第一話「城門にて、準備」
古城の城門に物々しい武装をした人間が百、二百と集まっていたと集まっていた。
老若男女問わず集まる面々はどれも、優しい夕暮れの光に照らされている。
「アンタさ、何回目の挑戦だい?アタシと組まないか?」
仲間の勧誘に余念のない女は、背中に弓を背負っている。
誘われた剣士は片手をおいのけるように振った。
「仲間を誘うだけ無駄だ。何時裏切るかわからない」
「そういう割にゃ、お隣さんと親しいようじゃないか?」
女は苦々しい笑みを作って言った。
剣士の隣には、黙々と剣を研いでいる男が座っている。
「話してただけだ。仲間じゃない」
剣士は眉間に皺を寄せて言う。女はふーん、と興味なさげに返事した。
剣士はその態度に更に気分を害したようで、手持ちの剣の切っ先を女に向けて、言った。
「仲間探しは下町でするんだな。その方がお前に丁度いい三流芸団の仲間が見付かるだろう」
今度は女が顔を歪め、
「そんな直ぐに敵作って、アンタ早死にするよ!」
そう叫んで早足で去っていった。
「……フィイ」
剣士は隣から名を呼ばれ、振り向く。
「何だ?」
「さっきの人の言うとおりだ。直ぐに敵をつくらない方がいい」
「お前まで言うのか、ブラット」
ブラットは剣を研ぎ続けながら言った。
「フィイは余計な一言が多すぎる」
「普通に言ってるつもりだ……けど気を付ける」
身に覚えがあるのか、フィイは素直に反省した。
「頼むよ」
ブラットは困った笑顔を浮かべた。
「伝令!半刻のちに城内中庭に進出を開始する。万全の準備をするように!」
早馬が通り、騎手がそう告げるとそのまま駆けていった。
「もうそんな時間か」
フィイは影をみて言う。そうだね、とブラットは応え、言った。
「もう十八回目になるけど、最初に大人数で向かうのは始めてだね」
「だな。城内に入ったら敵同士。結果どうなろうが恨みっこなしだ」
「毎回そう言って、互いに命からがら逃げ帰ってる」
「まぁ、そんなもんだよ」
二人は互いに笑う。
「じゃあ、俺は東側に回るから」
「また中庭で。最初に城に入るのはどっちだろうな」
「今回は入れそうだね。誰か」
ブラットは苦く笑うと、剣を鞘に収め、歩いていった。
夕暮れの光が、一瞬赤に変わった。
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