コラム

1.ブルーノート

 「リンゴの3点セットはブルーノートというセットである」というのは、少なくとも今(2005年11月3日現在)30代以上の人にとっては10年近く前迄は常識だったと思います。何故なら多くのビートルズ関係書籍にそう記されていたからで、それ以外のことを書いてあるものは殆ど(一部に型番が書いてあるものがありました)見なかった上、他に資料らしいものも見当たらなかったので盲目的に信じるしかなかったという事情が有ります。 
 ところが、近年インターネットの普及や書籍「ビートルズギア」の出版もあり、急速に情報が増え実は「ブルーノート」では無かったというのが既成事実になって来ました。 このことは、当時のカタログを見れば一目瞭然で「ブルーノート」というセット自体は有ったもののその構成はリンゴのセットとは大きく異なるもの(Ludwig fansモデル名比較参照下さい)であることだけでも言えることです。又、ブルーノート説が言われていたのは日本だけで、海外では早くからリンゴのセットについても他の3人のギター類同様深く研究されていただけでなく、国内でもラディックのヴィンテージに関する資料などはヴィンテージコレクターの間には存在していたと思われます。
 では何故リンゴのセットがブルーノートと言われる様になったのでしょうか。以下に仮説を挙げてみます。

仮説1:以前はセット名がブルーノートであると言われていたと同時にその色もオイスターブルーであると言われていた為、たまたま当時知り得たセット名の中のブルーの付く名前であったブルーノートがそれだろうと推測した(注、ブルーノートという名称自体は周知の通りジャズに由来)。
仮説2:初めにこの説を書籍に著した人が、リンゴのセット名を探る時に誰かドラムの権威者と呼ばれる人に尋ねた結果その人が間違ったセット名を答えた。
仮説3:同じくセット名探求に当たり入手した当時のラディックのカタログがたまたま前半のみでその中で一番色がそれらしい(64年のカタログではスカイブルーパール、リンゴのセットについてあまり知らない人にはよく間違われる色)セットがブルーノートだった。

 こんなところでしょうか。上記の何れも当たっていないかも知れませんが、不思議な話です。
 但し、リンゴのセットは「ブルーノート」でも無い代わりに「スーパークラシック」や「ダウンビート」でも無いという話も有ります(当サイトでは事実に関わらず便宜上上記セット名を使用しています楽器購入ガイドドラム編参照)。 というのは、「ビートルズギア」を読まれた方は既にご存知の通り、リンゴのセットはセットとして発注されたものではなく、たまたま楽器店(Drum City)に有った単品を組み合わせて納入されたという話が有るので、その場合リンゴのセットはセットとしては名前が無く、単品のバスドラムがClassic (No.922P[22"]若しくはNo.920P[20"])、タムがSuper Classic (No.944P[13"]若しくはNo.942P[12"])などとなってしまう訳です。 そしてこの場合にもう1つ可能性としては考えられるのが、それらの単品がブルーノートセットのうちの一部だったかも知れないということですが、そこには何故ブルーノートセットをわざわざばらして売る必要が有るのか(店としてセットの残りはどうするのか)、BDにタムホルダーの付いていないブルーノートセットにわざわざタムホルダーを別途取り付けてまでそうする必要はどこにあったのか(注:納入された当初のリンゴの20"にはオリジナルのレールマウントが取り付けられていて、それ以前からSwiv-O-Maticを使っていて、20"の納入後比較的早期に同マウントに交換してしまったという事実も有ることから別途付けるなら初めからSwiv-O-Maticの指定が有っても良かったのでは無いか等)、通常ブルーノートセットの内リンゴの3点のみ残っていたというのも考え難い、などの疑問点が生じてきます。 又、今の楽器店を見ても単品で在庫しているよりセットでの在庫、特に海外からの輸入もの(この場合アメリカからイギリス)であれば尚更セットで輸入されている方が考え易いということがあります。 ですから、どちらかと言えば最初の20"セットの納入時にダウンビートにリンゴから指定の有ったスネア、BDペダル、HHスタンドなどへの交換に加えてシンバルスタンドの追加等を行って納入されたと考える方が自然では有ると思います。
 勿論真相は今のところそれに関わった当人達のみが知ることです。

 

2.オイスターブルー?ブラック?

1のブルーノートの話同様、リンゴの3点セットがオイスターブラックだという事実が確定したのはつい最近のことです。 やはり「ビートルズギア」が出版される数年前迄は「リンゴのセットはオイスターブルーだった、いやブラックだった、実は両方共所有していた」など各所で議論されていた様です。 その理由の大きなところは言うまでも無く写真から来ています。 ビートルズ時代の写真の多くは白黒で撮られている為、それらの白黒写真や白黒フィルムからはドラムがオイスターカラーの何れかであることは判ってもそれがブルーかブラックかまでは判別がつきません。 そこで、カラー写真やカラーフィルムでの判別となりますが、これがまた曲者で、ステージでの写真など周辺が青っぽかったり写真自体の色合いが青系になっていたりするとドラムも青っぽく見えてしまっていました。 そうすると、同じ様なセットに青系のものと黒系のものが見られ、上記の議論の発端となっていた訳です。 それに加えて、60年代のオイスターブルーとオイスターブラックの色調は実に微妙(70年代に入ると模様自体が変わると同時に青黒の区別がつき易くなります)で、見慣れていれば割と簡単に見分けがつきますが、そうで無いと並べてみてやっと判る位の時も有りますし、ましてや現物に至っては40年も経った現在では色褪せや変色も有って、詳細に見ないとどちらが黒でどちらが青やら非常に判り辛くなっているものさえあります。
 そんな訳で、ブラックかブルーか判らなかったリンゴのセットですが最近になって漸く「ビートルズギアー」の鮮明なカラー写真のお陰でオイスターブラックだということが確定しました。現在リンゴ所有のビートルズ時代のセットの何れもがオイスターブラックで有ることが判り、あとはオイスター色の特色である模様のパターンからこの写真のものはこれと同じ、これはこっちと同じ、などどのセットがどれで有るかが判って来て、そのどれもが黒であることが判明し漸く青黒の議論に終止符が打たれることとなりました。
 因みにブラックオイスターと呼ばれることの多い色ですが、60年代にはOyster Blackと表記されていてその色合いに70年代以降のBlack Oysterとは明確な差が見られるのでヴィンテージドラム専門家にはBowling Bowlなどと同様に区別されて呼ばれています。 国内のビートルズファンの間ではブラックオイスターという名称が定着しているのもそれが使われ出した当時(70年代)のラディック社のカタログではブラックオイスターとなっていた為、これもまた書籍等にブラックオイスターと表記される様になった為だと思われ、又現在国際的にもブラックオイスターの方がより多く使われているのも同様に70年代以降ラディックがブラックオイスターの方を使っているからだと思われます。

 

3.オイスターブラックのカバーリング

オイスターブラック又はブラックオイスターと言えばビートルズを知っていてドラムのこともある程度知っていればラディックと言わなくてもそれだけでラディックのBOP=リンゴのドラムセットを想像するでしょう。
それ程リンゴのドラム=BOP色のラディックという印象は深く浸透しています。
で、そのBOP色ですが、1にも少し触れた様に60年代当時と現行のものでは大きく異なっています。 このあたりの話はThe Beansのとものりさんのサイト「Ludwig バンザイ!」に詳しく写真入りで書かれているのでそちらを参照して頂けばより良く解ると思いますが、ここでも少し書いてみようと思います。
まず、大きく分けると60年代、70、80年代、90年代以降といった感じに分けられますが、これは本当に大きな括りであり、それぞれこんな感じの柄だということは言えますが、細かく分けると同じ60年代のものでも黒っぽい部分が多いもの、白っぽい部分が多いもの退、変色でなく茶色っぽいものなど有り、更にBOP柄の特色も含め目の細かめのもの大きめのものなども見られます。
 60年代から70年代に変わると柄に大きな変化が見られ、これをボウリングのボール柄に同様のものが有ったことからか上記の様にボウリングボールと呼ばれています。 特色は黒いところ、白いところの境界がかなりはっきりとして60年代の様な立体感があまり無くなって60年代のものに較べて安っぽい感じがします。 これには材質や製造方法が関係している様で、60年代のものでは各色何層かのフィルムを一枚に合わせて作られたものだそうで、それにより深みと立体感、更にギラギラした反射感(輝き)も醸し出されていて当に牡蠣柄といった感じの非常に味のある柄となっていました。 対して70、80年代のものでは一枚フィルムにああいった柄を刷り込んで作られたものであるらしく、見た目が平板なものになってしまっています。 多分コストのことも有るのでしょうが、見た感じも60年代のものからすれば省略された様な印象を受けてしまいます。
 そして更に90年代以降はより省略された様なものに変わって来ます。 しかしながら、90年代にはアニバーサリーなどで多少深みを見せるものも見受けられます。これは、一枚プリントながら上手く深みを持たせる様な処理によって製造されているものと思われますが、それでも60年代と同様のものはやはり再現されず、柄はより細かく黒っぽいもので、立体感、反射感などでは60年代のものに遠く及ばないものです。
 随分前から社外品の貼り替え用カバーリングというものも製造されていて、それこそ各社各様、とてもBOPと呼べないものからかなり再現性が良く一見本物かと思わせるものまで色々有りますが、やはり製造方法の違いからか本物の60年代BOPとほぼ同一と言えるものは無いと言っていいと思います。 逆に有ったら貼り替えものを本物と偽って売りつけられるなんてことも出て来たりしそうでそれはそれで嫌ですけど... 
 因みに60年代のものはデュポン社製のもので、材質も今のものと比べると脆く、一部の石油系のクリーナー、ワックスなどを使うとカバーリングに染み込んだその油分が抜ける時に割れが生じたりしてしまうことがまま有るとのことで、60年代ヴィンテージのラディックをお持ちの方はBOPに限らずカバーリングものは気をつけて扱わないと割れてしまう可能性が有るということは覚えておいた方がいいでしょう。 実際、ヴィンテージでは割れてしまっているものもかなりの頻度で見られます。
 70年代以降のものでは経過年数上でも60年代程割れているものは見受けられませんが、今度は張り合わせ面から剥がれているものが出てきます。 この不具合は90年代初めの頃に更に多く見られます。
 この様に何故か時を経るにつれ60年代のものからは離れていく印象のBOP色で、リンゴのファンからすれば復刻モデルで60年代のものを正確に再現してくれればもっと売れるだろうにということは多分多くの人が思うことだと思います。 同じ事は金属パーツなど他のことにも言えますが、その辺りは又別の機会に。
 BOP色で1つ言える事は、リンゴのドラム=BOPという印象が余りに強い為にコピーバンドのライヴでドラムがBOP色なら例えそれが、70年代のもので有っても90年代のもので有っても、ひいてはラディックでさえ無くてもそのステージ上で占める面積からも目立つ楽器で有るだけにステージ全体がビートルズの雰囲気になるのでフルコピーされるバンドさんには是非BOPのセットを使って貰えたら観客側としてもちょっと嬉しいですね。 

 

4.リンゴのスネア

リンゴのドラムセット名に始まってその特徴的な色に関してお話ししたところで、ドラムセットのメインとなるスネアについて幾らか書いてみたいと思います。
 とは言うものの、なにぶん素人のことですからその音色がどうとかに関してあれこれ語るなどということは難しいことですので、素人は素人なりに今迄に判ったことを中心に書いてみます。
 先ずはそのスネアのモデル名ですが、今や言わずと知れた名器「ジャズフェスティバル」です。 「今や」と書いたのは前記のセット名などと同様リンゴの使用モデルとしてはついこの間(と思える位最近)迄そのモデル名さえあまり語られることの無かったものだからです。 このモデルがジャズフェスティバルとして作られたのは60年代から70年代の頭に掛けてで、基本的な仕様は木胴の8テンションモデルで機構的には特に奇抜なところの無いスネアドラムです。 実はリンゴがこのスネアをセットと共に入手した当時ラディックの木胴スネアの中で(ラディックの売りは金属スネア)カタログ上筆頭に挙げられていたのは当初バディリッチモデルとして発売されていたスーパークラシックモデルだった様で、それはスネア以外の単品ドラムやセット名と同様の命名(クラシック、スーパークラシック)にも現れておりジャズフェスティバルより多少なりとも高価なモデルでした。 では何故リンゴがスーパークラシックでなくジャズフェスティバルを選んだのかという話になると正直なところさっぱり判りません。 この時のスーパークラシックとジャズフェスティバルの違いはカタログ上(あくまでカタログ上)はその深さとスネアスウィッチ(既にストレイナーという言い方が一般に定着しているので以下ストレイナー)の違いのみであったので、機能の違いで選ばれたとすればストレイナーの使い勝手がジャズフェスティバルの方が良かったとか、1/2"の深さの差に拠る音の違いがジャズフェスティバルの方が好みだったとかが考えられますが、後者に関しては又後述する様なことも有り、まず有り得ないことかと思われます。 あとは、セット納入時又はリンゴが店頭でドラムを選んだ時点でたまたまスーパークラシックでなくジャズフェスティバルが有ったのでそれになった等の理由が考えられます。 なにしろ、リンゴがジャズフェスティバルを使用した為に後々スーパークラシックよりジャズフェスティバルがより珍重される様になったのでやはりリンゴが世の中のドラマーやドラム市場、又ラディック社に及ぼした影響というのは相当に大きなものであるという事は今更言うまでも無いことです。 仮にリンゴが選んだのがスーパーセンシティブだったとしたら(註1今頃世界中のリンゴファンのドラマーは高価な専用スナッピーの入手に泣いていたかも知れません。
 さて、上でチラッと書いた胴の深さの話ですが、これについて現在進行形で(2005年12月現在)様々な議論がなされています。 というのも、ジャズフェスティバルは少なくともカタログ上5"のもののみしか無い筈ですが、 今現在ジャズフェスティバルとして市場流通しているものの中には何故か5.5"(5 1/2"でスーパークラシックモデルと同じ深さ)のものが有り、それだけならジャズフェスティバル人気からスーパークラシックのストレイナーのみP-83(60年代ジャズフェスティバルの標準)に交換したものを気付かずに買わされているんじゃないかなどと思うかも知れませんが、慌ててストレイナーを取り外してみる前に、リンゴ使用のジャズフェスティバルにも深さが5.5"に見えるものが有るという話もあちらこちらから出ているということもお話ししておかなければいけません。 1/2"と言えばメトリックサイズにしてたった12.7mmなので写真で見てちょっと厚く見えるというだけなら錯覚じゃないかとも言える程度の差ですが、あまりに多くの人から同様の話が出たり、厚く見えるスネアが実際測ると1/2"厚かったりという話も有るので、ここまで来るとリンゴ所有のジャズフェスティバルの中に5.5"のものが有ったとしても有り得ないことでは有りません。 更に、リンゴのドラムを長年研究し現在までに数多くのヴィンテージドラムを見て来た或る方から60年代当時、リンゴがジャズフェスティバルを使ったことからジャズフェスティバル用の胴の生産が追いつかなくなり一時的にスーパークラシックなど別のモデルの胴を1/2"程度のことは問題にならないのではないかという理由で流用して生産されたのでは無いかということも考えられるという話も聞いたことがあります。 いずれにしても1/2"の差が見た目はともかくリンゴがスネアを選択する時点でそれを選択の理由にする程の音の差になるかと言えば素人考えでも「?」マークを付けざるを得ません。 実際にスーパークラシックと叩き比べていないのでこれも想像では有りますが胴の素材など、ストレイナーと深さ以外に違いが無いことから音自体には然程違いが無いのでは無いかとも思われます。
 スーパークラシック(スネア)とジャズフェスティバルの関係についてはこの位にしておいて、いま少しリンゴのジャズフェスティバルについて書いてみたいと思います。 
 リンゴが初めてジャズフェスティバルを入手したのは1963年のことで、60年代を通してほぼ変わらず製造されていたジャズフェスティバルの中でも1年程しか生産されなかった大変希少な仕様のものであり、これをして現在リンゴのものと同様のヴィンテージラディックを入手しようと思う人には頭痛の種の1つになっています。 具体的な仕様としては、キーストンバッジがトランジションの時期を経てシリアルナンバーを刻み始められる以前のプリシリアルと呼ばれる期間のもので、ベースボールバットミュートと呼ばれるレバー状のノブを持った内蔵ミュートの右隣にラグ1つ挟んで先述のプリシリアルキーストンバッジ、更にラグ1つ挟んで右側にP-83ストレイナーが配置されていて(楽器購入ガイドドラム編参照)、フープはスナッピー部分が下に落とし込まれたドロップフープと呼ばれるものになっています。 今現在流通しているオイスターブラックのジャズフェスティバルの多くはそれより後の時期に作られたもので、次に多く見かけるのは逆にそれ以前のトランジションバッジに丸いノブの内蔵ミュートのものです。 上で触れた様に、リンゴが使っていたことから人気のあるジャズフェスティバルですが、やはりオイスターブラック色のものとそれ以外では市場価格に随分と差が有り、例えばオイスターブラック色のものが\400,000だとするとそれ以外のものでは\60,000といった具合です。 面白いのは、通常カバーリングを貼り替えると価値が下がるヴィンテージにおいて、ジャズフェスティバルの場合、品質の良い60年代のものにより近いBOPカバーリングに貼り替えられたものはオリジナルのオイスターブラック以外の色のものより値段が高くなったりすることです。 同様に、ジャズフェスティバルとの違いをラグの数(6本)のみとするパイオニアモデルを8本ラグに付け直した上でカバーリングを貼り替えたり、ストレイナーなどの位置をずらしたり、内蔵ミュートを交換したりと改造されたものも見られます。 
 リンゴと全く同じ仕様のオイスターブラック色ジャズフェスティバルが市場に出ているのは殆ど見たことが有りませんが、1度だけ(正確には同じ物を2度)全く同じ仕様の「デッドストック!!」というのが売りに出されているのを見たことが有ります。 あまりの高価さに結局売られることは無かったと記憶しています。 

註1:1964年にはリンゴのラディック社に対する貢献度を称えられ金メッキのスーパーセンシティブをプレゼントされており、又後期にはセットがハリウッドセットになりますが、それでも変わらずジャズフェスティバルを使い続けています。 戻る

 

5.左が大で、右が小?

タイトルを見てピンと来た方は結構なマニアでは無いでしょうか。
そう、そういう方には既にご想像の通りシンバルのお話です。 実はシンバルについてはその見た目からどんなモデルであるかが余程のエキスパートで無いと判らないと思うので、今のところリンゴの使っていたシンバルが何というモデルだったかは残念ながらここでお話することが出来ません。 リンゴのシンバルの詳細な情報を求めてここに辿り付いた方には予めお詫びしておきます。
ここでは、今判っていることや推定されることという前提でのお話をしたいと思います。
ということで、本題に戻ってドラマー以外の方には多分何のことだか解らないであろう「左が大で、右が小」の不思議についてお話ししたいと思います。
通常クラッシュシンバル(アクセント的に入れるが、他と同様、タイミングをとったりその他重要な役割を持つ)は比較的薄めで小径のものが使われ、ライド若しくはトップシンバル(主にリズムを刻んでいくのに使われる)にはそれに比べ厚めの大口径のものがよく使われます。 そこで、リンゴのドラムセットの写真を見て頂くと気付くと思いますが、ドラマー側から向かって左側、つまり通常クラッシュとして使われるシンバルが大きく、逆に右側の同じくライドとして使われるものが小さいのが判ると思います。 この傾向は少なくともリンゴがLudwig3点セットを使っている期間ずっと変わらないものです。 ここまで読んでリンゴは左利きの筈だから左側をライドに使って右側をクラッシュにしていたんじゃないかと思われた方も中にはいらっしゃるかも知れません。 そういう方は今迄映像を観る時にあまりそのあたりに注意を払っていらっしゃらなかったドラマー以外の方なのだと思いますが、その考えの幾らかは当たっているのかも知れません。 というのは、リンゴは右側の通常ライドとして使っているその小さめのシンバルをクラッシュとしても効果的に使っているからです。 では、普通ライドシンバルをクラッシュとして使うことは全く無いのかというとそんな訳では無くごく普通に行われることです。 要はその場に合った音が得られればいい訳ですから。 それならそういう普通の使い方とリンゴの使い方の何が違うのかと言えば、多分左利きの利点を生かして左側のクラッシュを叩き易い時は左、右側のライドを叩き易い時は右を使っているのでは無いかと考えられます。 リンゴがライドをそういう使い方をした時にライドが厚く大口径なものだった場合曲調には合わないのかも知れません。 ライドが厚くなくて小口径なら逆にライドとして普通に使った場合思う様な音が得られないのでは無いかと思ったドラマーの方もいらっしゃると思います。 当にその通りで、今現在購入出来る小口径の(特にリンゴが使ったと思われる16"や18")ものではなかなかリズムを刻むのに適したライドは見つからずクラッシュやクラッシュライド(クラッシュにもライドにも使える様な音質特性のもの)になってしまいますが、どらも16"の出来るだけライドにも使えそうなものを買って使ってみた結果は「全く駄目」としか言えないものでした。 リンゴの場合はハイハットにしても割と派手に鳴らして連続した音を出す傾向が有るので寧ろその方が好都合なのでは、と考えてもあまりに軽薄な音になってしまう為、どうやらリンゴの使っていたものはもう少し厚みがあって尚且つクラッシュとしても使える程度のものなのでは、と想像されます。
逆にクラッシュの方はあまりに厚みが有って大口径なものでは当然のことながらやはりクラッシュとして使うには適さないと考えられます。 では、何故リンゴのものは大口径なのか。 これに関して2,3先にお話しておかなければならないことが有ります。 先ず、当時はリンゴが使っていたジルジャン(と恐らく他のメーカーも)には大口径のクラッシュライドシンバルが普通に存在していて、リンゴと同様に左側に置いて使っていたドラマーが他にも居たという事実が有ります。 同様に前述のライドに関しても現在と較べるとその仕様の幅は広かったということも言えますが、更にリンゴはそのシンバルがどんな大きさで厚さであろうがそこに有るものを叩いていただけだと語って下さった専門家もいらっしゃいました。 多分そのどちらもがリンゴのクラッシュがあんなに大口径のものだった理由の一部でしょう。 実際、リンゴが左側のクラッシュを叩いて出す音はクラッシュとしてなんらおかしいところの無い音でした。 
ここまで書いて来て、尚リンゴのシンバルの大きさの疑問に答えるには至っていませんね。 今現在これだけは確かだと言えることは限り無く無いに等しいです。 どらが楽器購入ガイドドラム編などに書いたシンバルの寸法に関しては数多くの写真のドラム類の寸法から算出(といっても難しい計算をして出したものではありませんが)したものです。 これも今の段階で絶対だと言えるものでは有りませんが、その組み合わせこそ何通りか有るもののほぼ間違いの無い寸法だと思っています。

 

6.リンゴのセット、そのハードウェア

4でリンゴのジャズフェスティバルが希少だと書きましたが、実はリンゴの使っていたドラム機材の殆どが非常に希少なものです。 その理由はそれぞれ作られた期間がごく短期間のものが殆どで現存するものの総数が少数だと想像されるからです。 とりわけジャズフェスティバルのリンゴと同一仕様のものは非常に入手困難と言えますが、以下のハードウェアも相当に入手し辛いものです。
では、順に挙げてみましょう。

  • ハイハットスタンド:No.1123 Direct-Pull Hi-Hat stand というもので、僅か2年足らずの間しか作られませんでした。 後継モデルNo.1123-1と異なるのは脚部がフラットベースになっている(1123-1は三脚状)点です。 これと間違い易いのはNo.1121で、脚部が似ている為に小さな写真などで見ると見間違う可能性が有りますが、ペダルの踵部分とスタンドを下で繋いで居るパーツが1123ではロッド状になっているのに対してプレート状になっていたりロッドを引き下げる部分の意匠も大きく異なっています。

  • スネアスタンド:No.1358C Buck Rogers snare stand これは、後述のバスドラムアンカー同様Walberg & Auge が製造、各ドラム会社に卸していたものです。 やはりこの形状のものは希少で、バスケット部分は似ていても脚部が一般的なほぼフラットのもの(1358では三脚状になります)、逆に脚部は三脚状でもバスケット部分の形状が異なるもの、その他同じWalberg & Augeが他社に収めたもので形状が微妙に異なるものなど間違えそうなものは幾つか有ります。 この後継モデルと言えるNo.1364-3Atlas drum standは脚部は同じ三脚状でも、その3本の脚部を下部でスタンドのセンターパイプと繋ぐ部分が1358では水平になるのに対し、現在のスタンドにも多く見られる斜めのものになり、又1358では三脚部が上部パイプとの継ぎ目の直下から開いているのに対し、1364では下部パイプの中間点辺りから開いているので見比べればその差は明確です。

  • シンバルスタンド:No.1400 Flat Base cymbal stand このスタンドの特徴は脚部がフラットである事、3段のセンターパイプの最上部のものの高さを調整する為のパーツが一般的なものではパイプ自体を面で締め付けて止める仕組みになっているところを断面形状がL字型で(棒状の−後述)上部パイプに通すリング状のパーツを螺子を締めていくことで得られる角度の差を利用した線で止める仕組みとなっています。 この辺りは、言葉だけでは全く解り辛いと思われるので是非とものりさんの「Ludwig バンザイ!」を参照してみて下さい。 因みに下から1段目と2段目の高さ調整をする部分は一般的な面で止めるタイプですが、2段目と3段目を線で支えるタイプの1400はやはり短期間しか製造されておらず後継のNo.1400では2段目と3段目の高さ調整も面で止めるタイプに変更されています。
    又、最上部のパイプは実際には中空のパイプでは無く棒状のものです。

  • バスドラムペダル:No.201 Speed King 言わずと知れた名器と呼ばれるペダルで、リンゴに限らず多くの名ドラマーが使用して来て、今に至るまで基本的な仕様に殆ど変更を受けないまま製造され続けています。 とは言え、時を経るにつれ少しづつモデルチェンジはされていて、現行のものは勿論リンゴが使用していたものとは異なります。殊に90年代以降は色が黒になってパッと見でもすぐに違うと判るのですが、60年代当時でも違いはペダルプレートのデザインの違いに現れています。 残念ながらリンゴが使っていたのがWFLマークのものなのか、スクリプトロゴと呼ばれるLudwigマークのものなのかはその部分を映した鮮明な写真が見当たらない為不明ですが、その辺りに拘らないので有れば希少なリンゴ使用のハードウェアの中に有って比較的入手し易いものであると言えます。

  • ドラム椅子:No.1025 Porto-seat 一口にPorto-Seatと言っても微妙にことなるものが多く存在し、又リンゴ自身もPorto-Seatだけでなく色んな椅子を使った様なので詳細にこれがリンゴの椅子だということは今の段階では言えませんが、これもバスドラムペダル同様拘らないという前提なら割と入手し易いかも知れません。

  • タムホルダー:Rogers No.362R Swiv-O-Matic shell mount tomtom holder ラディックの純正品はNo.782C Clipper Shell Mount tomtom holderで、リンゴも入手当初そのまま使っていましたが、間も無くその使い勝手の悪さからかロジャースのものに変更しています。 ロジャースユーザー、ロジャースコレクターの方には申し訳ないことに、リンゴがこれを使っていた為にこのタムホルダーもかなりの希少なパーツになっています(そう言うどらも1本持っていますが...)。 タムの角度調整も簡単に出来る使い勝手のいいホルダーです。

  • バスドラムアンカー:No.1304若しくはRogers No.1601C Bass drum anchor 上記の様にWalberg & Auge製造のものですが、ラディックカタログに見られるものは若干幅が広く、同じ品番で狭いものが有ったかどうか不明な為、リンゴのものと同じ幅とみられるロジャースから販売されていたものがリンゴの愛用品であったのかも知れません。 似た様なものは幾らか販売されていますが、同型のものでしかも程度のいいものとなるとなかなかお目に掛かれない状況です。 特にそのゴムパーツはものがゴムなだけに劣化した為交換されたのかその特徴的な形状のもの(実はBuck Rogers snare standのバスケット部分に使われているものと同じもの)から一般的な足ゴムと同タイプのものになっていたり、剣先部分も削られていたり、又錆がひどいものなどが多く見られます。 やはり程度のいいものは入手困難と言えるのでは無いでしょうか。

以上の様に今となってはどれを取っても簡単に安価に入手出来るものは無くなってしまっています。
何故リンゴがこれらの希少なハードウェアやスネアドラムを選んでのでしょう? 
別にリンゴが意識して希少なものを選んだ訳では無く、たまたまリンゴが選んだものの製造期間が短かっただけなのだと思います。 スネアにしても、ハイハットスタンドにしても、シンバルスタンドにしても後継モデルに移行する為の過渡期のモデルだったということが言えるでしょう。 言い換えるならリンゴが初めのセットを手にした時期がたまたまそういう時期に当たっていて、尚且つリンゴがそれらのものを気に入っていたか、壊れなかった為に新たに購入する必要が無く初めに入手したものを使い続けたに過ぎないのかも知れません。

 

7.コピーバンドは音楽か否か

ここまで、ドラムに関して書いて来ましたが、一旦小休止して違う話題で書いてみたいと思います。

コピーバンドは音楽じゃなく猿真似だ、いや音楽だ、などと論議されることが往々にして有ります。 コピーバンドのやる演奏が音楽かそうで無いかは、演奏する側の意識に掛かっていると思います。 その話をするには先ずコピーバンドとは何かを考える必要が有りそうです。 では、順を追ってみてみましょう。
一般にコピーバンドと言った場合、元になるバンドの演奏をその音源(CDなりライヴなり)を再現することが基本となると思います。 究極はCD音源の生演奏版で有ったり元のバンドがやったのと同様にライヴを再現して聞かせてくれることです。 その存在意義は、元になるバンドが既に存在しなかったり、存在していてもライヴで観ることが不可能な場合にそのバンドの生演奏を疑似体験させてくれるところに有ります。
そしてその疑似体験を更に真実味を以て体験させてくれるという意味で、元のバンドが使用していた楽器と同様の物を使用したり、服装や髪型、果ては振りまで模倣してやるということは意味のあることです。
実際、どらが初めてコピーバンド(厳密にはコピーバンド:Tribute bandとは呼ばれませんが)というものに触れたのは80年代初頭に演じられたミュージカル"Beatle Mania"ですが、どらがビートルズを知った時点で既に本物のビートルズは解散していて生演奏を観ることは不可能だったので、これを観た時は感動しました。 まるで本物を観ているかの様な錯覚にさえ陥りました。 それには出演者がビートルズのそっくりさんを集めて構成されていたことも有りますが、とにかく本物のビートルズの様な演奏が生で観られたというだけでそれは嬉しかったものです。 
では、何をしてコピーは音楽に非ずとまで言わしめるのか、それはコピーバンドの中に音楽をやるということを後回しに格好だけ真似て実際の演奏はひどい時には演奏と言えない程のものだったりするバンドが多く見られるせいでは無いでしょうか。 かく言うどらもそんなひどいものを他人様の前でお見せしてしまったことが有るのでこんなことを書けた義理では無いんですが。 ただ、先に述べた様に演奏の出来、不出来の前にもっと大切なものとして演奏する側の意識の問題が有ります。 一生懸命音楽をやろうとして出来ないのは腕前がついていかないだけで頑張って練習していれば少しずつでも上手くなっていくでしょうし、一生懸命やっているのは聞き手にも伝わるので、そんなひどい評価は受けないと思います。 問題なのは、演奏する側に音楽をやるという意識が無い場合です。 たとえ本人達が音楽をやっていると言っていても本人達が「音楽」というものを勘違いしていて、実は音楽じゃない場合も有ります。 そんなバンドが楽器がどうのこうの、服装がどうだのということを言っているならそれは批判されてもある意味仕方ないことなのかも知れません。
どらは個人的にコピーバンドとクラシックの演奏は似ていると思います。 こんなことを書くと、又何を馬鹿なことを、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、クラシックの演奏は作曲家の書いたものを出来る限り作曲家の意図した様に演奏することが大切だと考えます。 そうしてこそ、作曲家の書いた本当の音楽を体験出来ます。 コピーバンドもその意味では同じでは無いでしょうか。 元のバンドが作って演奏したものが、そのバンドが聴いて貰いたい本来の形だとしたら、それを忠実に再現することがコピーバンドの使命であると言っても言い過ぎでは無いと思います。
いい音楽はアレンジして聴かせてもそのアレンジが元の作品を壊す様な悪いもので無ければ楽しんで聴くことが出来ます。 その意味で、元バンドの作品をアレンジしたり自分なりの解釈で演奏するカヴァーバンドは悪くは無いと思います。 但し、それをもってカヴァーは音楽でコピーは音楽で無いということにはなり得ません。
以上、言葉足らずのところも有るかも知れませんが、コピーバンドも立派に音楽であると言えると思います。

 

8.リンゴのシンバル

上記5で、リンゴが使っていた当時のシンバルの種類について少しだけ書きましたが、50、60年代のジャズドラマーの写真などを見てみるとクラッシュとライドの大きさに差が無かったり、リンゴの様にクラッシュ、ライドの径が逆転しているドラマーも見られることに気付きます。 ドラムスの歴史を考える上でジャズは欠かせないものです。 何故ならドラムセットはジャズと共に発展して今の形になって来た楽器であると言えるからです。 
50年代のジャズドラマーにそういったドラマーが居たということは、リンゴがそれらを参考に自分のドラムの組み合わせを考えたということは想像に難くありません。 今のロックドラマーの多くが直接的、間接的にリンゴや当時ロック黎明期のドラマーの影響下にあることと同様に当時のロックドラマーはやはりそれ以前のジャズドラマーの影響下にあったと言えます。
以上のことから、リンゴの様なシンバルのセッティングは当時としては然程珍しいものでは無かったのかも知れないことが想像出来ます。 調べてみればリンゴ以外にも当時のロックドラマーで同じ様なシンバル構成のドラマーは居るかも知れません。

 

9.リンゴのセッティング

ビートルズコピーバンドのドラマーさんで、リンゴのドラムセッティングまで忠実に再現しようとしている方が幾らか有ります。 そういったドラマーさんのセット持込で、それ程まで拘らないドラマーさんの居るバンドさんがジョイントになった場合、多くの場合後者のドラマーさんの目は点になります。何故ならそのセッティングがあまりに現在普通になっているセッティングとかけ離れているからです。
中でも特徴的なのはTTの位置で、低く打面が水平に近い角度になっていて随分前の方(奏者から離れる方向)にセットしてあります。 現在は比較的高めの位置で奏者側に或る程度傾けるのが普通になっていますが、60年代当時はああいったセッティングが普通で当時のセオリー通りセッティングしていたに過ぎなかったと思われます。 FTも特に傾きを設けずほぼ水平に、大体SDの打面と近い高さに打面が来る様な高さになっています。 そのSDの打面の高さは20"BDセットの場合でTTの打面とほぼ近くなる様な高さに設定されており、SDの位置は前方に位置したTTに近づく様にやはり前方に置いてあります。 SDの傾きはリンゴがマッチドグリップの関係上、幾分奏者側に向いています。
BDの前後の傾きはつけて居ないといって良い(ドラムアンカーの剣先程度の浮きは有り)と思います。
HHとSDの高さ関係は若干現在通常されているものより離れているかも知れません。前後はSDが前に出ているのでそれを基準にすると幾分手前に来ていますが、これはBDペダルとの関係から決められているものと思われます。 ライド、クラッシュの両シンバルはどちらも高めにセッティングされていて、奏者左側のクラッシュの方が幾分高めになっています。 TT打面とクラッシュの高低差はTTの深さ分程度のことが多い様ですが、これはその時ごとに幾らか違っています。 スタンドの位置はライド側がBDの前に出ず、その胴にかなり接近した位置に来ます。 クラッシュ側はやはりBDの前には出ず、TTの外側に擦り寄る様な位置にあります。
椅子は高めですが、これもその時によって異なっていて多少低め(それでも通常よりは高め)になっている時も有った様です。 椅子が高めなのは、TTなどが水平に近くセッティングされていることにも原因が有る様で、実際低い位置でリンゴのセッティングにして叩いてみるとリムを打つなどミスショットが多くなります。
上記の様にTTの位置が全ての基準になっている様なので、リンゴと同様のセッティングにする為には先ずTTの位置を決め、それに合わせてSD→FT→HH→クラッシュ→ライド→椅子という順でセッティングしていけば手早く出来ます。

 

10.団扇はたき?

リンゴの奏法の特徴として良く挙げられるものに、HHの叩き方が有ります。
通常のスティックを上下に振る叩き方と異なり、前後に振ることから俗に「団扇はたき」などと言われますが、単純に前後に振っているだけでは無く、例えばリンゴの演奏している映像をハイハット側からアップで撮った映像などを観ると実にリズミカルに跳ねているのに気付きます。 
この奏法の効果の大きなところは通常のアップダウンよりも連続した音を出すことでスピード感が出せることで、これがリンゴ独特のグルーブにも繋がっていますが、先述の「跳ね」によって上手く、非常に上手くアクセントもつけられていることも忘れてはならないことです。 団扇はたきを真似ても上手くリンゴの感じが出せないという方はその辺りに留意してやってみると上手くいくかも知れません。

11.何故にヴィンテージか?

楽器購入ガイドのドラムのところに究極はヴィンテージだと言う様なことを書きました。 それは、何故でしょうか。
結論から言うなら、リンゴと同じ(様な)音が出したい、リンゴの使っていたものと同じものを使いたい。 といったところでしょうか。 リンゴ、リンゴと言っていますが、これは他の楽器も同じことです。 
復刻版ではその目的は達成出来ないのでしょうか? 答えは当然の如く否です。 では、どこがどう違うのでしょうか?
その前に断って置きますが、このページは楽器を知らない人の為にも書いています。 ですから、楽器マニアや多少でも解っている人には当然で、何を今更なことも書きますのでご了承を。
さて、話を戻して楽器購入ガイドのところとも重複しますが、簡単に言ってしまえば、ヴィンテージと復刻版は全く違うものです。 良く知らなかったり、あまり興味の無い人には一見同じ様に見えるかも知れませんが、その実何から何までが違うものです。 同じところが有るとすれば、それは同じドラムセットという楽器であることと、メーカー名だけで、あとは何から何まで違うのです。
当然のことながら古さは違います。 古いものと新しいものでは音の枯れ具合も違ってきます。 木胴なので、木が年数を経ることで違ってきて当然のことも有りますし、ヴィンテージがどの様に使われ保管されて来たかでも違って来ます。 しかしながら、このことは、リンゴと同じ音を追求する上ではあまり関係有りません。 リンゴや他のメンバーは当時の新品を使いこんでいったのであって、初めから中古品を使っていた訳ではないのですから。
では、他に何が違うのでしょう。 大きく以下の3点ですが、これだけで全てが違うと言い切って良いと思います。

  1. 胴等の材質や製造方法が違います。 詳細は楽器購入ガイドを見て下さい。
  2. 各パーツの形状も違います。
  3. 色も違います。

楽器のことを何も知らなくてもこれだけ違えば音も当然違って来るだろうことは想像に難くないと思います。 何よりコピーバンドにとっては外観が全く違うのが許せないところです。 復刻版と謳っておきながら(実際にはメーカーは復刻版とは言っておらず、それを暗示するに留まっています)何故にあそこまで違うものになってしまうのでしょうか? その理由はメーカーに訊いてみないと判りません。 しかし、現実にはヴィンテージを買うことは出来ないけど復刻版の出来はあんまりじゃないかと思っている人達は多いと思います。 多くの人達が復刻版をヴィンテージに近づけようと、パーツを交換したり、カバーリングまで巻き直したりして来た筈です。 それでも結局「本物(ヴィンテージ)」にはならないので、結局頑張ってヴィンテージを買うことになるのです。 メーカーが本気を出して、何から何まで当時のままを再現して発売してくれたら、それはヴィンテージを既に所有していても欲しくなる位魅力のある商品が出来るでしょう。 良い例がリッケンバッカーのCシリーズですが、製造が追いつかずそれぞれのモデルを入手するのにかなりの時間を要している様です。 ラディックがそこまでやらない理由の大きなところはやはり採算性なのでしょうか。
以上、この項はヴィンテージが欲しくても「今持っているの(復刻版やコピー)でいいじゃない。」などと家族に言われて買うことを許されない方々に捧げます。

12.リンゴのスネアその2

リンゴのスネアその2というと、リンゴが持っていたメインのJazz Festival以外のJazz Festivalのことか、はたまたプレゼントされたスーパーセンシティブのことか、それともそれら以外に当時リンゴが使っていたスネアが在ったのか等期待された方には期待はずれで済みません。
残念ながら、上記の「リンゴのスネア」の補足事項です。
上に書いた様に、リンゴのJazz Festivalは5.5"に見えるとか、Jazz Festivalには5.5"が存在するなどと言われ始めて久しいですが、今日は管理人が管理するもう1つのサイトLudwig fansの掲示板にたまたまご質問を頂いたので、そろそろ頃合かと思い書くことにしました。
と言っても、これから書くことに確固たる確証は有りません。 あまりにそのことが問題とされる機会が多いので色々考えて来た管理人としての推論を書きたいと思います。 推論なので勿論真相は今のところ闇の中です。 闇の中ですから皆さんそれぞれ楽しく自分なりの想像を楽しんでみるのも良いかと思います。

では、前置きはこの位にして本題に入ります。
上記の通り、当時のラディックの木胴スネア最上級(ラディック社一押し)モデルに当たると思われるものはSuper Classicモデルだと思われます。 これは、カタログ上木胴のものとしては一番に載っていて一番大きく取り上げられていたり、又50年代にはラディックエンドーサーナンバーワンのトップドラマーBuddy Richの名を冠していたことや、価格からも解ることですが、これが5.5"だったことは既に触れました。
更に見ていくと、50年代ストレイナーにJazz Festival同様P-83を使ったJazz Festivalの前身モデルと思われるスネアが在ったのですが、これが又5.5"。 更に深い6.5"や8"、後のダウンビートに当たる浅いものも有りましたが、(少なくともカタログ上)Jazz Festivalに当たる5"のものは有りませんでした。 
Jazz Festivalとしてカタログに載る様になったのは60年代に入ってからですが、そこで思い浮かぶのは過渡期モデルの存在です。
モデルチェンジの時期には各パーツやその他仕様が前身モデルを引き摺った様なものが常に存在しています。
もうここまで書けば想像が付いたと思いますが、リンゴのJazz Festival5.5"に関しての管理人の推論としては、それは過渡期モデルとしてのJazz Festivalだったのでは?ということです。 前身モデルの5.5"胴の在庫やパーツと深さ以外には共通の他モデルに多く使われていた同じ5.5"胴の存在を考えれば、そう考えるのは自然かと思います。
これには、相当数の5.5"モデルの存在や、リンゴが入手した時点で60年代に入って暫く経っていたことなどで反論もあるかと思いますが、その反論を実証するには当時一定の時期迄に5.5"胴の在庫をJazz Festivalに使うことは無くなっていた等、当時の現場を知る人からの証言などを得る必要が有ります。勿論、管理人の推論に関しては言わずもがなです。

以上が自分なりに納得のいく推論なんですが、そのうち真相が明らかになる日も来るかも知れませんね。

13.ビートルズコピーバンドというもの

久しぶりの更新です。 
上記7でコピーバンドは音楽か否かということについて述べました。 考えは今も同じですが、ビートルズのコピーバンドは他のバンド等のコピーと較べても特に一部の方々から「ビーヲタ」などと馬鹿にされることが多い様です。 理由は先に述べた様に、その意識の低さに有ると思いますが、それに加えて演奏や歌、また、楽器やその他のことについて拘るあまり他人の演奏に厳しい人が多いことと、それでも言うだけ上手くてプロ並みの演奏だったら未だ許されると思いますが、自分の演奏は他人の事言えた義理じゃない様なものだったりとか。 
じゃあ楽器なんかはともかく演奏、歌は適当で良いや、やってる本人さえ楽しかったら良いでしょ、というのは絶対に間違いです。 誰がそんな「糞演奏」わざわざ足運んで観に行くのか。 無料だから良いでしょう?っていうのも違います。 自家用車で行くにしろ、公共交通機関で行くにしろ、わざわざ時間を割いて観に来てくれている人に対して、その態度はあまりに失礼です。 ましてや、ライヴハウス等でライヴチャージが掛かっているところなら尚更のこと、お金払って迄観に来てくれている人に、そんないい加減な演奏を披露して良いものでは有りません。 プロじゃないから、会社員やりながらで練習時間が無いから、なんて理由で許されるものでは無い筈です。 少なくとも一生懸命精一杯練習した結果不本意ながら満足いくものになりませんでした、申し訳ないですが今出来る精一杯の演奏します、位の気持ちでやるならまだ良いですが、初めから自分達が楽しかったら良い、っていうのは何度も言いますが全く間違った態度です。 自分達が楽しければ良いならライヴなんかやらずにスタジオなりなんなりで練習だけしてたら良いでしょう。
話が少し戻る様ですが、それでは他人の、他のバンドさんの演奏に厳しいので無く自分達が練習する時に細かいところまで拘ってやるのはどうでしょうか。 この点はバンドとしての方向性に関わることなので、どこまで拘るのが正しいというのは一概に言えない話ですが、コピーバンド本来の意味、意義から言うなら拘るあまり音楽で無くならない程度に出来る限り拘って欲しいと、個人的には思います。 で、拘って練習した結果、まるで本物の様な演奏が出来る様になったとします。 それなら、本物のCD聴いたり、映像観たりしてれば良いじゃん、っていうのも違うというのは多分解って貰えると思います。 本物そっくりに演奏してくれるコピーバンドが本物のCD聴いたり、映像観たりするのと同じ、またはその方が良いというなら、ライヴなんか無くても良いことになりますね。 又7で述べたことと重なりますが、本物のビートルズの演奏を生で観ることが出来なくなった今、生演奏でビートルズを疑似体験させてくれることこそがビートルズコピーバンドの意義だと言って良いと思います、従って本物そっくりであればある程、コピーバンドとしては優秀だと思います。 但し、人によっては本物で無いこと自体がどうしても許せないという人も居るのかも知れません。 そういう方は、自分の信念に従って本物のCDや映像だけに拘っていれば良いのだと思います。 考え方は人それぞれですからね。 でも、 だからといってコピーバンドを馬鹿にした様なことを言うのは間違いです。 本物だけしか許せない人も居れば、コピーバンドの演奏を楽しみにしている人も多く居るのですから。
またまた言葉足らずで言いたいことの半分も言えていない気がしますが、また上手く説明出来る様になったらここで書いていこうと思います。

14.ビートルズコピーバンドのドラマーについて

今回、ドラマーについてというタイトルを付けましたが、これにはこのサイトの管理者で有るどら自身がそのビートルズコピーバンドのドラマー、所謂「リンゴ役」と言われるものであることもありますが、フロント3人の楽器が弦楽器であり、主に電気楽器である一方、ドラムは打楽器で生楽器(決して生牡蠣では無くアコースティック楽器のことである←あほである(-_-;))というだけでなく、ことビートルズコピーバンドに於いては明確に違いが有る場合が多いと思うので今回はそれについて書いてみようと思った次第です。
では、どんなところが違うのでしょうか。 取り敢えず大まかにはそれぞれビートルズメンバーの各々を担当していて、そのメンバーの楽器を演奏し、各パートを歌ったりという点では4人共同じです。
ところが、フロント3人は大いに拘ってコードの押さえ方、ピッキングや歌い方や、果ては仕草迄真似て、楽器も本物と同じものを揃えようという人達が多いのに対し、何故かドラムだけは何処か違うところから連れて来た臨時のメンバーの様に拘りの無い演奏方法、楽器も置き場所の点など揃えるのが大変だということも有るには有りますが、フルセットじゃなくラディックのオイスターブラックパールのジャズフェスティバルとは言わない迄もラディックでさえ無く、普通に国産のスネアしか無くて、リンゴのセット欲しいとさえ思わないんじゃないかという位拘りの無いドラマーさんが多い様に思います。 演奏方法に関して言えば、リンゴのハイハット団扇はたき位は良く知られているので、取り敢えずそれっぽくやってる人は、そういった拘りの無さそうなドラマーさんの中にも見受けられますが、それ以外の手順等は適当にやっている方が多いですね。 その適当にやっている人達も基礎が出来ていて演奏的にはしっかりしていて、何処かから上手いドラマーさんを引っ張って来たなと思う場合と、全然基礎も出来て無いけど取り敢えずなんとかドラム出来そうな人を連れて来ました的な場合が有ります。 一方で、少ないながら拘っているドラマーも居るには居て、それらのドラマーの中にもやはり基礎が出来てる上で、リンゴの演奏方法を上手く真似て演奏している方と、拘って頑張るけれど、いかんせん基礎が出来てないので演奏レベルが残念なことになってる方も(言ってるどらもそのうちの1人)います。楽器に関しては、前述した様なことも有ってか、上手い下手に関わらずリンゴと同様の(これは復刻版、ヴィンテージに限らず)ものを揃えられる方と揃えられない方が居るのは、家庭やその他との兼ね合いが有るので仕方無いことかとは思いますが、本当に僅かな気がします。
その他に考えられる点は、ギター人口とドラム人口の数の違いなのかとも思いますが、実際ギターをやっていて、その中でリズムギターをやりたい人、リードギターをやりたい人、又ベースギターをやりたい人の数が、ドラムをやりたい人とどれ位の人数の差が有るのかは判らないので想像するしか有りませんが、恐らくとっつき易さという点ではやはりギターには及ばないのでしょう。 ただ、コピーバンドのメンバーを募集した場合、このパートは集まり易くて、こっちのパートは中々居ないということは無い様な気はします。 とすると、ドラムをやる人が少ないからビートルズ演奏の経験有る無しに関わらず何処かから適当な人をなんとか引っ張って来ることが多いが為にビートルズコピーバンドのドラマーに拘りの無い人が多い(様な気がする)という理由にはならないのかも知れません。 それではどうしてそういうことになるのか判らないので、上の方で何故かと赤字太文字になる程疑問な訳です。
勿論色々例外も有りますし、ギター、ベースに関しても同様に、拘る人、そうでない人、上手い人、そうでない人も居るので、自分自身がドラム担当ということで、殊更その辺が気になるだけなのかも知れませんが。
あとは、これも前述の楽器の揃え難さや、ライヴをやった場合の楽器持ち込みの難易度という問題も有り、少なくとも楽器に関しては、リンゴ的なものがステージに並び難いということもそういった印象を一層強いものにしているのかも知れません。
といった訳ではっきりとした結論も出ませんが、個人的には演奏、楽器等に拘った上手いドラマーさんの居るコピーバンドが良いなぁと思うだけで、どんなドラマーが良い、悪いということでは無いので、それだけは誤解されません様に。





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