LED道路鋲(ソーラーガーデンライトの点滅版?)
Amazonなどで入手できる製品の技術を解析してみました。

製作・著作: (有)テクノアート
 (初版:2017年3月1日)


道路の中央分離帯や歩車分離帯には、単なる反射板を組み込んだものが多用されていますが、太陽電池パネル・充電素子・LED素子を組み込んだ夜間にLEDが点滅するLED道路鋲が目立ち始めています。LEDが点滅することがソーラーガーデンライトと大きく異なります。

このような主に公共の場所で使用されて車両が鋲を踏むことがあるため、30トンまでの荷重に耐える必要があるほか、ニッケル水素電池内臓の製品でもオン・オフのスイッチがなく、過酷な気象条件の元でもメンテナンスフリーで5年以上の耐用年数が要求されるようです。

中国製の製品では高耐久性があるニッケル水素電池が使用されており、日本製の一機種では大容量の電気二重層コンデンサを使用しています。いずれにしても、電子回路を含めて耐水性・耐候性・耐荷重性などを求めるために珪砂入りのシリコン樹脂内に封入されています。(これは内部回路の非公開に役立っているのでしょうか。)ただ、ソーラーパネルの裏側だけはソフトシリコンでクッションを持たせてあるようです。

回路や内蔵部品を調べるには、彫刻刀などを使って根気よく「発掘」するしかありません。

1.日本ライナー鰍フマーブディレクト 
       (http://www.nipponliner.co.jp/products/pro_03_01_05.html)

この製品は路面のセンターラインなどに埋め込む製品で1万円以上します。技術的には長寿命の大容量電気二重層コンデンサ(120ファラッド)を使用して、LEDが光っている期間は人間の目には見えない速度で点滅させながら低周期で点滅させて消費電力を低く抑えています。4本のボルトを取り外せば右の写真のように分解できますが、写真左下の回路ボックスは透明のシリコンで充填してあります。
 
製品の外観 内部を開けたところ
 
作図した回路基板
 
トレースした回路

電気二重層のコンデンサは、LEDを6個にするときにもう一個並列接続で追加するのではないかと思います。
型番は不明ですが、二個の発振器は電源電圧が0.65Vまで動作し、第一発振器は3.4Hz、第二発振器は926Hzで発振させています。LEDに流れる電流は下図のようになっており、コンデンサに蓄えた電荷でLEDを点滅させます。

太陽電池の電圧が2.2V(昼間)になるとLEDがオフし、LEDのスレショルド電圧(1.53V)で消灯します。

2.中国製の製品A
 
これ以降ご紹介する道路鋲は全て中国製ですが、入手した製品は偶然ですがすべて異なった回路を採用していました。
この製品は6個の高輝度青色LEDを装着しているモデルで、6個は並列接続になっています。点滅サイクル は1.24Hzで6個のLED電流は60mSの期間10mAです。ニッケル水素電池の放電終止電圧は1.0Vで0.9Vまで許容できますが、このステップアップDC-DCコンバータ回路では電池電圧が0.1VになるまでLEDが点滅するのが欠点です。
 
製品の外観 作図した回路基板
 
トレースした回路

低電圧駆動の反転型シュミットトリガーロジックICを使って発振器を構成し、トランジスタ回路によるステップアップDC-DCコンバータの電圧をLEDに供給して点滅させます。

3.中国製の製品B
 
オレンジ色の高輝度LEDを使用した製品で、メーカーは確認できていませんがJ03BというICを採用しています。このICは日本で入手できません。

 
製品の外観 作図した回路基板
 
トレースした回路

点滅サイクルは1.93Hz、6個のLEDのピーク電流は68mA、38msの間点灯させます。
電池電圧が0.65VになるまでLEDが点滅するのは電池には酷な仕様になります。
ソーラー電圧が1.43VでLEDがオフ(昼間)になります。

4.中国製の製品C
 
この道路鋲は中国の大手信号機メーカー(www.wdm88led.com)の製品で、YX861Aという日本でも入手可能な8ピンのDIPIC(LEDドライバー)を採用しています。電池電圧が0.75VになるまでLEDが点滅しますが、一番無難な点滅式LEDドライバーと言えるかもしれません。
 
製品の外観 作図した回路基板
 
トレースした回路

点滅サイクルは1.67Hz、点灯時間は30mS、6個のLEDで30mSの期間12mA、ソーラー電圧が0.36V(昼間)でLEDがオフします。 ピーク電源/LED電流は12mA/20mAでした。


道路鋲の裏側は珪砂入りのシリコンで封印されています、

5.道路鋲に使用するIC以外のキー部品
 
LED道路鋲などに使用する電子回路の消費電流等の性能は使用するICなどで決まりますが、ソーラーパネルとニッケル水素電池はもっと重要な部品になります。

[ニッケル水素電池]
 

LED道路鋲に埋め込まれているニッケル水素電池の容量は600mAHですが高温タイプを使用しており、充電時の周囲温度は0℃〜45℃まで許容でき、例えば-10℃〜+70℃の環境では120mAで放電できます。このくらいの仕様でないと5年間の製品寿命を保証できないのでしょう。
高・低温対応のニッケル水素電池は汎用品よりも高価になり、特注品になります。
写真はリード付きのネクセル・ジャパン(http://www.nexcell.co.jp/)のAAA60Tという製品です。

[ソーラーパネル]

荷重がかかる可能性がありますので、ガラス基板のパネルは使用できません。紫外線に強く耐久性があるプラスチック基板のパネルを使用しています。
下の写真のような二種類のパネルは不思議ですが国内では入手できないため、友人に中国市場で探してもらいました。短絡電流はほぼ1.1mAで、3000luxの照度で100Ωの負荷両端ではほぼ100mV得られます。
 
左側のパネルはフレームが付いていませんので、アクリルのフレームを自作しました。どちらの製品もリード線は付いていません。

6.-付録- 中国製の地面埋め込み型のソーラー案内灯
 
これは道路鋲ではなく地面に埋め込む完全防水型のソーラー案内灯ですが、底面に防水スイッチが付いています。
内部のLED点灯回路は100円ショップで入手できる製品と同じで、ソケットから取り外せる単4型のニッケル水素電池を使用しており、日没で3個のLEDが点灯します。特筆すべき点は、3個のLEDは非常に珍しくソーラーパネルを貫通しており、完全防水とパネルが価格アップにつながっているのかもしれません。
 
製品の外観 作図した回路基板
トレースした回路 ダイソーのガーデンライト(回路が同じ)

インダクタの値はLEDの数によって異なります。

LEDが消灯するのは電池電圧が0.29Vですので過放電になり、さらにこの電圧でも電池からICに1mA流れます。

7.-付録- 最近のガーデンライト2機種
 
今までのガーデンライトは、ソーラーパネルのプラスチックに耐候性がなかったり、ニッケル水素電池が長期間持たないものが多かったように思います。
ところが最近の製品にはガラス基板のソーラーパネルを採用し、LED駆動用のICも性能が改善されているようです。
ソーラーパネル周辺の防水処理が必要なのは変わりありません。(100円の商品では無理なのでしょう。)
 
製品の外観 作図した回路基板 トレースした回路

このICは国内で入手できます。ICがオフになる電池電圧は0.53Vです。
 

製品の外観 作図した回路基板 トレースした回路
ANA618というLEDドライバーは従来のANA608の改良版らしく、240μHの時の総電流は4.8mA、ソーラー入力で完全に回路がシャットダウンし、電池電圧が0.75VでLEDがオフになって回路電流が0mAとなります。回路電流がゼロになるのはこのICのみかもしれません。
ICは国内で入手できます。製品はホームセンターのセキチューで429円で購入しました。約一年間正常に動作していますが、どうもガラスのソーラーパネルのすき間からの水漏れがあるらしく、スイッチが錆びています。この種の製品には必ずシリコンのコーキングが必要です。

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