風祭文庫・乙女の館






★執筆300物語達成記念★
うる星やつら・オリジナルストーリー 第2弾

「蘇った妖怪」
(後編)



作・風祭玲


Vol.302





Seen11:蘇った奈落

ガボガボガボ!!

たちまち女溺泉に飲み込まれた温泉マークは

ナイスバディな女性教師へと変身していく。

「なっ…」

そして、それを間近に見たあたるたちは一斉に驚愕すると、

「先生!!」

と言いながら駆け寄っていった。

「さぁ授業をするわよ」

カッ

ハイヒールの音を響かせながらタイトなスーツに身を包んだ温泉マークがそう言うと、

「はいっ!!」

男子生徒達は一斉に席に着く、

しかし、あたるは席に着かずに温泉マークに駆け寄ると、

「先生ーぃ」

と叫びながら抱きつこうとした。

その途端、

ひゅんっ

湯気を上げるヤカンが飛んでくると、

クワン!!

っと温泉マークに激突した。

すると、目を回しながら倒れた温泉マークの姿は

シュン…

ナイスバディナ女教師からは瞬く間の元の中年教師へと戻った。

と同時に、

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

あたるの悲鳴が教室に響き渡った。

「異様な妖気がしたので駆けつけてみたら、

 なぜ、ココに四魂の玉が…」

肩で息をしながらサクラがそう呟くと、

『この気配…

 貴様…巫女かぁ…』

霊能者としてのサクラの気配を奈落が察すると、

ゴバァァァァァ

容器の中に収まったままの男溺泉の水を自分の体に取り込むと、

『ふはははは…

 これでも喰らえっ』

っとサクラめがけて男溺泉の水を差し向けた。

「危ないっ、サクラさん!!」

間一髪、超人的な運動力であたるがサクラを庇う、

しかし、

「きゃぁぁぁ!!」

たまたまその軸線上にいた女子生徒達が次々と男溺泉の水を被ると

男子生徒へと変身していってしまった。

「こっこれは…」

サクラに抱きつきながらあたるが男子生徒になってしまった

女子生徒達を見ながら驚愕するが、

しかし、

「えぇぃ、どさくさに紛れて何をする」

ゴキッ

庇ったままサクラに抱きついて離れないあたるの頭をサクラが殴ると、

「ダーリンっ!!、こっちにくるっちゃ!!」

ラムの手が伸びてあたるをサクラから引き離した途端、

ドババババババババ!!

「うぎゃぁぁぁぁ」

お仕置きの電撃があたるを襲った。

ところが、

バシャッ!!

奈落が放った男溺泉の水が今度はしのぶに迫る。

「きゃぁぁぁぁ!!」

「しのぶ、こっちだっ」

悲鳴を上げるしのぶの手を竜之介が引くと水は誰も居ない床に広がった。

「竜之介君…ありがとう」

「なぁに、礼を言うほどのものではねぇよ」

礼を言うしのぶに竜之介はそう素っ気無く返事をすると、

ざっ、

奈落を見据え、

ボキボキ

腕の骨を鳴らしながら、

「てめえ、さっきから見ていれば好き放題しやがって…覚悟しな」

と啖呵を切る。

すると、

『ほう面白い…

 人間のお前がこの私を倒すだとぉ?』

奈落はにやけながらそう告げた途端、

「でぃあぁぁぁぁぁ」

竜之介が飛び上がると、

奈落に蹴りを入れようとした。

すると、

「竜ちゃん危ない!!」

あたるが竜之介に抱きつくと、

ずだぁぁん!!

とそのまま教室の隅へと転がっていった。

「めてぇっなにしやがる!!」

「そんな折角助けてあげたのにぃ」

食って掛かってきた竜之介にそうあたるが言うと、

「あれに飛び込んでしまったら、

 間違いなく男にされてしまいます」

と面堂が後ろから告げた。

『ふふふふ…

 どうした、私に挑むのではないのか?』

余裕たっぷりに奈落がそう言うと、

「くっそう…」

奈落を見据えながら竜之介は臍を噛む。

とそのとき…

ザザザザザザ…

どこからとも無く潮水が教室に入ってくると、

ドドドドドドドドドドド!!!

廊下のかなたから海鳴りの音が迫ってきた。

そして、

ジャンジャンジャン!!

津軽三味線の音と共に

ドごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

大津波が押し寄せてくると、

「りゅうのすけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

大津波に乗りながら竜之介のオヤジが教室に乱入してきた。

どばぁぁぁぁぁぁぁぁん

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

たちまち、押し寄せてきた大津波に2年4組の生徒達はみな押し流されていく、

そして、

津波が去った後、

「何をしているのだ、竜之介っ

 貴様っ

 折角男になれるチャンスを無駄にするつもりなのか?

 それでも男かぁぁぁぁぁ!!」

と打ち寄せる波をバックにオヤジは吼える。

その途端、

「失せろ!!」

竜之介の右ストレートがオヤジの横っ面を見事捕らえると、

竜之介のオヤジは見事吹き飛んでいくと、

奈落の中へと飛び込んでいった。

ガボガボガボ!!

女溺泉の水に触れたオヤジは瞬く間にスレンダーな美人に変身していく、

「なんと…」

「そんな…」

その様子を見た面堂が、

「と、とにかく、ココは一端、逃げるんだ!!」

と叫ぶと、

「うわぁぁぁぁぁぁ」

残っていた校舎内の生徒は一斉に逃げ出していく、

「そうか、あれは…妖怪・奈落か

 さては四魂の玉で蘇ったな」

逃げる生徒達に混じってサクラは2年4組に出現した妖怪が、

500年前、大暴れした大妖怪奈落であることに気づくと、

そのまま生徒達の流れから別れると何処換え消えていった。



Seen12:友引高校封鎖

「なっなんだ?」

「おっおいっ」

ゴワァァァァァァァ!!

キュラキュラキュラ!!

校庭に逃げ出した生徒達が真っ先に目撃したのは、

面堂家私設軍・戦車隊の砲列だった。

ババババババババ

そして、上空には武装へりが舞い、

友引高校は完全に封鎖されていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

キュラキュラキュラ…

キャタピラの音を響かせながら戦車群は一斉に友引高校校舎に狙いを定める。

『ほぅ…

 私が眠っている間にすっかり変わってしまったものだなぁ』

日が落ち、一斉に灯されたサーチライトが照らしだす教室の中より

すっかり風景の変わった周囲の様子を眺めつつ奈落がそう呟くと、

『では、ご挨拶代わりに…』

ザザザザザ…

男女両溺泉の水を従えて奈落が校舎外に出ると、

『ふははははは』

と言う笑い声をと共に時計塔と同じ高さの巨人に変化した。

『若っ!!

 ターゲットが表に出てきました。

 砲撃許可を!!』

と仮設司令部の終太郎の元に許可を請う無線が入る。

「よしっ、全軍砲撃開始!!」

面堂のその一言で、

一斉に奈落に向けて砲撃が開始された。

『なっ、なんだこれは?!』

展開した面堂家戦車隊から激しい砲撃によって

奈落は一歩も踏み出すことが出来ない。

しかし、

『おのれ、人間ごときが…

 これでも喰らえ』

っと奈落が叫ぶと、

バシャッ

バシャッ

足下に迫る戦車を次々と女溺泉の水が飲み込んで行った。

その途端、

「きゃぁぁぁぁぁ!!

 いやぁぁぁぁ!!」

女子校生やバニーガール、

果ては看護婦さんやバレリーナなどに変身してしまった隊員達が

戦車から飛び出してくると一斉に逃げ出してきた。

「くっそう」

その様子に面堂はマイクを片手に悔しがると、

バシャッ!!

面堂の目の前に女溺泉の水が迫っていた。

『ははははは…

 愉快だ、実に愉快だ』

女性にされ逃げまどう隊員達を眺めながら奈落は高笑いをしていた。



Seen13:それぞれの人たち。

『ここで交通情報をお知らせします。

 現在、友引町、友引高校周辺では

 面堂家私設軍の軍事行動による道路封鎖がされています。

 その為、首都高速・中央環状新宿線、

 環状七号、八号並びに川越街道、新青梅街道、甲州街道にて渋滞が発生しています…』

とアナウンサーが告げるニュースを見ながら、

「凄いことになっているね、お姉ちゃん」

と日暮翔太が言うと、

「じゃぁママ、行ってくるね」

と日暮かごめは母親にそう言うとパンパンに膨れあがったリュックを担いで、

骨食いの井戸へと向かっていった。

「まったく、相変わらず忙しいヤツじゃな」

その姿を見ながら祖父がそう呟くと、

「あっ、お姉ちゃん

 イヌの兄ちゃんによろしくっていっといてね」

とかごめの後を追いながら翔太が声を上げた。

その頃…

「準備はいいかな、早乙女君?」

「あぁ、これも武道家の努めっ」

友引高校を見下ろす高台で天道早雲と早乙女幻馬が

お互いに気合いを入れながら頷き合うと、

「いざ、推参!!」

「うりゃりゃ!!」

とかけ声をあげながら一気に下ってきた。

そして、

街をすり抜け友引高校に迫ったとき、

「あぁちょっとちょっと!!!」

突然、警備員に呼び止められ、

「ここから先は一般の人は立入禁止だからね」

とやんわりと注意をされると、

「だって、天道君」

そう言いながら幻馬が早雲に話しかけると、

「仕方がないね、

 帰ろうか?」

と相づちを打ちながら早雲は幻馬の肩を叩くと、

意気揚々と帰途についた。



Seen14:再び友引高校

バババババババ…

『くっくっくっ

 さぁどうする?

 人間共よ』

回りの雰囲気に慣れすっかり余裕が出来た奈落は

周囲を警戒する武装へりを牽制しつつそう呟く。

「それにしても…

 これほどの機械化部隊が手も足も出ないなんて

 面堂のトコもあまり大したことはないな」

とあたるが奈落を遠巻きに取り囲んだまま、

膠着状態に陥っている部隊を眺めながらそう言うと、

「ほぉ…言ったな…諸星っ」

と言う声と共に

ツツツツ…

トゥシューズの脚捌きも軽やかに

バレリーナ姿の面堂があたるの前に進み出てきた。

「なっ面堂、なんだ、その格好は!!」

面堂の様子にあたるが驚くと、

「無念…」

面堂はそう一言言うと涙を流す。

「どうしよう、あたる君、

 頼みの面堂君が負けたとなると、

 どうすれば…」

しのぶがそうあたるに縋りながら言うと、

ムッ!!

ラムはすかさず不機嫌な顔をした。

すると、

「ふっふっふっ、

 ご安心ください。

 この事態をただ手をこまねいて傍観している面堂家ではありません。」

とバレエを踊りながら面堂はインカムを頭に付けると

「汎用人型決戦兵器・めぞんげりおん零号機…発進!!」

っと怒鳴った。

すると、

『ちぃ〜っ』

少女の声が地下から響き渡るなり、

ごんごんごん

校庭の一部が見る見る迫り上がると、

ガコン!!

巨大な蓋が2分割にされて開いた。

そして、

ガシャッ!!

下から2本のレールが15mほど空に向かって延びると、

程なくして、

ガガガガガガガガガ!!

大音響と共に黒い影がしたから飛び出すと、

ガコン!!

っと制止した。

「おぉ!!!」

その姿に全員は驚愕した。

「ふっ、どうだ?

 面堂家・玩具事業部がその技術の粋を集めて建造した、

 汎用人型決戦兵器・めぞんげりおん。

 その試作機っ!!」

と面堂は胸を張り声を大にして言う。

「ほぉ…

 面堂のトコにしちゃぁ

 なかなか結構可愛いじゃないか」

零号機を見上げながらパーマがそう言うと、

「まぁな…

 ただ、着ているスーツのデザインがいまいちだな

 もぅ少しましなデザイナーはおらんのか?」

とメガネをかけ直しながら

メガネが品定めをすかのようにじっくりと多角的に渡って零号機を検分する。



Seen15:秘密兵器登場

「ようしっ

 零号機よ、

 わが面堂家の誇りに掛けてあの妖怪を成敗するのだ!!」

と面堂が指示を出すと、

『ちぃ〜っ』

ズシン!!

カタパルトから降り立った零号機はゆっくりと奈落めがけて歩いていく、

『ほぉ…

 おかしなモノが出てきたな…

 人形か?』

自分に近づいてくる美少女ロボットに奈落は感心したような表情をすると、

『ふっふっ』

不敵な笑みを浮かべながら見据えた。

ズシン!

ズシン!

時計塔校舎をバックに控え両者がにらみ合う、

ゴクリ…

その光景に全員が溜飲を下げたとき、

「大変!!

 ダーリン…テンちゃんが居ないっちゃ!!」

とラムが声を上げた。

「なに?」

ラムの声にあたるが聞き返すと、

「おいっ、

 ジャリテンならあそこに居るぞ!!」

と一人が声を上げて指をさした。

「なっ!!」

なんとテンは奈落の頭の上で目を回したまま引っかかっていた。

「逃げ遅れたのか?」

「テンちゃん!!」

テンを見つけたラムがすぐに飛び上がっていくと、

奈落の方へと向かっていく。

「うわっ、バカ!!

 ラムっ戻れ!!」

駆け出しながらあたるはそう叫ぶと、

『なんだ?、お前は…』

奈落はラムを睨み付けると、

シャシャシャ!!!

ラムに狙いを定めて溺泉水が襲いかかってきた。

「ちゃっ」

「ちゃっ」

「ちゃぁぁぁぁ」

バリバリバリ

ラムは奈落が繰り出す溺泉の水をくぐり抜け、

または電撃で蒸発させながら次第に奈落へ接近していく。

「うわぁぁぁ」

そして、その様子をあたるはハラハラしながら見ていた。

すると、

バシャッ

ラムの真正面に溺泉の水が迫ってきた。

「ちゃぁぁぁぁぁ!!」

「ラム!!」

あたるは思わず目を瞑ってしまったが、

サッ

零号機の手がラムの目の前に差し出されると溺泉の水を防いだ。

「あっありがとうだっちゃ…」

『ちぃ〜っ』

ラムを眺めながら初号機が大きく頷くと、

バォン!!

バババババババ!!

バイクに跨ったサクラが友引高校の校庭の乗り付けるなり、

「諸星っ、鉄砕牙だっ、

 これで、奈落を切れ!!」

と怒鳴りながらあたるに鞘に収まった一本の刀を放り投げた。

「サクラさんっ」

ヒュンっ!!

サクラが放り投げた刀を受け取ったあたるは一瞬のうちにサクラの元に駆け寄ると、

「サクラさんっ

 そんなに俺のことを…」

と言いながら迫った。

「えぇい

 ごちゃごちゃ言ってないで

 さっさといかんかっ!!」

回りのことをお構いなしに迫ってくるあたるにサクラがキレると、

あたるの身体を思いっきり蹴り上げた。

「ダーリンったら…」

その光景を見たラムは思わず情け無い顔をした。

すると、

「あっそうだ、テンちゃん!!」

ラムはテンの事を思い出すと再び奈落に迫った。

『えぇいっこれでも喰らえ!!』

奈落は電撃攻撃を仕掛けてくるラムに苛立ちを覚えると、

再びラムにめがけて男溺泉の水を飛ばした。

「ちゃぁぁぁ!!!」

ラムは間一髪それをかわすと、

「ラムッ!!」

それを下で見ていたあたるが一気に鉄砕牙を引き抜いた。

すると、

シャッ!!

バシュン!!

あたるが引き抜いた鉄砕牙は鞘に収まっているときとは

比較にならないほどの大きさを気圧を周囲に放った。



Seen16:妖刀・鉄砕牙

「こっこれは…」

とても細長い鞘に収まっていたとは思えないその姿にあたるが驚くと、

「ほぅ…人間が鉄砕牙を引き抜き、変化されるとは…

 やはり、諸星は並の人間ではないな…」

サクラは感心する。

そして、

「諸星っ、それで奈落を切れ!!

 その刀はかつて奈落を葬った刀だ」

そうサクラが叫ぶと、

『むっ、その刀は鉄砕牙!!

 おのれぇ〜っ』

あたるが引き抜いた鉄砕牙に気がついた奈落が、

ズシンズシン

と向かってきた。

「うわぁぁぁぁぁ…くっ来るなぁ!!」

あたるは鉄砕牙を幾度も振り下ろすが、

しかし、鉄砕牙からは何も出てこなかった。

「さっサクラさん!!

 なにも出て来ないじゃないですか」

あたるが思いっきり抗議をすると、

「えぇいっ、

 自分で考えんか!!」

サクラは怒鳴った。

「ダーリン!!」

あたるに迫っていく奈落をラムが追いかけると、

テンに構わず強力な電撃を浴びせた。

『ぐぁぁぁぁぁ!!

 おのれっ!!』

ラムの電撃に悲鳴を上げた奈落は今度はラムを捕まえようと腕をのばした。

「ラムっ!!」

その瞬間、

『おいっ、お前…』

あたるのあたまのなかに男の声が響いた。

「だれだ?」

『名乗るほどの者ではねぇよ、

 あいつブッた切るんだろう?

 俺が力を貸してやるよ』

と言うなり、

コォォォォォォォ!!!

あたるの周囲に気の渦が発生すると、

次第に奈落の妖気を巻き込み始めた。

「これは…」

それを見たサクラは思わず2・3歩近づく、

『これは…』

その光景に奈落は500年前、自分を襲ったあの出来事を思い出した。

『犬夜叉…貴様…』

その時、奈落は校庭で佇む犬夜叉の姿を見つけていた。

『よう、奈落ぅ

 てめぇ…まだ、くたばって無かったとはな、

 本当にしつけー奴だぜ、

 だがな、おめーもこれが最後だ』

そう犬夜叉が奈落に告げると、

『させるかぁぁぁぁぁ!!』

そう叫びながら、奈落が犬夜叉に飛びかかろうとすると、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

気合いを入れながらあたるは本能的に妖気の境目をかぎ分け、

そして、一気に鉄砕牙を振り下ろした。

ごわぁぁぁぁぁぁぁ…

『爆竜波かぁぁぁ』

奈落が放った妖気が巻き込まれそして跳ね返ってくると

溺泉水で作られた身体を蒸発させていく。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

奈落の断末魔のなか

その頭部で輝いていた四魂の玉が飛び出すと、

シャァァァァァ…

どこからか一本の矢が飛んでくるなり、

パキーン!!

四魂の玉を貫いた。

その途端、

四魂の玉は粉々に砕け散ると、

まるで氷が溶けて消え去るように夕闇の空に消えていった。



Seen17:勝利

「終わったのか?」

奈落の姿が消えた校庭で面堂達が呆然としていると、

「ダーリン!!」

声を上げながらラムがあたるに抱きついてくると、

「うわっ、ラムっ止めろ!!」

迷惑そうな声を上げながらあたるが逃げ出した。

すると、

コホンっ

小さく咳払いをしながら友引高校・校長が姿を見せた。

「校長?」

サクラが声を掛けると、

「終わったようですね?」

と校長はサクラに尋ねた。

「はい…」

サクラはそう返事をしながら夜空を見上げる。

すると校長はサクラ達に背を向けると、

「さて、問題は明日からの授業は何処でしましょうか?」

と爆竜波で木っ端みじんに吹き飛んでしまった校舎を眺めていた。



「なぁ、かごめっ

「なによっ」

「おめー、戻ってくるなり、

 いきなり俺をこっち連れてきてなにやってんだ?」

「あぁ、うん、ちょっと四魂の玉の気配がしたのでね」

「それ本当か?

「うん、でも、大丈夫、もぅ消えちゃったから」

「なんだそりゃぁ?」



おわり