(5−3)サボ島沖海戦

視力対電波の戦い

兵力 経過 結果
 制空権を失った日本軍は、尚もガタルカナルにこだわり続けた。昼間の攻撃、及び補給は無理と判断し、夜間の攻撃、補給を行う事になった。しかも、夜間の作戦の為に、速度の遅い戦艦等が使用できない状態となり、巡洋艦、駆逐艦での攻撃になった。ガタルカナルへの補給船団の護衛をしていた、五藤少将率いる第六戦隊(重巡三隻、青葉、古鷹、衣笠、駆逐艦二隻)は、同じく補給の為にガタルカナルに向かっていた連合軍艦隊と衝突した。この海戦は完全に不意をつかれた戦いであり、夜戦を得意としていた日本海軍にとっては、屈辱的な負け方だった。
(5−3−1)新兵器レーダー
 第二次ソロモン海戦の結果、ソロモン諸島での制空権を失った。が、大本営はガタルカナルを諦めず、ガタルカナルのジャングルに逃げた日本軍への補給、及び飛行場への攻撃、そして陸海軍共同のガタルカナル奪回作戦を行う事となった。そこで連合艦隊司令長官山本五十六は、高速の巡洋艦、駆逐艦による夜間のガタルカナルへの艦砲射撃を行う事になった。この攻撃は意外と効いた。連合軍はこれを「トーキョーエクスプレス」と呼び怖がっていた。かなり考えた作戦のようにも見えるが、夜戦を得意としていた日本海軍にとってはこの作戦しかなかったのである。そんな10月11日の夜。輸送船団を護衛していた第六戦隊は、艦砲射撃を開始しようとした瞬間に、思わぬ敵からの攻撃を受けてしまった。夜間にも関わらず百発百中。逃げまどい、なんとか反撃して全滅は逃れたが、補給作戦は失敗に終わってしまう。なぜ夜間にも関わらず百発百中だったのか?、それはレーダーを備えていたからだったのである。
(5−3−2)マイナーリーグ
 第二次世界大戦の中で、ヨーロッパ戦線はメジャーリーグで、太平洋戦線はマイナーリーグだった。従ってヨーロッパ戦線では、技術的にも最高レベルの戦いが行われていた。フランス、オランダ、ベルギーを降伏させたドイツが、イギリス本土を空襲し屈服させようとしたが、イギリス空軍は新兵器のレーダーを使用し、あらかじめドイツ空軍の動きを読んで迎撃していた。これにより、ドイツはイギリスを屈服させる事ができずに、イギリス本土上陸を諦め、ソビエト連邦相手にバルバロッサ作戦をする事になる。これは昭和16年の事だから、真珠湾攻撃より前に、連合軍はレーダーを実戦配備していた事になる。当然アメリカもそれを知っていた為、太平洋戦線にもレーダーを実戦配備しようとしていた。ヨーロッパでのメジャーでの経験が生きていたのである。一方日本は、ヨーロッパ戦線でのメジャーな戦いを知らない。マイナーリーグで勝っている事だけで満足してしまっていた。これが、レーダー開発、及び配備の差となってしまった。このサボ島沖海戦では、新兵器レーダーが勝敗を分ける事になった。日本にとっては、太平洋戦線で初めてメジャーの威力を味わった事になる。
(5−3−3)理由
 このサボ島沖海戦は、日本がレーダーに対しての認識の低さが問題になっている。マリアナ沖海戦もそうだが、レーダーに対しての軽視が、日本の敗戦の原因とも言われている。が、日本にレーダーが無かった訳ではない。開発もしていたし、戦艦大和にも搭載してあった。が、あくまで飾りであって本格的使用までは至っていなかった。なぜなら、ここまでは特に必要とした事はなかったし、そんなものを使わなくても勝っていたので必要性を感じていなかったのである。従って開発も遅れ、配備も遅れる。しかし連合軍は違う。ミッドウェー海戦は別にしても、ここまで負けっぱなしで、日本に対抗する為に手段が必要となっていて、レーダーの配備を急いでいた。そして本格使用した。日本は思ったより強いと言った認識がそうさせたのである。この海戦でその差がモロに出てしまったのだ。連合軍はレーダーによって正確な位置を察知し、そこに攻撃をする。一方日本は、サーチライトで敵艦を探し、あくまで肉眼で敵艦の位置を確認し攻撃する。これでは勝てる訳がなかった。
(5−3−4)強い日本海軍
 この戦いでの日本海軍の被害が大きかった。重巡洋艦古鷹と駆逐艦一隻が撃沈。重巡洋艦衣笠は小破、旗艦青葉は大破して、五藤少将は戦死に至ってしまった。しかし、良くこれだけで済んだと考える方が妥当である。レーダーと言ってもまだそれほどの性能があった訳ではなく、正確性には欠けていた。従って、なんとか視力だのみの日本軍も交戦できたのである。言い方を変えれば、日本軍は相当に強かった事になる。視力と電波の戦いでもなんとか戦えるのだから。この後、日本海軍もレーダーを重視する訳でもなく、単なる戦力差と考えた日本海軍は、更に高速戦艦を使用してガタルカナルへの攻撃を行う事になる。日本にとってはやってはいけない消耗戦に突入してしまった。