(5−1)第一次ソロモン海戦

武士道精神が上陸を許す

兵力 経過 結果
 ソロモン諸島の制空権獲得を目標として、日本海軍はガタルカナルに飛行場を建設していた。このソロモン諸島の制空権を握れば、目標であった、アメリカとオーストラリアを分断する事が可能になる。ところが、アメリカもだた見ている訳ではなかった。ミッドウェー海戦の思わぬ勝ちに乗して、日本への反攻作戦を計画したのである。そして、オーストラリアを孤立されない為にソロモン諸島の制空権獲得に動き、日本軍が飛行場を建設しているガタルカナルに目を付ける。昭和17年(1942年)8月7日、突如ガタルカナルを空襲し上陸、飛行場の建設作業員くらいしかいなかった、ガタルカナル守備隊はジャングルに撤退する。思わぬ上陸に慌てた日本海軍であった。が、ラバウルの攻撃機が輸送船団を攻撃したも効果が上がらず、ラバウルにいた艦隊をガタルカナルに向かわせる事になり、8日夜、アメリカ艦隊と交戦する事になる。これが第一次ソロモン海戦である。
(5−1−1)大勝利
 当時日本軍はアメリカ軍がガタルカナルに上陸してくるとは露ほどのも思ってなかった。空母3、戦艦1、巡洋艦2,駆逐艦15の大艦隊を発見できなかった事が、何よりもそれを証明している。上陸を知った日本海軍は、直ちにラバウルに停泊中だった艦隊をガタルカナルに向かわせ、同時に空かもアメリカ輸送船団を攻撃させる。が、なんせ大軍だけに対抗しようがなかった。そこで夜戦を試みる。物資を上陸中のアメリカ艦隊に攻撃をかけ、オーストラリア海軍の護衛も含めて巡洋艦4を沈没させる大勝利を収めた。確かに大勝利なのだが、肝心の輸送船団には全く攻撃せず、輸送船団を護衛していた艦隊には被害を与えたが、輸送船団そのものは被害はまったくないと言う信じられない事になってしまった。結局上陸は成功し、必要な物資を上陸させる事に成功した。輸送船団に攻撃をかけるように具申した司令官もいたようだが、結局この海戦が、その後のガタルカナルの苦戦に繋がる形になってしまった。
(5−1−2)輸送船団
 なぜ輸送船団を攻撃しなかったのか?。それには複雑な問題がある。まず第一に論功行賞の対象になっていなかった事。つまり簡単に言ってしまえば、戦艦や巡洋艦と言った武器を持った艦を沈めたりした場合は出世の対象となるが、非武装の艦を沈めた所で出世の材料にはならなかったのだ。第二に、そもそも非武装の艦を攻撃するのは卑怯だという発想。武器を持っているものは武器にて対抗するが、武器を持っていないものまでは攻撃しない。そう言った「武士道精神」がまだ存在し、それが主流だったのである。従って非武装の艦を攻撃するのは邪道とされていた。第三に、そもそもこの海戦の意味である。アメリカ軍がガタルカナルに上陸してきた。それを阻止する為に派遣されたにも関わらず、ここで単なる海戦をやってしまった。もちろん普通の海戦であれば、武装した艦を攻撃するのが目的である。従って目的は達成されている。対アメリカ艦隊には圧勝しているからである。ところが、本来の目的は違う。上陸を阻止する事であって、アメリカ艦隊を攻撃する事ではない。つまり、この海戦の目的が正しく伝達していなかった事がそもそもの原因なのである。
(5−1−3)武士道精神
 第一の問題は、日本は戦時にも関わらず、その論功行賞は平時のままだった事が問題なのである。戦争をやっているにも関わらず、年功序列が維持され、いくら活躍した所でそれほど出世できる訳ではなかった。従って能力のあるものが出世すると言った大原則がなかったのである。これは現代にも通じる問題であり、士気が下がる原因にもなっている。第二にの問題は、旧来の武士道精神が生きていた事を意味する。武士の世の中が終わって百年近くなろうかと言う時に、まだこの精神は生きていた。「武士道」とはどういうものかは知らないが、少なくとも殺し合いをしている最中にそんな事を持ち出す理由は、かなり余裕があった事を意味する。つまり、ミッドウェー海戦に負けたとはいえ、日本の圧倒的優位は変わらない。それよりも何よりも、アメリカ軍は弱いと言った自惚れがあった。だから「武士の情け」で許してしまったのである。
(5−1−4)制空権
 第三の問題に関しては言うまでもないだろう。結局、目標として上陸を阻止する為にはどうすれば良いのかと言ったマニュアルがなかった。マニュアルがなかった事で、何をして良いのかわからなかった。今まで攻めていたものが、突然防御しろと言われてもできる訳がない。従ってただの海戦をやってしまった訳である。この上陸を許してしまった事は大きかった。日本軍が建設した飛行場を使って、アメリカはソロモン諸島の制空権を握ってしまい、航空機による反攻作戦ができなくなってしまった。ラバウルに大規模な飛行場はあるにはあったが、距離的に遠すぎて思うような攻撃はできない。しかも、制空権を握られている為に、ガタルカナルのジャングルに逃げ込んだ日本軍に補給もできない。ここにガタルカナルの悲劇が始まるのである。
(5−1−5)悲劇の始まり
 基本的に日本軍は上陸して来たアメリカ軍を馬鹿にしていた。従ってこの時点ではそれほどの問題ではなかった。直ぐに取り戻せる。焦る必要はない。その程度しか思っていなかった。だから、この海戦も生ぬるいものになり、輸送船団を逃がすと言った凡ミスを平気でするし、それに対して責任意識もないのである。この後、ガタルカナル奪回作戦として、一木支隊(約千名)がガタルカナルに派遣される。それだけでアメリカ軍を駆逐できると考えていたが、ガタルカナルに上陸したアメリカ軍の装備は、日本軍の支隊如きでは歯がたつ訳もなく、簡単に敗れまたもやジャングルに逃走する事になる。