まえがき 〜戦術の変化〜モビルスーツ。ジオン公国軍が開発したこの巨大な人型兵器は、戦略戦術レベルにおける戦い方を大きく変えた。「電波を遮断する」というミノフスキー粒子の特性は、あらゆる長距離兵器の使用を不可能にした。電磁波の遮断はレーダーを無力化し、長距離探知も長距離射撃も用を成さなくなった。 そのため、ミノフスキー粒子散布下の戦闘は、有視界による白兵戦が中心となり、従来の戦術を覆した。 この戦術の変化に合わせて、有視界戦闘に主眼を置いた兵器としてモビルスーツが開発されたのである。 |
T 操縦編#1 操縦機器解説U.C0080年代から採用されたリニアシートと全天周囲モニターにより、MSの操縦性は飛躍的に向上した。しかし、その技術が成熟すると共に、システム自体が持つ問題点も明らかになってきた。ベルトにより身体を固定する方式ではなく、発生する衝撃自体を全体で吸収するリニアシートのコンセプトは、MSのコクピット概念を一変させる画期的なものだったが、MSの実際の運用データによれば戦闘時の衝撃は、一瞬であるにせよシートのみによる衝撃吸収機能を上回るケースがかなりの頻度で発生していることが明らかになったのだ。 その解決策として、旧世紀から一般車両等で採用されていたショックバルーン(エアバックとも言う)をリファインしてコンソール内に組み込み、パイロットの身体保護をより確実なものとした。これは、急激な衝撃の発生と同時にシート頭部からヘルメットが離れた場合、コンマ1秒以内にバルーンが展開し、衝撃を吸収するというものである。また、コンソール内へのバルーンの収納は1〜5秒以内に完了する。 更に、コントロールスティックのホールド性を向上させるために、半球状をしたアームレイカーと呼ばれるものが採用された。これにより、従来のスティック形状よりも少ないアクションで同等以上の操作が可能となった。 火器管制や戦闘モード、巡航モードなどをあらかじめ設定しておけば、ほとんどの操作はコンピュータの計算で行われ、サイドコンソールを用いる必要も無く、アームレイカーとフットペダルのみで操縦可能である。具体的には、火器のトリガーはボール上面のボタンで、マニュピレーターの操作や、機体の方位決定等は手首のボール部分の動きで行い、スロットルや制動などはアームの部分の動きで制御する。手前に引けば加速、前方に押せば逆噴射となる。極論すれば、パイロットは個々の行動を決定しているだけと言ってもいい。 そのため、操作の煩雑さはほぼ解消され、パイロットは戦闘、あるいは作業に専念できるようになった。
#2 接近戦闘シークエンスU.C0090年代のMSの操縦に、0080年代のものと大きな差異はない。例えば、誕生当初の自動車は車種ごとに運転方式が異なっていたが、普及するに従って徐々に統一されていった事と同じ様なものである。 それでも、付加機能やコンソールのハウジングは機種、年代、開発組織ごとに異なるため多少の注意は必要ではあるが、操縦方法自体に大きな変化はないので、それほど気にする必要はないだろう。 この項では、主に画面表示の概要と対艦戦を除いた、ショートレンジにおける戦闘シークエンスについて説明する。尚、このマニュアルでは『操縦編』に関しては全てAMS-119ギラ・ドーガを例にとって説明を進める。 AMS-119ギラ・ドーガは、再興したネオ・ジオンの主力量産型MSである。非常にバランスの良い機体で、新兵からベテランまで幅広く、その技術に対応することができ、まさにパイロットの手足となる。戦闘に関して言えば、接近戦において特に真価を発揮<する。 MSは、開発当初のコンセプト自体が、ミノフスキー粒子散布下における有視界戦闘を想定したものであった事から、この機体はMS開発理念に最も忠実に作られたものであると言える。そのためこの機体は、中・近距離戦に主眼を置いた武装が施されている。 狙撃が必要な場合や敵が高速で移動している場合には、標準装備のビームマシンガンが有効である。この機体が装備している武器の中で最も射程が長く、貫通力も大きいた<>め、MSに対しても艦艇に対しても威力は絶大で、連射で命中させられればほぼ確実に、目標を粉砕することが可能である。 敵の接近を許してしまった場合には、ビームマシンガン下部やシールドに装備されているグレネイドランチャー、またはシュツルムファウストを使用する。どちらも火薬の爆発力による推力のみで射出されるだけなので、ある程度接近してから撃ったほうが効果的であり、与える損傷も大きい。直撃ならば、ほとんどのMSは戦闘不能にできるが、無論、自機も爆発に巻き込まれないよう、回避、防御行動を行うことを忘れてはならない。 どちらの場合も、サイドコンソールの火器管制セレクターによって基本戦闘方針を設定していれば、パイロットの判断を必要としない部分はコンピューターが対応してくれる。 どんな戦闘でも、実際の目視状態と同じ映像上に重なってレクティルが表示されるので、発見時点でロックオンを完了しておけば、目標が戦闘不能に陥るまではコンピューターが追尾し続ける。ただし、状況によって、例えば複数の援護が戦闘域内に進入してきた場合などは、モニターに優先順位にまでが表示されるので、常に自機の状態を把握しておかなければならない。現在の戦闘を続けつつ、参入して来る敵機の走査データを検討する必要があるからだ。僚機が同じ領域内にいる場合は、援護が期待できるかどうかも重要な要素である。 追撃するかキャンセルするかはパイロットの判断だが、自機の状態によってはコンピューターが中断か続行かを指示する時もある。外から見なければ判らない損傷もある。 どちらにしても戦場に迷いは禁物である。即座に判断せよ。
#3 白兵戦闘シークエンス白兵戦闘は全ての戦闘行動の内で、最もパイロットの技量が試されるものである。今まで説明してきた戦闘行動は、初歩の内に入る。例えば、交通事故を起こさずに自動車を運転できると言う程度のものなのだ。そして、これから解説する白兵戦闘は、まさにレースに参加するような心構えが必要になってくる。しかもここでいうレースは、MSのパイロットならばいつか必ず、否応無しに参加させられてしまうということを覚えておいて欲しい。 白兵戦闘で重要なことは、必ず機先を制することである。白兵戦で使用される武装は、有効範囲が狭い分だけ威力が凄まじく、装甲に特別な装備や処理(Iフィールド、対ビームコーティング等)を施していない限り、致命的なダメージを負う事になる。それだけに、後れを取ると言うことは絶対に避けなければならない。 敵機がビーム兵器を装備しているときは注意が必要だ。自機が受けるダメージが甚大であるからだ。たとえ相手が腕一本の状態であっても、ビームサーベルの一振りで全てが決まってしまうのだ。 戦闘空域が混戦状態の時は、敵機とのニアミスは日常茶飯事であるが、それだけで済めばまだ良い。その時に、相手がビームサーベルを構えていたなら、自機は既に真っ二つにされていることだろう。相手が白兵装備をしているかどうかは、以前までコンピューターが判断してくれたものだが、近年のビーム兵器は、作動状況を間欠的に制御できる様になっており、走査しにくくなっている。ビーム兵器の有効線上に物体がある時にのみビームを発生させることができる機構が開発されたからだ。 だがAMS-119であれば、充実した白兵戦能力を持っているので極端に不安を持つ必要はない。白兵戦闘になったとしても、腕部からビームサーベルユニットまでの長さと敵機までの距離や行動予測によって、最適な接触時点をコンピューターが算出し、敵機のウィークポイントとタイミングをレクティルとその他の表示で指示してくれるからだ。 とりわけ、この機体に標準装備の白兵戦闘用ビーム兵器ユニットは、ソード、アックス、ピックと三種類のビーム刃を形成できるため、状況に応じた選択が可能だ。全て自動というわけにはいかないが、ビームソードアックスがどの刃を形成すればベストであるかもコンピューターが判断してくれる。しかし、それはあくまでパイロットの操作と判断が確実でなければ効を奏さない事は言うまでもない。 ビームサーベル同志の闘いであれば、撃ち合った瞬間に互いのレーザー発振器が作り出す超強磁界同士の反発作用により、それ以上押すことができなくなる。ここで引くタイミングを誤ってはならない。いつまでも押し合ったままだと、互いのビームサーベルユニットどころか、機体のジェネレーターにまで支障を来す恐れがある。離れるタイミングを掴めないときには、他の四肢を使用して相手との距離を取り直す事もできる。簡単に言えば、パンチやキックを繰り出すのである。ただし、パンチの場合はあまり強く殴りつけると、マニュピレーターが使用不能になる可能性が高いので勧められない。 また、MSの四肢はAMBACシステムのユニットとしても機能しているので、特に無重力の宇宙空間では注意が必要である。追撃する時と離脱する時は、取るべき行動が異なるからだ。追撃時は腕を振り下ろした反対のベクトルで、離脱時には慣性に従って、極力ロスタイムを少なくする。 敵の戦力を奪ったならば、爆発の可能性もあるので速やかに離脱する。対応が遅れると、巻き込まれてしまうので注意すること。
#4 戦域離脱シークエンス武装を消耗し、MS本体のみの戦闘に陥った場合、マニュピレーターを潰す覚悟があるならば、両腕を使用して直接、敵機に打撃を与える手段もある。動力パイプ等を破壊する戦法も効果的だ。自機が損傷し、脱出ポッドを作動させる程では無くとも戦闘不能になった場合、あるいは敵の援軍が接近してきた場合、相手との戦力差が明らかな時は、即座にその戦闘空域から離脱する方が賢明である。緊急用のCMPが残っているうちに、戦闘モードになっているディスプレイのオーダーを切り替え、最も確実な転身路を検索、設定する。当然その間に、相手の攻撃の回避行動をとることも必要だ。 離脱コースが確定しても、敵機に後ろを見せれば狙い撃ちされてしまうため、U.C0080年代以降のMSは、非常に有効な欺瞞装置を装備するようになった マニュピレーターから射出されるダミーバルーンである。これには、チャフ効果と錯覚作用があり、敵のセンサーやコンピューター及びパイロットを攪乱することができる。
#5 宇宙での戦闘宇宙での戦闘は、視界を遮るものが殆ど無いため、比較的遠距離から敵機を補足することができる。その後、射撃可能距離まで接近して銃撃戦が展開されるわけだが、大抵はある程度距離を保ったまま勝敗は決まる。格闘戦を行おうとした場合、慣性の法則が働く宇宙空間では、MS同士が接近するのは困難だ。しかし、多数のMSが混線状態にある場合には、この限りでは無い。そのような状況では、MS同士のニアミスは多発する。そんな時、格闘戦用兵器は威力を発揮する。 格闘戦用兵器は強力なものが多く、敵機に大ダメージを与えることができるが、逆に言えば自機もその危険にさらされるわけである。そのため、格闘戦はある程度の熟練が要求される高度な戦闘と言える。
#6 地上での戦闘 宇宙に比べ、地上での戦闘は様々な地形条件の影響を受ける。樹木や丘陵地帯、建築物などの遮蔽物が多く、重力や大気の影響もあって銃器の射程距離も短くなる。
|
U 兵装編#1 MSの武装一口に武装といっても、戦略、戦術、環境等によって、その形状やスペック、使用方法は著しく異なるものだ。MSは実に多種多様な武器を搭載、又は取り扱うことができる。それは、人間と同じ四肢を持っているからに他ならない。 それ故に、人間が扱う銃火器を、殆どそのままMSサイズにスケールアップしたものも多くある。 一方で、ビットやファンネルといった特殊なものもあり、MSで戦うためには操縦技術のみならず、武装に関する知識も必要とされる。 本章では、MSに装備される主な武器を挙げ、特徴や有効な扱い方について、ごく簡単に説明する。
#2 銃器類マシンガン、キャノンといった弾丸を射ち出す武器。安価で生産性が高く、作動が安定しているため、量産型の武装として広く使用されている。どのタイプも、弾倉はマガジン式になっており、弾丸の補給はマガジンを交換することで行われる。 長距離から近距離まで幅広い射程で使用でき、非常に使い勝手の良い兵器である。
(1)マシンガン
(2)キャノン
#3 ビーム兵器MSが携帯するビーム兵器は、地球連邦軍が開発したエネルギーCAP技術によって実現された。ビームライフルなどは、実体弾を遥かに上回る威力を持つ。実用化直後は、再チャージが基地や母艦でしかできないとか、動作が不安定であるなどの問題があったが、現在は完全に解決されている。 地上で使用すると、大気にビームが拡散されて威力が減衰されてしまうが、それも近年の開発競争で急激に進歩したことで、気にならないレベルにまで達している。 MSが使用できる武装としては、間違いなく最強のものと言えるだろう。
(1)ビームライフル
(2)ビームピストル
(3)メガバズーカランチャー
(4)ハイパーメガランチャー
(5)ビームスマートガン
(6)ビームサーベル
#4 ロケット兵器バズーカやシュツルムファウストといった炸薬によって弾丸を射出する兵器。弾速が遅いため、命中率が低く、遠距離射撃には不向き。また、弾丸自体が大きいため、多く携帯することができない。しかし、破壊力は凄まじく、ビーム兵器よりも安価であるため、マシンガンと共にMSの主武装として使用されていた。 ビーム兵器が普及した現在でも、近距離における破壊力の高さから、補助的に装備されることが多い。
(1)バズーカ
(2)シュツルムファウスト #5 ミサイル一般的に、それ自体に推進能力のある弾薬、さらには誘導装置で敵機を追尾できるものをミサイルと言う。しかし、ミノフスキー粒子散布下では誘導装置が働かなくなるため、誘導兵器としての価値は無くなってしまった。そのため、ただ直進するだけのロケット兵器的な使われ方をしている。 重MSにもなると巡行ミサイルなどの大型ミサイルも搭載されるが、通常のMSであれば機動性を沿いでしまうので、小型ミサイル程度しか装備しない。また、標準でミサイルを搭載>しているケースは少なく、殆どはオプション化されているので、対艦攻撃などの時に装備するのが有効だ。 #6 格闘戦用兵器言うまでも無く、格闘戦、つまり超近接戦闘時に用いる兵器のこと。人型をしているMSならではの戦闘である。戦闘機械が、鍔迫り合いや殴り合いをするなど、戦車や戦闘機が主力だった時代には考えられなかったことだ。それだけに、取り扱いは他の兵器とは比べられないほどの注意が必要だ。格闘戦用と言って先ず思い浮かぶのは、剣やナイフなどの刀剣類だろう。一年戦争当時は、ビームサーベルなどのビーム兵器と、ヒートホークなどのヒート兵器があった。しか>し、ビーム兵器の技術進歩と大量生産によるコストダウンなどから、ビーム兵器に取って代わられヒート兵器は現在では殆ど姿を消した。 他に、MS-06ザクUの左肩のスパイクアーマーなども含まれる。また、MSのマニュピレーター、つまり手や腕、そして脚部も考え様によっては格闘戦用兵器と言うこともできる。
(1)ビームサーベル
(2)ヒートホーク
(3)その他 #7 サイコミュ兵器サイコミュ兵器とは、「ニュータイプ」が継続的な緊張状態において発する「感応波」と呼ばれる特殊な精神波をによって、無人攻撃端末をコントロールする兵器のことである。これは基本的に、いわゆる「ニュータイプ」と目される能力が無い者には扱えない。そのため、馬鹿にするわけではないが、このマニュアルを呼んでいる諸氏が扱うことはないかも知れない。 しかし、その兵器の特徴を知ることは、実際に相対したときの対処に役立つので、一応掲載することにした。
(1)有線ビーム砲 以下、執筆中 お断り 本ページは、「機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.3(バンダイ)」と「08小隊戦記(ホビージャパン)」を参考に、独自に編集したものです。 |