風祭文庫・乙女の館






★執筆300物語達成記念★
うる星やつら・オリジナルストーリー

「ダーリンがうち?」
(後編)



作・風祭玲


Vol.299





Seen7:ラムのUFO

「もぅテンちゃんたら…

 こんなに大きいのを買っちゃって、

 うちの身体だったら操縦室に入れないっちゃよ!!」

UFOにたどり着いた”テン(ラム)”は文句を言いながら

マシンの設定画面を呼び出すと、

「えっと、

 ここがこうで…ここが…」

と入れ替わってしまった精神を元に戻す設定をし始めた。

そして、

「これでよしっと…

 あとはエネルギーをチャージして…

 え?

 そんなにかかるっちゃぁ!?」

表示パネルに示されたエネルギーチャージに必要な時間に

”テン(ラム)”は驚くと、

「仕方がないっちゃねぇ…」

と諦めながら起動スイッチを押した。

「これでよしと…

 あとは時間が来たらダーリンとテンちゃんと一緒に待てばいいちゃね」

額の汗を拭いながら”テン(ラム)”は一息つくと、

「あれ?」

メインコンソールの留守電インジケータが点滅していることに気づいた。

「誰からだっちゃ?」

ポチッ!!

そう呟きながら”テン(ラム)”がスイッチを入れると、

ブンっ

スクリーンに弁天の姿が大きく映し出され、

『よっラム…

 なんだよ、留守電かよ…

 まぁいいや、

 明日、おユキを誘って地球に行くからよ、

 久しぶりに茶でも飲もーぜ』

と告げた。

「えぇ!!、

 弁天が来るっちゃ?!

 しかもおユキちゃんと一緒にぃ?」

それを見た”テン(ラム)”は飛び上がると、

「ちゃぁぁぁぁ!!

 この電話、昨日掛かって来たっちゃ!!

 ってことは…

 こうしちゃいられないっちゃ、

 すぐにダーリンの所に行かなくっちゃ!!」

と大慌てでUFOを飛び出していった。



Seen8:友引高校・2年4組

キーンコーン…

温泉マークの授業中、

「あっあっあっ…」

電撃のダメージからいまだ回復をしない面堂を横目で見ながら、

「妙だとは思わないか…」

メガネがカクガリやパーマ達に声を掛けた。

「妙って何処が?」

カクガリの質問に、

「あたるを見ろ」

メガネがそう指摘をすると、

「ん?」

8つの目がじっとラムを観察しているあたるを一斉に見た。

「別におかしいところはないけど…」

あたるを眺めながらチビがそう言うと、

「ばーか、お前の目は節穴か?

 いいか、あたるがあんなにラムさんを意識しているということは

 どう言うことか判っているのか?」

そうメガネが指摘すると、

「つまり、あたるは覚悟を決めたという訳か?」

パーマがメガネがいわんとしていることを指摘する。

「覚悟って?」

「あのなぁ…あたるが覚悟を決めると言うことわだ、

 要するにラムちゃんと夫婦にことだよ」

なおも事態を飲み込めないチビにパーマがそう告げると、

「非常事態だ!!」

メガネがポツリと呟く、

「紳士協定第1条!!

 いついかなる場合でも、ラムさんとの距離は現状を維持する。

 ついにそれが破られた。

 認めんっ

 ずぇったいにそのようなことは認めるわけには行かない!!」

ブツブツとメガネがそう呟き続ける。

「おっおいメガネ…」

ふぉぉぉぉ〜っ

オーラが漂い始めたメガネのただならない様子に

思わずカクガリが声を掛けると、

「ラム親衛隊としてそのような動き、

 断じて認めるわけには行かない!!

 耳を貸せ!!」

メガネはパーマ達にそう告げると、

「いいか…」

とひそひそ話を始めだした。

そして、そんな教室に背を向けながら、

「お前等…いまは俺の授業なのだが…」

チョークを黒板に擦り潰しながら温泉マークが呟いていた。



「ったく、あたるのアホめぇ」

”ラム(あたる)”の一挙一動をハラハラしながら

”あたる(テン)”が観察をしていると、

PiPiPiPi

突然、胸の無線機がなり始めた。

「ん?、誰や?」

そう思いながら”あたる(テン)”が無線機のスイッチを入れると、

「こちらチャンネル・レイ…いまから…そっちに行く…」

と言うボソボソと囁く声が”あたる(テン)”の耳に入ってきた。

「この声って…レイ…?」

”あたる(テン)”がそう思うや否や、

ヌゥゥゥ

突如、巨大な影が2年4組の窓を覆うと、

ぶもぉぉぉぉぉ!!

窓一杯にトラウシに変身したレイが姿を見せた。

「んなっ!!」

「うわぁぁぁぁ!」

レイの登場に2年4組の中はたちまち大混乱に陥ったが、

しかし、レイは”ラム(あたる)”の姿を見つけた途端、

「らむ!!」

と挨拶をしてきた。

しかし、肝心の”ラム(あたる)”は

「どわぁぁぁぁぁぁぁ…

 (まずい…こういう場合、ラムはどうしていたっけ)」

逆にレイに圧倒されるとその場に立ちすくんでしまっていた。

すると、

ズドドドドドド、

ぐわらっ!!

地響きと共に教室のドアが開けられるや否や、

「ラムぅ…いまレイさんが来てるやろぉ!!」

と言う怒鳴り声と共にもの凄い形相のランが教室に乱入してきた。

「うわぁぁ、ランちゅわん!!」

ランの姿に”ラム(あたる)”は彼女の元に飛び込もうとすると、

「ちょっと来いッ、ラムっ」

たちまちランは”ラム(あたる)”の手を引くなり教室の外へと連れ出した。

そして、

ダァン!!

”ラム(あたる)”の顔の横に自分の手を打ち付けると、

「ラム、貴様…これは一体どういうことだ!!」

とランが迫った。

「え?」

ランの剣幕に”ラム(あたる)”は押されると、

「おんどれ、

 レイさんには手を出さないって言ったのに、

 なんで、レイさんを呼んだんだ?」

「いや、あの、その…」

”ラム(あたる)”は一方的に攻め立てるランに終始守勢に立たされるが、

「(うる)らっラムちゃんだけはあたしにウソをつかないって信じていたのに…」

ランは急にしおらしく振る舞うと、

「ラムちゃんのバカぁ!!」

と言い残して走り去ってしまった。

「なっなんなんだ?」

セーラー服をずらしながら”ラム(あたる)”が呆然と

走り去っていくランの後ろ姿を見送っていると、

ぶもぉぉぉぉぉ!!

「うわぁぁぁ、よせ」

「こらぁ!!」

教室の中では押し掛けてきたレイが

手当たり次第男子生徒の弁当を食べまくり始めた。

「とにかく、こっちをなんとかせにゃ」

教室の惨状に”ラム(あたる)”は頭を掻くと、

「こらぁ、ジャリテン!!

 あれ?」

と叫びながら”あたる(テン)”の姿を探したが、

しかし、

教室内の状況を遠巻きにして眺めているクラスメイト達の中に

”あたる(テン)”の姿はなくまたメガネ達の姿も消えていた。



Seen8:友引高校・2年4組・その2

「あんにゃろう…この事態の張本人のクセに何処に消えた?」

”ラム(あたる)は”あたる(テン)”が姿がないことに腹を立てると、

いまだ自己修復が終わっていない面堂の姿を見つけるなり、

「仕方がないな…」

と呟くと、

「おいっ終太郎…お願いがある…っちゃ」

と面堂に迫った。

その途端、

「ハイなんでしょう、ラムさん(キラっ)」

一瞬のうちに自己修復を終えた面堂が”ラム(あたる)”に用件を尋ねると、

「あっあのぅ…

 レイを…」

とレイを指さしながらそう言うと、

「ははははは…

 ご心配なくラムさん、

 この面堂終太郎にすべてお任せください。」

と面堂は”ラム(あたる)”に向かってそう言うなり、

シャッ!!

無線機のアンテナを伸ばすと、

「終太郎だ、

 大至急、友引高校まで握り飯1万個を持ってこい!」

と指示を出した。

そして、指示を出し終えると、

「さぁ、これで大丈夫ですよ」

と言いながら面堂が”ラム(あたる)”に報告しようとしたが、

「面堂!!後は任せた!!、ちゃっ!」

その言葉を残して”ラム(あたる)”は廊下を駆け出していった。

「らっラム…さん?」

呆然と見送る面堂に、

バリン!!

ブモォォォォ!!!

教室内の弁当を食い尽くし、

無人となった教室から腹を空かせたレイが飛び出してくると

目の前で立ちつくしている面堂に迫ってきた。

「うわぁぁぁぁぁ

 面堂邸面堂邸!!

 速攻で握り飯を!!!」

無線機にかじりつきながら迫ってくるレイから面堂が逃げ出す。

そのころ、2年4組の教室では、

「…授業を…続ける…」

すっかり忘れ去られた存在になった温泉マークが

そう呟きながら涙をこぼしていた。



Seen9:時計塔機械室

ゴゴゴゴゴゴゴ…

「こらぁ!!、

 いたいけな幼児をこのようなところに監禁しおって、

 ただで済むと思ってるんか!!」

時計塔の機械室に”あたる(テン)”の声が響き渡る。

その途端、

カッ!!

ライトの灯りが灯されると、

両手を枷に填められた”あたる(テン)”の姿が浮かび上がった。

「なんや?」

”あたる(テン)”はまぶしそうに目を細めると、

ザッ!!

そのライトの前に4人の人物が立った。

そして、

「これより、人民法廷を開廷する…」

厳守そうなメガネの声が響き渡ると、

スゥ…

ライトの光が減光され、

メガネがパーマ・カクガリ・チビ3人を従えて姿を現した。

「いきなりなにすんねん?」

その姿を見た”あたる(テン)”が抗議すると、

法衣服に身を包んだメガネが一歩前に踏み出し、

厳かに書面を広げると、

「判決を言い渡す。

 被告人・諸星あたる!!」

と読み上げた。

「なっなんや」

”あたる(テン)”は唖然とメガネを見ていると、

メガネは

「…我々との紳士協定を一方的に破棄し、

 ラムさんとの仲を大胆にも進めようとする行い、

 言語道断なり!!

 よって、極刑を持って処罰するっ!!」

と読み上げた。

「だから、なんなんや!!」

メガネの言葉に”あたる(テン)”が再度抗議するが、

メガネはあたるの抗議には一切耳を貸さず、

パチン!!

「刑の執行人前へ…」

彼の指が鳴ると、

ジャラっ!!

闇の中からチェーンを片手に屈強な男が姿を現した。

「ぐへへへへへ、

 さぁひと暴れしてやろうか…」

男は悦びに満ちた表情で”あたる(テン)”を見る。

「ぼっ暴力反対や…!!」

怯えながらそう訴える”あたる(テン)”の顔に恐怖感がにじみ出ると、

パァァァァァァ!!

バリバリバリ!!

バァァァァン!!

電撃が機械室のドアが電撃で破壊されると、

「ジャリテン!!

 何を暢気に遊んでいる!!

 さっさとレイをなんとかせんか!!」

そう怒鳴りながら”ラム(あたる)”が飛び込んできた。

そして、その後を、

「らぁぁぁぁむぅぅぅ」

ずがぁん!!

トラウシ・レイが”ラム(あたる)”の後を追って機械室に飛び込んでくる。

「うわぁぁぁぁ!!」

ドゴォォォン!!

”あたる(テン)”に迫っていた男が飛び込んできたレイに呆気なく吹き飛ぶと、

「うわぁぁぁぁぁぁ!!

 お助けぇぇぇ!!」

メガネ達も加わってたちまち機械室は大混乱に陥ってしまった。

ドタドタドタ!!!

「こんなところでくたばってたまるかっ!!」

そう叫びながらメガネ達が飛び出した後に、

手かせを填められたままの”あたる(テン)”が機械室から飛び出すと、

それを追って”ラム(あたる)”も飛び出す。

「こらぁ!!

 ジャリテン!!

 逃げるんじゃなくてレイを何とかしろ」

後から追ってくるレイを指さしながら”ラム(あたる)”が怒鳴ると、

「逃げるんやない!!

 戦略的撤退や!!」

と”あたる(テン)”は声を張り上げる。



Seen10:保健室

「ったくぅ…

 今日はヤケに騒がしいのぅ」

保健室から廊下をワーワーと逃げまどう生徒達の姿を眺めながら、

サクラがそう呟いていると、

ガラッ!!

保健室のドアが開くと、

「こんにちわー」

その声と共にしのぶが保健室に入ってきた。

「なんだ、しのぶか…

 今日の騒ぎの原因は…また諸星か?」

小さく笑いながらサクラが尋ねると、

「まぁ、いつものことです…」

そう言いながらしのぶは呆れた表情をする。

そして、

「でも、今日のあたる君とラム、なんかいつもと違うのよね…」

と唇に指を当てながらそう呟くと、

「そう言えば、

 私も、登校途中にその二人に会ったが、

 確かに雰囲気が違っていたな…」

しのぶの言葉にサクラも大きく頷いた。

すると、

ジタバタ!!

窓の外をテンが真剣そうな表情で飛んでいるのが目に入った。

ガチャッ!!

「なんだ、テンではないか、

 どうした?

 そんな真剣な顔をして」

保健室の窓を開けてサクラがテンに尋ねると、

「あっサクラ…

 弁天達…もぅきたっちゃ?」

サクラの声に振り返った”テン(ラム)”がそう聞き返した。

「”たっちゃ”?」

「え?」

テンの口調がいつもと違うことににサクラとしのぶは顔を見合わせる。



「なんじゃと!!、

 お主ら…入れ替わっただと?」

保健室にサクラの驚いた声が響き渡る。

「じゃっなに?

 ラムがあたるくんで、

 あたるくんがテンちゃんだったの?」

身を乗り出しながらしのぶが尋ねると、

「だっちゃっ」

二人を前にして”テン(ラム)”はそう返事をすると大きく頷いた。

「それでか…妙に諸星とラムの様子が変だったのは…」

「そうねぇ…」

そう言いながらしきりに頷く二人を見て、

「あのぅ…ダーリンとテンちゃん、

 なにか変なことをしたっちゃ?」

不安そうに”テン(ラム)”が尋ねると、

「あっ、まぁな…」

そうサクラが返事をする。

そして、

「うん…まぁ…あたる君がいつもしていること…」

と、しのぶが続けると、

それを聞いた”テン(ラム)”の表情が見る見る強ばり、

「もぅ…ダーリンったら、あれほど言ったのにぃ

 うちの身体でぇ…!!」

プルプル…

と震えながら”テン(ラム)”が怒りに満ちた言葉を言う、

「あっでも、無闇にじゃないわよ、

 被害にあったのはあたしとサクラ先生だけみたいだから」

怒り心頭の”テン(ラム)”の様子に、

すかさずしのぶはそうフォローをするが、

「しのぶとサクラだけでも十分だっちゃ!!

 もぅダーリンったら!!

 お仕置きだっちゃ!!」

”テン(ラム)”はそう怒鳴ると、

ジタバタ!!

と保健室から飛び出していった。

「あっ待て」

「待ってよ、ラム」

”テン(ラム)”を追いかけてしのぶとサクラも保健室を飛び出していく、



Seen11:保健室その2

それから程なくして、

ドタタタタタ!!

ぐわらっ!!

「サクラねーちゃん!!」

「サクラさぁーん!!」

レイを撒いた”ラム(あたる)”と”あたる(テン)”が保健室に飛び込んでくると、

「あれ?」

「居ないっ!!

 くっそう!!」

無人の保健室を見て”あたる(テン)”と”ラム(あたる)”は顔を見合わせる。

すると、

「サクラなら先ほど出ていったぞ!!」

と言う言葉と共に錯乱坊が二人の前に沸き出してきた。

「うわぁぁ!!」

「なにさらすんじゃ」

ゲシッ!!

ドカッ!!

たちまち錯乱坊は二人からケリを入れられた。

「はぁはぁ…

 ったくぅ…

 サクラさんが居ないとなると…

 まずいぞ」

肩で息をしながら”ラム(あたる)”がそう”あたる(テン)”に話しかけると、

「だから、忠告をしたろうが!!

 不吉じゃと」

ニュッ!!

復活した錯乱坊が別の所から沸き出すなりそう告げた。

「うわぁぁぁぁ!!」

その様子に”ラム(あたる)”は思わず、

バリバリバリ!!!

っと錯乱坊に電撃を喰らわせてしまった。

しかし、”ラム(あたる)”のその行為が、

「え?」

「あっ」

「保健室か」

「ぶもっ?」

ラムを探す者達を一斉に保健室へと招き寄せてしまった。

「はぁはぁ!!

 もぅ大丈夫だろう」

黒こげの錯乱坊を”ラム(あたる)”見下ろしていると、

ガチャッ!!

ずどどどどどどど…

「よう、ラムっ

 そんなところで何をやっているんだ?」

と言う言葉と共にエアバイクに跨った弁天が窓の外から話しかけてきた。

「べっ弁天さま!!」

弁天の姿に”ラム(あたる)”の表情がパッと明るくなる。

「…おユキも連れてきたから、

 お茶でも……

 あん?

 ラム…お前なんのマネだ?」

弁天はすり寄ってくるラムに向かって不快そうに言うと、

「え?、

 いや

 ちゃはははは…

 まぁそのスキンシップを…っとね…ちゃ!!」

”あたる(ラム)”は笑ってごまかしながら、

「くっそう…

 ラムの身体だと弁天さま警戒しないが…

 しかし、これではいまひとつ嬉しくないなぁ…」

と呟いていると、

「こらぁ、あたるぅ!!

 またラムちゃんの評判を落とすことをしおって!!」

窓から身を乗り出して”あたる(テン)”が怒鳴った。

「あっ、バカっ、ジャリテン!!」

”あたる(テン)”の言葉に”ラム(あたる)”が慌てると、

「なんだ?」

ジロッ

弁天の目が”ラム(あたる)”を鋭く見る。

「え?、なっなんだっちゃ?

 さっさぁ…

 お茶に行くんでしょう?

 ねぇおユキちゃん?」

冷や汗を掻きながら”ラム(あたる)”がごまかそうとすると、

「ふっふっふっ

 何を企んでいる?ラム?

 いいんだぜぇ

 ここん所、ずっと節分の合戦が休み続きだから大汗をかくのも…」

と目を光らせながら言うと、

「いやっまっそのぉ

 あはははは…」

”ラム(あたる)”はフワリと弁天のエアバイクから離れると、

そのまま保健室へと戻って行く。

その途端、

ズガガガガガガガン!!

豆の機銃照射が保健室の窓を打ち抜いた。

「うわぁぁぁ!!」

「あたるの責任や!!」

「五月蠅い!!」

”ラム(あたる)”が”あたる(テン)”を抱きかかえて、

保健室から逃げ出すと、

「ダーリン!!」

「諸星ぃ!!」

「ラムさん!!」

ドドドドド!!

「なんだ?」

「なんや?」

廊下の向こうから叫び声と共に地響きが見る見る迫ってくると、

カッ!!

ゴワァァァァァァ!!

放たれた火焔が見る見る迫ってきた。

迫ってくる火焔に、

「うわぁぁぁ」

”ラム(あたる)”と”あたる(テン)”が保健室に戻ると、

チャキン!!

”ラム(あたる)”の喉元に銃口が突きつけられた。

「どうした?

 もぅギブアップか?」

両手をあげる”ラム(あたる)”に弁天が迫ると、

ゴワァァァァ!!

再び放たれた火焔が”ラム(あたる)”に迫ってきた。

「うわぁぁぁ!!」

「バカよせ!!」

迫ってくる火焔に”ラム(あたる)”は素早く弁天の前から逃げだした。

その途端、

「ダーリン!!

 あれほどうちの身体で誤解を招くことをしないでって言ったのにぃ!!」

そう怒鳴りながら”テン(ラム)”が保健室に飛び込んできた。

「ねぇ弁天…

 ラム達の様子…ちょっとおかしくない?」

その様子を後ろで見ていたおユキが弁天に囁くと、

「あっあぁ、

 確かにな…」

ポリポリと弁天が頭を掻きながらそう返事をする。

「あちゃぁ?、弁天におユキちゃん…もぅ来たっちゃ?」

弁天達に気づいた”テン(ラム)”が顔に手をやると、

「おっお前等っ、

 なんか様子が変だぞ…」

と弁天が指をさした。

すると、

「ぶもぉぉぉぉぉ!!!!」

レイの雄叫びが上がると、

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

地響きが見る見る保健室に迫ってくる。

「レイ?」

その音に”テン(ラム)”が”ラム(あたる)”を見ると、

「そうだ、ラムっ

 レイが…レイが友引高校に来て居るんだ!!」

と”ラム(あたる)”は”テン(ラム)”に怒鳴った。

「ダーリン、そのことを何でもっと早く言わないっちゃ!!」

”ラム(あたる)”の言葉に”テン(ラム)”が呆気にとられると、

サクラや面堂達も保健室に駆けつけてきた。

と同時に

「らぁむぅ〜っ」

レイの声が響き渡ると、

ドドドドド

ドガァァァァァン!!

保健室の壁を突き破ってレイが突入してきた。

「己っ、そこになおれ!!」

即座に面堂が”ラム”を守ろうとレイの前に立ちはだかるが、

しかし、

「らむっ」

彼はレイの敵ではなかった。

ドカン!!

レイの腕の一振りで彼の姿が消えると、

ジリっ

目の前のラムを見つめながらレイがにじり寄ってくる。

「くっそう!!

 やっぱ、電撃か?」

臍をかみながら”ラム(あたる)”が電撃をレイに浴びせようとしたとき、

ごぉぉぉぉぉぉぉん…

エンジン音を響かせ”ひょっとこ”のマークを輝かせながら、

面堂家航空部隊の大型輸送機が友引高校上空に飛来してきた。

『目的地に到着!!

 ただいまより、注文の握り飯100万個を投下する。』

『こちら、本部、

 100万個?…あれ1万個じゃなかったっけ?

 まぁいいか、投下を許可する。

 若は急いでいる模様』

『了解!!』

面堂邸本部とそう言うやり取りがされた後、

ゴワァァァァァ!!

輸送機の後部ハッチが開くなり、

たちまち、100万個の握り飯を包んだ段ボールが次々と宙に舞った。

ひゅるるるるるるる…

「なんだ?」

「そっ空が…空が落ちてくる…」

校庭でその様子を見ていた生徒達は次第に青ざめると、

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

一斉に逃げまどい始めた。



その頃、ラムのUFOでは、

ピッ

ぐぃぃぃぃん!!

エネルギーチャージが終わった精神入れ替えマシン

”KDN−01:必殺、階段落とし1号”のスイッチが入ると、

『”プログラムナンバー”ら”の弐拾番・修正・階段落とし発動!!

 目標…捜索中…ピッ…確認、

 修正目標・友引高校………照射”』

と告げるなり、

カッ!!

ズドォォォォォン!!

友引高校めがけてビームを放った。



同時刻、友引高校では

「なっなんだ?…」

「まぁ…なんでしょう」

空から降ってくる荷物を”ラム(あたる)”や弁天達が呆然を見ていた。

すると、

ジージージー

ザワザワザワ…

一体、また一体と

ゼンマイ仕掛けのランの小型人形が保健室に入り込んでくる。

「だっダーリン…

 ランちゃんにも何かしたのけ?」

怯えながら”テン(ラム)”が”ラム(あたる)”に尋ねると、

「おっ俺は何もしていないぞ!!」

”ラム(あたる)”は首を振りながら容疑を否定した。

しかし、

『ラムちゃん、ラムちゃん。

 ランちゃんは何も気にしていません、

 だから、ラムちゃんも今日のことは忘れて仲良くしましょうね』

と人形達は一斉に告げたとたん。

カッ!!

一斉に内臓の起爆スイッチが入った。

そして、雲を突き破って”階段落とし1号”が放ったビームが

友引高校を直撃する直前、

友引高校の校舎は中から沸き上がった閃光に飲み込まれていった。



Seen12:戦い終わって…

『エラー』

『エラー』

『到達前、目標の座標が移動』

『エラー』

『エラー』

『到達前、目標の座標が…』

ラムのUFOの中では”階段落とし1号”のエラーコールが鳴り響く、

そして、友引高校では、

「ダーリン…このオニギリ美味しちゃよ」

一面、焼け野原となった校舎跡で”しのぶ”が

そう言いながら程良く焼けたオニギリを囓ると、

「はぐはぐ…これは魚沼産のコシヒカリじゃな」

とその隣で”サクラ”がそういながら焼きオニギリを頬張っていた。

「ふっ」

ぷかぁ〜っ

相変わらずタバコをふかすコタツネコの向こうでは、

シャキン!!

「えぇぃっ、すべてが貴様が原因だろが、

 そこに直れ、刀の錆にしてくれる!!」

そう怒鳴りながら”テン”が日本刀を引き抜き、

斬りかかると

「なんのっ」

その刀を”終太郎”が白羽取りをしていた。

そんな連中を横目で見ながら、

「相変わらずおめでたい奴らだな…」

「お茶飲みます?」

とため息をつくおユキに弁天がティーカップを差し出していた。



おわり