MS操縦マニュアル(U.C0090年版)

まえがき 〜戦術の変化〜

 モビルスーツ。ジオン公国軍が開発したこの巨大な人型兵器は、戦略戦術レベルにおける戦い方を大きく変えた。
 「電波を遮断する」というミノフスキー粒子の特性は、あらゆる長距離兵器の使用を不可能にした。電磁波の遮断はレーダーを無力化し、長距離探知も長距離射撃も用を成さなくなった。
 そのため、ミノフスキー粒子散布下の戦闘は、有視界による白兵戦が中心となり、従来の戦術を覆した。
 この戦術の変化に合わせて、有視界戦闘に主眼を置いた兵器としてモビルスーツが開発されたのである。

T 操縦編

#1 操縦機器解説

 U.C0080年代から採用されたリニアシートと全天周囲モニターにより、MSの操縦性は飛躍的に向上した。しかし、その技術が成熟すると共に、システム自体が持つ問題点も明らかになってきた。
 ベルトにより身体を固定する方式ではなく、発生する衝撃自体を全体で吸収するリニアシートのコンセプトは、MSのコクピット概念を一変させる画期的なものだったが、MSの実際の運用データによれば戦闘時の衝撃は、一瞬であるにせよシートのみによる衝撃吸収機能を上回るケースがかなりの頻度で発生していることが明らかになったのだ。
 その解決策として、旧世紀から一般車両等で採用されていたショックバルーン(エアバックとも言う)をリファインしてコンソール内に組み込み、パイロットの身体保護をより確実なものとした。これは、急激な衝撃の発生と同時にシート頭部からヘルメットが離れた場合、コンマ1秒以内にバルーンが展開し、衝撃を吸収するというものである。また、コンソール内へのバルーンの収納は1〜5秒以内に完了する。
 更に、コントロールスティックのホールド性を向上させるために、半球状をしたアームレイカーと呼ばれるものが採用された。これにより、従来のスティック形状よりも少ないアクションで同等以上の操作が可能となった。
 火器管制や戦闘モード、巡航モードなどをあらかじめ設定しておけば、ほとんどの操作はコンピュータの計算で行われ、サイドコンソールを用いる必要も無く、アームレイカーとフットペダルのみで操縦可能である。具体的には、火器のトリガーはボール上面のボタンで、マニュピレーターの操作や、機体の方位決定等は手首のボール部分の動きで行い、スロットルや制動などはアームの部分の動きで制御する。手前に引けば加速、前方に押せば逆噴射となる。極論すれば、パイロットは個々の行動を決定しているだけと言ってもいい。
 そのため、操作の煩雑さはほぼ解消され、パイロットは戦闘、あるいは作業に専念できるようになった。

 

#2 接近戦闘シークエンス

 U.C0090年代のMSの操縦に、0080年代のものと大きな差異はない。
 例えば、誕生当初の自動車は車種ごとに運転方式が異なっていたが、普及するに従って徐々に統一されていった事と同じ様なものである。
 それでも、付加機能やコンソールのハウジングは機種、年代、開発組織ごとに異なるため多少の注意は必要ではあるが、操縦方法自体に大きな変化はないので、それほど気にする必要はないだろう。
 この項では、主に画面表示の概要と対艦戦を除いた、ショートレンジにおける戦闘シークエンスについて説明する。尚、このマニュアルでは『操縦編』に関しては全てAMS-119ギラ・ドーガを例にとって説明を進める。
 AMS-119ギラ・ドーガは、再興したネオ・ジオンの主力量産型MSである。非常にバランスの良い機体で、新兵からベテランまで幅広く、その技術に対応することができ、まさにパイロットの手足となる。戦闘に関して言えば、接近戦において特に真価を発揮<する。
 MSは、開発当初のコンセプト自体が、ミノフスキー粒子散布下における有視界戦闘を想定したものであった事から、この機体はMS開発理念に最も忠実に作られたものであると言える。そのためこの機体は、中・近距離戦に主眼を置いた武装が施されている。
 狙撃が必要な場合や敵が高速で移動している場合には、標準装備のビームマシンガンが有効である。この機体が装備している武器の中で最も射程が長く、貫通力も大きいた<>め、MSに対しても艦艇に対しても威力は絶大で、連射で命中させられればほぼ確実に、目標を粉砕することが可能である。
 敵の接近を許してしまった場合には、ビームマシンガン下部やシールドに装備されているグレネイドランチャー、またはシュツルムファウストを使用する。どちらも火薬の爆発力による推力のみで射出されるだけなので、ある程度接近してから撃ったほうが効果的であり、与える損傷も大きい。直撃ならば、ほとんどのMSは戦闘不能にできるが、無論、自機も爆発に巻き込まれないよう、回避、防御行動を行うことを忘れてはならない。
 どちらの場合も、サイドコンソールの火器管制セレクターによって基本戦闘方針を設定していれば、パイロットの判断を必要としない部分はコンピューターが対応してくれる。
 どんな戦闘でも、実際の目視状態と同じ映像上に重なってレクティルが表示されるので、発見時点でロックオンを完了しておけば、目標が戦闘不能に陥るまではコンピューターが追尾し続ける。ただし、状況によって、例えば複数の援護が戦闘域内に進入してきた場合などは、モニターに優先順位にまでが表示されるので、常に自機の状態を把握しておかなければならない。現在の戦闘を続けつつ、参入して来る敵機の走査データを検討する必要があるからだ。僚機が同じ領域内にいる場合は、援護が期待できるかどうかも重要な要素である。
 追撃するかキャンセルするかはパイロットの判断だが、自機の状態によってはコンピューターが中断か続行かを指示する時もある。外から見なければ判らない損傷もある。
 どちらにしても戦場に迷いは禁物である。即座に判断せよ。

#3 白兵戦闘シークエンス

 白兵戦闘は全ての戦闘行動の内で、最もパイロットの技量が試されるものである。今まで説明してきた戦闘行動は、初歩の内に入る。
 例えば、交通事故を起こさずに自動車を運転できると言う程度のものなのだ。そして、これから解説する白兵戦闘は、まさにレースに参加するような心構えが必要になってくる。しかもここでいうレースは、MSのパイロットならばいつか必ず、否応無しに参加させられてしまうということを覚えておいて欲しい。
 白兵戦闘で重要なことは、必ず機先を制することである。白兵戦で使用される武装は、有効範囲が狭い分だけ威力が凄まじく、装甲に特別な装備や処理(Iフィールド、対ビームコーティング等)を施していない限り、致命的なダメージを負う事になる。それだけに、後れを取ると言うことは絶対に避けなければならない。
 敵機がビーム兵器を装備しているときは注意が必要だ。自機が受けるダメージが甚大であるからだ。たとえ相手が腕一本の状態であっても、ビームサーベルの一振りで全てが決まってしまうのだ。
 戦闘空域が混戦状態の時は、敵機とのニアミスは日常茶飯事であるが、それだけで済めばまだ良い。その時に、相手がビームサーベルを構えていたなら、自機は既に真っ二つにされていることだろう。相手が白兵装備をしているかどうかは、以前までコンピューターが判断してくれたものだが、近年のビーム兵器は、作動状況を間欠的に制御できる様になっており、走査しにくくなっている。ビーム兵器の有効線上に物体がある時にのみビームを発生させることができる機構が開発されたからだ。
 だがAMS-119であれば、充実した白兵戦能力を持っているので極端に不安を持つ必要はない。白兵戦闘になったとしても、腕部からビームサーベルユニットまでの長さと敵機までの距離や行動予測によって、最適な接触時点をコンピューターが算出し、敵機のウィークポイントとタイミングをレクティルとその他の表示で指示してくれるからだ。
 とりわけ、この機体に標準装備の白兵戦闘用ビーム兵器ユニットは、ソード、アックス、ピックと三種類のビーム刃を形成できるため、状況に応じた選択が可能だ。全て自動というわけにはいかないが、ビームソードアックスがどの刃を形成すればベストであるかもコンピューターが判断してくれる。しかし、それはあくまでパイロットの操作と判断が確実でなければ効を奏さない事は言うまでもない。
 ビームサーベル同志の闘いであれば、撃ち合った瞬間に互いのレーザー発振器が作り出す超強磁界同士の反発作用により、それ以上押すことができなくなる。ここで引くタイミングを誤ってはならない。いつまでも押し合ったままだと、互いのビームサーベルユニットどころか、機体のジェネレーターにまで支障を来す恐れがある。離れるタイミングを掴めないときには、他の四肢を使用して相手との距離を取り直す事もできる。簡単に言えば、パンチやキックを繰り出すのである。ただし、パンチの場合はあまり強く殴りつけると、マニュピレーターが使用不能になる可能性が高いので勧められない。
 また、MSの四肢はAMBACシステムのユニットとしても機能しているので、特に無重力の宇宙空間では注意が必要である。追撃する時と離脱する時は、取るべき行動が異なるからだ。追撃時は腕を振り下ろした反対のベクトルで、離脱時には慣性に従って、極力ロスタイムを少なくする。
 敵の戦力を奪ったならば、爆発の可能性もあるので速やかに離脱する。対応が遅れると、巻き込まれてしまうので注意すること。

#4 戦域離脱シークエンス

 武装を消耗し、MS本体のみの戦闘に陥った場合、マニュピレーターを潰す覚悟があるならば、両腕を使用して直接、敵機に打撃を与える手段もある。動力パイプ等を破壊する戦法も効果的だ。
 自機が損傷し、脱出ポッドを作動させる程では無くとも戦闘不能になった場合、あるいは敵の援軍が接近してきた場合、相手との戦力差が明らかな時は、即座にその戦闘空域から離脱する方が賢明である。緊急用のCMPが残っているうちに、戦闘モードになっているディスプレイのオーダーを切り替え、最も確実な転身路を検索、設定する。当然その間に、相手の攻撃の回避行動をとることも必要だ。
 離脱コースが確定しても、敵機に後ろを見せれば狙い撃ちされてしまうため、U.C0080年代以降のMSは、非常に有効な欺瞞装置を装備するようになった
 マニュピレーターから射出されるダミーバルーンである。これには、チャフ効果と錯覚作用があり、敵のセンサーやコンピューター及びパイロットを攪乱することができる。

#5 宇宙での戦闘

 宇宙での戦闘は、視界を遮るものが殆ど無いため、比較的遠距離から敵機を補足することができる。その後、射撃可能距離まで接近して銃撃戦が展開されるわけだが、大抵はある程度距離を保ったまま勝敗は決まる。
 格闘戦を行おうとした場合、慣性の法則が働く宇宙空間では、MS同士が接近するのは困難だ。しかし、多数のMSが混線状態にある場合には、この限りでは無い。そのような状況では、MS同士のニアミスは多発する。そんな時、格闘戦用兵器は威力を発揮する。
 格闘戦用兵器は強力なものが多く、敵機に大ダメージを与えることができるが、逆に言えば自機もその危険にさらされるわけである。そのため、格闘戦はある程度の熟練が要求される高度な戦闘と言える。

#6 地上での戦闘

 宇宙に比べ、地上での戦闘は様々な地形条件の影響を受ける。樹木や丘陵地帯、建築物などの遮蔽物が多く、重力や大気の影響もあって銃器の射程距離も短くなる。
 そのため、地上での戦闘は大抵の場合、1000m以下の距離で行われる。まず、射程の長い大口径火器による長距離射撃が行われる。実はこの射撃はあまり効果は無く、時間稼ぎや威嚇という側面が強い。その後、各機が距離を詰め、マシンガンやライフルなどで銃撃戦を行う。
 ジャングルなどの戦闘では木々に機体が隠れるため、敵機を発見し辛く、結果的に近距離での遭遇戦が多くなる。そういった場合、格闘戦の機会も増え、格闘戦用兵器が重要視されるのである。

U 兵装編

#1 MSの武装

 一口に武装といっても、戦略、戦術、環境等によって、その形状やスペック、使用方法は著しく異なるものだ。
 MSは実に多種多様な武器を搭載、又は取り扱うことができる。それは、人間と同じ四肢を持っているからに他ならない。
 それ故に、人間が扱う銃火器を、殆どそのままMSサイズにスケールアップしたものも多くある。
 一方で、ビットやファンネルといった特殊なものもあり、MSで戦うためには操縦技術のみならず、武装に関する知識も必要とされる。
 本章では、MSに装備される主な武器を挙げ、特徴や有効な扱い方について、ごく簡単に説明する。

#2 銃器類

 マシンガン、キャノンといった弾丸を射ち出す武器。安価で生産性が高く、作動が安定しているため、量産型の武装として広く使用されている。
 どのタイプも、弾倉はマガジン式になっており、弾丸の補給はマガジンを交換することで行われる。
 長距離から近距離まで幅広い射程で使用でき、非常に使い勝手の良い兵器である。

(1)マシンガン
 大抵は、人間が使用するマシンガンと原理も機構もそのままに、MSサイズにスケールアップしたものである。
 一年戦争中期までは主武装として通用していたが、ルナチタニウムといった新しい装甲材の出現と、ビーム兵器の小型化で一気にその威力と地位を失った。
 U.C0090年代にもなると、量産型でさえビーム兵器を携帯し、主武装として装備されることは皆無となった。
 しかし、完全に消えて無くなってしまったわけではなく、地上戦では未だに用いられている場合がある。大気圏内では、大気によってビームが減衰され、威力が落ちてしまうからだ。特に熱帯地方では大気中の様々な粒子の濃度が高いため、下手をするとマシンガンの方が有効だ。
 また、補助兵装として腕部やビームライフルなどの下部に設けられ、威嚇や牽制にも使用されている。伝統的にガンダムタイプMSの頭部に装備されるバルカンも、多少異なるがそんな補助兵装の一種と言える。

(2)キャノン
 これもマシンガンと全て同じ状況であり、ビーム兵器に取って代わられ、衰退の一途を辿っている。大きな弾丸を携帯しなければならないこと、弾数、重量、スペースなどの問題をビームキャノンとすることで一気に解決できてしまうのだ。
 地上戦という活躍の場も残されているが、これも時間の問題だろう。ビーム兵器の技術は年々急進的に進歩しており、大気に減衰されても十分な威力を発揮するようになっている。
 ところで、最近の実体弾キャノンは爆発を伴う炸薬型ではなく、磁力で射ち出すレールキャノン型に移行している。これは、爆発を伴わない方がメンテナンスが容易であるためだ。
 キャノンが装備されている機体は、中〜長距離からの後方支援を目的とする重装型であることが多い。キャノン自体も相当重量があるので、機動力はかなり低い。そのような機体を操縦するときは、接近される前に確実に敵機を打ち落とすことが重要である。

#3 ビーム兵器

 MSが携帯するビーム兵器は、地球連邦軍が開発したエネルギーCAP技術によって実現された。ビームライフルなどは、実体弾を遥かに上回る威力を持つ。
 実用化直後は、再チャージが基地や母艦でしかできないとか、動作が不安定であるなどの問題があったが、現在は完全に解決されている。
 地上で使用すると、大気にビームが拡散されて威力が減衰されてしまうが、それも近年の開発競争で急激に進歩したことで、気にならないレベルにまで達している。
 MSが使用できる武装としては、間違いなく最強のものと言えるだろう。

(1)ビームライフル
 RX-78で初採用されてから急速に普及し、MSが携帯する武器としては最も一般的なものとなったのが、このビームライフルである。一年戦争当時は、これを装備しているだけで、驚異の対象となった。
 基本的には、近〜中距離での戦闘で、大気のな無い宇宙空間での使用に適している。
 長距離にも対応できるが、実体弾ではなくメガ粒子の高エネルギー弾を打ち出すため、距離に比例して粒子が飛散し、威力が減衰してしまう。減衰率は大気の濃い場所ほど高く、故に湿地帯やジャングル地帯では、その効率の悪さからあまり使用されない。
 最近ではその形態も様々で、その名通りライフルの様に単発づつ発射するものから、マシンガンの様に連射できるものもあり、RX-93ではそれらを切り替えられるタイプのものが装備されていた。
 マシンガンタイプは、連射できるので目標に当てることが比較的容易という長所がある。コストを抑えられるため、量産型に多く採用される。しかし、一発づつの威力が弱く、中距離以上の目標には殆ど効果はない。また、調子に乗って撃ち過ぎると、弾切れという事態に陥り易いため、常に弾数を確認しておく必要がある。
 ライフルタイプの方は、連射ができない反面、一発のづつの収束率が高く破壊力が大きい。だが、一発づつ確実に命中させるには、高度な射撃技術が要求される。

(2)ビームピストル
 名称から想像できる通り、ビームライフルの小型版と言えるビーム兵器。本体が小型で取り回しが容易で、ある程度の連射も可能だが、威力が弱い。
 しかし、生産コストが低いため、量産型に採用されたり、補助武装として装備されることが多い。

(3)メガバズーカランチャー
 それ自体に小型のジェネレーターを搭載した大型ビームランチャー。装備されたジェネレーターから直接エネルギーを供給するため、戦艦の主砲の数倍に相当する威力がある。
 MSが扱うことのできるビーム兵器では最強のものだが、大きさも最大で、そのあまりにも大きい質量は、MSの機動力を大きく殺いでしまう。
 また、搭載されているジェネレーターも最低限のものであり、一発撃つと再チャージに時間がかかり、その間は全くの無防備となってしまう。そのため、自機の他に護衛を最<低でも2機、できれば3機以上は欲しい。1機のみで運用するのは自殺行為以外の何物でもない。もし、そんなことを命じられたら、断固として拒否するべきだ。英雄になれるなどと馬鹿なことを考えてはいけない。
 機動力の問題については、バストライナーやメガライダーの様にMSを乗せて飛行できるようにする等、色々な形の方策が考案されたが、それらは特別な存在であ<る。
 これを有効に使うには、前述のように護衛を複数付けるか、敵に悟られないほど離れた位置からの超長距離射撃がいいだろう。

(4)ハイパーメガランチャー
 メガバズーカランチャーはMSが運用できる最大のビーム兵器がであるが、機動性の問題や再チャージまでのタイムラグ等、迅速な動きが身上のMSにとっては致命的な弱点があった。
 それでも、その威力は捨て難く、開発が続けられた結果が、このハイパーメガランチャーである。
 小型化した本体は、MS単体でも十分に取り回すことができ、メガバズーカランチャーに及ばないものの、戦艦の主砲程度の威力はある。また、ビームライフルと同じ原理のエネルギーパックを使用するため、再チャージする時間も不要で、連射とまではいかないが、ビームライフルと同様に使うことができる。
 だが、小型化したとは言え、近距離戦になったときにはこれほど邪魔であるものはないだろう。この武器も、離れたところから狙撃するのが有効的である。

(5)ビームスマートガン
 大出力のビームライフルで、通常のビームライフルよりも砲身が長く、大口径。威力も数倍大きい。
 一般的に、ディスクレドームが装備されていることが多く、長距離攻撃や狙撃にも対応できる。
 だが、ビームライフルよりも大きいので、近距離戦での取り回しが難しくなる。そのため、機動力を活かした戦闘を好む者や、初心者にはあまり向かない。

(6)ビームサーベル
 ミノフスキー粒子を圧縮、縮退させてメガ粒子化したものを弾丸として射ち出すのがメガ粒子砲、つまりビームライフルに代表されるビーム砲であった。それに対し、物質化(メガ粒子化)する寸前の高エネルギー化したミノフスキー粒子を放出し、収束させたものを刃として目標を焼き切る格闘戦用のものが、ビームサーベルである。
 言うまでも無く、ビームサーベルの長所は大ダメージを与えることができるということだ。しかし、操縦編でも述べている通り、これを扱うにはかなりの技量が要求される。実際、人間でも銃を自在に扱うことができても、剣は下手であることが多い。銃の方は照準を合わせて引き金を引くだけなので、多少の訓練で何とかなるが、剣はある程度極めないとその力を発揮できないのだ。現実に、人間が銃と剣を同時に使用することは殆ど有り得ないが、MS戦ではそれを要求されることが多々ある。
 もっとも、MSにおいては、照準を合わせて引き金を引くのと同じような操作をするだけであり、後はコンピューターがどのように切りかかるかといったことを考えて動作するので、人間自身が剣を振るうよりは容易かも知れないが、それでも接近戦はそれなりの技量と覚悟が必要である。
 さて、ビームサーベル系の格闘戦用ビーム兵器としては、ビームソード、ビームナイフ、ビームピック、ビームアックスなど様々な呼び方と形態があるが、どれも機構は同じで、放出するビームの出力とベクトルを変えているだけである。基本的な扱い方もビームサーベルと同様だが、ビームの長さによってリーチに差があるので、複数を使い分ける時には注意が必要である。

#4 ロケット兵器

 バズーカやシュツルムファウストといった炸薬によって弾丸を射出する兵器。弾速が遅いため、命中率が低く、遠距離射撃には不向き。また、弾丸自体が大きいため、多く携帯することができない。
 しかし、破壊力は凄まじく、ビーム兵器よりも安価であるため、マシンガンと共にMSの主武装として使用されていた。
 ビーム兵器が普及した現在でも、近距離における破壊力の高さから、補助的に装備されることが多い。

(1)バズーカ
 マシンガンなどと同様に、人間サイズのものを、ほぼそのままMSサイズにスケールアップしたものが多い。
 基本的にビームライフルよりも破壊力はあるが、弾数が極度に限られる上に、弾速が遅いため、MSに命中させるのは容易ではない。特に最近のMSは非常に機動性が高く、よほど近づいて撃たない限り殆ど当たらない。
 逆に、的が大きく、機動性も低い艦艇に対しては、非常に有効である。射出力も比較的強いので、宇宙空間で機動性の低い的に限っては長距離射撃にも使える。

(2)シュツルムファウスト
 棒状のランチャーの先端に弾丸が付いた、炸薬の爆発力で弾丸を打ち出す兵器。新体操のクラブに似た形状から、連邦軍ではそう呼ばれている。砲身が無いので携帯性に優れるが、狙いを定めるのが困難。又、一本のランチャーに一発の弾丸しか装着できないため、多くの弾数を携帯できない。
 しかし、近距離での使用に限れば、これほど破壊力が高く有効なものは無く、シールドの裏などに装備されていることが多い。これを一発喰らえば、大抵のMSは稼働不能に近いダメージを被る。
 ビームサーベルでの格闘戦が苦手なパイロットには、接近戦時に大きな味方となるが、通常は一本か二本しか携帯できないため、頼り過ぎると痛い眼どころか、死を見てしまうので油断は禁物だ。

#5 ミサイル

 一般的に、それ自体に推進能力のある弾薬、さらには誘導装置で敵機を追尾できるものをミサイルと言う。
 しかし、ミノフスキー粒子散布下では誘導装置が働かなくなるため、誘導兵器としての価値は無くなってしまった。そのため、ただ直進するだけのロケット兵器的な使われ方をしている。
 重MSにもなると巡行ミサイルなどの大型ミサイルも搭載されるが、通常のMSであれば機動性を沿いでしまうので、小型ミサイル程度しか装備しない。また、標準でミサイルを搭載>しているケースは少なく、殆どはオプション化されているので、対艦攻撃などの時に装備するのが有効だ。

#6 格闘戦用兵器

 言うまでも無く、格闘戦、つまり超近接戦闘時に用いる兵器のこと。人型をしているMSならではの戦闘である。戦闘機械が、鍔迫り合いや殴り合いをするなど、戦車や戦闘機が主力だった時代には考えられなかったことだ。それだけに、取り扱いは他の兵器とは比べられないほどの注意が必要だ。
 格闘戦用と言って先ず思い浮かぶのは、剣やナイフなどの刀剣類だろう。一年戦争当時は、ビームサーベルなどのビーム兵器と、ヒートホークなどのヒート兵器があった。しか>し、ビーム兵器の技術進歩と大量生産によるコストダウンなどから、ビーム兵器に取って代わられヒート兵器は現在では殆ど姿を消した。
 他に、MS-06ザクUの左肩のスパイクアーマーなども含まれる。また、MSのマニュピレーター、つまり手や腕、そして脚部も考え様によっては格闘戦用兵器と言うこともできる。

(1)ビームサーベル
 #3ビーム兵器の項を参照。

(2)ヒートホーク
 MS-06ザクUが装備していた斧状のヒート兵器。ヒート兵器は、MSの手から供給されるエネルギーで、刃を灼熱化させて目標を溶断するものだ。そのため、ビーム兵器よりも構造が簡単で低コスト、エネルギー消費も少ない。しかし、攻撃力が劣るため、現在では殆ど見掛けなくなった。使い方はビームサーベルと同様である。
 刃を剣状にしたヒートソードもあった。

(3)その他
 何も格闘戦用兵器が、全て専用に設計開発されたものとは限らない。MSには手がある。
 そう、MSが手に持つことができるものは全て格闘戦用兵器となり得るのである。
 宇宙に浮遊する何かの残骸でも良い。地上ならそこら辺に生えている樹木や、街の街灯、建造物の鉄骨など、はっきり言って何でも良いのだ。ただ、それらのものを使う時には、できるだけ棒状の物体の方が使い勝手が良い。
 装備していた武器を全て消耗し、周囲に使えそうなものが無い場合には、MSそのものを武器とするしかない。要するに“体当たり”や“パンチ”、“キック”である。だが、MSの関節は精密なので、あまり勧めることはできない。特に『手』は非常に細かな関節と制御機器が組み込まれているので、『素手』で一発でも殴ると通常のMSならほとんどの場合、使い物にならなくなる。
 どちらかと言うと、蹴る方が機体を壊す可能性は低いが、地上では脚部を失うと移動が限りなく不可能に近くなるので、どの部分で蹴るか考えることが必要だ。
 体当たりは、パンチやキックよりも与えるダメージは少ないが、突破口を開くには有効な場合がある。これをやる時には、思い切って勢いを付けることが大切だ。それによって、相手が怯んでくれたなら成功と言える。さらに、体当たりしても相手が倒れてくれれば大成功である。重要なのは、『勢い』だ。そうかと言って、勢い余って自機まで倒れてしまっては逃げる機会を失ってしまうので注意しなければならない。
 相手が体当たりをしてきた時は、まず焦らないこと。そして、無理に受け止めようとせず避けたほうが良い。上手くすれば瞬間的に背後に回り込み、攻撃を加えることができる。
 ところで、周囲にある物体を用いたり、パンチやキックをする場合には、大きな威力は期待できないので、容易に破壊でき、かつ敵機の動きを止められる場所を狙うべきだ。
 例えば、頭部。頭部には大抵、制御コンピュータやカメラなどの探知装置が組み込まれており、そこを破壊すれば、少なくとも動きを鈍らせることができる。頭部そのものが破壊できなくとも、メインカメラだけは一撃で破壊できないと、逆にカウンターを喰らう可能性が高い。
 一部の機体に装備されている突起の付いた装甲、スパイクアーマーは、普通の装甲で体当たりするよりは良いが、あまり効果は無い。これを使用せざるを得なくなった時には、かなり追い詰められていると判断して良いだろう。
 念のため断っておくが、ここに書いたことは、あくまでも非常時の対処方法であり、本当の最後の手段であるので、使わないに越したことは無い。
 重要なのは、武器の消耗を押さえ、効率的に敵機を落とすことなのだ。それでこそ、エースパイロットというものであろう。

#7 サイコミュ兵器

 サイコミュ兵器とは、「ニュータイプ」が継続的な緊張状態において発する「感応波」と呼ばれる特殊な精神波をによって、無人攻撃端末をコントロールする兵器のことである。
 これは基本的に、いわゆる「ニュータイプ」と目される能力が無い者には扱えない。そのため、馬鹿にするわけではないが、このマニュアルを呼んでいる諸氏が扱うことはないかも知れない。
 しかし、その兵器の特徴を知ることは、実際に相対したときの対処に役立つので、一応掲載することにした。

(1)有線ビーム砲
 その名通り無線によって命令を端末に伝えるものでなく、架線によって伝えるもので、サイコミュ兵器の元祖である。
 無論、コントロールは感応波で行われるため、攻撃が確実かつ迅速に行え、オールレンジ攻撃も可能だが、架線があるため自由度が低い。
 とは言え、どこから攻撃が来るか予測し難く、端末自体も小さいので狙い打ちするのも難しい。本体を倒してしまうのが、最も効率的かつ確実な方法と言える。本体の場所を特定できない場合は、架線を辿っていくという方法もあるが、周囲が黒一色に近い宇宙空間では見つけるのは非常に難しい。探している間に打ち落とされかねないので、どうしても本体が判らない場合は、その場から退却した方が利口だ。また、狙い撃ちされないようにとにかく動き回ることが重要である。
 有線サイコミュは、サイコミュを用いなくともコントロールできるが、本体と端末を同時に操ることになるので、非常に高い操縦能力が要求される。
 これに近い兵器にインコムというものがあるが、コンピュータで制御できるのでサイコミュを用いない場合はこちらのほうが扱い易い。

以下、執筆中

お断り 本ページは、「機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.3(バンダイ)」と「08小隊戦記(ホビージャパン)」を参考に、独自に編集したものです。