Cyber Formula Technology

B ブーストシステム
〜時速600km超を実現するパワー〜


●サイバーフォーミュラのスピード

 サイバーマシンは、あらゆる点で最先端技術を投入された究極のレーシングマシンである。
 故に、そのスピードも既存のレーシングマシンを遥かに凌駕する時速600km超を実現している。もっとも、通常状態では時速500kmだが、それでも異次元のスピードと言えよう。
 さて、サイバーマシンには、その時速600km超を実現する特別なシステムが搭載されている。それがブーストシステムである。
 ここでは、時速600km超というスピードを生み出すブーストシステムについて、考察している。


●ブーストシステムとは

 エンジンの限界パワーを常に出していると耐久性に問題が出るため、通常はある程度妥協したパワーで押さえている。つまり、一種のリミッターをかけられているのだ。
 ブーストシステムとは、そのリミッターを解除し、エンジンの燃焼効率を限界まで引き上げ、一定時間、爆発的なパワーを得るシステムである。
 マシンの形状によって、ブーストシステムの形状も様々だが、空気のエアインテークを展開するというパターンが多い。
 基本的な原理は、展開されたエアインテークからの空気でタービンを回転させ、燃料を過圧して強制的にエンジンに送りこむ。またエアインテークからは同時に、多量の空気も取り込み、これもエンジンに送り込まれる。これにより、通常よりも多くの混合気を送りこまれたエンジンは限界まで稼動し、超大なパワーを得るのである。
 タービンを回転させた空気はその後ろにあるエアダクトから排出されるが、この内部形状により、ジェットエンジンと同じ効果を得ているブーストシステムもある。
 ブースとシステムはエンジンが損傷寸前か、それ以上に酷使するものであり、燃料消費も爆発的に増えるため、普通は使用時間に制限がかけられている。
 また、航空機に匹敵する加速を得られるため、空力特性を変更する必要があり、ウイングの展開やボディ形状の変更を伴う場合が多い。逆に、通常状態では、エアインテークやウイングを展開していると、空気抵抗が大き過ぎるため、ブースト使用時にのみ、それらを露出または展開するケースが多い。


●現実に見るブーストシステム

 現実の世界にも、ブーストシステムとは言わないが、エンジンにより多くの混合気を送りこんで、高出力を得るものは存在する。
 ターボチャージャーとスーパーチャージャーである。
 ターボチャージャーは、排気ガスの圧力を利用して、タービンを回転させる。スーパーチャージャーは、エンジンの回転をベルトで取り出してタービンを回転させる。
 ターボチャージャーは、過給圧をアクチュエーターで任意に制御できるが、排気圧の低い低回転時には、高い過給圧を発揮できない。スーパーチャージャーは、低回転から過給圧を発生するが、高回転になるとメカニカルロス(機械部品の摩擦による損失)が増えるため、過給圧が下がる。
 両者で全く正反対の特徴を持つが、逆に言えば、両方同時に搭載すれば弱点は無くなる。という考えで、スーパーターボというものも生まれたが、あまり一般的ではない。
 ちなみに、ターボチャージャーもスーパーチャージャーも、ブーストシステムのように、エアインテークやウイングを派手に展開させることはない。言うまでもないかもしれないが、念のため。


●ポップアップ式ブーストシステム

 このブーストは、システムのほとんどがブーストポッドと呼ばれる部分に集約されており、それをポップアップさせて露出させることで、より多くの空気を取り込む形状である。
 スゴウのアスラーダシリーズ、アオイのステルスジャガー、同じくアオイのエクスペリオン後期型などが、このタイプである。
 アスラーダシリーズは、GSXとスーパーアスラーダ以降で、少し形状が異なる。  アスラーダGSXは、エンジン上面に設けられた大きなエアインテークを、ルーフ部より高い位置に持ち上げ、そこから空気を取り込むようになっている。詳しいシステムは不明だが、おそらくGSXの場合は取り込んだ空気でタービンなどを稼動するのではなく、ただ多くの空気をエンジンに取り込むだけのように見える。ちなみに、ステルスジャガーも、GSXと同じ機構のようだ。
 スーパーアスラーダ以降は、後部両側にウイングと一緒に搭載されたブーストポッドを、ポップアップすることで、空気を取り込む形状である。おそらくブーストポッド内部にファンがあり、それを空気で回転させ、その回転力をチェーンやベルトを介して、エンジン部にあるタービンに伝達、回転させて、過給するシステムと思われる。ツインブーストであるため、少なく見積もってもGSXの1.5倍くらいはパワーアップしているはずである。また、このタイプは、その構造上、ブーストポッドそのものがジェットエンジンのように推力を発していると推測される。
 νアスラーダにおいては、さらに『スパイラルブースト』と呼ばれる新型ブーストが投入された。2段ブーストと言えるもので、通常のブーストタイムリミットの最後の数秒しか使用できないが、瞬時に極限のパワーを得ることができる。
 『スパイラルブースト』は、マシンデザイナーのクレア=フォートラン女史によると、「通常のブーストによる圧力を一定時間貯め、フラッシュオーバーさせる」というものらしい。要するに、貯めこんだ圧力を一気に開放させることで爆発にも似た現象を発生させ、より強力なパワーを得るということだ。これにより、時速700kmを超えるスピードを短時間ながら実現している。
 しかし、外見では、まさにジェットエンジン、いやロケットエンジンそのものであり、ブーストポッド後端からの排気圧力によって、かなりの推力を得ていると思われる。
 エクスペリオン後期型は、マシン後部に小型のブーストポッドを4基搭載しており、使用時には2基づつにまとまって左右に分かれながらポップアップする。機能的には、ブースト使用時にチェーンかベルトが何かを駆動しているのが見えるため、スーパーアスラーダと同じものと思われる。


●内蔵式ブーストシステム

 このタイプは、ブーストシステムをエンジンカウル内に収め、エアインテークとエアダクトのみを展開するものである。ボディシルエットをほとんど変えずにブーストを使用できるが、ジェットエンジン的な推力はそれほど期待できない。
 スゴウのガーランド、AGSのエルコンドル、ミッシングリンクのミッショネルなどがこれにあたる。
 ガーランドは、コクピット後部左右にあるインテークとマシン後端にあるダクトを開くタイプで、インテークから入った空気でタービンを回転させるものと思われる。
 エルコンドルやミッショネルは、エアインテークやエアダクトの展開は見られない。これは空気を吸入する必要がないというであり、現実のターボチャージャーやスーパーチャージャーに近いシステムと思われる。アオイのアルザードやユニオンのナイトセイバーも、ボディの変形はするものの、ブーストの展開などは見られないので、それらと同様と推測される。


●ウイング展開式ブーストシステム

 このタイプは、ブースト使用時にウイングの展開を伴うもので、外見的には最も派手である。もちろん、ウイングの展開は、派手さを演出するためのものでく、しっかりした意味がある。ウイングを展開することでダウンフォースを得て、ハイパワーを効率良く路面に伝達するのである。
 これを採用するサイバーマシンは、アオイのスペリオンシリーズ、ユニオンセイバーのイシュザークシリーズなどがこれにあたる。
 スペリオンは、マシン後端左右にブーストポッドが搭載され、ブーストポッドの展開にあわせて、ウィングも展開される。初代の「ピーコックウイング」と称されるそれは、まさに孔雀が羽根を開くかのように扇状に展開する。
 イシュザークは、特徴的な垂直ウイングが左右に割れるように展開され、ブーストポッドがポップアップする。
 また、イシュザークは、リアウイングが無く、通常はダウンフォースローターと呼ばれるものでダウンフォースを得ている。これは、ローラーの回転速度によってダウンフォースを自在にコントロールできるため、高速域から低速域までカバーできる画期的なエアロシステムである。だが、ブースト使用時のような超高速域になると、その形状から空気抵抗が増す傾向にあるのだ。垂直ウイングを左右に展開する「メッサーウイング」は、このダウンフォースローターを隠して空気抵抗を減らしつつ、必要なダウンフォースを得る効果があるのだ。


●その他のブーストシステム

 ブーストシステムは大きく上記の3つに分けられるが、それにあてはまらないものもある。
 アオイのエクスペリオン前期型と、シュトロブラムスのシュティールシリーズである。
 エクスペリオン前期型は、後期型と同様に4基の小型ブーストを2基にまとめたものだが、回転するように左右に持ちあがって展開する。これはどう見てもエンジンと機械的に接続されているとは思えない。そのため、推測ではあるが、完全なジェットエンジンと見ていいと思う。
 シュティールは正確にはブーストとは言わないかもしれない。何故なら、動力源が電動モーターであるからだ。システム的には、普段は使用していないソーラーパネルを稼動させ、より大きな電力を得て、モーターをオーバーロードさせるというものである。モーターであっても、極限状態での使用には限界があり、タイムリミットはある。