風祭文庫・乙女変身の館






「バニーガール」
(第2話:成行博士の野望(後編))


作・風祭玲


Vol.143





カッ

ゴロゴロゴロ…

「はははははは…」

雷鳴が鳴り響く怪しげな研究所に不気味な笑い声が響いていた。

「クックックッ…

 そうだ…

 コレまで散々儂をバカにしてきたあの悪ガキどもを血祭りに…いや

 美しいバニーガールにしてやろう…」

成行卯之助は”強制バニー化砲”をさすりながらそう呟くと、

「高杉君っ、

 いや、いまから君は高杉君ではない”バニー1号”だ」

と真っ先にバニー化した助手の高杉秀作を指さしてそう叫んだ。

「えぇっ…

 ”バニー1号”ですかぁ?」

そう言いながら秀作が不満そうな顔をすると、

「なんだ、異論があるのかねっ」

ジロリと卯之助は秀作を睨み付ける。

「バニー1号だなんて…もっと魅力的な名前がいいわ…」

バニー化した影響だろうか、秀作は女言葉で文句を言うと、

「いまは、それで我慢しろっ、

 あとで、とびきりゴージャスな呼び名を考えてやる。

 さぁ…バニー1号よ、

 明朝、宇沙木高校へと侵攻し、

 あの憎っき輩に正義の鉄槌を下すのだ!!」

と雄叫びをあげた。

「はぁい…わかりましたぁ〜っ」

ピッ!!

秀作…いや、バニー1号は簡単な敬礼をすると、

そそくさと研究室から出ていった。

「ふふふ…

 まずはあの学校をバニーの楽園にしてやろう

 ふははははは…」

もはや、卯之助卯之助を止めるものは誰もいなかった。



翌朝…

キンコーン!!

予鈴が校内に鳴り響く県立宇沙木高校では、

まさに生徒達の登校ラッシュのピークを迎えていた。

「おっはよーっ、タケシっ」

柏原ミツコが同じクラブの立原タケシの姿を見つけると、

ダッシュで傍によると声をかけた。

「ふわぁぁー?…あぁミツコか」

生アクビをしながらタケシはミツコをチラリと見ながら返事をすると、

「なによ…また夜更かししたの?」

ミツコは呆れ半分の表情でタケシを眺めていた。

「まぁな」

「ちょっとぉ…

 少しは防衛部員としての自覚を持ってよね。
 
 いつあの卯之助博士が発明品を携えて襲ってくるのかわからいなんだから」
 
口を尖らせながらミツコが文句を言うと、

「成り行き任せ?

 あぁ、大丈夫、大丈夫。
 
 昨日もそうだったじゃないか、
 
 あのマッドサイエンティストが持ってくるガラクタって
 
 いつもここ一番と言うときに自爆するんだぜ…」

とタケシは一度握った手をパッ開いておどけて見せた。

「そうかなぁ…」

「そうそう…」

「でも、あの博士が何時までもやられっぱなしじゃないような気がするわ

 何時の日かとんでもない発明品を持ってきて…」

「んなことは無いって…」

「でも…」

ミツコの心の中には言いようもない不安が広がり始めていた。



キンコーン

「ったくぅ…

 なんで、こんなに暑いのに1時間目から体育をせにゃならんのだ…」

「ぼやかない、ぼやかない」

文句を言いながら体操着に着替えたタケシ達がグラウンドに出たとたん、

先に準備をしていた体育教師の南賀が、

「お〜ぃ、防衛部っ

 お客さんだぞぉ…」
 
と上を指さして声を上げた。

「はぁ?」

タケシが南賀が指さした方…校舎の屋上を見上げると、

「ふははははははは…

 はっはっはっ!!

 聞こえるかっ悪ガキどもっ
 
 天才・卯之助が究極の発明品を持ってきてやったぞ」

っと男の笑い声が高らかに響き渡った。

「ん?、この声は…

 成り行き任せか!!

 何処だ!!

 出てこいっ」

タケシが声を上げると、

「むっ、誰が”成り行き任せ”だ、成行博士と呼べ!!」

声の主が叫び、

トゥ!!

と言うかけ声と共に一人の人影が屋上からダイブした。

「おぉ…」

彼の意外な行為にタケシ達は驚きの声を上げた、しかし…

ひゅるるるるるるる…

彼の身体は地表に近づいても加速を止めることなく、

そのまま地表へと接近していった。

「うわぁぁぁぁ、止まれぇぇぇぇぇぇっ」

と言う叫び声を残して…

結果…

ズン!!

大きな地響きとともに彼の身体はを見事地面にめり込んでしまった。

「ひょっとして、止まる気でいたのか?」

「無謀なことを…」

「重力中和装置でも発明したつもりでいたのかな?」

「いや、ニュートンの実験を身をもって実践したんだろう」

「なにはともあれ、彼の冥福を祈るのが我々のつとめだな」

などと卯之助が開けた穴をのぞき込みながら

クラスメイトが口々に言い合っていると、

「だっ誰が、死ねかぁ〜っ…」

鼻血を垂らしながら卯之助が穴から這い出してきた。

「うわぁぁぁぁぁ、ゾンビだぁ」

たちまち蜘蛛の子を散らすように退散する生徒達。

「ちょっとぉ、卯之助サン、

 授業の妨害は止めていただけますか?

 しかも、こんな穴を開けて…

 ちゃんと後で埋め戻してくださいよ」

南賀があきれ顔で這い出した卯之助にそう言った途端、

「博士ぇ〜っ

 大丈夫ですかぁ?」
 
シュタッ!!

墜落した卯之助を追ってバニー1号が軽々と飛び降りてきた。

「なっ」

予想外の美少女の登場に驚きの声を上げるタケシ達。

「初めまして、お嬢さんっ

 僕はこの学校の防衛部部長、立原と申します」
 
タケシは彼女の至近距離にいた南賀とまるで入れ替わるかのように

突き飛ばすとバニー1号の手を取って自己紹介をした。

「あら…まぁ」

バニー1号はポッと赤くなると思わす視線をタケシから反らした。

「くぅぅぅぅ…可愛い…」

タケシはそんな彼女の仕草に一人萌えながら、

「…まぁ、ココではなんですから、

 どこか静かなところでお茶しませんか?」

と彼女の耳元で囁いた途端。

「へぇぇぇ…何処でお茶をするの?」

いつの間にかタケシの真後ろにブルマ姿のミツコが腕を組んで睨み付けていた。

「え?、

 やぁ、ミツコさん、こんなところで出会うなんて奇遇だねぇ」

「そりゃ、そうでしょう?

 これからあたし達も体育なんだから…」
 
さらに凄みを増しながらミツコは睨み付ける。

「……こんな、朝っぱらに、

 そんないかがわしい姿をした人が現れて
 
 アンタは不審に思わないの?」

そうミツコに指摘されて、タケシはハッとすると、

「そっ、そうだった…

 おいっ、卯之助っ」
 
「なんだ…」

「この美しい女性はどこの誰だ!!」

「ふん、凡人には判るまい…

 知ってどうする…」

「交際を申し込むっ」



シュォォォォォ〜っ

真顔でそう答えたタケシの頭上に巨大なハンマーが振り下ろされた。

ピッキィィィィン!!

「どう、超音波ハンマーの威力は…

 卯之助博士の発明品の中でも数少ない成功例ね」

パンパン!!

手を叩きながらミツコがそう言うと、

「こらぁ、それは私の発明品だぞ!!」

と卯之助が怒鳴り声をあげた。

頭に大きな瘤を作ったタケシはそのまま活動停止状態になり

そして、タケシに替わってミツコが

「で、彼女は何処の誰なの?」

と再び卯之助に質問を始めた。

「しつこい奴だなぁ、お前達に説明する謂われはない」

卯之助はミツコの質問を突っぱねると、

「おいっ、そろそろ授業をしたいのだが」

復活してきた南賀が横から割り込んで言うが、

「ちょっとぉ、答えられないってどういう事よっ」

ミツコは南賀を無視してさらに卯之助にくってかかった。

「何の騒ぎだ?」

「あぁ…斉藤か…実はな…」

遅刻してきたのか、

遅れてやってきた同じ防衛部員の斉藤アツシが

クラスメイト達に騒ぎの原因を尋ね始めた。

やがて、

「なんだ、成り行き任せっ

 また、来たのか…

 お前もしつこい奴よのぅ」

と言うと同時にバニー1号を見つけるが否や

「おいっ、この美しい女将はどこの誰だ!!」

と叫び声を上げた。



「お前らぁ…授業を始めるぞっ

 さっさと整列せんかっ!!!」

ついに堪忍袋の緒が切れた南賀が怒鳴り声をあげた。

そして、南賀の怒鳴り声がスイッチになったのか、

「えぇぇぇぇぇぃ、やかましいわっ」

スチャッ

卯之助は声を上げるとバニー1号が携えていた

”強制バニー化砲”

を奪い取ると素早く肩にベルトを掛けると構えた。

「なんだ、それは?」

タケシは卯之助が構えた”強制バニー化砲”を訝しげに見ながら質問をすると、

「ふっふっふっ…

 この崇高な発明が判らないとは
 
 ふっ
 
 つくづく凡人とは悲しいものよのぅ…」

「なに言ってんだコイツ…」

「さぁ?」

アツシとミツコそう言いながら顔を見合わせる。



「ターゲットスコープ・オープン!!

 電映クロスゲージ・明度20!!

 対ショック、対閃光防御!!」
 
ミアミアミアミア…

卯之助が声を上げて”強制バニー化砲”を操作すると

その砲口に光の粒子が集まり始めた。

「ねぇねぇ…ちょっとヤバそうよ」

ミツコは声を上げたが、

「大丈夫、大丈夫っ、

 どうせいつものように”ドッカーン!!”だぜ…」

アツシは余裕の表情を見せていた。

「ふっよかろう…、

 そこのデカイの…

 お前がターゲットだ!!」

卯之助はそう叫ぶと、

グィ…

照準をアツシに向けた。

「エネルギー充填90%…95%…100%…105%…」

「おーぃどした…

 まだか…」

しびれを切らしたアツシが声を上げると、

「うるさいっ、もぅ少し待ってろっ」

卯之助はじっとエネルギーメータの数値を読み続けた。

そして

「…115%…120%!!!」

レッドゾーンに突入した数値を読み上げたとたん、

「ふっふっふっ…覚悟しろっ」

卯之助はニヤリと笑い、

カキン!!

トリガーを引いた。



ピシャッ

シュパァァァァァァァァァァン!!

一瞬稲光を思わせる閃光がが瞬いたとたん、

”強制バニー化砲”の砲口より発射された光の束が、

怒濤のようにアツシに向かって流れていった。

「危ないアツシっ」

「逃げて…」

タケシとミツコが声を上げたとたん、

「お前らっ授業はもぅ始まっているんだぞ!!」

そう怒鳴りながら南賀が卯之助とアツシの間に飛び出した。

ドバァァァァァ

「え?、うわぁぁぁぁ」

南賀は叫び声を上げながら光の帯に身体を飲み込まれていった。

「南賀っ!!」

タケシは思わず叫んだが、

閃光に包まれた南賀のシルエットが徐々に別の物へと変化し始めた。

ムクッ…と胸が膨らみ、

ウェストは狭く、

そして、ヒップが張り出した。

さらに、彼の衣服がぴちっと身体に張り付くと、

体の線を美しく描き、

そして、お尻に丸い尻尾が現れ、

ロングヘアになった頭の上にピンっと二本の耳が頭に立つと、

南賀は美しいバニーガールに変身していった。

「なっ、何だと!!」

驚きの声を上げるタケシ達をよそに南賀は、

「うふっ、そこの可愛い坊や…

 さぁ、体育の授業を始めるわよ」
 
そう言いながら南賀は真っ赤なハイヒールをコツコツ鳴らせながら、

グラウンドへと向かって歩いていった。

「信じられない…」

南賀の後ろ姿を見ながらミツコが言うと、

「ふっふっふっ

 どうだ、我が最高の発明品。
 
 ”強制バニー化砲”の威力は」
 
と卯之助が勝ち誇ったように言う、

するとタケシは卯之助を睨み付け、

「お前がバニーフェチだったのは前から知っていたが…

 まさか、こんな悪魔的な兵器を発明するとは…
 
 宇沙木高校防衛部の名に於いてお前を許さないぞ!!」
 
と指さして叫んだ。

「ふっ、面白いっ

 どうやら貴様とは雌雄を決しなければならないな」
 
卯之助はすかさず”強制バニー化砲”の砲口にアタッチメントを付けると

「うりゃっ、”拡散バニー化砲”!!」

と叫び、2列になった砲口をタケシに向けた、

「ヤバイっ、逃げろっ」

タケシはすかさず逃げ出したが、

「バカめ!!」

卯之助は照準をタケシからグランドに向けるとトリガーを引いた。

「はっしまった!!」

タケシがグランドにいるクラスメイト達の方をみるのと同時に

シュパァァァァァァァン!!

拡散バニー化砲が発射された。

グランドにいた多くのクラスメイト達は

為す術もなく目前で炸裂し一斉に襲いかかってきた

拡散バニー化砲の餌食となった。

「うわぁぁぁぁぁぁ〜」

悲鳴を残して彼らは次々とお色気たっぷりのバニーガールに変身していく、


「うふっ…」

校庭で”しな”を作る大勢のバニー達を見ながら、

「おっ、おいっ、

 ”雌雄を決する”なんて言ったけど、
 
 負けてバニーガールにされてしまったら

 洒落にならないぞ」

そう言ってアツシがタケシに食ってかかるが、

「いま、そんなことを言っている場合では無いっ

 はっ、

 イカンっ、みんなが危ない」

タケシは叫ぶと校舎へ向かって走り始めた。

「どうするのっ?」

ミツコがタケシの行動に声をあげた。

「校内の他の生徒を避難させるっ」

タケシはそう叫びながら校内に駆け込むと、

「くっくっくっ

 無駄だ無駄だ…
 
 そりゃぁっ”拡散バニー化砲”乱れ撃ち!!」
 
シュパァァァン!!

シュパァァァン!!

シュパァァァン!!

そう叫びながら卯之助は校舎に向けて拡散バニー化砲を連射し始めた。

バニー化砲より発射されたビームは散開すると容赦なく校舎に降りそそいだ。



「防衛部ですっ、スグに避難を!!」

タケシは手近な授業中の教室に駆け込んだが、

「あら…いらっしゃぁ〜ぃ」

その教室にいた生徒・教師は一人残らず全員バニーガールになってタケシを迎えた。

「うわぁぁぁぁ〜」

衝撃の光景にタケシは悲鳴を上げて教室から飛び出すと、

隣の教室に駆け込んだが、そこもすでに…

「わはっはっはっ!!

 ウリャウリャウリャ

 愉快痛快通勤快速っ
 
 全員バニーになってしまえっ」
 
卯之助はひたすら拡散バニー化砲のトリガーを引き続けていた。

グワラッ!!

「校長先生っ、全校生徒に避難の放送を!!」

タケシが最後の手段として校長室に駆け込んだが、

しかし、そこで彼が見たものは…

「お兄さん…こっちに座ってじっくり話しましょう…」

網タイツに包まれた見事な脚線美を見せながら

校長は優雅に椅子から立ち上がった。

「……こっ校長も陥落したか…」

タケシはがっくりと膝を落とすと、

「そうだ、ミツコは…」

タケシはミツコを校庭に置いたままだったことを思い出すと

大急ぎで校長室から飛び出していった。



やがて校庭に戻ってきたタケシに

「はっはっはっ、どうだ我が最高の発明品の威力は…」

卯之助は勝ち誇ったかのごとく告げ、

「ふむっ、バニー1号よ残っている者は…」

余裕たっぷりに傍らにいるバニー1号に

バニー化砲の餌食になっていない者の人数尋ねた。

「はい、残っているのはそこにいる3人だけです」

と彼女(彼?)が答えると、

「なるほど…では、遅くなったがお前達もバニーガールにしてやろう…

 特にお前達はコレまでに散々私の邪魔をしてくれたので、
 
 ゴールデン・バニーとなって私の僕となるがよい」
 
そう言いながら、

カシャッ

卯之助は拡散バニー化砲のオプションを外して通常のバニー化砲に戻すと、

カチっ

手元のダイヤル式のスイッチを回した。

そして、

スチャッ

改めて構えなおした。

「ふっふっ…

 言い残すことは…」

「おのれぇ…」

「ターゲットスコープオープン!!」

ミアミアミアミア…

砲口に粒子が集まり始める…

「くっそぅ…」

卯之助を睨んだまま立ちつくしているアツシにタケシが、

「俺が奴の注意を引く…

 その隙にお前は奴からバニー砲を奪うんだ!!」

と囁くと、

「うぉぉぉぉぉぉぉ」

果敢にも卯之助へと向かって走っていった。

「タケシっ」

「バカめっ、自らバニーに志願するとはいい心意気だ」

そう言いながら卯之助がトリガーを引いた途端、

ガシッ

タケシはバニー砲を思いっきり蹴り上げた。

「なにっ?」

シュパァァァァァン!!

光の束は大空に向かって伸びていく…

と同時に

「いまだ!!」

タケシが叫ぶとアツシが卯之助に飛びかかった、

しかし、

「甘〜〜っ」

卯之助が再度構え直すとトリガーを引いた。

シュパァァァァァァァン!!

強制バニー化砲より生じた光の帯は至近距離でアツシの身体を直撃した。

「アツシ!!」

タケシはアツシの居たところへと駆け出した。

「ふはははははは…」

彼の後ろから卯之助の勝ち誇った笑い声が追ってくる。

「オイ、アツシっ大丈夫か…」

タケシが声をかけると、

「うん、大丈夫よぉ」

そう言いながらタケシの目の前に現れたアツシの姿は

長い金髪を棚引かせ

金色に輝くバニースーツと網タイツで放漫な女体を包み、

頭には2本の耳、首には蝶タイ、そして手首にはカフスが飾る

そう、金色のバニーガール、ゴールデンバニーになっていた。

「うっそぉ…

 あっアツシ君がバニーになっちゃった」

ミツコは口に手を当て驚きの声を上げた。

「ふはははははは…

 どうかね、ゴージャスなゴールデンバニーは」

卯之助の言葉にタケシは言葉が詰まった。

「くっそう、アツシの奴、別嬪になったじゃねぇかっ…」

「さぁ次は誰だ!!」

卯之助の勝ち誇った声が追い打ちをかける。

「くっそぅ…」

タケシは卯之助を睨み付けると、

「アツシを元に戻せっ」

と叫ぼうとしたとき、

「エイッ」

ミツコが卯之助に飛びかかっていた。

「わっコラっ何をする」

卯之助とミツコはもみ合いになってしまった。

そして、

「タケシっ」

ミツコはそう叫ぶと、

卯之助から取り上げたバニー砲をタケシへと放り投げた。

「よくやった、ミツコっ」

しかし、投げられたバニー砲をタケシが受け取る前に、

バニー化したアツシが即座に奪い返すと、

「博士コレを…」

と跪きながらバニー砲を卯之助に返した。

「そんなぁ、アツシ君」

「なんで…」

唖然とする2人に

「ふはははははは、

 バニー2号となったコイツはもはや私の僕…

 私の命には絶対なのだ」

と卯之助は自信たっぷりに言った。

そして、さらに

「おい、そこの娘っ、

 いかんなぁ…お嬢さんがそんなに乱暴では…
 
 良かろう、私がお淑やかにしてあげよう」
 
そう言いながら

カシャッ

卯之助はバニー砲の横についているダイヤル式のスイッチを再び回した。

「ふふふふふふ…

 バニー砲はただ相手をバニーにするだけじゃないぞ…
 
 スイッチを切り替えることで、
 
 巫女にも…
 
 バレリーナにも…
 
 人魚にも自由に変えることが出来るのだ」
 
と卯之助はバニー砲に隠された恐るべき機能を喋った。

「なっなにぃ」

「そうだな…お前は…」

カチャカチャカチャ…

「……尼になるがよい」

と叫ぶと、

スチャッ

仕様を変更したバニー砲を構えるとすかさず発射した。

シュパァァァァァッ

光の帯がミツコを襲う、

「きゃぁぁぁぁぁッ」

ミツコは悲鳴と共に黒衣に白頭巾姿のお淑やかな尼僧へと変身してしまった。

「みっ、ミツコ…」

タケシがガックリと膝を落とした。

「さて、残るはお前だけだな…」

卯之助はタケシを見てそう呟くと

カチャッ

再度スイッチを回した。

「さぁーて、モードはランダムだ…

 何になるかはお前の運次第…

 行くぞっ」

ミアミアミア…

砲口に光の粒子が集まり始める。

「おのれぇ…

 ミツコを元に戻せぇ〜っ」

タケシ駆け出すと同時に卯之助も駆け出した。

「うぉぉぉぉぉぉぉ〜っ」

「うりゃうりゃ」

…二人は一陣の風に乗って急速に接近していった。

生と死が交差する接点へ向けて…



…………

ピッキィィィィィィン!!



卯之助がバニー砲のトリガーを引く前に、

タケシに手に握られた超音波ハンマーが卯之助の頭上に落ちていた。

「ふっ、勝った…」

「…ばかな…」

ドサッ

卯之助が崩れ落ちるように倒れると、

「このハンマーはお前の発明品だったな、

 自分の発明品に仕留められるとは不憫な奴…」

タケシは白目をむいてノビている卯之助を見ると…

「で、どうやればミツコ達を元に戻せるんだ?」

そう言いながらタケシがバニー砲をあれこれ触っていると突如、



ピシャッ

シュパァァァァァァァァン

バニー砲が暴発した。

「うわぁぁぁぁぁぁ〜っ」

たちまちタケシの身体がバニー砲より吹き出した光に埋もれていく…

「しまったぁ…」

後悔したときには、

彼の身体は胸が膨らみ、腰がくびれ…

さらに栗色の髪が吹き出すように伸び始めた。

やがて、体操着がチョコレートが溶けるように

ジワッと一旦溶けると、

溶けたところから黒く光沢を放つバニースーツへと変化して行く、

「いやぁぁぁぁぁぁん」

網タイツとバニースーツに覆われていく快感に酔いしれながら

タケシはバニーガールへと変身していった。



「博士っ、大丈夫ですか?」

「あぁ、なんとかな…」

バニー1号に担がれるようにして学校を後にした卯之助は

「ふっ、暴発か…」

と呟いた。

「え?、何か言いました?」

「いや、もしも、わたしがあのときトリガーを引いていたら

 私がバニーになっていたところだった…」
 
「そうですわね…」

「それにしても博士…」

「なんだ?」

「ココにも究極のバニーは居ませんでしたね」

「仕方がない他を探そう

 それにしても……戦いとはむなしいものだな…」

そう言いながら卯之助卯之助とバニー1号こと秀作圭作は夕日の中に消えていった。

究極のバニーを探すために…



おわり