第2章 ミノフスキー物理学


1 ミノフスキー粒子の概要

 MSの構造を解説する前に、触れておかなければならないことが、このミノフスキー粒子についてである。
 何故なら、ミノフスキー粒子は、MS誕生の切っ掛けとなっただけでなく、モーターや武>装などに深く関係があるからだ。MSとミノフスキー粒子は、決して切り離せないものなのである。
 ミノフスキー粒子は、U.C0069年8月15日に、当時ジオン公国にいたT=Y=ミノフスキー博士によって存在が実証された。
 仮想粒子としては旧世紀から存在が提唱されていたが、学会で発表されたときには、十九世紀のエーテル理論を復活させるものとして無視されていた。
 しかし、研究を続けていたミノフスキー博士自身の手で発見され、ミノフスキー粒子と命名。学会では素粒子物理学に終止符を打ったとさえ言われ、その功績を讃えられた。
 また、ミノフスキー博士は、ミノフスキー粒子と新たなゲージ理論によって、自然界に存在する四つの力(重力、電磁力、強い力、弱い力)をゲージ理論で統一しようとする大統一理論に決着を付けることにも成功した。

2 ミノフスキー粒子の性質

 ミノフスキー粒子は、静止質量がほとんどゼロで、正か負かいずれかの電化を持ち、不可視のフィールドを形成する素粒子である。
 そして、そのフィールド内を伝播しようとする電磁波、マイクロ波から超長波に至るまでのほとんどの電磁波を著しく減衰させる。そのため、レーダーなどの索敵装置や、無線による誘導、通信をほぼ不可能としてしまった。
 更に、SLSI(超集積回路)などの精密電子機器にも影響を与え、誤作動や機能障害を引き起こす。
 また、ミノフスキー粒子は、粒子間に起こる電気力とT力によって、正と負の粒子が交互に整列する性質がある。その並び方がきれいな立方体を形成することから、立方格子フィールドと呼ばれている。
 この立方格子フィールドは、他の粒子や原子の動きを安定化させる作用があり、核融合炉の制御や、飛行システムなどに応用されている。
 電磁波は“電子の波”で信号を送っているわけだが、その“電子の波”が安定化されてしまうために減衰、遮断してしまうのである。つまり、無線による通信や誘導、探索が不可能となり、MSを生み出した最大の要因であるのだ。

3 ミノフスキー粒子の応用技術

 ミノフスキー粒子は、それを応用することで様々な形でMSに関係している。
 それは、核融合炉の制御、メガ粒子砲などのビーム兵器、ミノフスキークラフトやビームローターなどの飛行システム、次世代推進機のミノフスキードライブなど多岐にわたっている。

(1)核融合炉の制御

 前項でも少し触れたが、炉内での核融合反応時に発生するプラズマの安定化や放射線の遮>断に、ミノフスキー粒子の立方格子フィールドが応用されている。
 核融合時のプラズマを維持できる炉心は機械的には存在せず、超伝導磁場によるフィールド固定も周辺機器などで小型化が難しく、実用には程遠かった。  ところが、立方格子フィールドは原子に対しての機密性が高く、正負の粒子が互いに整列するという性質から、他の原子を安定させることができる。
 この技術によって、小型かつ高出力の核融合炉が完成した。

(2)メガ粒子砲

  ミノフスキー粒子が構成する立方格子を、Iフィールド(ミノフスキー粒子に対し偏向作用を持つ一種の力場)によって圧縮し、正負双方の粒子が融合、縮退した状態をメガ粒子という。
 このメガ粒子となる際に、質量の一部を運動エネルギーとして変化させる。その運動エネルギーを利用して、メガ粒子をビーム弾として打ち出すのがメガ粒子砲である。
 発射寸前に、Iフィールドで収束させれば貫通力の高い弾、逆に膨張させれば破壊力の高い弾になる。
 ちなみに、運動エネルギーを利用せず、高エネルギー状態を保持したまま放出すれば、ビームサーベルやビームシールドとなる。

(3)飛行システム

 ミノフスキー粒子は、MSの重力下における飛行システムにも応用されている。
 ミノフスキークラフト、ミノフスキーフライト、ビームローターなどがあるが、基本的にはどれも、ミノフスキー粒子の持つ立方格子フィールド作用を応用している。

@ ミノフスキークラフト
 ミノフスキークラフトは、立方格子フィールドをIフィールドで制御して物体を浮遊させる飛行システムである。とは言え、重力加速は通常の物体同様にかかっており、それを立方格子フィールドによって、落下するのを支えていると言った方が正しい。次のビームローターも原理や理論は全く同じものである。
 一年戦争当時、ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースに初めて装備され、その後も艦艇には装備されたが、システムの小型化が困難であるため、MSに搭載された例は少ない。

A ビームローター
 ビームローターは、ビームを展開したまま回転することで、その周辺に強力な斥力を持つ立方格子フィールドが発生し、それによって浮力を得ている。又、それを鉛直方向から傾けることで、推力を得ることもできる。まさに、ヘリコプターのローターそのものと言えるものだ。
 ミノフスキークラフトほどの出力は無く、高度や速度においては劣るものの、必要なシステムがビームシールドとそれを回転させる機構のみであり、MSに搭載するには調度良い飛行システムで、簡易型ミノフスキークラフトとも称されている。

B ミノフスキーフライト
 ミノフスキーフライトは、極端に言えば超小型ミノフスキークラフトである。そのため、本来のミノフスキークラフトやビームローターの様に、静止したまま長時間浮遊することはできない。必ず、他の機動を必要とするのだ。
 しかし、一度飛び立ってしまえば、立方格子フィールドが流線形に形成されるため、整流効果が生まれるので、空力的に揚力を得られないような形状の機体でも、飛行させることが可能である。又、従来の航空機では不可能な極低速飛行も可能としている。

C ミノフスキードライブ
 ミノフスキードライブは、従来の燃焼式推進機とは根本的に異なる新世代推進機である。
 二つ以上のユニットが必須で、各ユニットから展開される立方格子フィールドが互いに反発しあう作用を推力としている。
 特徴は何と言っても推進剤を消費しないことであり、さらに理論上は亜光速までの加速が可能で、最大で20Gにまで及ぶとされている。
 また、副次的な効果として、「光の翼(LM314V21V2ガンダムの場合)」と称されるビーム膜の形成がある。これは、システムが不完全であるが故の“欠陥”なのだが、武器としても応用可能であることが判明している。
 「光の翼」は、ビームサーベルやビームシールドなどの“ビーム”と物理的にほとんど同じもので、触れたものを溶断したり、攻撃を防御することができる。さらに、ビームシールドジェネレーターで制御することも可能で、ビームシールドの補助的な使用もできる。
 LM314V21V2ガンダムが見せた“翼をまとうような防御姿勢”も、その特性を利用し、「光の翼」をビームジェネレーターで機体前面にまで回り込ませたことによるものである。