検査成績の読み方        
                                             
             目次

 0.はじめに                             
 1.血液型                             
 2.身体計測                             
   (肥満)                             
 3.尿検査                               
 4.便検査                              
 5.血清検査                             
   (血清肝炎)                           
 6.血沈検査                            
 7.精密聴力検査                          
 8.血液算定検査                           
   (貧血)                             
 9.生化学検査                           
    肝機能検査                          
    膵臓機能                           
    脂質代謝                           
    (高脂血症)                         
    腎機能検査                         
    その他の検査                        
     (アレルギー)                        
10.糖負荷試験                          
    (糖尿病)                          
11.視力、眼圧、眼底検査                      
12.肺機能検査                           
13.血圧測定                            
    (高血圧症)                         
14.心電図所見                           
15.レントゲン所見                         
16.腹部超短波検査                        
17.細胞診(子宮)                         
18.肛門診                             
19.乳房診                             
20.頭部CT                           
21.診察                              
22.判定と報告                          
23.報告書の読み方              
24.重要検査値の判定区分                
25.私の診療録の読み方 
26.人間ドック成績の読み方                  
                 はじめに

 病気の診断は検査成績を総合的に判断することで行われます。この資料は、それぞれの検査成績のもつ意味を説明したものですが、一つ一つの説明や解釈が独立で意味をもつのでは無いことを知って下さい。即ち、一つ一つの検査成績についての意味が単独で意味をもち、それらを全て加えたのが診断なのではありません。個人の病気は少数の原因によって起こっていて、それの表現としてそれぞれの検査成績が与えられているのです。成績から幾つかの原因を探し出して、系統的に整理してはじめて正しい診断が可能になるのです。従って、個々の検査成績の中には、成績が相互に矛盾していて、無視した方が良いもの、逆の解釈が必要になるものもあるでしょう。皆様の個々の成績についても、個々の説明にあまりこだわらずに、全体を総合的に解釈するものであることを念頭において、本文の説明をお読みくださるようにお願いします。

               1.血液型
    ABO式とRh式を調べます。個人識別と輸血適応の資料となります。

                    2.身体計測
   身長:標準体重を算出する基礎値です。身長が体格の基本です。
   体重:実際の体重、肥満度計算の基礎値です。
   標準体重:健康な人の正常な体重です。身長から計算されます。
        通常、(身長m)2x22 kgあるいは(身長cm―100)X0.9 kg 
で計算されます。
   肥満度:(実際の体重/標準体重)x100―100%。
   体脂肪率:水が電気を通し、脂肪が絶縁体であることを利用して、身体の2ヶ所に電極をつけ、その間に流れる電流によって、水と脂肪の割合から計算されます。計算された肥満度と体脂肪率が食い違うのは個人の筋肉の量が異なるためです。減量する場合は体脂肪率によった方が合理的です。減量するときは体脂肪計で脂肪量をモニターすることをお勧めします。

  [肥満度評価表]        
       やせ     標準     軽肥満     肥満
男性  
     10%未満  10−20% 20−25%  25%以上  
女性  20%未満  20−30% 30−35%  35%以上

BMI:体重(kg) / 身長(m)2 で計算される指数。♂;肥満>30>過剰体重>25>正常範囲>20、
♀;肥満>30>過剰体重>24>正常範囲>19
[肥満] 健康な人は身長に応じた骨格をもつので、その骨格を保つ基準体重があり、肥満 は基準体重に余分な脂肪が着いて起こっていると考ます。つまり、基準体重以上の 重量はすべて不要な脂肪であると考えますので、これを無くすのが健康に良いこと になります。この考えは普通の人には適用できますが、スポーツで鍛えた身体をも   つ人では、過剰の体重は決して脂肪ではなく、筋肉であり、不要なものではないの で削ることができません。このような方では体脂肪率を測り、それに過剰な脂質が あれば、その分だけを絞り込むことになります。即ち、男性では20%以上、女性 では30%以上の脂肪を過剰な脂肪として減らせば健康な身体と考えられます。 但し、スポーツマンでも体重が多いことは高血圧や糖尿病に対しては危険因子にな ります。つまり、筋肉の多いスポーツマンでは、過剰の脂肪が無くても、糖尿病や 高血圧になりやすく、その寿命は短いものとなります。この良い例は、相撲取りに 糖尿病や高血圧の者が多く、短命であることです。

                       3.尿検査
   比重:尿の比重は1.002―1.030です。これは水の摂取量によって変動します。
   pH:身体内の代謝状況で変動します。
   蛋白:(−)→(±)が正常。軽度の増加は起立性蛋白尿、心不全、糸球体腎炎、重金属中毒、アミノグリコシド系抗生物質の使用、腎盂腎炎などで起こります。中等度の増加は糖尿病性腎症、SLE、アミロイドーシスなど、高度増加はネフローゼにみられます。
   糖:(−)が正常です。血中の糖が高くなって、腎糸球体から原尿に出された糖が尿細管で血中に回収しきれなくなったときに出ます。従って境界型の糖尿病では(−)で、(+)なら真性の糖尿病になっていると考えなければなりません。しかし、一時に大量の食事をした後、肝疾患、甲状腺疾患、ストレス、運動後、肥満などによっても出現します。
   潜血:通常(−)。血尿が起きるのは糸球体腎炎、出血性素因、腎盂腎炎、腎結石、尿管結石、腎損傷、膀胱炎、前立腺炎などです。この場合、沈査を調べます。
   沈査:赤血球:正常では1/1視野以下。増加の原因は潜血の項を参照。
       白血球:正常では1/1視野以下。増加の多くは膀胱炎、腎盂腎炎。
       円柱:これが蛋白と共に出るときは糸球体腎炎が疑われます。
      上皮細胞:炎症の局所を示します。扁平;膀胱、移行;腎盂、円柱;尿細管。

                       4.便検査
   潜血:正常は(−)です。消化管の出血を調べます。胃・十二指腸潰瘍、胃癌、潰瘍性大腸炎、大腸癌、痔などで(+)となります。特に、胃・十二指腸に異常が無く、痔もなければ、大腸癌の検査をします。大腸癌は初期には自覚症状がなく、継続的な微量出血が初期症状であることが多いことによります。実際に、潜血(+)の者で、大腸に異常が発見されるのは数%です。
   虫卵:現在、寄生虫疾患は日本ではまれです。

                      5.血清検査
   CRP:通常(−)です。細菌感染があるときに増加します。
   RF:通常(−)です。リュウマチ因子。関節リュウマチのときに上昇します。しかし、関節リュウマチ以外の感染症でも偽陽性を示すことがあります。
   ASLO:正常は160単位以下です。溶血レンサ球菌の感染後に上昇します。リュウマチ熱の診断に用いられますが、糸球体腎炎、猩紅熱でも上昇します。
   HBs抗原:(+)はB型肝炎ウイルスの表面物質が血中にあることで、感染可能なウイルスがあることを示唆します。厳密にはHBeを調べる必要があります。真性B型肝炎ウイルスキャリア(保有者)です。
   HBs抗体:(+)はB型肝炎ウイルスに過去に感染したことがあることを示します。抗原(−)、抗体(+)の場合、他人に移す可能性はありません。
   TPHA:RPR法:ガラス板法:いずれも梅毒感染の検査です。(+)は梅毒に感染した経歴があることを示します。三つの方法は感度、特異性共にこの順で悪くなります。特に、RPR法は治療で治癒すると(−)になります。これに対して、TPHAは治癒しても一生(+)のままです。即ち、RPRは治癒しているどうかの判定に、TPHAは感染した経歴があるかないのかの判定に利用されます。ガラス板法・RPR法は梅毒でなくても(+)になる偽陽性反応がありますが、TPHAはこれが少なくなります。
   HCV抗体:(+)はC型肝炎ウイルスに感染したことがあることを示唆します。

[血清肝炎]血清肝炎の起因ウイルスのB型・C型肝炎ウイルスは共に輸血、性行為、母子感染によって伝染します。1960年代にはB型肝炎患者が多かったのですが、B型の検査法確立して、1980年代からはC型肝炎が増えています。最近では、両型とも減少して、新しい型がでています。A型肝炎は流行性肝炎で、水系感染をしますが、治癒するとウイルスは身体内には残りません。しかし、B/C 型肝炎ウイルスは急性期が過ぎてもおよそ半数の患者は持続感染して慢性肝炎になります。これらの患者はGOTやGPTが軽度に上昇していることで判ります。肝臓細胞は常に新生していますが、この能力が低下すると、肝硬変になります。また、肝がんになることもあります。事実、肝がん患者の95%はこれらのウイルスの持続感染者です。
    
   がん抗原:特定のがん細胞が増えてきたときに増加する物質です。この物質は決して特定のがん細胞にしかないものではなく、正常でも微量には作られています。また、絶対に特定のがんでのみ増えるものでもありません。従って、特定のがん抗原が増加していることは、「がんがある可能性があるとすればどの臓器の可能性が高い」ことを漠然と示唆する程度しかできません。従って、特定のがん抗原が陽性なら、X線、CT、 MRI、内視鏡などで存在を確かめて診断します。
 以下に、がん抗原の名称、異常値(カットオフ値)、第一に疑うがんを示しました。
    CEA: 6 ng/ml 以上、大腸がん、肺がん、がん一般の可能性
    AFP: 7 ng/ml 以上、肝細胞がんの可能性
   CA19-9:37 U/ml 以上、膵臓がん、胆嚢・胆管がんの可能性
    CA125:35 U/ml 以上、卵巣がんの可能性 
    CA15-3:30 U/ml 以上、乳がん、陽性率は高くない。
    PSA: 4 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
    PAP: 3 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
    γ-Sm: 4 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
    TPA:70 U/l 以上、乳がん、大腸がん、胃がん、泌尿器系がんの可能性
    ACP:5.9-14.0 U/ml、前立腺と赤血球中に多く含まれる。高値;前立腺がん、骨転移ないし肝転移したがん、骨疾患  
    SCC:1.5ng/ml 以上、扁平上皮がんで高値になる。肺・子宮頸部がんで
       陽性が多い。
    SLX:38U/ml 以上、腺がんで高値になる。肺腺がんや膵がんで陽性。
    NSE:10ng/ml 以上、肺小細胞がんで陽性。神経芽細胞腫でも陽性。
    CYFRA:3.5ng/ml 以上、扁平上皮がんのマーカー。肺がんの他、
         子宮頸部・食道がんでも陽性。
   (ペプシノーゲン:70ng/ml未満、T/U=3未満で胃癌の疑い、萎縮性胃炎
           やや低値。腎不全、十二指腸潰瘍では高値。)


            6.血沈検査
   ♂:亢進は20(10) mm/h 以上、♀:30(15) mm/h 以上、
     軽度亢進:貧血、ネフローゼ、妊娠
     高度亢進:結核、敗血症、肺炎、関節リュウマチ

            7.精密聴力検査
   難聴は35(40) dB 以上、騒音によって音を感ずる細胞の傷害が起こる結果難聴になります。4000Hzは最も鋭敏な聴力域なので、一般に、この音域を感ずる細胞から傷害が始まります。しかし、騒音の種類によっては1000Hzから始まることもあります。予防は騒音から内耳を守ることで、耳栓や騒音を減す努力が必要です。

           8.血液算定検査
  白血球数:基準範囲;35-94x102/μl
白血球増多:細菌感染症、白血病、膠原病、ステロイド治療中
   白血球減少:無顆粒球症、ウイルス感染、SLE
  赤血球数:基準範囲;♂ 423-559x104/μl, ♀ 376-493x104/μl
   赤血球増多:多血症、赤血球増多症
   赤血球減少:鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、悪性貧血
  血色素量:基準範囲;♂ 13.6-17.6 g/dl, ♀ 11-15.1 g/dl
  ヘマトクリット :基準範囲 ♂ 42-53 %, ♀ 34-45 g/dl
   血色素量、ヘマトクリット が少ないものを低色素性、正常のものを正色素性、高いものを
   高色素性と呼び、貧血の鑑別診断に大切です。
  MCV(平均赤血球容積):基準範囲 ♂ 83-101 fl, ♀ 80-101 fl
  MCH(平均赤血球血色素量):基準範囲 ♂ 28.2-34.7 pg, ♀ 26.4-34.3 pg
  MCHC(平均赤血球血色素濃度):基準範囲 ♂ 31.8-36.4 %, ♀ 31.3-36.1 %
   赤血球のサイズが小さいものを小球性、正常なものを正球性、大きいものを大球性と区別します。これも貧血の鑑別診断に大切です。
[貧血] 酸素の肺から末梢への運搬能力が低下した状態を云います。血球のサイズと色素量によって三つに分けられます。、 1.小球性低色素性貧血:鉄が欠乏したときに起こります。鉄欠乏性貧血2.正球性正色素性貧血:赤血球が失われた時、壊れている時、生産が低下している時におこります。失血性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血 3.大球性高色素性貧血:鉄の吸収が悪い時に起こります。悪性貧血   治療は1.が鉄剤投与、2.は輸血、ステロイド薬、エリスロポエチン投与、3.は鉄剤に加えてビタミンB 12と葉酸の投与です。
  血小板:基準範囲 12-40x104/μl、減少すると出血傾向;血小板減少性紫斑病、
  網状赤血球:基準範囲 2-26%、赤血球の再生能を示す指標です。溶血性貧血貧血、鉄欠乏性貧血の回復期に上昇し、再生不良性貧血、悪性貧血の増悪期に減少します。
 [血液像]
   桿状核球:基準範囲 0-19%
   分葉核球:基準範囲 27-72%
    桿状核球と分葉核球を好中球と呼びます。好中球増多(60%以上)を起こす疾患は、妊娠、肉体労働、細菌感染症、出血、白血病、脳出血、薬物中毒、ストレス、膠原病、肝硬変、腎不全、悪性腫瘍などです。好中球減少(40%以下)を起こす疾患は、放射線障害、ピリン系薬物、悪性貧血、再生不良性貧血、ウイルス・原虫感染症などです。
   好酸球:基準範囲 0-10%
    好酸球増多(5%以上)を起こす疾患は寄生虫疾患、アレルギー疾患、皮膚疾患などです。好酸球減少(2%以下)を起こす疾患は悪性貧血、再生不良性貧血、ストレスなどです。 
   好塩基球:基準範囲 0-3%
    好塩基球増多(2%以上)を起こす疾患には蕁麻疹、粘液水腫、潰瘍性大腸炎、骨髄性白血病などがあります。
   単 球:基準範囲 0-12%
    単球増多(7%以上)を起こすのは、感染症、原虫疾患、慢性肝炎、肝硬変、潰瘍性大腸炎などてす。減少(3%以下)するのは悪性貧血、重症感染です。
   リンパ球:基準範囲 20-60%
    リンパ球増多(40%以上)を起こすのはウイルス感染、感染回復期、リンパ性白血病、減少(25%以下)を起こすのは悪性リンパ腫。再生不良性貧血、SLEなどです。
   異常細胞:基準範囲 0%。腫瘍を疑います。

                 9.生化学検査
  肝機能検査
   総蛋白:基準範囲;6.7-8.3 g/dl
    多種の蛋白が含まれますが、最も多いアルブミンは肝で作られます。
    高値;肝硬変、骨髄腫、低値;吸収不良、蛋白漏出性胃腸炎、ネフローゼ
   総ビリルビン:基準範囲;0.2-1.2 mg/dl
    壊れた赤血球のヘモグロビンがリンパ組織で分解されて間接ビリルビンになります。これは肝臓で直接ビリルビンに変えられて胆汁に排泄されます。溶血が多くて肝臓の処理がまに合わなければ間接型が増えます。胆管が閉塞すれば直接型が増えます。これの上昇が見られたときは直接型と間接型を測定します。  高値;肝炎、肝硬変、肝がん、胆道疾患、溶血性疾患、薬物中毒
   直接ビリルビン:基準値;0.4 mg/dl 以下、
    高値;肝炎、肝硬変、肝がん、胆道系疾患
   間接ビリルビン:総ビリルビン―直接ビリルビン
    高値;各種溶血性疾患、無効造血、体質性黄疸、薬物性黄疸
   ZTT:基準範囲;4-12 KU
    血清中の抗体濃度を示します。減少は免疫力の低下と解釈されます。
    高値;肝炎、肝硬変、肝がん、慢性炎症、膠原病、結核、骨髄腫
   TTT:基準範囲;4以下 KU
    血中のγグロブリンやリポ蛋白の増加を示します。
    高値;急性肝炎、肝硬変、脂肪肝、慢性感染、膠原病、高脂血症
   GOT:基準範囲;8-38 U/l
   GPT:基準範囲;4-44 U/l
    GOT、GPT共に心筋・肝・骨格筋・腎細胞内に多い酵素で、これらの細胞の破壊によって血中に出ます。特に、急性肝炎の早期診断、慢性肝炎の経過観察に用いられます。急性肝炎ではGOT>GPT、慢性肝炎ではGOT<GPT、肝硬変、肝がんではGOT>GPT、脂肪肝ではGOT<GPTの傾向があります。
   AL-P :基準範囲;75-270 IU/l
    身体内の色々な組織の細胞内にあり、細胞の破壊で出ます。組織によって違った分子構造(アイソザイム)があります。アイソザイムまで調べるとどの組織が壊れているか確定できます。一般には、肝、胆道、骨、甲状腺機能亢進、悪性腫瘍、妊娠などで高値になります。ビリルビンが上昇せず、これが上昇するのは限局性肝障害で、肝炎ではビリルビンが著明に上昇し、これは軽度上昇に止まります。
    AL-P1の出現;閉塞性黄疸、限局性肝疾患、AL-P2の増加;胆道系疾患、AL-P3の増加;骨疾患、副甲状腺機能亢進、AL-P4の出現;妊娠後期、一部の悪性腫瘍、AL-P5の出現;肝硬変、慢性肝炎、慢性腎不全、AL-P6の出現;潰瘍性胃腸炎
   LDH:基準範囲;180-480 IU/l
    身体内の組織に広く分布しています。特に、心、肝、腎、筋に多く、心疾患(心筋梗塞、うっ血性心不全)、肝疾患(肝炎、肝がん)、悪性腫瘍(胆道がん、膵がん、大腸がん)、悪性貧血、溶血性貧血、白血病などで上昇しますが、特異性が低いので参考にしかできません。
   Ch-E :基準範囲;1107-3736 IU/l
    肝臓で合成されて血中に放出されます。この活性低下は肝細胞の機能障害の指になります。
   γ-GTP:基準範囲;60 以下 U/l
    主に、腎、膵、肝の上皮細胞に含まれています。肝・胆道系の閉塞の指標となります。肝炎、肝硬変、肝がん、アルコール性肝障害、薬物性肝障害、胆道系疾患、膵頭部がん、心筋梗塞などで上昇します。肝疾患の治癒の指標にされています。
   LAP:基準範囲;30-70 IU/l
    三つの酵素があり、組織によって異なりますが、高値を示すのは、肝炎、肝硬変、肝がん、膵炎、膵がん、妊娠などです。
   ALB:基準範囲;3.8-5.3 g/dl
    肝臓で作られる蛋白です。栄養状態や肝障害の程度判定に使われます。低値;ネフローゼ、重症肝疾患、栄養失調、蛋白漏出性胃腸炎、重症感染症
   AG比:基準範囲;1.3-2.0 
    血清蛋白異常の指標。アルブミンの減少をグロブリンの増加が補っている場合にはこれが低下します。低値;ネフローゼ、重症肝疾患、M蛋白血症、炎症性疾患
 ヒアルロン酸:基準範囲;50 ng/ml 以下
     繊維芽細胞で生産され、関節液中に多い。血中に移行し、肝で分解されます。 肝疾患、特に肝硬変で上昇します。肝炎から肝硬変への移行、肝硬変の進行、関節リウマチの診断と進行度の指標になります。
  MAO:基準範囲;0.2-0.9 U/l、肝の繊維化の指標。
     肝炎、肝硬変、糖尿病、心不全、甲状腺機能亢進で上昇します。
  P-V-P:基準範囲;1.0 U/ml以下、
コラーゲンが重合してできるとき出現します。繊維化マーカーになります。肝炎、肝硬変、アルコール肝、肺繊維症、腫瘍、膠原病などで増加します。

  膵臓機能
    血中アミラーゼ:基準範囲;76-231 IU/l
    尿中アミラーゼ:基準範囲;56-1080 IU/l
     アミラーゼは膵臓が生産して、十二指腸に分泌する糖の消化酵素です。膵組が破壊されたとき、血中に出、尿にも排泄されます。尿中では特に、高値になるので、膵疾患のスクリーニングや経過観察に使われます。血中、尿中共に高い時は、急性膵炎、膵がん、耳下腺炎、腹膜炎、腸閉塞などです。   エラスターゼT:基準範囲;100-400 ng/dl
膵臓の他にも存在しますが、膵臓由来のことが多い。高値;膵炎、膵がん
    トリプシン:基準範囲;110-460 ng/ml
膵臓の生産する代表的蛋白分解酵素です。膵臓障害の際に血中にでます。
     高値;急性膵炎、膵がん、胆石、胆道がん、肝硬変、慢性肝炎、腹膜炎、アルコール依存症、     低値;膵実質の荒廃、インシュリン治療中  

  脂質代謝
   総コレステロール:基準範囲;130-220 mg/dl
   中性脂肪:基準範囲;50-150 mg/dl
   βリポ蛋白:基準範囲;♂ 150-600 mg/dl, ♀ 130-430 mg/dl
   HDLコレステロール:基準範囲;♂ 35-70 mg/dl, ♀ 40-75 mg/dl
  (カイロミクロン:基準範囲; 0-30 mg/dl) 
    脂質は水に溶けないので、血中では蛋白分子(アポリポ蛋白)に付着して粒子状で存在します。これは超遠心法で低比重のものから、カイロミクロン(CM)、超低比重リポ蛋白(VLDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白(HDL)に分けられます。また、電気泳動法ではpreβ、β、α の三つに分かれます。カイロミクロンは小腸粘膜で胆汁酸によって乳化された中性脂肪からできます。外因性脂質の肝臓や脂肪組織への輸送体です。VLDLは肝や腸管壁で合成され、内因性脂質の輸送体です。中性脂肪を運ぶのはこの二つです。HDLのアポ蛋白も肝臓や腸管壁で作られますが、末梢で壊れた遊離コレステロールと結合してこれを肝臓に運ぶ働きをします。LDLは肝臓で作られ、新しいコレステロールを末梢に運びます。preβはVLDL、βはLDL、αはHDLです。総コレステロールは全てのコレステロールを、測られた中性脂肪値は、カイロミクロンとVLDLの分子を含んでいます。HDLは測定出来ますが、LDLは測定が困難なので、
    (LDLコレステロール)=(総コレステロール)ー(HDL)―(1/5中性脂肪)
    の式で計算されます。
[別測定法] 基準範囲:LDL;200-600 ng/dl、VLDL;20-150、カイロミクロン;95以下、

[高脂血症] コレステロールか中性脂肪が高値を示す者を高脂血症と云い、T、U、V、W、Xに分けられでいます。T型はカイロミクロンのみが著明に増加します。X型ではカイロミクロンとVLDLが増加します。Ua型はLDLのみが増え、Ub型はLDLとVLDLが共に増えます。V型はβリポ蛋白に異     常が見られます。W型ではVLDLのみが増えます。いずれも遺伝素因が強く関係しており、家族性発症が多く、若年で発症するものが多いのですが、Uが最も遅く、更年期近くになって発症し、ポピュラーです。これはLDL receptor の減少によって起こります。帰結は大・中動脈硬化で、最もポピュラーな疾患は心筋梗塞です。

  腎機能検査
   尿素窒素:基準範囲;8-20 mg/dl
    窒素量として測定していますが、血中の尿素を定量しています。これの大量の増加は尿毒症であり、100 を越えれば腎透析が必要になります。これは蛋白がエネルギーとして利用された時の最終代謝産物で腎臓から排泄されます。増量は生産の増加か、排泄の低下によります。これは腎糸球体でろ過された後、尿細管で一部再回収されますので、再回収量が多い状態は望ましくありません。従って、高値は体組織の崩壊、絶食、蛋白の大量摂取などの蛋白量の増加と腎機能障害、腎不全、尿路閉塞などの排泄能力の低下によります。逆に低値になるのは、利用できる蛋白が少なくなる、肝不全、妊娠、低蛋白食などの場合です。
   クレアチニン:基準範囲;♂ 0.8-1.3 mg/dl, ♀ 0.6-1.1 mg/dl
    クレアチニンは腎糸球体でろ過された後、尿細管で回収されません。従って、腎のろ過効率(効率低下は腎障害)の程度の指標として使われています。
   尿酸:基準範囲;♂ 3.3-7.9 mg/dl, ♀ 2.3-5.4 mg/dl
    核酸の一部であるプリン体の最終代謝産物です。腎尿細管でほとんど再回収されます。従って、高尿酸血症は生成亢進か腎排泄の低下によります。過剰では尿酸ナトリウムが結晶になって関節滑膜や腎尿細管に沈着し、痛風関節炎や痛風腎を起こします。
   電解質:体内の組織細胞の機能は浸透圧や活性イオンの質と量に左右されます。これを決めるのが電解質濃度です。バランスが崩れた時は、輸液によって修正する必要があります。
     Na 基準範囲;135-147 mEq/l
     K 基準範囲;3.5-5.0 mEq/l
     Cl 基準範囲;98-108 mEq/l
     Ca 基準範囲;8.4-10.2 mg/dl
     P 基準範囲;2.5-4.5 mg/dl
     Mg 基準範囲:1.8-2.6 mg/dl
     Fe 基準範囲;♂ 48-200 μg/dl, ♀ 25-190 μg/dl
     フェリチン:基準範囲;♂ 30-323 ng/ml, ♀ 4-140 ng/ml
鉄貯蔵の指標。潜在的鉄欠乏状態で低値、再生不良性貧血、溶血性貧血で高値になります。白血病、骨髄腫でも著明な高値になります。
     TIBC:血清鉄はほとんどトランスフェリンと結合している。トランスフェリンの全鉄結合能を測る。基準範囲:♂ 260-430μg/dl、♀ 270-470、
      高値;鉄欠乏性貧血、真性多血症、低値;悪性腫瘍、急性肝炎、感染症、

 その他の検査
   甲状腺機能:甲状腺ホルモン(T3, T4)は全身の代謝活性を高めます。このホルモンの分泌は下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。T3, T4の増加は甲状腺機能亢進症、低下は甲状腺機能低下症、粘液水腫を起こします。TSH の増加は原発性甲状腺機能低下症、甲状腺全摘後に、減少は甲状腺機能亢進症に起こります。
     基準範囲:TSH; 0.49-4.67μIU/ml、T3; 0.67-1.27 ng/ml、T4; 4.5-12μg/dl
   CPK:筋肉や神経細胞に含まれる酵素です。基準範囲 ♂ 56-348U/l, ♀ 29-145.   
    高値;心筋梗塞、末梢循環不全、筋ジストロフィー、甲状腺機能低下、脳梗塞、  
    低値;甲状腺機能亢進、妊娠
   アレルギー検査:アレルギーと思われる症状があり、好酸球が5%以上あれば、アレルギーを疑って、IgE を調べます。これが高値ならRAST試験でアレルゲンを探します。
        IgE :基準値:250 U/ml 以下、アレルギー反応に関与する抗体。
         高値:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、寄生虫疾患、肝炎、関節リュウマチ
         低値:多発性骨髄腫、免疫不全症
       RAST:−:0.34 U/ml 以下、±:0.37-0.7未満、+:0.7以上
           原因抗原(アレルゲン)を決めることができます。

[アレルギー]アレルギーはアレルギーを起こす物質(アレルゲン)との接触によって起こります。アレルゲンと接触しないようにすれば、症状は起こりません。自分のアレルゲンを知ることが、アレルゲンを避ける第一歩です。

   骨密度:尺骨の単位面積当たりのCa塩の量を定量します。若年成人の平均値と分布から +-1.5 SD までを正常、1.5-2.5 SDを骨量減少、-2.5 SD以下を骨粗鬆症とします。当院の装置(東洋メディカ)では、男性の平均値は0.57、-1.5 SDは0.5、-2.5 SDは0.42で、女性の平均値は0.49 g/cm2、-1.5SDは0.4、-2.5 SDは 0.34です。骨量減少から治療の対象となります。まず、食事療法をを勧めしますが、3ヶ月で効果が出なければ、運動をしながら、カルシュウム薬と活性型ビタミンD3薬の投与します。閉経直後の婦人では女性ホルモンの追加投与が奏功することがあります。

                10.糖負荷試験
   血糖値:吸収された糖は、膵臓のインシュリンとグルカゴンと云うホルモンの働きで一時肝細胞に貯蔵され、一定量ずつ血中の放出されます。しかし、インシュリの働きが低下すると、貯蔵されずにそのまま血中にでてきます。また、全身の細胞も血中の糖を吸収するのにインシュリンを必要としています。従って、インシュリン不足は糖の利用を下げ、更に血中糖濃度を高めます。空腹時 110 mg/dl 以下は正常で、空腹時126 以上、食後2時間で200以上を糖尿病としております。これらの値の中間は耐糖能低下あるいは境界型糖尿病と呼ばれます。糖尿病の起病性は血中濃度の上昇によって、各種の蛋白に糖が結合して機能を失わせることによりますら、代表的蛋白の糖化度を測定します。これがHbA1c です。
   尿糖:血中の糖は腎糸球体でろ過後、腎尿細管で回収されますので尿にはでません。 しかし、血中濃度が高くなると、回収されなかった糖が尿にでてきます。これが(+)になれば、真性の糖尿病である可能性が高いことを示唆します。
   フルクトサミン:これも糖化蛋白の一種です。基準範囲は 205-285 pmol/l です。過剰は検査時点の少し前までにあった糖の有害作用の程度を示唆します。
   HbA1c:血糖の項目で説明しました。糖化蛋白の代表です。一定期間の平均的糖化度合いをしめすもので、特異性が高いので、汎用されています。現在の疾病統計では、6.0%以上を糖尿病、5.3 以下を正常、5.4-5.9 を境界型糖尿病とすることになっています。
   1.5 AG:ぶどう糖によく似た物質。食餌から吸収されます。糖尿病では排泄が亢進して血中濃度が下がるので、糖尿病管理の指標として利用されます。この値が高ければ糖はまだ、大量に尿に出ていないと判定されます。
       基準範囲;♂ 15-45 μg/ml、♀ 12-29 μg/ml

[糖尿病] 糖尿病とは血液中のブドウ糖濃度が上昇し、生体の機能蛋白に結合して、その機能を阻害する結果が集積します。実際には、毛細血管の基底膜が障害を受けることが血管障害の原因です。この結果起こるのは糖尿病性動脈硬化です。これは脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。この変化が腎糸球体に障害を起こせば糖尿病性腎症と呼ばれる腎機能低下を起こします。眼では網膜症や白内障を起こします。これとは別に、末梢感覚神経の障害も起こります。初期は手足の知覚過敏、末期には知覚喪失に陥ります。治療には、インシュリン、インシュリンの分泌を高める薬物、小腸で糖の吸収を遅らせる酵素、および末梢細胞の糖吸収を高める薬物が使われます。

                11.視力、眼圧、眼底検査
  視力:裸眼:0.6 以下を視力低下としています。
     矯正:メガネの使用によって0.7 以上に回復出来るものを「良」とします。
  眼圧:眼球内の圧力で、20 mmHg 以上を高値とします。緑内障の診断利用されます。
  眼底:眼底動脈の走行から動脈硬化の程度を、網膜から出血や萎縮を、視神経乳頭部の陥凹などを観察できます。この動脈硬化度で全身の動脈硬化を類推します。その他の所見は緑内障の診断、治療の参考にされます。

            12.肺機能検査
   肺活量計を用いて、肺活量、1秒量、1秒率 を求めます。機能の判定は、異常なし;換気障害なし、閉塞性;吸気は入るが、呼気は出にくい。拘束性;吸気が入り難い。混合型;吸気も呼気も困難です。の4型に分けられます。
閉塞性疾患;肺気腫、気管支炎、気管支喘息
    拘束性疾患;肺繊維症、じん肺、うっ血肺
    混合性;肺疾患の末期

            13.血圧測定
   血圧計で心室の収縮期圧(最高血圧)と拡張期圧(最低血圧)を測定します。最高血圧は身体の活動で大きく変動しますが、最低血圧はあまり変動しません。血圧は少し安静にした後で測定します。実際の生活状況での血圧を知るには、出来れば一日のいろんな時に測定することをお勧めします。
 140 mmHg/90 mmHg以下を正常、160/100以上を薬物治療が必要と判定します。この中間は高血圧Stage 1と呼び、体重標準化、禁煙、飲酒制限、規則的運動、減塩食などの生活習慣の改善によって正常化をはかるレベルです。

[高血圧症] 高血圧とは血管(末梢の毛細血管で網膜、脳、心臓、腎臓の血管を含みます。)に無理のかかる血圧を云います。血管の中膜の変化から動脈硬化に進行します。帰結は脳梗塞が最も多く、心筋梗塞も起こります。眼底検査はこれの予知に大切です。

              14.心電図所見
   心電計で身体表面の電極間の電位差を心臓の拍動経過を追って調べます。身体内に心臓の標準位置が設定されていて、それとの位置のずれ、変化の異常、律動の異常を評価します。これらは、標準化の設定を行った機関の名を取って、ミネソタコードと呼ばれています。異常なしは10 、あとは3桁のコードで表現されます。しかし、位置がずれていても機能の全く異常のないもの、体格の差によるもの、異常とは判定されますが日常には機能に異常があるとは考えられないものがあって、これらは「正常範囲内」と考えられます。また、過去の変化の跡で、あまり障害になっ ていないものは「軽度障害」に分類されています。現在治療の必要なものは「異常」です。厳密には、異常は正常とは言えないもの全てと考えられますが、実際の判定は日常生活上の注意と治療の必要度とによって行っております。

               15.レントゲン所見
  胸部単純撮影:正面像と側面像を撮影します。正面像では脊椎の配列、心臓の位置・サイズ、肺野の異常、肺門の異常、胸膜の異常、肺外の異常陰影を調べます。また、心臓の幅と胸郭の幅との比率(CTR) も計算されます。これは心臓肥大の判定に使われます。一応50% 以上を肥大と考えて下さい。側面像は脊椎、肺門にかかって正面では見えない変化や肺野の陰影の位置を知るのに使われます。
  腹部造影撮影:バリウムを飲んで、その食道通過像、胃・十二指腸の形態、襞を観察します。食道では憩室、ヘルニア、静脈瘤、炎症、潰瘍などが観察されます。また、食道と隣接する部分の異常が示唆されることもあります。胃では潰瘍、潰瘍瘢痕、慢性胃炎、萎縮性胃炎、びらん性胃炎、憩室、ポリープ、腫瘤、胃下垂、巨大レリーフなどを観察できます。十二指腸でも潰瘍、潰瘍瘢痕、憩室、炎症などが観察されます。

                 16.腹部超短波検査
    腹部皮膚上で超音波を発生し、内部臓器から反射してくる音波の量を画像化して、
    臓器の形態、大きさ、臓器内の変化を調べます。
   胆道:胆石、ポリープ、胆管拡張、胆嚢炎、腫瘍などの有無を調べます。
   肝臓:肝炎、肝硬変、脂肪肝、結石、嚢胞、血管腫、膿瘍、腫瘍などの有無を調べます。
   脾臓:腫大、石灰化などが観察されることがあります。
   膵臓:膵炎、膵結石、膵嚢胞、膵腫瘍などの有無を調べます。
   腎臓:形態異常、結石、嚢胞、石灰化、萎縮、腫瘍などの有無を調べます。

               17.細胞診(子宮)
   子宮頚部の粘膜細胞を採取して、観察される細胞の形態から判定します。Class Tは異常なし、Uは炎症細胞あるいは良性異型細胞、Vは判定の難しい細胞で、Wは悪性細胞があることを意味します。一応、Vから精査・治療となります。

1                     8.肛門診
   内痔核の有無と位置、前立腺の大きさ・堅さ・硬い部分の位置を調べます。硬い部分に少しでも異常を感ずれば、一応、前立腺マーカーの検査をします。

                     19.乳房診
   触診によって、しこりの有無、あれば位置、堅さ、周囲との関係を調べます。少しでも異常の可能性があれば、乳房超音波検査、乳房X線検査をします。

                20.頭部CT
   X線の全方向からの照射による透過線量の画像処理によって、それぞれの位置の密度を測定し、異常の有無、異常の性質、位置を調べます。脳内では脳梗塞、脳出血、
脳腫瘍、萎縮、脳外では、くも膜下出血、脳底血管の異常、隣接器官の腫瘍・変形などが観察されます。
                      21.診察
   これは成績表には含まれませんが、少し説明させて頂ます。
    まず、問診をします。「主(愁)訴」現在の身体的悩み、現在治療中の疾病の有無を伺います。「経過」では、現在治療中の疾患について、発病以来の経過、治療状況を伺います。「既往症」ではこれまでになった疾病を伺います。また、現在の生活状況として、喫煙の有無・程度、飲酒の有無・程度定期的運動の有無・程度を伺います。「家族歴」では、両親の健康状況を伺います。特に成人病は体質にもとずいていて、確実に遺伝しますから、両親の疾病状況は自分の将来の疾病と深い関係があります。  次に、「顔面の視・触診」では貧血、黄疸、頚部リンパ腺、甲状腺を調べます。また、「胸部の聴診」をします。心臓では弁膜症、不整脈の有無、頻脈・徐脈および気管支閉塞の有無を調べます。「胸部打診」では肺肝境界の位置と肝の大きさ、「腹部触診」では腹部の腫瘤の有無、圧痛点の有無を調べ、妊娠線、腹部手術の瘢痕を確認します。

                 判定と報告
 問診や診察で得られた所見が検査成績によって説明されるかの検討と、検査成績から示唆された疾病の可能性の検討が最終評価になります。また、これらの状況をふまえての生活についての注意もここで決められます。なお、精査のお勧めは、万一のことを考えて、安全のために多少過剰にしてありますので、精査とあると大変なことであると考えないで受診頂きたいと思います。健診は健康な方を調べるので、有料ですが、発見された異常は疾病ですので、外来での保険診療になります。ドック手帳を持参され、それぞれの専門外来を受診頂ければ幸いです。高い費用で健診を受けておられるのですから、むしろおかしいところは、以後保険診療で徹底的に調べることが良い方法であると思います。但し、実際の治療では社会的要素が加味されますので、必ずしもこの基準値を守らない場合があります。即ち、基準値は異常を進行させない値であるから、多少の進行はかまわない方では基準をゆるめることができるのです。

                人間ドックの報告書の読み方
 まず、それぞれの臓器あるいは機能についての診断(評価)が個別に示してあり、それらを総合した評価があります。評価は5−8段階に分けられています。私の人間ドックでは、6段階評価で、A 正常、 B 正常とは云えない所見がありますが、現在は生活に何ら支障のないもの(正常に準じます)、BF 現状はBと判定されますが、今後変化する可能性がありますので、経過を追って検査を受け、医師の指導を受けることが望ましいもの、C 確実に日常生活に注意が必要で、時々検査を受けて医師の指導を受けるべきもの、(BFとCは治療は要らないが時々検査と指導が必要です)、D 治療が必要です。医師を受診下さい、G 更に詳しい検査をしないと診断できないもの (DとGは直ちに医師を受診されることをお勧めします)、に分けています。まず、個々の評価を読んで、何をすべきかを知って下さい。診断名から、どんな診察が必要か判ります。
 次に、全体として生活に関するアドバイスがあり、それぞれの診断内容の解説があります。さらに、検査の結果を表にしたものが添付されています。この検査成績の評価の参考が本文の内容です。

医師 新井 俊彦
平成11年1月

 24.重要検査値の判定区分(政府管掌保険基準値)

検査項目 A B BF/C D/G
総蛋白(g/dl) 6.5-8.5 8.6-9.0 6.0-6.4 <5.9 >9.1
アルブミン(g/dl) 3.7-5.5 5.6-6.0 3.0-3.6 <2.9, >6.1
総コレステロール(mg/dl) 140-219 220-239 >240
HDLコレステロール ♂ >40 34-39 <33
   (mg/dl)     ♀ >50 40-49 <39
中性脂肪(mg/dl) <149 150-249 >250
尿素窒素(mg/dl) <20 20-24 >25
クレアチニン(mg/dl) <1.2 1.3-1.6 >1.7
尿酸(mg/dl) ♂ 2.0-7.0 7.1-7.5 7.6-8.5 >8.6
       ♀ 2.0-5.5 5.6-6.5 6.6-8.0 >8.1
GOT(IU/L) <40 41-99 >100
GPT(IU/L) <35 36-40 41-99 >100
γ-GTP(IU/L) <50 51-80 81-99 >100
空腹時血糖(mg/dl) 78-109 110-125 >126

  
A:異常なし。  B:少し異常あるも心配なし。  BF:要経過観察。 
C:要観察指導。  D:要医療。  G:要二次検査。



25.私の診療録(カルテ)の読み方

近年診療録の開示が求められるようになってきています。人間ドックの診療は病人を対象としてませんので、最も開示し易いものだと思われます。しかし、
医師の記録は字が下手で、略号が多く、判読が困難なのは有名です。私の診療録もこの例に漏れません。そこで、解読の参考に私の問診法を御紹介します。
愁訴(C.C.=chief complaints)
事務系労働者では、 頭痛、肩こり、腰痛の有無を聞き、その程度から記載するか否かを決めます。他の関節痛も関連して聞きます。次に、胸やけ、胃痛、便秘の有無を聞きます。更に、立ちくらみ、動悸、息切れ、の有無、咳・痰の有無、喘息、アトピー、花粉症の有無を聞きます。老人では排尿障害、耳鳴りも重要です。なにかあれば、それを記載します。もし、全くなければ、特に異常なし(n.p.)と記載します。
更年期が近い婦人では、上記に加えて、生理の有無、閉経の年令を聞きます。
海外出張者では、行き先、期間、出発日時、予防接種の有無を追加します。
現病歴(P.I=history of present illness)
病気がない人が多いので、まず、服薬の有無を聞いて、なければ、n.p.と、あるならどんな病気の治療薬か聞きます。念のために、健康食品・漢方薬使用の有無も確認します。また、薬物アレルギーの有無も聞きます。
既往症(P.H.=past history) 
これまでに罹った病気です。まず、小児期の手術で鼠径ヘルニア、虫垂切除の有無、喘息・アトピーの有無、学童期の腎炎・リウマチ熱・川崎病、青年期の結核・肝炎、就職後の胃潰瘍、一般的に花粉症・痔も聞きます。さらに、更年期の近い者には胆石、尿管結石、痛風、高血圧、糖尿病、高脂血症、アレルギーの有無も聞きます。何もなければn.p.、有ればその内容を発病年令、経過と共に記載します。
妊娠:婦人では、妊娠回数、出産回数、出産が自然分娩か帝王切開か、育児の授乳は 母乳か、ミルクか、あるいは混合か確認します。
妊娠がない時は無記載です。
生活:喫煙:一日の喫煙本数、 本/day、なければ(−)と記載します。
   飲酒量:(飲料の種類と量、毎日/週何回/月何回と記載します)、
       なければ(−)です。
   運動:どんな運動を週何回 か記載し、なければ(−)です。
      昔スポーツをしたことがあれば、スポーツ名も聞きます。
家族歴(F.H.=family history)
父母について聞きます。まず、年令を聞き、更年期を過ぎているか確認します。すでに没の場合、没年と死因を、生存の場合は、糖尿病、高血圧、高脂血症、アレルギーの有無、なければ n.p.、あれば DM, HT, HC, ALと記載してあります。また、両親の兄弟(姉妹)に癌に罹った者(C)の有無を聞きます。この時、手術で治癒したものも加えます。これで、更年期以前の者が持つ可能性のある体質を知ります。
90才以前に単独で死因となりうる体質の代表として、糖尿病体質、高血圧体質、高脂血症体質、アレルギー体質、および癌体質を検討します。癌体質の判定は、末弟(妹)が60才の時点で兄弟(姉妹)の半分以上が癌を経験している兄弟(姉妹)を体質陽性とします。
各人は受精時に父あるいは母のいずれかの相同遺伝子を選んでいるのですが、それが表現されるには更年期まで待たなければなりません。同じ疾病でも青年期に発病するものは環境要因によって起こっていますので、この解析には当てはまりません。逆に、更年期に発病したら、それがどの親から遺伝しているか調べ、その親の治療経過と死亡年齢から、親と同程度の寿命を望むなら、親と同じ治療を、親より長寿を望むなら、親より十分な治療を必要とします。両親に同じ疾病がなければ、その問題遺伝子は無いのですから、生活が悪いから発病したので、生活が良くなれば(食事と運動)、治癒します。いずれにしても、成人病の治療は親の生活、治療を見本にして決めて、大きな間違いはありません。
診察(Present Status=physical exsaminations)
顔面(face):眼球結膜の色で黄疸(肝障害)を、
       眼瞼結膜の血管の赤みで貧血を
       甲状腺の触診で甲状腺疾患(代謝異常)を発見します。
 所見がなければ、n.p. です。有れば、jaundice, anemia, thyroid と記載します。
胸部 (chest):肺肝境界、実効肺活量を調べて運動能を推定します。
       心臓聴診で、弁膜症、不整脈を調べます。
       肺聴診で、喘息状態・呼吸困難状態を調べます。
 所見がなければ、n.p. です。有れば、valvular disorder, arrhythmia, asthma, bronchitisなどと記載します。
腹部 (abdomen):上腹部・両側腹部・S状結腸部・回盲部触診。しこり、自発痛・圧痛の有無を調べます。また。過去の手術創を確認します。

26.人間ドック成績の読み方
    人間ドックの報告書の書式が変わりました。    
          津田沼中央総合病院ドック室
            医師 新井俊彦
             目次
判定表                               3
  指示事項                              3
  日常生活上の注意                          3  
  検査成績                              3
 1.身体計測                           3
     (骨密度)(肥満)                       4
2.血圧測定                           5
     (高血圧症)                         5
3.視力、眼圧、眼底検査                     5
4.精密聴力検査                         5
   5.尿検査                            5
   6.便検査                            6
7.血液一般検査                         6  
     (貧血)                           7
8.血清検査                           8
     (血清肝炎)                         8
   9.生化学検査                          8
    肝機能検査                         8
    膵臓機能                         10
    脂質代謝                         10   
      (高脂血症)                       11
      腎機能検査                        11
      その他の検査                       12
10.糖代謝                           12
     (糖尿病)                         13
11.腫瘍マーカー                        13
  12.肺機能検査                         14
  13.喀痰                            14 
  14.レントゲン所見                       14
  15.脳外科                           15
16.心電図所見                         15
17.腹部超短波検査                       15
18.婦人科                           15
19.外科                            15
20.診察                            16 
 判定と報告                             16
    判定表
判定表を読むときは、まず、診断名を隠して、臓器・系統名と判定のみを見ます。判定は A 異常なし、B 正常とは言えないが実際上は問題のないもの、BF 現在問題はないが、経過を見た方がよいもの、C は生活習慣を変える必要があるもの、D は治療が必要なもの、E 異常はあるが、一時的なものが考えられるので、再度調べた方が良いもの、F これまでの治療を継続する必要のあるもの、G もっと詳しい検査が必要なもの、H 現在の時点では判断できないもの、に分けられています。A、Bは問題ありません。BFなら現在は問題なしです。ただ、6が月か1年毎にその検査をして、悪くならないことを確認する必要があります。Cも運動や食事で調整できるものですから医療はいりません。D以降は医療機関を受診する必要があります。判定にC以降のものがあれば、診断名を開いて見て、次の指示事項をお読み下さい。 

指示事項
 判定表の診断に対してどのような生活管理や医療が必要かを説明してあります。

日常生活上の注意
 生活全般についての注意を説明してあります。

検査成績
 検査成績表中にはそれぞれの検査の基準値(正常域)が示されています。そこで以下にそれぞれの検査値の意味を説明します。しかし、病気の診断は検査成績全体を総合的に判断することで行われます。この資料は、それぞれの検査成績のもつ意味を説明したものですが、一つ一つの説明や解釈が独立で意味をもつのでは無いことを知って下さい。即ち、一つ一つの検査成績についての意味が単独で意味をもち、それらを全て加えたのが診断なのではありません。個人の病気は少数の原因によって起こっていて、それの表現としてそれぞれの検査成績が与えられているのです。成績から幾つかの原因を探し出して、系統的に整理してはじめて正しい診断が可能になるのです。従って、個々の検査成績の中には、成績が相互に矛盾していて、無視した方が良いもの、逆の解釈が必要になるものもあるでしょう。皆様の個々の成績についても、個々の説明にあまりこだわらずに、全体を総合的に解釈するものであることを念頭において、本文の説明をお読みくださるようにお願いします。

1.身体計測
  身長:標準体重を算出する基礎値です。身長が体格の基本です。また、60才以上の方
では、前年値よりの減少に注意が必要です。10mm以内の減少は測定ミスの可
能もありますが、それ以上の減少は骨粗鬆症の可能性が考えられますので、骨
密度の測定をお勧めします。
[骨密度] 橈骨と尺骨の単位面積当たりのCa塩の量を定量します。若年成人の平均値と分布から、±1.5SDまでを正常、−1.5-2.5SDを骨量減少、−2.5SD以下を骨粗鬆症とします。当院の装置(東洋メディカ)では、男性の平均値は0.57g/cm2、−1.5SDは0.5、−2.5SDは0.42で、女性の平均値は0.49、−1.5SDは0.4、−2.5SDは0.34です。骨量減少から治療の対象となります。骨粗鬆症の治療には、まず、食事療法を勧め、3ヶ月で効果がなければ、運動をしながらカルシウム薬と活性型ビタミンD3を投与します。閉経直後の婦人では女性ホルモンの追加投与が奏功することがあります。
体重:実際の体重、肥満度計算の基礎値です。
  標準体重:健康な人の正常な体重です。身長から計算されます。
        通常、(身長m)2x22 kgあるいは(身長cm―100)X0.9 kg 
で計算されます。
  肥満度:(実際の体重/標準体重)x100―100%。
  BMI:体重(kg) / 身長(m)2 で計算される指数。
♂;肥満>30>過剰体重>25>正常範囲>20
       ♀;肥満>30>過剰体重>24>正常範囲>19
 体脂肪率:水が電気を通し、脂肪か絶縁体であることを利用して、身体の2カ所に電
極をつけ、その間に流れる電流によって、水と脂肪の割合から計算されます。計算された肥満度と体脂肪率が食い違うのは個人の筋肉の量が異なるためです。体重を減量する場合は、体脂肪計で体脂肪量をモニターすることをお勧めします。
      ♂;肥満>25>過剰体重>20>正常範囲>10>やせ
       ♀;肥満>35>過剰体重>30>正常範囲>20>やせ
  
[肥満] 健康な人は身長に応じた骨格をもつので、その骨格を保つ基準体重があり、肥満 は基準体重に余分な脂肪が着いて起こっていると考えます。つまり、基準体重以上の重量はすべて不要な脂肪であると考えますので、これを無くすのが健康に良いことになります。この考えは普通の人には適用できますが、スポーツで鍛えた身体をもつ人では、過剰の体重は決して脂肪ではなく、筋肉であり、不要なものではないので削ることができません。このような方では体脂肪率を測り、それに過剰な脂質があれば、その分だけを絞り込むことになります。即ち、男性では20%以上、女性 では30%以上の脂肪を過剰な脂肪として減らせば健康な身体と考えられます。但し、スポーツマンでも体重が多いことは高血圧や糖尿病に対しては危険因子になります。つまり、筋肉の多いスポーツマンでは、過剰の脂肪が無くても、糖尿病や高血圧になりやすく、その寿命は短いものとなります。この良い例は、相撲取りに糖尿病や高血圧の者が多く、短命であることです。
胸囲:肺活量の参考になります。また、腹囲との比較は肥満の指標にもなります。
  握力:手の筋肉疲労の究極の症状が握力の低下です。多くのオフィス労働者はVDT作業に従事していますので、その最も特徴さる結果である頸肩腕症候群の最も進行した症状として診断に利用されます。
  脈拍:50/min以下を徐脈、100以上を頻脈と呼びます。220―年齢(才)の50%以下が良い生活域、75%値を保つ運動が最適運動とされます。
2.血圧測定
   血圧計で心室の収縮期圧(最高血圧)と拡張期圧(最低血圧)を測定します。最高
   血圧は身体の活動で大きく変動しますが、最低血圧はあまり変動しません。血圧は
   少し安静にした後で測定します。実際の生活状況での血圧を知るには、出来れば一  
   日のいろんな時に測定することをお勧めします。
   12 0 mmHg/80 mmH以下を正常、これと140 mmHg/90 mmHgを正常高値、
、160/100以上を薬物治療が必要と判定します。
   この中間は高血圧Stage 1と呼び、体重標準化、禁煙、飲酒制限、規則的運動、減
   塩食などの生活習慣の改善によって正常化をはかるレベルです。
[高血圧症] 高血圧とは血管(末梢の毛細血管で網膜、脳、心臓、腎臓の血管を含みます。)     に無理のかかる血圧を云います。血管の中膜の変化から動脈硬化に進行しま     す。帰結は脳梗塞が最も多く、心筋梗塞も起こります。眼底検査はこれの予知     に大切です。
3.視力・眼圧・眼底検査
  視力:裸眼:0.6 以下を視力低下としています。
     矯正:メガネの使用によって0.7 以上に回復出来るものを「良」とします。
  眼圧:眼球内の圧力で、20 mmHg 以上を高値とします。緑内障の診断利用されます。
  眼底:眼底動脈の走行から動脈硬化の程度を、網膜から出血や萎縮を、視神経乳頭部
     の陥凹などを観察できます。この動脈硬化度で全身の動脈硬化を類推します。
     その他の所見は緑内障の診断、治療の参考にされます。
     Scheie分類では、H(高血圧)、S(動脈硬化)を0-3の4段階で評価します。
4.精密聴力検査
   難聴は35(40) dB 以上、騒音によって音を感ずる細胞の傷害が起こる結果難聴に
   なります。4000Hzは最も鋭敏な聴力域なので、一般に、この音域を感ずる細胞か
   ら傷害が始まります。しかし、騒音の種類によっては1000Hzから始まることもあ
   ります。予防は騒音から内耳を守ることで、耳栓や騒音を減す努力が必要です。
5.尿検査
  比重:尿の比重は1.002―1.030です。これは水の摂取量によって変動します。
   pH:身体内の代謝状況で変動します。   
  蛋白:(−)→(±)が正常。軽度の増加は起立性蛋白尿、心不全、糸球体腎炎、
      重金属中毒、アミノグリコシド系抗生物質の使用、腎盂腎炎などで起こりま
      す。中等度の増加は糖尿病性腎症、SLE、アミロイドーシスなど、高度増加
      はネフローゼにみられます。 
  糖:(−)が正常です。血中の糖が高くなって、腎糸球体から原尿に出された糖が
     尿細管で血中に回収しきれなくなったときに出ます。従って境界型の糖尿病で
     は(−)で、(+)なら真性の糖尿病になっていると考えなければなりません。
     しかし、一時に大量の食事をした後、肝疾患、甲状腺疾患、ストレス、運動後、
     肥満などによっても出現します。
  潜血:通常(−)。血尿が起きるのは糸球体腎炎、出血性素因、腎盂腎炎、腎結石、
      尿管結石、腎損傷、膀胱炎、前立腺炎などです。この場合、沈査を調べます。
  ウロビリノーゲン:(±)が正常。使用されて壊れた赤血球のヘモグロビンが組織で分解されて間接ビリルビンになり。肝臓で直接ビリルビンになって胆汁として腸管に排泄されます。これが腸管でウロビリンになって再吸収されたものがウロビリノーゲンです。
           増加は、溶血性疾患・肝炎、減少は総胆管閉塞です。
 沈査:赤血球:正常では1/1視野以下。増加の原因は潜血の項を参照。
     白血球:正常では1/1視野以下。増加の多くは膀胱炎、腎盂腎炎。
     円柱:これが蛋白と共に出るときは糸球体腎炎が疑われます。
    上皮細胞:炎症の局所を示します。扁平;膀胱、移行;腎盂、円柱;尿細管。
     細菌:ほとんどは膀胱炎です。まれに高濃度の血液を伴うものは腎盂腎炎です。
6.便検査
   潜血:正常は(−)です。消化管の出血を調べます。胃・十二指腸潰瘍、胃癌、潰
      瘍性大腸炎、大腸癌、痔などで(+)となります。特に、胃・十二指腸に異
      常が無く、痔もなければ、大腸癌の検査をします。大腸癌は初期には自覚症
      状がなく、継続的な微量出血が初期症状であることが多いことによります。
      実際に、潜血(+)の者で、大腸に異常が発見されるのは数%です。
   虫卵:現在、寄生虫疾患は日本ではまれです。
7.血液一般検査
  白血球数:基準範囲;35-94x102/μl
白血球増多:細菌感染症、白血病、膠原病、ステロイド治療中
   白血球減少:無顆粒球症、ウイルス感染、SLE
  赤血球数:基準範囲;♂ 423-559x104/μl, ♀ 376-493x104/μl
   赤血球増多:多血症、赤血球増多症
   赤血球減少:鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、悪性貧血
  血色素量:基準範囲;♂ 13.6-17.6 g/dl, ♀ 11-15.1 g/dl
  ヘマトクリット :基準範囲 ♂ 42-53 %, ♀ 34-45 g/dl
   血色素量、ヘマトクリット が少ないものを低色素性、正常のものを正色素性、高いものを
   高色素性と呼び、貧血の鑑別診断に大切です。
  MCV(平均赤血球容積):基準範囲 ♂ 83-101 fl, ♀ 80-101 fl
  MCH(平均赤血球血色素量):基準範囲 ♂ 28.2-34.7 pg, ♀ 26.4-34.3 pg
  MCHC(平均赤血球血色素濃度):基準範囲 ♂ 31.8-36.4 %, ♀ 31.3-36.1 %
   赤血球のサイズが小さいものを小球性、正常なものを正球性、大きいものを大球性
   と区別します。これも貧血の鑑別診断に大切です。
[貧血] 酸素の肺から末梢への運搬能力が低下した状態を云います。血球のサイズと色素    量によって三つに分けられます。、 1.小球性低色素性貧血:鉄が欠乏したときに起こります。鉄欠乏性貧血2.正球性正色素性貧血:赤血球が失われた時、壊れている時、生産が低下している時に           おこります。失血性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血 3.大球性高色素性貧血:鉄の吸収が悪い時に起こります。悪性貧血   治療は1.が鉄剤投与、2.は輸血、ステロイド薬、エリスロポエチン投与、3.は鉄剤   に加えてビタミンB 12と葉酸の投与です。
  血小板:基準範囲 12-40x104/μl、減少すると出血傾向;血小板減少性紫斑病、
  網状赤血球:基準範囲 2-26%、赤血球の再生能を示す指標です。溶血性貧血、悪性
        貧血鉄欠乏性貧血の回復期に上昇し、再生不良性貧血、悪性貧血の増悪
        期に減少します。
 [血液像]
   桿状核球:基準範囲 0-19%
   分葉核球:基準範囲 27-72%
    桿状核球と分葉核球を好中球と呼びます。好中球増多(60%以上)を起こす疾患は、
    妊娠、肉体労働、細菌感染症、出血、白血病、脳出血、薬物中毒、ストレス、膠
    原病、肝硬変、腎不全、悪性腫瘍などです。好中球減少(40%以下)を起こす疾患
    は、放射線障害、ピリン系薬物、悪性貧血、再生不良性貧血、ウイルス・原虫感
    染症などです。
   好酸球:基準範囲 0-10%
    好酸球増多(5%以上)を起こす疾患は寄生虫疾患、アレルギー疾患、皮膚疾患など
    です。好酸球減少(2%以下)を起こす疾患は悪性貧血、再生不良性貧血、ストレス
    などです。 
   好塩基球:基準範囲 0-3%
    好塩基球増多(2%以上)を起こす疾患には蕁麻疹、粘液水腫、潰瘍性大腸炎、骨髄
    性白血病などがあります。
   単 球:基準範囲 0-12%
    単球増多(7%以上)を起こすのは、感染症、原虫疾患、慢性肝炎、肝硬変、潰瘍性
    大腸炎などてす。減少(3%以下)するのは悪性貧血、重症感染です。
   リンパ球:基準範囲 20-60%
    リンパ球増多(40%以上)を起こすのはウイルス感染、感染回復期、リンパ性白血
    病、減少(25%以下)を起こすのは悪性リンパ腫。再生不良性貧血、SLEなどです。
   異常リンパ球:基準範囲 0%。あれば腫瘍(白血病、骨髄腫)を疑います。
血沈検査
   ♂:亢進は20(10) mm/h 以上、♀:30(15) mm/h 以上、
     軽度亢進:貧血、ネフローゼ、妊娠
     高度亢進:結核、敗血症、肺炎、関節リュウマチ
8.血清検査
   CRP:通常0.5mg/dl以下です。細菌感染があるときに増加します。
   RF:通常17IU/ml以下です。リュウマチ因子。関節リュウマチのときに上昇します。しかし、関節リュウマチ以外の感染症でも偽陽性を示すことがあります。
   ASLO:正常は160IU/ml以下です。溶血レンサ球菌の感染後に上昇します。リュウマチ熱の診断に用いられますが、糸球体腎炎、猩紅熱でも上昇します。
   RPR法:TPLA:ガラス板法:いずれも梅毒感染の検査です。(+)は梅毒に
        感染した経歴があることを示します。三つの方法は感度、特異性共にこ
        の順で悪くなります。特に、ガラス板法、RPRは治療で治癒すると(−)になります。これに対して、TPLAは治癒しても一生(+)のままです。ガラス板法・TPHAは梅毒でなくても(+)になる偽陽性反応がありますが、RPR法はこれが少なくなります。
   HBs抗原:(+)はB型肝炎ウイルスの表面物質が血中にあることで、感染可能な
        ウイルスがあることを示唆します。真性B型肝炎ウイルスキャリア(保
        有者)です。
   HBs抗体:(+)はB型肝炎ウイルスに過去に感染したことがあることを示します。
        抗原(−)、抗体(+)の場合、他人に移す可能性はありませんが、ウ
        イルスは持続感染しているキャリア(保有者)の可能性が高いと判定さ
        れます。)
   HCV抗体:(+)はC型肝炎ウイルスに感染したことがあることを示唆します。
[血清肝炎]血清肝炎の起因ウイルスのB型・C型肝炎ウイルスは共に輸血、性行為、母子     感染によって伝染します。1960年代にはB型肝炎患者が多かったのですが、     B型の検査法確立して、1980年代からはC型肝炎が増えています。最近では、     両型とも減少して、新しい型がでています。A型肝炎は流行性肝炎で、水系感     染をしますが、治癒するとウイルスは身体内には残りません。しかし、B/C     型肝炎ウイルスは急性期が過ぎてもおよそ半数の患者は持続感染して慢性肝炎     になります。これらの患者はGOTやGPTが軽度に上昇していることで判り     ます。肝臓細胞は常に新生していますが、この能力が低下すると、肝硬変にな     ります。また、肝がんになることもあります。事実、肝がんの95%はこれら     のウイルスの持続感染者です。
   ペプシノーゲン:胃から分泌される消化酵素です。萎縮性胃炎や胃癌のとき生産が減少します。十二指腸潰瘍では高値になります。T型170ng/ml以上、T/U3以上が正常で、これがいずれも低いとき胃癌、やや低いとき萎縮性胃炎を疑います。高値は十二指腸潰瘍。
9.生化学検査
  肝機能検査
   総蛋白:基準範囲;6.7-8.3 g/dl
    多種の蛋白が含まれますが、最も多いアルブミンは肝で作られます。
    高値;肝硬変、骨髄腫、低値;吸収不良、蛋白漏出性胃腸炎、ネフローゼ
ALB:基準範囲;3.8-5.3 g/dl
    肝臓で作られる蛋白です。栄養状態や肝障害の程度判定に使われます。
    低値;ネフローゼ、重症肝疾患、栄養失調、蛋白漏出性胃腸炎、重症感染症
   AG比:基準範囲;1.3-2.0 
    血清蛋白異常の指標。アルブミンの減少をグロブリンの増加が補っている場合に
    はこれが低下します。低値;ネフローゼ、重症肝疾患、M蛋白血症、炎症性疾患
   総ビリルビン:基準範囲;0.2-1.2 mg/dl
    壊れた赤血球のヘモグロビンがリンパ組織で分解されて間接ビリルビンになりま
    す。これは肝臓で直接ビリルビンに変えられて胆汁に排泄されます。溶血が多く
    て肝臓の処理がまに合わなければ間接型が増えます。胆管が閉塞すれば直接型が
    増えます。これの上昇が見られたときは直接型と間接型を測定します。
    高値;肝炎、肝硬変、肝がん、胆道疾患、溶血性疾患、薬物中毒
   ZTT:基準範囲;4-12 KU
    血清中の抗体濃度を示します。減少は免疫力の低下と解釈されます。
    高値;肝炎、肝硬変、肝がん、慢性炎症、膠原病、結核、骨髄腫
   TTT:基準範囲;4以下 KU
    血中のγグロブリンやリポ蛋白の増加を示します。
    高値;急性肝炎、肝硬変、脂肪肝、慢性感染、膠原病、高脂血症
   AST(GOT):基準範囲;8-38 U/l
   ALT(GPT):基準範囲;4-44 U/l
    GOT、GPT共に心筋・肝・骨格筋・腎細胞内に多い酵素で、これ
    らの細胞の破壊によって血中に出ます。特に、急性肝炎の早期診断、
    慢性肝炎の経過観察に用いられます。急性肝炎ではGOT>GPT、
    慢性肝炎ではGOT<GPT、肝硬変、肝がんではGOT>GPT、
    脂肪肝ではGOT<GPTの傾向があります。
   AL-P :基準範囲;75-270 IU/l
    身体内の色々な組織の細胞内にあり、細胞の破壊で出ます。組織によって違った
    分子構造(アイソザイム)があります。アイソザイムまで調べるとどの組織が壊
    れているか確定できます。一般には、肝、胆道、骨、甲状腺機能亢進、悪性腫瘍、
    妊娠などで高値になります。ビリルビンが上昇せず、これが上昇するのは限局性
    肝障害で、肝炎ではビリルビンが著明に上昇し、これは軽度上昇に止まります。
    AL-P1の出現;閉塞性黄疸、限局性肝疾患、AL-P2の増加;胆道系疾患、AL-P3
    の増加;骨疾患、副甲状腺機能亢進、AL-P4の出現;妊娠後期、一部の悪性腫瘍、
    AL-P5の出現;肝硬変、慢性肝炎、慢性腎不全、AL-P6の出現;潰瘍性胃腸炎
   LDH:基準範囲;180-480 IU/l
    身体内の組織に広く分布しています。特に、心、肝、腎、筋に多く、心疾患(心
    筋梗塞、うっ血性心不全)、肝疾患(肝炎、肝がん)、悪性腫瘍(胆道がん、膵が
    ん、大腸がん)、悪性貧血、溶血性貧血、白血病などで上昇しますが、特異性が
    低いので参考にしかできません。
   Ch-E :基準範囲;1107-3736 IU/l
    肝臓で合成されて血中に放出されます。この活性低下は肝細胞の機能障害の指標
    になります。
   γ-GTP:基準範囲;60 以下 U/l
    主に、腎、膵、肝の上皮細胞に含まれています。肝・胆道系の閉塞の指標となり
    ます。肝炎、肝硬変、肝がん、アルコール性肝障害、薬物性肝障害、胆道系疾患、
    膵頭部がん、心筋梗塞などで上昇します。肝疾患の治癒の指標にされています。
   LAP:基準範囲;30-70 IU/l
    三つの酵素があり、組織によって異なりますが、高値を示すのは、肝炎、肝硬変、
    肝がん、膵炎、膵がん、妊娠などです。
   CPK:筋肉や神経細胞に含まれる酵素です。基準範囲 ♂ 56-348U/l, ♀ 29-145.   
    高値;心筋梗塞、末梢循環不全、筋ジストロフィー、甲状腺機能低下、脳梗塞、  
    低値;甲状腺機能亢進、妊娠
 ヒアルロン酸:基準範囲;50 ng/ml 以下
     繊維芽細胞で生産され、関節液中に多い。血中に移行し、肝で分解されます。  
     肝疾患、特に肝硬変で上昇します。肝炎から肝硬変への移行、肝硬変の進行、
     関節リウマチの診断と進行度の指標になります。
  MAO:基準範囲;0.2-0.9 U/l、肝の繊維化の指標。
     肝炎、肝硬変、糖尿病、心不全、甲状腺機能亢進で上昇します。
  P-V-P:基準範囲;1.0 U/ml以下、
コラーゲンが重合してできるとき出現します。繊維化マーカーになります。
     肝炎、肝硬変、アルコール肝、肺繊維症、腫瘍、膠原病などで増加します。)
  膵臓機能
    血中アミラーゼ:基準範囲;76-231 IU/l
    尿中アミラーゼ:基準範囲;56-1080 IU/l
     アミラーゼは膵臓が生産して、十二指腸に分泌する糖の消化酵素です。膵組織
     が破壊されたとき、血中に出、尿にも排泄されます。尿中では特に、高値にな
     るので、膵疾患のスクリーニングや経過観察に使われます。血中、尿中共に高
     い時は、急性膵炎、膵がん、耳下腺炎、腹膜炎、腸閉塞などです。
    エラスターゼT:基準範囲;100-400 ng/dl
膵臓の他にも存在しますが、膵臓由来のことが多い。高値;膵炎、膵がん
    トリプシン:基準範囲;110-460 ng/ml
膵臓の生産する代表的蛋白分解酵素です。膵臓障害の際に血中にでます。
     高値;急性膵炎、膵がん、胆石、胆道がん、肝硬変、慢性肝炎、腹膜炎、
     アルコール依存症、 低値;膵実質の荒廃、インシュリン治療中  
  脂質代謝
   総コレステロール:基準範囲;130-220 mg/dl
   中性脂肪:基準範囲;50-150 mg/dl
   βリポ蛋白:基準範囲;♂ 150-600 mg/dl, ♀ 130-430 mg/dl
   HDLコレステロール:基準範囲;♂ 35-70 mg/dl, ♀ 40-75 mg/dl
  (カイロミクロン:基準範囲; 0-30 mg/dl) 
    脂質は水に溶けないので、血中では蛋白分子(アポリポ蛋白)に付着して粒子状
    で存在します。これは超遠心法で低比重のものから、カイロミクロン(CM)、
    超低比重リポ蛋白(VLDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白(H 
    DL)に分けられます。また、電気泳動法ではpreβ、β、α の三つに分かれ
    ます。カイロミクロンは小腸粘膜で胆汁酸によって乳化された中性脂肪からでき
    ます。外因性脂質の肝臓や脂肪組織への輸送体です。VLDLは肝や腸管壁で合
    成され、内因性脂質の輸送体です。中性脂肪を運ぶのはこの二つです。HDLの
    アポ蛋白も肝臓や腸管壁で作られますが、末梢で壊れた遊離コレステロールと結
    合してこれを肝臓に運ぶ働きをします。LDLは肝臓で作られ、新しいコレステ
    ロールを末梢に運びます。preβはVLDL、βはLDL、αはHDLです。総
    コレステロールは全てのコレステロールを、測られた中性脂肪値は、カイロミク
    ロンとVLDLの分子を含んでいます。HDLは測定出来ますが、LDLは測定
    が困難なので、
    (LDLコレステロール)=(総コレステロール)ー(HDL)―(1/5中性脂肪)
    の式で計算されます。
[別測定法] 基準範囲:LDL;200-600 ng/dl、VLDL;20-150、カイロミクロン;95以下、
[高脂血症] コレステロールか中性脂肪が高値を示す者を高脂血症と云い、T、U、V、     W、Xに分けられでいます。T型はカイロミクロンのみが著明に増加しす。     X型ではカイロミクロンとVLDLが増加します。Ua型はLDLのみが     増え、Ub型はLDLとVLDLが共に増えます。V型はβリポ蛋白に異     常が見られます。W型ではVLDLのみが増えます。いずれも遺伝素因が     強く関係しており、家族性発症が多く、若年で発症するものが多いのです     が、Uが最も遅く、更年期近くになって発症し、ポピュラーです。これは     LDL receptor の減少によって起こります。帰結は大・中動脈硬化で、最も     多いのは心筋梗塞です。
  腎機能検査
   尿素窒素:基準範囲;8-20 mg/dl
    窒素量として測定していますが、血中の尿素を定量しています。これの大量の増
    加は尿毒症であり、100 を越えれば腎透析が必要になります。これは蛋白がエ
    ネルギーとして利用された時の最終代謝産物で腎臓から排泄されます。増量は生
    産の増加か、排泄の低下によります。これは腎糸球体でろ過された後、尿細管で
    一部再回収されますので、再回収量が多い状態は望ましくありません。従って、
    高値は体組織の崩壊、絶食、蛋白の大量摂取などの蛋白量の増加と腎機能障害、
    腎不全、尿路閉塞などの排泄能力の低下によります。逆に低値になるのは、利用
    できる蛋白が少なくなる、肝不全、妊娠、低蛋白食などの場合です。
   クレアチニン:基準範囲;♂ 0.8-1.3 mg/dl, ♀ 0.6-1.1 mg/dl
    クレアチニンは腎糸球体でろ過された後、尿細管で回収されません。従って、腎
    のろ過効率(効率低下は腎障害)の程度の指標として使われています。
   尿酸:基準範囲;♂ 3.3-7.9 mg/dl, ♀ 2.3-5.4 mg/dl
    核酸の一部であるプリン体の最終代謝産物です。腎尿細管でほとんど再回収され
    ます。従って、高尿酸血症は生成亢進か腎排泄の低下によります。過剰では尿酸
    ナトリウムが結晶になって関節滑膜や腎尿細管に沈着し、痛風関節炎や痛風腎を  
    起こします。
   電解質:体内の組織細胞の機能は浸透圧や活性イオンの質と量に左右されます。
       これを決めるのが電解質濃度です。バランスが崩れた時は、輸液によって
       修正する必要があります。
     Na 基準範囲;135-147 mEq/l
     K 基準範囲;3.5-5.0 mEq/l
     Cl 基準範囲;98-108 mEq/l
     Ca 基準範囲;8.4-10.2 mg/dl
     P 基準範囲;2.5-4.5 mg/dl
     Mg 基準範囲:1.8-2.6 mg/dl
     Fe 基準範囲;♂ 48-200 μg/dl, ♀ 25-190 μg/dl
     フェリチン:基準範囲;♂ 30-323 ng/ml, ♀ 4-140 ng/ml
鉄貯蔵の指標。潜在的鉄欠乏状態で低値、再生不良性貧血、溶血性貧血、
      で高値になります。白血病、骨髄腫でも著明な高値になります。
     TIBC:血清鉄はほとんどトランスフェリンと結合している。トランスフェ
      リンの全鉄結合能を測る。基準範囲:♂ 260-430μg/dl、♀ 270-470、
      高値;鉄欠乏性貧血、真性多血症、低値;悪性腫瘍、急性肝炎、感染症、
  その他の検査
   甲状腺機能:甲状腺ホルモン(T3, T4)は全身の代謝活性を高めます。このホルモン
         の分泌は下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されていま
         す。T3, T4の増加は甲状腺機能亢進症、低下は甲状腺機能低下症、
         粘液水腫を起こします。TSH の増加は原発性甲状腺機能低下症、甲
         状腺全摘後に、減少は甲状腺機能亢進症に起こります。
     基準範囲:TSH; 0.49-4.67μIU/ml、T3; 0.67-1.27 ng/ml、T4; 4.5-12μg/dl
   CPK:筋肉や神経細胞に含まれる酵素です。基準範囲 ♂ 56-348U/l, ♀ 29-145.   
    高値;心筋梗塞、末梢循環不全、筋ジストロフィー、甲状腺機能低下、脳梗塞、  
    低値;甲状腺機能亢進、妊娠
10.糖代謝
負荷試験
   血糖値:吸収された糖は、膵臓のインシュリンとグルカゴンと云うホルモンの働き
       で一時肝細胞に貯蔵され、一定量ずつ血中の放出されます。しかし、イン
       シュリの働きが低下すると、貯蔵されずにそのまま血中にでてきます。ま
       た、全身の細胞も血中の糖を吸収するのにインシュリンを必要としていま
       す。従って、インシュリン不足は糖の利用を下げ、更に血中糖濃度を高め
       ます。空腹時 110 mg/dl 以下は正常で、空腹時126 以上、75gの糖負荷後2時間で200以上を糖尿病としております。これらの値の中間は耐糖能
       低下あるいは境界型糖尿病と呼ばれます。糖尿病の起病性は血中濃度の上
       昇によって、各種の蛋白に糖が結合して機能を失わせることによりますら、 
       代表的蛋白の糖化度を測定します。これがHbA1c です。
   尿糖:血中の糖は腎糸球体でろ過後、腎尿細管で回収されますので尿にはでません。
      しかし、血中濃度が高くなると、回収されなかった糖が尿にでてきます。こ
れが(+)になれば、真性の糖尿病である可能性が高いことを示唆します。
   HbA1c:血糖の項目で説明しました。糖化蛋白の代表です。一定期間の平均的糖化
      度合いをしめすもので、特異性が高いので、汎用されています。現在の疾病
      統計では、6.0%以上を糖尿病、5.3 以下を正常、5.4-5.9 を境界型糖尿病と
      することになっています。
フルクトサミン:これも糖化蛋白の一種です。基準範囲は 205-285 pmol/l です。過剰は
      検査時点の少し前までにあった糖の有害作用の程度を示唆します。
1.5 AG:ぶどう糖によく似た物質。食餌から吸収されます。糖尿病では排泄が亢進
       して血中濃度が下がるので、糖尿病管理の指標として利用されます。この
       値が高ければ糖はまだ、大量に尿に出ていないと判定されます。
       基準範囲;♂ 15-45 μg/ml、♀ 12-29 μg/ml
[糖尿病] 糖尿病とは血液中のブドウ糖濃度が上昇し、生体の機能蛋白に結合して、その    機能を阻害する結果が集積します。実際には、毛細血管の基底膜が障害を受ける    ことが血管障害の原因です。この結果起こるのは糖尿病性動脈硬化です。これは    脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。この変化が腎糸球体に障害を起こせば糖尿       病性腎症と呼ばれる腎機能低下を起こします。眼では網膜症や白内障を起こしま    す。これとは別に、末梢感覚神経の障害も起こります。初期は手足の知覚過敏、    末期には知覚喪失に陥ります。治療には、インシュリン、インシュリンの分泌を    高める薬物、小腸で糖の吸収を遅らせる酵素、および末梢細胞の糖吸収を高める    薬物が使われます。
11.腫瘍マーカー
がん抗原:特定のがん細胞が増えてきたときに増加する物質です。この物質は決し
        て特定のがん細胞にしかないものではなく、正常でも微量には作られて
        います。また、絶対に特定のがんでのみ増えるものでもありません。従
        って、特定のがん抗原が増加していることは、「がんがある可能性があ
        り、あるとすればどの臓器の可能性が高い」ことを漠然と示唆する程度
        しかできません。従って、特定のがん抗原が陽性なら、X線、CT、
        MRI、内視鏡などで存在を確かめて診断します。
        以下に、がん抗原の名称、異常値(カットオフ値)、第一に疑うがんを
        示しました。
    CEA: 6 ng/ml 以上、大腸がん、肺がん、がん一般の可能性
    AFP: 7 ng/ml 以上、肝細胞がんの可能性
    PSA: 4 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
    PAP: 3 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
    γ-Sm: 4 ng/ml 以上、前立腺がんの可能性
SCC:1.5ng/ml以上、扁平上皮がんで高値になる。肺・子宮頸部がんで陽性。
    CYFRA:3.5ng/ml以上、扁平上皮がんのマーカー、肺がんの他、子宮頸部がん、食道がんせも陽性。
    CA19-9:37 U/ml 以上、膵臓がん、胆嚢・胆管がんの可能性
     CA125:35 U/ml 以上、卵巣がんの可能性 
    TPA:70 U/l 以上、乳がん、大腸がん、胃がん、泌尿器系がんの可能性
    ACP:前立腺と赤血球中に多く含まれる。基準範囲:5.9-14.0 U/ml
       高値;前立腺がん、骨転移ないし肝転移したがん、骨疾患  
   SLX:38U/ml以上、腺がんで高値になる。肺がんや膵臓がんで陽性。
   NSE:10ng/ml以上、肺小細胞がんで陽性。神経芽細胞腫でも陽性。
12.肺機能検査
   肺活量計を用いて、肺活量、1秒量、1秒率 を求めます。機能の判定は、1秒量と1秒率を総合して、以上なし;換気障害なし、閉塞性;吸気は入るが、呼気は出にくい。拘束性;吸気が入り難い。混合型;吸気も呼気も困難です。の4型に分けられます。
閉塞性疾患;肺気腫、気管支炎、気管支喘息
    拘束性疾患;肺繊維症、じん肺、うっ血肺
    混合性;肺疾患の末期
13.喀痰
   細胞診:気道および肺胞からの剥離細胞を調べます。
Class Tは異常なし、Uは炎症細胞あるいは良性異型細胞、Vは判定の難しい細胞  
   で、Wは悪性細胞があることを意味します。一応、Vから精査・治療となります。
   Xはがん細胞です。Wのレベルで手術すれば致命的ではありません。
14.レントゲン所見
  胸部単純撮影:正面像と側面像を撮影します。正面像では脊椎の配列、心臓の位置・
         サイズ、肺野の異常、肺門の異常、胸膜の異常、肺外の異常陰影を調
         べます。また、心臓の幅と胸郭の幅との比率(CTR) も計算されます。
         これは心臓肥大の判定に使われます。一応50% 以上を肥大と考えて
         下さい。側面像は脊椎、肺門にかかって正面では見えない変化や肺野
         の陰影の位置を知るのに使われます。
  腹部造影撮影:バリウムを飲んで、その食道通過像、胃・十二指腸の形態、襞を観察
         します。食道では憩室、ヘルニア、静脈瘤、炎症、潰瘍などが観察さ
         れます。また、食道と隣接する部分の異常が示唆されることもありま
         す。胃では潰瘍、潰瘍瘢痕、慢性胃炎、萎縮性胃炎、びらん性胃炎、
         憩室、ポリープ、腫瘤、胃下垂、巨大レリーフなどを観察できます。
         十二指腸でも潰瘍、潰瘍瘢痕、憩室、炎症などが観察されます。
15.脳外科
   頭部CT:
   X線の全方向からの照射による透過線量の画像処理によって、それぞれの位置の密
   度を測定し、異常の有無、異常の性質、位置を調べます。脳内では脳梗塞、脳出血、
   脳腫瘍、萎縮、脳外では、くも膜下出血、脳底血管の異常、隣接器官の腫瘍・変形
   などが観察されます。
16.心電図所見
   心電計で身体表面の電極間の電位差を心臓の拍動経過を追って調べます。身体内に 
   心臓の標準位置が設定されていて、それとの位置のずれ、変化の異常、律動の異常
   を評価します。これらは、標準化の設定を行った機関の名を取って、ミネソタコー
   ドと呼ばれています。異常なしは10 、あとは3桁のコードで表現されます。しか
   し、位置がずれていても機能の全く異常のないもの、体格の差によるもの、異常と
   は判定されますが日常には機能に異常があるとは考えられないものがあって、これ
   らは「正常範囲内」と考えられます。また、過去の変化の跡で、あまり障害になっ 
   ていないものは「軽度障害」に分類されています。現在治療の必要なものは「異常」
   です。厳密には、異常は正常とは言えないもの全てと考えられますが、実際の判定
   は日常生活上の注意と治療の必要度とによって行っております。
17.腹部超短波検査
    腹部皮膚上で超音波を発生し、内部臓器から反射してくる音波の量を画像化して、
    臓器の形態、大きさ、臓器内の変化を調べます。
   胆道:胆石、ポリープ、胆管拡張、胆嚢炎、腫瘍などの有無を調べます。
   肝臓:肝炎、肝硬変、脂肪肝、結石、嚢胞、血管腫、膿瘍、腫瘍などの有無を調べ
      ます。
   脾臓:腫大、石灰化などが観察されることがあります。
   膵臓:膵炎、膵結石、膵嚢胞、膵腫瘍などの有無を調べます。
   腎臓:形態異常、結石、嚢胞、石灰化、萎縮、腫瘍などの有無を調べます。
18.婦人科
細胞診(子宮)
   子宮頚部の粘膜細胞を採取して、観察される細胞の形態から判定します。
   Class Tは異常なし、Uは炎症細胞あるいは良性異型細胞、Vは判定の難しい細胞  
   で、Wは悪性細胞があることを意味します。一応、Vから精査・治療となります。
19.外科
乳癌検診
   触診によって、しこりの有無、あれば位置、堅さ、周囲との関係を調べます。少し
   でも異常の可能性があれば、乳房超音波検査、乳房X線検査をします。
直腸診
   内痔核の有無と位置、前立腺の大きさ・堅さ・硬い部分の位置を調べます。硬い部
   分に少しでも異常を感ずれば、一応、前立腺マーカーの検査をします。
20.診察
   これは成績表には含まれませんが、少し説明させて頂ます。
    まず、問診をします。「主(愁)訴」現在の身体的悩み、現在治療中の疾病の有
   無を伺います。「経過」では、現在治療中の疾患について、発病以来の経過、治療
   状況を伺います。「既往症」ではこれまでになった疾病を伺います。また、現在の
   生活状況として、喫煙の有無・程度、飲酒の有無・程度、定期的運動の有無・程度
   を伺います。「家族歴」では、両親の健康状況を伺います。特に成人病は体質にも
   とずいていて、確実に遺伝しますから、両親の疾病状況は自分の将来の疾病と深い
   関係があります。
    次に、「顔面の視・触診」では貧血、黄疸、頚部リンパ腺、甲状腺を調べます。
   また、「胸部の聴診」をします。心臓では弁膜症、不整脈の有無、頻脈・徐脈およ
   び気道閉塞傾向を調べます。「胸部打診」では肺肝境界の位置と肝の大きさ、「腹部
   触診」では腹部の腫瘤の有無、圧痛点の有無を調べ、妊娠線、腹部手術の瘢痕を確
   認します。

    判定と報告
 問診や診察で得られた所見が検査成績によって説明されるかの検討と、検査成績から示唆された疾病の可能性の検討が最終評価になります。また、これらの状況をふまえての生活についての注意もここで決められます。なお、精査のお勧めは、万一のことを考えて、安全のために多少過剰にしてありますので、精査とあると大変なことであると考えないで受診頂きたいと思います。健診は健康な方を調べるので、有料ですが、発見された異常は疾病ですので、外来での保険診療になります。ドック手帳を持参され、それぞれの専門外来を受診頂ければ幸いです。高い費用で健診を受けておられるのですから、むしろおかしいところは、以後保険診療で徹底的に調べることが良い方法であると思います。但し、治療方針の決定に際しては社会的要因が加味されますので、ここで示された基準で治療が行われないこともあります。即ち、検査の正常値は異常の進行を十分に止めるための値ですから、異常の進行が多少あっても良い人は基準を変えることができるのです。
 ご自分の成績を見てからこれをお読みになって、疑問があれば、お電話で質問下さい。
なお、わがままですが、出来れば午前ではドック診療の終了する11-1時、午後では2-5 時に、お電話頂ければ幸いです。
電話は 代表0474-76-5111, 直通0474-76-6203 です。

                          医師 新井 俊彦
平成12年3月