第4章 MSの材料
MSの材料は、大別して鉄鋼、非鉄金属、焼結合金及び非金属などがある。それらは、で
きる限り軽く、堅牢であることが求められ、更に加工がし易く、高い量産性も必要である。
1 鉄鋼
鉄鋼は、鉄を主成分とする金属又は合金で、含有される各種成分のわずかな量変化によっ
て性質が変わる。特に炭素による影響が大きく、炭素の量によって鋳鉄と鋼に大別され、鋳
鉄は鋼に比べ炭素含有量が多い。
入手し易く、加工が容易で、コストも低く押さえられるが、比重が大きく、重いため、
MSにはあまり多く用いられていない。
(1)鋳鉄
比較的低温で溶け、流動性に優れているので、鋳物を造るのに適している。又、鋼よりも
対摩耗性に優れているが、一般的に脆く、衝撃に弱い。
そのため、ケイ素、クロム、モリブデン、ニッケルなどを一種又は数種加えて強度や対摩
耗性を向上させた特殊鋳鉄として、主に量産型MSの駆動系などに用いられている。
(2)鋼
炭素鋼と特殊鋼に大別され、炭素鋼は軟らかくて粘り強く、延性、展性に優れた軟鋼と、
その逆の性質を持つ硬鋼に分けられる。特殊鋼は加えられる金属によって数種ある。
鋼板は、外装として多く用いられる。軟鋼は主にボルトやナット、硬鋼は軸やギアなどに
用いられる。更に硬度を増した最硬鋼は、バルブスプリングやショックアブソーバーなどの
大きな不可の掛かるところに用いられる。
硬鋼と軟鋼の性質を合わせ持ち、更に表面硬化処理などを施し、それらの性質をより高め
たのが、一年戦争時のジオン公国系MS全てに使用されていた超高張力鋼である。
しかし、後述のガンダリウム合金やその他の金属の精練技術の進歩などで、超高張力鋼の
メリットが打ち消されてしまい、MSには使用されなくなった。
2 非鉄金属
(1)銅(Cu)とその合金
銅は石器時代の次に用いられた最初の金属で、鉄に次いで重要な金属である。銅自体は軟
らかく強度も低いので、構造材としてはほとんど使用されないが、電気と熱の良導体であ
り、耐食性にも優れるので、電線や熱交換器の部品などとして広く用いられている。
又、銅に亜鉛(Zn)や錫(Sn)、その他を加えた銅合金(8種類ほどある)は、機械的性質が向
上し、耐食性も高いので、電気機械や船舶部品に用いられる。
MSにおいては、耐摩耗性銅合金(ケルメット)として軸受け部に用いられることがある。
(2)軽合金
アルミニウム(Al)とマグネシウム(Mg)は、いずれも比重が3以下と鉄に比べて軽く、これ
らを主成分とする金属を軽合金と言う。
ただ、それらは単一では非常に強度が低いので、機械材料としては使用できないが、銅
(Cu)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)をえると、機械的性質が大
幅に改善されるので、軽量を求める航空機や自動車の外板材(ジュラルミン)として多く用い
られる。
MSも軽量であることが重要だが、激しい戦闘が主な用途であり、掴み合いの戦闘も想定
されることから、軽合金では強度が足りず、外板としては用いられていない。そのため、外
部に露出しない冷却系統やコクピット内部のパネルなどに用いられている。
(3)チタニウム(Ti)とその合金
チタンは、比重が小さい割りには鋼並みの強度を持ち、耐食性、耐熱性もステンレス鋼以
上に高い。
そのため、アルミ(Al)、錫(Sn)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などを加えたチタ
ン合金は、航空機や化学機器の材料として重要視されている。
ただし、その優れた性質を持つが故に、加工が困難で、それだけコストが掛かるのが欠点
である。
(4)ルナチタニウム
月に産出する高純度のチタニウムを原材料とし、高い耐熱性と耐蝕性、放射線絶縁性、更
に優れた硬度を持つ新合金である。
RX-78ガンダムが高性能たりえたのも、このルナチタニウムを潤沢に使用できた事が、要
因の一つであったとも言われている。
このルナチタニウム系合金は、ガンダムの開発によって誕生したと言っても過言ではな
く、後に精練方法も含めて「ガンダリウム合金」と呼ばれるようになった。
だが、最高水準のガンダリウム合金は、精練方法が特殊である上、レアメタルを多量に必
要とするため、コストダウンが困難で、量産効果によるコストダウも期待できるものではな
かった。
そういった理由から、一年戦争後に連邦軍の量産機に採用された装甲材は、組成が変えら
れていたと言われており、標準的なチタン合金とセラミックの複合材だった合が多かったら
しい。
(5)ガンダリウム合金
ガンダリウム合金と名付けられたルナチタニウム系合金は、その後も研究が重ねられ、そ
の特性を向上させた。
RX-78に初めて採用されたルナチタニウムを便宜上ガンダリウムαとし、ガンダリウムβ
を経て、MSの構造を変革するにまで至ったガンダリウムγが誕生した。
γは、αが抱えていた加工性の悪さ、量産性の低さといった問題が改善されており、更に
αと同じ強度を数分の一の厚さで獲得できた。
そのため、機体重量が大幅に削減され、MSにおいては内蔵武装の充実やプロペラント積
載量の増量が実現された。
別の言い方をすれば、αを使用している旧式化した機体でも、γに換装するだけで大幅に
性能を向上させることが理論上は可能となるのだ。
又、γの精練技術を応用することで、βレベルの強度は通常のチタン合金セラミック複合
材で補えるようになり、量産型MSの大幅な性能向上が促された。
3 非金属
(1)ゴム
天然ゴムと合成ゴムに大別され、用途に応じて補強剤や加硫剤(主に硫黄)を加えて、耐摩
耗性、耐熱性、強度などを向上させて使用される。
MSにおいては、動力系パイプや駆動ベルト、シール材として用いられている。特にシー
ル材は地上で運用する場合には、非常に重要である。
MSは戦闘用機械と言っても、内部は精密で、小さな塵や埃が入り込んだだけでも不調に
なってしまう。砂漠や水中は当然、整地されている市街地でも防砂塵処理は不可欠なのであ
る。
(2)ガラス
ガラスは一般に、ケイ素、ソーダ及び石灰などを混合し、約1400〜1600℃まで熱して溶か
し、型に入れるなどして冷やして造られる。
MSでガラス用いられているのは、コクピット内部のモニター位で、後はほとんど透明の
ABS樹脂などである。
モニターのガラスは部分強化ガラスで、万が一割れても粗い破片になるように特殊加工が
施されたもので、視界を確保できるようになっている。
(3)セラミックス
セラミックスとは、陶磁器や焼き物の総称である。
MSに使用される場合は、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素などを加え
て、耐熱性、耐摩耗性、耐食性、電気的諸特性を向上させている。
(4)合成樹脂
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(5)繊維強化樹脂と繊維強化金属
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