電池管理システムを使用したエネループの性能測定

製作・著作: (有)テクノアート
 (初版:2007年5月11日)


写真1のような新しいタイプの充電式ニッケル水素電池「eneloop」(写真1)を、三洋電機が2005年11月14日に販売開始しました。うたい文句は、「自然放電(自己放電)を従来の約1/3に抑えることができた、充電して約1000回くり返し使えるので1回あたりのコストは約4円、それに寿命がきてもリサイクルできる環境に配慮した21世紀の新電池でした。
一方、松下電池が(株)ジーエス・ユアサコーポレーションと共同開発したエネループと同等品のMPSタイプ(写真2)を2006年
2月1日から販売開始しました。特別なニックネームをつけていませんので、写真2のように、グリーンを基調としたデザインとMPSというタイプ記号が選択目標になります。
これらの電池の性能アップに寄与した技術は特に公開されていませんが、一説によると、水素吸蔵ニッケル合金の改良が主要因と言うことです。
 
写真1. 三洋電機のエネループ HR-3UTG 写真2. 松下電池のMPSタイプ HHR-3MPS

従来からあるニッケル水素電池(Ni-MH電池)はクリーンな電池なのですが、ニカド電池ほどではないにしても、自己放電率が結構大きく(充電後6ヶ月で低格容量の約30%になってしまいます。)、前もって満充電しておいても、保存温度が高かったり放置期間が長かったりすると、本来のパワーが得られないと言う弱点を持っています。これは単3のNi-MHを使用するデジカメユーザには頭の痛い問題でした。
これが
大幅に改善され、満充電後に室温(20℃)で放置した場合のパワー残存率は、6ヵ月後に約90%(従来品:約75%)で、1年経過しても約85%(従来品:約0%)ということですから、充電しておけば1年後でも使いたい時にすぐ使えることになります。継ぎ足し充電を繰り返してもメモリー効果が生じ難いのもありがたいことです。

発売後すぐに探し回って1480円で購入したのですが、ほんとうに自己放電率が小さいのかを調べたくて、約1年半使用せずに放置しました。と言うより、4本の単3を、購入直後、3ヵ月後、6ヵ月後、それと1年後に残存充電容量を実際に測定しようと思って忘れてしまっていました。
写真3が4本のうちの1本(2005年10月製造)を電池管理システム急速放電器を使用して測定した結果です。


写真3. 購入後1.5年放置してあったエネループの残存容量

エネループHR-3UTGの公称容量は2000mAh(1900min.)ですが、工場出荷時に100%充電であったか、また容量が2000mAhあったかどうかは不明ですが、1.5年経過しても1863mAh(1.03Vまでの放電)あったことがわかりました。4本の平均値は1852mAhでした。
また、同じ電池を急速充電器で満充電して再度放電しましたところ、容量は2254mAhでしたから、1.5年後でも約82.6%の残存容量があったことになります。

当初松下電池のMPSタイプを購入する予定はなかったのですが、このレポートを書いている途中でHHR-3MPS/4Bを購入し、そのうちの1本(2007年3月の生産品)を測定してみました。写真4がその結果ですが、初期値を2500mAhにして測定しています。この測定結果では、残存容量が1976mAh(1.03Vまでの放電)あった事になります。一度満充電してから同じように放電した結果、この電池の容量が約2268mAhであることが分かりましたので、2ヵ月後の残存容量は87%であったことになります。


写真4. 製造後2ヶ月経過した松下のMPSタイプの残存容量

この電池のパッケージ裏側の使用方法説明に、「長期間使用しなかった場合は2〜3回充放電を繰り返してください。」と書いてあります。この表記はエネループの説明書にはありません。要するに、『不活性化状態』は従来の電池と同様に起きてしまうと言うことのようです。不活性化状態は学術的表現ではないのですが、長期保存すると電池の内部電極表面に電流が流れ難くなる膜が出来てしまう現象を言います。

ちなみに、エネループ、松下電池のMPSおよび従来品を1.03Vまで放電しておいて、DS2711を使用した弊社製の急速充電器で充電(LEDが消灯するまで)した結果を写真5で比較しています。これらから見ると、エネループとMPSのほうが従来型よりもデルタV検出が早く(約2700mAhで)現れています。これは従来品の測定容量が2264mAhと、偶然にもエネループやMPSとほぼ同じでしたので、エネループのほうが充電効率が少し良いということを示しているのではないかと思います。


写真5. 三洋HR-3UTGと松下HHR-3MPSと松下HHR-3PPS(従来型)の充電カーブ比較

三洋のエネループは単3型4本入りの税抜き実買価格は1480円(発売以来)で、松下電池のHHR-3MPS/4Bは1580円ですから、見かけ上は三洋のほうがお買い得になりますので、この差がどこから来ているのか興味深いところです。
これらの電池は、従来の値段動向と比較しても、発売以来値段が安くなっていません。金属材料の価格上昇で電池メーカーのコストを圧迫し始めているそうですから、逆に価格上昇しないことを願っています。

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