竹本健治さんのマンガ処女作「入神」と「妖霧の舌」と「風刃迷宮」を 既読の方だけ読んでくださいね。






























私の中では、非常に色々な言葉がグルグルしてます。
「入神」と対であるらしい「風刃迷宮」を幾度読んでも、何故にトム君が 桃井君との大局で涙を流したのかもよ〜〜くは判らないんです。
またまた、竹本さんがよく描く、日常の認識を踏み外し取り零していく怖い話 だったなぁとは思っているんですが。

ともあれ。
「入神」はトム君の妖しい魅力爆発でしたよね。
決して上手い絵じゃないけど、上島君も可愛いし、類ちゃんより可愛かったトム 君♪
苦しみもがくトム君の色っぽい事(にゃ〜♪)
218ページ右下のトム君も、弱っててプリティ〜♪
青春小説だよな〜、青臭くって照れくさくって胸キュンで、少し悲しい。
まだまだトム君も桃井君もこれから変わっていくんだなぁって、強く 感じました。
初登場の囲碁殺人事件を読み返しちゃったんですけど、小学生のトム君は 槇野九段との氷村さんの囲碁に興奮してた側だったのが、今では同じ位置で 死闘してるんですね。

桃井君が能天気キャラっぽく描かれてましたが、彼も蝶のごとく脱皮する んだろうなぁ。
今のままでも十分可愛けど、なんかビジュアル的には、大相撲の力士より太ってる 「呼び出し」さんに似ている気が(爆 知ってます?

土俵入りする力士さんが、土俵の隅の塩を撒くじゃないですか。
その下で柄杓を手渡したりする要員の呼び出しさんは、結構よくTVに映るん ですが、その中の一人が、相撲中継を見る人たち全てが、名前は知らなくても 「よく分かる」ビジュアルなんです。(笑)

後書きにも書かれていた桃井君のモデル「村山聖九段」はご存知でした? 竹本さんの「妖霧の舌」の桃井君を読んだ後に、去年か今年の始めかにTVで、 「しってるつもり」か「驚き桃の木20世紀」かで特集を見ました。
壮絶としか言えなくて、涙ボロボロで辛くなりましたよ。

家庭不和や病気のせいで、幼くして擁護施設へ。自由に遊ぶ事も出来ない。 友達も出来ない。将棋だけが世界のすべてだった孤独な少年。
20歳までは生きられないという医者の宣告。
つてを頼っての棋士への弟子入り。この方が希に見る面倒を見てくださった。
漫画好きで、体調を崩しては4畳半の汚いアパートに閉じこもる生活。
好きなものは貪欲に集め、部屋には師匠以外入れない。
風呂にも入らない、爪も切らない。
常に隣にある死への恐怖からか、または自己顕示の異常な現われなのか、
爪を切る事が、垢を落とす事が出来ないなんて悲壮だと思います。
事情を知らない人には、当然嫌われるし、彼女も出来ない。

そんな彼も色々な転機が訪れて、吹っ切れてはどんどん純粋に将棋と 向き合えるようになります。汚いオタクなイメージから清冽な感じに。
同年代には新人類(古いか)の天才棋士が綺羅星のごとく揃っている上に、羽生 さんもいます。
囲碁も将棋もわからないけど、きっと打てる事は幸せだったと思います。
 …でも、村山さんは病気で苦しめられてしまうんです。
好調な時期の入院は棋士としては、断腸の思いだったようです。
その上、結婚や家庭生活に憧れつづけ、死の恐怖からこの世に生きていた 証を残したいと強く願って彼の病気は(病名どわすれm(__)m) 手術をするとタネ無しになるものだったらしいです。
SEXも出来なくなるんでったかは、これも度忘れ。
当然悩む彼は引退まで考え、またそれから色々と葛藤が続くんですが。
 (さすがに一度だけ見たTVじゃ忘れてる)
魔物に取り付かれたように将棋へ戻るため努力します。
療養期間の後に復帰。タイトル戦に挑戦しつづけ、ようやくその希望が 見えてきたときに、またも病気再発。
拒否していた手術も誰にも秘密で受け、将棋に全てを賭ける事になります。
タイトルは取れなかったようですが、勝負より内容が凄かったと番組の中で 幾人もの証言が印象的でした。
そのすぐ後に、村山さんは29歳で亡くなられたらしいです。
…ビデオにとって確認した訳ではなく、うろ覚えですから細部は間違っているかもしれません。

不確かな事を書くのは好ましく無いかも知れませんが、 「入神」を読んでメールをくれた方へ返事を書いているうちに、ほぼ記憶のみで 上記の紹介を一気に書き終えたくらい、私には印象深かったTV番組でした。

逝ってしまった人は、残された人の言葉に応える事はないけれど
過ぎた時間を総括する事は傲慢だけれど
桃井君が竹本ワールドで思う存分羽を広げて遊び耽けてくれるといいなぁと 思っています。

'99/10/22
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