片面基板を使用した大電流DC-DCコンバータ
マキシム社のMAX1709ESEを使用

製作・著作: (有)テクノアート
 (初版:2007年5月11日)
(改訂:2009年12月3日)


マキシム社のMAX1709は、+0.7V〜+5V電源から固定(3.3V又は5V)又は可変(2.5V〜5.5V)出力で最大20Wを供給するDC-DCコンバータで、基本動作周波数は600kHzと比較的高い周波数です。
http://japan.maxim-ic.com/からダウンロードできる日本語版データシートの5ページ左下に『起動電圧対負荷電流』のグラフから分かるとおり、入力電圧がニッケル水素電池1本の1.2Vの場合、出力電圧と電流が3.3V/0.1Aまたは5V/0.1AであればこのICは起動することができ、同じページの左上にある『効率対出力電流(Vout=3.3V)』から、3.3Vで1Aの出力が約75%の効率で得られることが分かります。この場合には、1.2Vの電池から3.7A以上の電流が流れます。
MAX1703という別のICを選べば、1.2V入力でもっと効率が良い出力が得られますが、最大出力電流は1.5Aになります。
 
MAX1709の起動電圧対負荷電流 MAX1709の効率対出力電流(Vout=3.3V)
(出展元: MAXIM社のMAX1709_jp.pdf)

ところで、どのメーカのDC-DCコンバータICでも、ユニバーサル基板を使用して手作り試作検討をしようとすると、そのほとんどの場合、設定した電圧が出ないとか、負荷電流を増やすと出力電圧が変わってしまうとかの正しく動作しない結果なってしまう場合が多いようです。また、リード付きの部品やICの変換基板を使用した場合には100%正しく動作しません
DC-DCコンバータは、入出力端から見れば直流電圧・電流を制御する回路ですが、一昔前と違って、スイッチング周波数が1桁以上高くなっており、出力電圧の設定ループは、アナログ設計に見られるPLLループやサーボ回路のフィードバックループと同じような動作となります。したがって、フィードバックループの引き回しや配置が不適当になれば、設定がロックしない、すなわち、出力電圧が安定しないなどの現象として現れてしまいます。最悪の場合には、IC内部のハイサイドとローサイドのFETが同時にオンする期間ができてしまって、ICが高温になって破壊されると言う結果になります。
実際に、数十アンペアの出力を持つDC-DCコンバータの初期設計は慎重に行われたため、安定に動作していた回路を、こういった注意点を知らない技術者がパターンを変えてしまって量産設計したため、量産直前になって回路動作が不安定になる問題が露見し、結果的には救いようがなかったという例を聞いたことがあります。したがって、部品の配置や配線パターンの引き回しに十分な注意が必要で、しかも片面基板で実現しようとすると、重要な部品の最適配置が難しくなりますし、ジャンパ線による配線長の増加が起こりますので、十分なレイアウト上の注意が必要となります。ほとんどのICメーカは、DC-DCコンバータICの評価キットを用意しているようですので、それらを参考にして自社の仕様に合うように注意深くレイアウトを行うのが良いと思います。
また、設計会社や他の技術者が設計したDC-DCコンバータのパターンレイアウトを変更する必要が生じた場合には、必ずオリジナルの設計者に問い合わせることが必要です。これは、DC-DCコンバータに限らず、アナログ回路のパターン設計の変更の鉄則となります。

MAX1709EVKITのPCBレイアウトを参考にして作成したDC-DCコンバータは下の写真の通りです。片面のユニバーサル基板でテストしたレイアウトを正式のパターンにしたものです。
入出力コンデンサには低ESR品を使用する必要がありますので、高価ですが、ここではパナソニックの機能性高分子アルミニウム電解コンデンサSP-Capを使用しました。パワーインダクタは、TDK株式会社様からサンプルをご提供いただいたVLF10045T-1R0N100 (1μH)を使用しました。また、大電流ショトキダイオードには、STマイクロエレクトロニクスのSTPS8L30Bを使用しました。
PCBのサイズは61mmx47mm(横x縦、旧バージョンから少し小型化)です。3.5V入力で5V/2.5A出力まで動作確認済みです。(設備の制限から5V/4Aでの動作確認は出来ていません。)
 
改良したMAX1709ESE評価キット(パターン面) MAX1709EUIを使用したマキシム社の評価キット

評価キットの内容はこちら(PDFファイル)です。

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