風祭文庫・乙女の館






★執筆300物語達成記念★
うる星やつら・オリジナルストーリー 第2弾

「蘇った妖怪」
(前編)



作・風祭玲


Vol.301





Seen1:500年前・白霊山

「犬夜叉っ、いまです!!

 もはや奈落にはさほど力は残っていません!!」

「判ってら、弥勒!!」

ダッ!!

真紅の火鼠の衣を翻し、

鉄砕牙を片手に犬夜叉が一直線に奈落の懐へと飛び込んで行く。

「おのれっ犬夜叉!!」

そう叫びながら奈落は迫ってくる犬夜叉を追い払おうと攻撃をするが、

しかし、力を殆ど失ってしまった奈落には、

もはや犬夜叉を押し返す力など何処にもなかった。

それどころか、

奈落を守ってきた結界もかごめが放った破邪の矢によって無惨にうち砕かれ、

事実上奈落は無防備状態に陥っていた。

「奈落ぅっ!!

 これまで色々とやってくれたなっ

 これまでの借りまとめて返してやるぜ!!

 俺の前から失せやがれ!!!爆竜波!!!」

と犬夜叉は声を張り上げながら、鉄砕牙より爆竜波を放つと、

「うごわぁぁぁぁぁ…

 しっ死なぬぞ…

 私は決して死なぬぞぉ!!」

爆竜波によって肉体を四分五列に砕かれながらも、

奈落は自分の胸に手を当てると、

「はぁ!!」

と妖気を放った。

すると、

バシッ…

奈落の体内から四魂の玉が飛び出すと、

そのまま一気に吹き飛んで行った。

「くくく…

 私は敗れぬ…

 いつの日か…

 いつの日か新しい身体を得て私は復活する…」

飛んでいく四魂の玉を眺めながら奈落はそう呟くと、

爆竜波が渦巻く中で蒸発していった。



Seen2:500年後・友引町

ガガガガガガ!!!

ガクン!!

友引銀座通りにて建設中の面堂グルメタワーの工事現場で

基礎工事をしていたショベルカーが何かに当たった様な音を立てると、

バシュン!!

とエンジンルームから煙を噴き上げ止まってしまった。

「なんだ、なんだぁ?」

動かなくなったショベルカーより降りた作業員が覗き込むと、

ボゥ…

ショベルカーが開けた穴の底で

青紫色に輝く小さな玉が土の中から顔をのぞかせていた。

「どうした?」

「なんだこれぇ」

「う〜む…」

作業員達が次第に集まってくると玉を眺めながら皆一斉に首をかしげた。

そのうちの一人が、

「ヨイショ」

っと穴の中に入り、その玉を拾おうとすると、

パシッ!!

「イテぇ!!」

まるで、雷撃を受けたようなショックと共に彼の手を弾いてしまった。



「で、これか?」

「はいっ」

巫女装束姿のサクラが工事現場に現れたのは

それから小一時間が過ぎた頃だった。

「うーむ…」

ジロッ

払い串を片手にサクラがジッと玉を見据えると、

パリッ

パリッ

顔を覗かせている玉は小さな放電を繰り返す。

「ものすごい、妖気じゃ…

 とても普通の人間が触れるモノではないぞ」

とサクラが告げると、

「どっどうすれば」

現場監督がサクラに善後策を尋ねた。

「さて、どうするか…」

しばし、サクラが考え込むと、

「あっあのぅ…」

申し訳なさそうに現場監督が口をさしだし、

どぉぉん

と高級コシヒカリが詰められた10キロ入りの米袋を満載にしたトラックを指さしながら、

「少ないのですが…どうかお受け取りください」

とサクラに告げた。

すると、

「よろしい、この玉は私の方で預かろう」

と言うと、

スッ

白襦袢の懐から封印用の紙を取り出し、

そっと玉を包み込んだ。



Seen3:サクラの家

ゴワッ!!

「払ったまぁ…清ったまぁ…」

燃え上がる炎を前にして、

巫女装束姿のサクラが払い串を一心不乱に振り続ける。

やがて霊力が一杯にまで高まってきたのを感じ取ったサクラが

キッ!!

炎の向こう側にある祭壇の中央を睨み付けると、

「はっ!!」

と霊波動を放った。

すると、

パキィィィン!!

祭壇の正面に置かれている淡い紫色の輝きを放つ玉の周囲に黒いバリアが現れると、

サクラが放った霊波動をあっさりとはじき返してしまった。

「…なるほど…

 これは四魂の玉じゃな…」

悪霊大百科を紐解きながらサクラはそう断言する。

「四魂の玉?」

サクラの後ろに控えていた母親がそう尋ねると、

「うむっ、

 この記録によると500年ほど前、

 奈落という大妖怪が日本中を荒らし回り

 最後は白霊山に立てこもって抵抗したものの、

 奈落を追って都より下ってきた弥勒という名の高僧と

 その仏弟子・妖怪犬夜叉によって成敗されたとか、

 そして、

 その際に奈落の妖力の源である四魂の玉は滅したはずなのだが、

 しかし、それがこの友引町で眠っていたとはな…」

奈落成敗後、”弥勒が書いた”と言われる記録を眺めながら

サクラは軽い笑みを浮かべた。

「そうなると、サクラ一人では無理かのぅ…」

心配そうに母親はそう言うと、

「なぁに、これでもわしは霊能者の端くれっ、

 相手が四魂の玉であっても負けはせぬ。」

そう言いながらサクラは緋袴の紐を再度締め上げ、

祭壇の上で輝く四魂の玉を見据えた。

すると、

「あら、サクラや、時間は大丈夫なの?」

と時計を見た母親が声をあげた。

「なに?、そうか…もぅそんな時間か…」

サクラは時計を見て友引高校への出勤の時間が大幅に過ぎていることに気づくと

「…仕方がない、続きは後だ」

と言うなり部屋を後にした。



Seen4:謎の店in了子

お昼前…

「ごめんください…」

薄暗い店内に妖しげなアイテムが所狭しと陳列されている店先に

面堂了子の声が響き渡る。

すると、

ボゥ…

了子の声に反応するように店の奥に蝋燭の火が灯されると、

「これは了子お嬢様、

 よくぞいらっしゃいました。」

とまるで闇の中から湧き出るようにして、

蝋燭が灯る燭台を持ったこの店の店主が姿を現すと了子に挨拶をした。

「何か面白い物はありませんか?」

黒子を従え了子がそう尋ねると、

「さぁ…

 このところ了子さまに気に入って頂けそうな品物がなかなか入って来ませんで」

と申し訳なさそうに告げながら、

白髪に背中を丸めた姿の店主は了子を店の中を案内していく、

コツコツ

様々な不気味なアイテムを眺めながら了子が歩いていくと、

「あら?」

了子の視線はある品物に釘付けになった。

「これは?」

そう尋ねながら了子が液体が入った2つの容器に手を触れると、

「いっ、いけません、了子さまっ

 それに手を触れては…」

店主が血相を変えて了子の手を引くと、

「何でですの?

 そんなに慌てて」

と了子が理由をただした。

すると、

ハッ(しまった)

店主はそんな後悔に似たような表情をしたのち、

すぐに観念すると、

「そっその水はただの水ではありません、

 とある中国人の老婆より頼まれ、

 中国はバヤンカラ山脈の何処かにひっそりと存在する呪泉郷と言う

 伝説の修行場より取り寄せた水なんです。」

と説明すると、

「呪泉郷?、

 まぁなんて素敵なお名前なんでしょう」

”呪泉郷”と言うフレーズに了子が目を輝かせながら尋ねた。

「うっ」

了子の無言のプレッシャーを受け、

「呪泉郷とは…」

店主は呪泉郷の説明をクドクドとし始める。

そして、話が終わると、

「…なんて恐ろしい…

 では、この水は…」

「そうです、呪泉郷より汲んで参りました女溺泉と男溺泉の水です」

と説明した。

「女溺泉に男溺泉…

 溺れた男性を女性に…

 そしてこっちは女性を男性にしてしまうと言う呪い的泉…」

了子はそう呟くとまるで魅入られたように溺泉の水が入った2つの容器を眺めていた。

「ささ、了子さま…

 そのような危険な物ではなくもぅ少し安全な物をお見せいたしましょう」

店主はそう言って了子を案内しようとすると、

「え?」

つい今しがたまで彼の後ろにいた了子の姿は消え、

代わりに一人残っている黒子が

「了子さまは呪泉郷の水がたいそうお気に入りになりました。

 つきましてはお代金はいかほどで…」

と手にしたトランクを開けるとずらりと並んだ札束を店主に見せた。



Seen5:移動中

エッホエッホエッホ

了子を乗せた駕篭が友引町の街中を駆け抜けていく、

「女溺泉に男溺泉…

 まぁ…なんて恐ろしい…」

駕篭の中で了子はまるで愛おしそうに溺泉の水が入った2つの容器を頬ずりすると、

「そうだわ、このような恐ろしい物を独り占めにするのは勿体ない…

 諸星さまにもぜひお見せしなくては…」

と呟くと、

「もし…友引高校へ…」

と駕篭を担ぐ黒子に指示をした。



Seen6:テンvsトラジマ

「くおらぁ、トラジマ!!

 今日こそは勝負やぁ!!」

昼過ぎの青空にテンの叫び声が上がると、

キンッ

空の一角が光り輝くと、

ゴワァァァァァ!!

火焔が激流となって地表を焼き尽くす、

しかし、

「ニャン♪」

ヒョイ、

片目に眼帯を掛けたトラジマの猫はまるで火焔がどこから攻撃してくるのか

まるで判っているかのように寸前で避けると鼻歌を歌う、

「くっそぉ、なめくさりおってぇ」

ジタバタ

上空からトラジマの様子を双眼鏡で把握していたテンはしきりに歯ぎしりをすると、

「まけへんどぉ〜

 しかし、今日のわいには究極秘密兵器があるねん」

と言うなり、

ピリリリリ

と笛を吹いた。

その途端、

シュワッ!!

と言うかけ声と共に、

青空の彼方から灰色の身体に赤の模様が入った正義のヒーローが姿を現すと

テンの前に

フッ

っとその鍛え抜かれた身体を見せつけるようにして身体を構えた。

すかさずテンは正義のヒーローの肩にしがみつくと、

「いけぇ、トラジマを退治するのや!!」

と声を張り上げると、

ジュワッ!!

正義のヒーローは一気に全速力で地表にめがけて落下していった。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

猛烈な空気抵抗をもろに浴びながらテンは必死になって正義のヒーローにしがみつく、

グォォォォォ

見る見る地表が近づき

それに合わせてトラジマの姿が大きくなってくるのを見ながら、

「ふっふっふっ

 トラジマぁ、

 勝負やぁぁぁぁ」

テンの怒鳴り声が響くと、

ジュワッ

シュパッ!!

正義のヒーローは綺麗なV字ターンを決めた。

「えっ、

 うぎゃぁぁっぁぁぁ」

突如急上昇に転じた正義のヒーローの動きに付いていけず、

テンは振り落とされると、そのまま物理の法則に従って落下していく、

しかし、

「ニャン?」

テンの接近を察したトラジマは一本のバットを取り出すと、

すっ

っと右肩に左手を当てた後、間合いを置いて一気にフルスイングをした。

ゴキッ!!

トラジマのバットは見事落下してくるテンの顔面を直撃をすると、

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

テンはドップラー効果によって歪む叫び声を残しながら

トラジマの視界から消えていった。

『ふっ、3割4分か…』

バットを振り切ったトラジマはふとバットを眺めながらそう呟く、



Seen7:サクラの家inジャリテン

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ…」

昼下がりの道をテンは叫び声をあげながらすっ飛んでいくと、

そのまま、鳥居をくぐり抜け、

ドカン!!

テンはサクラの家へと突っ込んでしまった。

ガラガラガラ…

テンの直撃を受け祭壇は無惨に崩れ落ちていく、

そして、立ち上った埃がようやく収まった頃、

カラン!!

「くっそぉ…トラジマめぇ」

目を廻しながらテンが崩れた祭壇をかき分けながら起きあがると、

フラフラ

と外へと飛んでいった。

そのすぐ後…

「何事です?」

と叫びながら奥の部屋からサクラの母親が駆けつけてくると、

「こっこれは」

文字通り崩壊している祭壇を見て呆然とした。



Seen8:猫飯店

「なんじゃと…売れてしまったとな?」

猫飯店にコロンの声が響く、

『申し訳ありません、

 お得意さまがいたく気に入ってしまいまして』

申し訳なさそうに詫びる店主の声にコロンは

「まぁ…危険という物ではないのだが」

と受話器を片手にコロンが残念そうな顔をしていると、

「どうかしたあるか?、ひぃばぁちゃん」

出前から帰ってきた珊璞がコロンに尋ねた。

「あぁいや…」

珊璞の問いにコロンは適当な返事をすると

「(これで婿殿を釣ろうと思ったが失敗か)

 わざわざ知らせてくれてすまぬのぅ…」

と返事をすると受話器を置いた。

「それにしても、女溺泉に男溺泉の水などどうするつもりじゃ?」

と首を捻ると、

ズズズズズズズ…

っと店内でウーロン茶をすするコタツネコを眺めた。

そして、すぐ表を、

「くっそう、あと一歩だったんに…」

と呟きながらテンがフラフラ飛んでいた。

「あぁ、それにしてもムカツク…

 どないしたら、トラジマの奴をボコボコにできるんやろか?」

等と考えていると、

コロッ

テンの髪の毛の中から一個の玉が転がり落ちてきた、

「あれ?

 なんやろ、これ?」

キラッ

玉は日の光を受け薄紫色に輝く、

「綺麗やなぁ…

 そうや、サクラ先生に見せてやろう」

テンはそう呟いたとき、

ふっ!!

「ありがとうあるねぇ」

珊璞の声に送られてコタツネコが猫飯店から出てきた。

「おーぃ、コタツネコぉ」

コタツネコの姿を見つけたテンが声を掛けて近寄っていくと、

ふっ?

キセルに火をつけたコタツネコはテンを見た。

そして、

「なぁ、これきれいやろ?

 サクラ先生に見せようと思っているねん」

といいながらコタツネコに玉を見せる。

すると、

ビクン!!

コタツネコの表情が急に変わると、

バッ!!

テンから玉を奪うなり突然走り出してしまった。

「わわわわ…コタツネコ…

 お前何処に行くんや!!」

コタツネコにしがみつきながらテンは叫び声をあげる。

『くくく…

 妖気が…妖気が満ちていく…

 いよいよ私が目覚めるときが来た…』

四魂の玉の中に奈落の声が響く、



Seen9:友引高校

キーンコーン…

「…………」

友引高校2年4組では教壇に立つ温泉マークを生徒全員が睨み付けていた。

「…むわったく…」

「なにがかなしゅうて…」

「クラス全員が…」

「補習を受けにゃならんのだ」

クラス中に満ちあふれる怨嗟の雰囲気に、

「くおらぁ、

 貴様ら、なに文句を言っとるんだ!

 最初に言っただろうが!、

 授業を妨害したら無条件で補習をすると!」

そう温泉マークが怒鳴ると、

「なにを!!」

温泉マークのその一言がクラスの緊張感を更に増してしまった。

まさに一触即発、

と、そのとき、

ガタン!!

諸星あたるが立ち上がると、

「まぁまぁ、皆の衆…

 団体責任であることには代わりはないのだから、

 ここは大人しく補習を受けようではないか」

と提案をすると、

スチャッ!!

あたるの喉元に抜いた刀を突きつけながら、

「言うことは…それだけか諸星っ」

凄みを増しつつ面堂終太郎があたるに迫った。

そして、

「元はと言えば貴様のせいだろうが…」

と続けると、

バンッ!!

温泉マークは教卓を叩くなり、

「さらに補習の上に実力テストを追加して欲しいか!!」

と怒鳴った。

温泉マークの怒鳴り声に、

「ちっ、運のいいヤツ」

無念そうに終太郎が刀を鞘に収めようとすると、

ドォォォン!!

突然、教室の前のドアが吹き飛ぶと、

ドドドドドド

テンをしがみつかせながらコタツネコが教室に飛び込んできた。

「くおらっ、授業中だ!!」

すかさず温泉マークが乱入してきたコタツネコに食ってかかるが、

シュンッ

どぉぉぉん!!

温泉マークの身体はコタツネコの目にも見えない強烈な突き押しに吹き飛ばされた。

「おぉ!!」

パチパチパチ!!

その様子にクラス中から一斉に拍手喝采が巻き起こる。

すると、

キーン!!

コタツネコの身体から薄紫色の玉が飛び出すと、

コンコン!!

っと床の上を飛び跳ねながら転がっていった。

その途端、

ハッ

コタツネコはまるで憑き物が取れたような表情をすると、

のそっ

そのまま教室から出ていってしまった。

「どっどうしたっちゃ?」

コタツネコの後ろ姿を見ながらラムがテンに尋ねると、

「あのなぁ、ラムちゃん。

 コタツネコの奴なぁ…

 この玉を持った途端におかしくなったんや」

と言いながらテンは床に転がった玉を拾うとラムに手渡した。

「なんだっちゃ?」

玉を手にしたラムはそれを顔に近づけると首を傾げる。

すると、

「へぇぇ…

 綺麗な玉ねぇ…」

そう言いながらしのぶが近寄ってきた。

「さて、授業はこれで終わったようだし、帰るか」

完全に沈黙したままの温泉マークを見て

あたるが鞄を取り出そうとすると、

「きっ貴様等ぁ〜っ

 むわだ…授業は終わってはいないぞぉ」

身体を振るわせながら復活した温泉マークが立ち上がってきた。

「ちっ、しぶといヤツ…」

あたるたちは温泉マークを睨み付ける、

「せっ席につけぇ…」

フラフラになりながらも温泉マークが教壇に立ち、

「きっ教科書…46ページ」

遠のく意識を必死につなぎ止めながら温泉マークはそう言うと、

スルスルスルスル…

ドカン!!

今度は突然伸びてきた赤い絨毯が温泉マークを直撃した。

そして、無惨に絨毯の下敷きになった温泉マークを踏みつぶすようにして、

エッホエッホ

っと黒子が担ぐ駕篭が教室に入ってくると、

教卓の前にしずしずと降ろされた。



Seen10:友引高校in了子

「うわぁぁぁぁ、了子ちゃぁん!!」

ひょっとこのマークが入った駕篭を見るなり

あたるが飛びかかろうとすると、

「ダーリン!!!」

ラムの叫び声と共に

バリバリバリ!!

あたるの目の前に電撃が走る。

「おっと…」

そのラムの攻撃にあたるの足が止まった途端。

スチャッ

「妹に何の用だ?」

とあたるの喉元に当てられた面堂の刀が光る。

すると、

「お兄さまっお止めになって」

と言う声と共に、

スッ

駕篭の戸が開くと、

スタッ

面堂の妹・了子が駕篭の中から降り立った。

そして、

「諸星さまにお兄さま…」

と笑みを浮かべながら歩み寄ってくると、

「了子…何のようだ」

面堂はあたるを牽制しつつ刀を納めた。

すると了子は、

「実は…」

と言いながら、

コト…

手にした2つの容器をあたるの机の上に並べるようにして置き、

そして蓋を取った。

「水?」

全員がその中を覗き込むと一斉にそう言う。

「はいっ、

 でも、ただの水ではありません…

 中国の奥地にあると言われる呪泉郷の水ですわ」

と了子は説明する。

「呪泉郷って?」

ラムがあたるに尋ねると、

「呪泉郷とは……」

ラムの質問に黒子は店主より聞いた話を話し始める、

そして、話し終わると、

サササササ…

みな容器から一歩下がってしまった。

「そっそれは本当のことなのか?」

身構えながら終太郎が尋ねると、

「はいっ」

了子は笑みを浮かべながら容器に手を置く、

その様子を終太郎が見た途端、

「いっいかんっ

 了子!!

 それから手を離すんだ!!」

と叫び声をあげた。

「まぁお兄さまったら…

 そんなに驚かなくても…」

そう言いながら了子が柄杓で女溺泉の水を掬うと

パシャッ!!

っと終太郎に向けて掛けてしまった。

「うわっぷっ!!」

間一髪、終太郎は水を避けるが、

しかし、

ガシッ!!

あたるが終太郎を羽交い締めにしてすると、

「ささ、了子ちゃん、

 もぅ一回!!」

と催促をした。

「諸星っ貴様っ!!」

後ろを振り返りながら終太郎が怒鳴ると、

「まぁ…諸星さまったら…」

了子が笑いながら柄杓で女溺泉の水を掬おうとしたとき、

ふらり…

押しつぶされた温泉マークが立ち上がると、

「お前らぁ…

 全部没収だ!!」

と叫びながら、

了子が持ってきた呪泉郷の水とラムが手にした四魂の玉を取り上げてしまった。

そして、

「こんなもん!!」

と言いながら持ち去ろうとしたとき、

トプン!!

そのうちの女溺泉の水の中に四魂の玉が落ちてしまった。

すると、

『ふふふふふふふふ…

 ふははははははは…』

不気味な男の声が響き渡ると、

ゴボゴボゴボゴボ!!

突如、女溺泉の水が煮えたぎり出し、

ごばぁぁぁぁぁぁ!!

水が吹き上がると、

ズシン!!

四魂の玉を頭部に納め、身体が水で出来た妖怪・奈落がゆっくりと歩みだしてきた。

「ぬわんだ、こりゃぁ!!」

「逃げろ!!」

それを見た2年4組の生徒は一斉に逃げ出すが、

「こらぁ、貴様らぁ!!」

教卓にかじりついた温泉マークは逃げようとはせずに怒鳴り声を張り上げる。

「バカっ温泉っ、

 早く逃げろ!!」

あたるは怒鳴り声をあげると、

『ふふふふ…

 この水はいい妖力を持っているな…

 心地良いぞ!

 我は奈落…

 犬夜叉に破れて500年…

 この日が来るのを待っていたぞ!!』

と奈落は復活宣言をすると温泉マークを睨み付けた。

そして、

「ふっ手始めにまず貴様からだっ」

と奈落が言うと、

ザバァ!!

一瞬のうちに奈落の手から放たれた水が温泉マークを飲み込んだ。



つづく