリと膝を突きながら俺は股間から波打つように広がってくるその快感に耐えていた。

「くはぁ

 はぁ

 はぁはぁ
 
 はぁはぁ」

汗をびっしょりとかきながら俺は手を離そうとするが、

「はぁ

 あぁもっと…」

俺はその快感をさらに感じてみたい欲求に駆られ、

再び指を陰裂の中へと忍び込ませた。

ビクビクビクっ!!

「うぐっ

 くぅぅぅぅぅ!!」

指を動かす毎に襲ってくる快感に俺は身体を痙攣させ、

「くはぁ

 はぁはぁ
 
 はぁはぁ
 
 きっ気持いいよぉ」

涎を垂らしながらその快感に浸っていった。



「おっ、

 なんだよっ
 
 その格好」

「わっ悪いかよ」

翌朝、セーラー服姿で登校をした俺を見た途端

田中はイジワルそうに言いながら寄ってくる。

薬による異性体験が可能なこの年では、

生徒が突然異性装してくるのは当たり前のことなので

誰も気に留めないのだが、

しかし、田中は早速、俺にけちを付け始めた。

髪の毛はこーしろとか、

仕草はこーするんだとか、

とにかく煩い。

そして、一言、

「なぁ、一人エッチはもぅしたのか?」

と俺の耳元で囁いた。

「え?」

田中のその言葉に俺はギョッとすると、

「ふふっ

 女の楽しみと言ったら、無論エッチだろう?
 
 まぁ、男のときより感じるポイントはいっぱいあるから、
 
 十分に楽しめよ」

田中はそういい残して先に教室へと入っていた。



そして、その夜、

「あはっ」

「うくっ」

「いっ

 いい…」

クチョクチョクチョ

俺の一人エッチは段々とエスカレートし、

ギュッ

クリクリ

赤く腫れ上がっているクリトリスと

胸の乳首を弄り回しながら

「くぅぅ

 いぃ…
 
 いいよぉ
 
 気持いいよぉ」

と訴えていた。

俺はすっかり女の性感の虜なってしまい、

ついには毎晩の様に股間に指を入れるようになってしまっていった。

その結果…



「(がーん…)そんな…」

勉強を疎かにしてしまっていたツケは期末テストでしっかりと払わされ、

ガックリと肩を落とす俺に、

「まぁ、

 アレだけ、一人エッチに励めば仕方がないよなぁ…」

と田中は俺に声をかけてきた。

「しっ知っていたのか…」

「顔を見れば判る」

「テメェ…」

「相当気持良かったろう…」

「うっそれは…」

「ふふっ

 今日、俺の所に来いよ、

 お前の知らない世界に連れて行ってやるから…」

田中はそう言いながら俺の胸に手を這わせると、

「なっ」

ウィンクをしながら鞄よりあるモノを取り出すと俺に見せた。

それは…

ウィィン…

っと軽い音を立てて動く一本のバイブだった。

「それって…」

「ふふっ

 凄いでしょう、
 
 これでかわいがってあ・げ・る」

「え?」

バイブを見せられ俺は青ざめると、

ニヤリ

田中は笑みを浮かべた。



「まさか、

 俺を嵌めたのか?」

「いや、これからはめるんだよ

 これでね」



おわり